どう)” の例文
鍔ぜり合いは、どう極致きょくちせい……こうなると、思いきり敵に押しをくれて、刀を返しざま、身を低めて右胴を斬りかえすか。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ずんと切落きりおとせば掃部はたまらず尻居しりゐどうたふれつゝヤア殘念ざんねんうらめしやだまし討とは卑怯ひけふ未練みれん是重四郎殿何者か我があし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
殆どどうとか力とかいふ感じを與へない、鼠一色いつしきの靜止の死物であるやうに見えて居ながら、一旦海の境界線と接觸を持つと忽ち一帶の白浪が逆卷き上り
少年の死 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
「なあに、ここに立ってさえいれば大丈夫」と腹の減った男は泰然としてどうずる景色けしきもない。この男から云うと着いても着かなくても大丈夫なのだろう。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その位置が窓のすぐ近くなものですから、乞食のところから、明智の一きょどうが、手にとるように見えるのです。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「どんな事に会っても物にどうじたことのない人」と夢窓国師も言った尊氏だが、はたしてこのさいどうだったか。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葉子はなおもどうじなかった。そこにおんながはいって来たので話の腰が折られた。二人ふたりはしばらく黙っていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
はたせるかな銀貨ぎんくわうまんでるから、金慣かねなれた旦那だんなものどうぜぬ番頭ばんとう生意氣盛なまいきざかり小僧こぞうどもまで、ホツとつておどろかして、てんからつてたやうに、低頭平身ていとうへいしんして
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
幼儀ようぎ雑箴ざっしん二十首を読めば、りつこうしんより、げんどういんしょく等に至る、皆道にたがわざらんことを欲して、而して実践躬行底きゅうこうていより徳を成さんとするの意、看取すべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
左舷さげん當番たうばん水夫すゐふいまたしか星火せいくわほとばしり、火箭くわせん慘憺さんたんたる難破船なんぱせん信號しんがうみとめてるには相違さうゐないのだが、何故なぜ平然へいぜんとしてどうずるいろもなく、籠手こてかざして其方そなたながめてるのみ。
〔譯〕刀槊たうさくきよ心をいだく者はくじけ、勇氣ゆうきたのむ者はやぶる。必や勇怯ゆうきよを一せいほろぼし、勝負しようぶを一どうわすれ、之をうごかすに天を以てして、廓然かくぜん太公たいこうに、之をしづむるに地を以てして、もの來つて順應じゆんおうせん。
どうし、坤軸こんぢくるゝかとおもふばかりなり
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
検校はいっこうどうじる容子もなく「え? ……何? ……」と振向いてはまた、悠然と弾き語りをつづけていた。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
も云ず拔打ぬきうち提灯ちやうちんバツサリ切落きりおとせば音吉はきやツと一聲立たるまゝ土手どてよりどうまろおち狼藉者らうぜきものよとよばはりながら雲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
このゆえどうと名のつくものは必ず卑しい。運慶うんけい仁王におうも、北斎ほくさい漫画まんがも全くこの動の一字で失敗している。動か静か。これがわれら画工がこうの運命を支配する大問題である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
よほど逆上しているものらしく、この色街にあって不粋もはなはだしいことは、源十郎が今にも抜かんず勢いで、刀の柄に手をかけているのだが、応対に出たまつ川の主人はいっこうにどうじない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
明智はどうじない。
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
僞者にせものとの過言其意を得ず何か證據しようこが有て左樣には申すや返答聞んと詰寄つめよれば伊賀亮どうずる色なくたしかに證據なくして麁忽そこつの言を出さんや其證據しようこを聞んとならばれい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
武敏は、どうじない。すでに途上でそのことは、いくどとない早馬の報で知っていたからである。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しらべて見ると「せいこれをせいとなせば心其中そのうちにあり、どうこれを心となせば性其中にあり、心しょうずれば性めっし、心滅すれば性生ず」というようなむずかしい漢文が曲がりくねりに半頁はんページばかりを
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
忠相はどうじない。委細かまわずに語をつづけるのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「すべての反吐は動くから吐くのだよ。俗界万斛ばんこくの反吐皆どうの一字よりきたる」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、澄みきったさまで、向うのどうじ方を眺め廻した。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)