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創口
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きずぐち
ふりがな文庫
“
創口
(
きずぐち
)” の例文
魚槍を肩にし、
創口
(
きずぐち
)
より血なお
滴
(
したた
)
れる鱒を
提
(
さ
)
げたる男、霧の中より露われ来る。掘立小屋に酔うて歌うものあり。旧土人なりといえり。
層雲峡より大雪山へ
(新字新仮名)
/
大町桂月
(著)
シャツはめちゃくちゃに破れ、肉には大きな
創口
(
きずぐち
)
ががっくりと開いたが、老人は泰然自若として相変らず凄まじく彼を睨みつけていた。
空家
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
ただの一度の仕合に
傷
(
きずつ
)
きて、その
創口
(
きずぐち
)
はまだ
癒
(
い
)
えざれば、赤き血架は
空
(
むな
)
しく壁に古りたり。これを
翳
(
かざ
)
して思う如く人々を驚かし給え
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
とにかく、数分の後、義夫は診察室の一隅にあるベッドの上に仰向きに寝かされ、
枕頭
(
まくらもと
)
に私と妻とが立って
創口
(
きずぐち
)
を検査しました。
安死術
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
すぐに小石を拾って蛇の
創口
(
きずぐち
)
を叩いて、叩く度にまだ死に切らない下半身が波を打つように動くのを眺めていたのである。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
蕨の茎葉で蝮に咬まれた
創口
(
きずぐち
)
を撫でてかの歌を
誦
(
じゅ
)
すと越後でいう由なるが、陸中の俚伝を佐々木喜善氏が筆したのには
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
第一、第二の犠牲者に比して
創口
(
きずぐち
)
はすこし上方にのぼっているのだった。三人の犠牲者は、いずれも左側の座席に腰を下ろしていたことが判った。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その証拠には、尖鋭な武器で強打した場合だと、周囲に小片の骨折が起るし、
創口
(
きずぐち
)
が可成り不規則な線で現われる。所が、この屍体にはそれがない。
後光殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
ヂュリ
涙
(
なみだ
)
で
創口
(
きずぐち
)
を
洗
(
あら
)
はしゃるがよい、
其
(
その
)
涙
(
なみだ
)
の
乾
(
ひ
)
る
頃
(
ころ
)
にはロミオの
追放
(
つゐはう
)
を
悔
(
くや
)
む
予
(
わし
)
の
涙
(
なみだ
)
も
大概
(
たいがい
)
盡
(
つけ
)
う。
其
(
その
)
綱
(
つな
)
を
拾
(
ひろ
)
うてたも。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
何か鋭利な刃物で一挙に斬りつけたものらしく、
創口
(
きずぐち
)
は脳天から始まって、
斜後
(
ななめうしろ
)
に後頭部の辺まで及んでいる。
平賀源内捕物帳:萩寺の女
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
すると今まで跪いて、トツクの
創口
(
きずぐち
)
などを調べてゐたチヤツクは如何にも医者らしい態度をしたまま、僕等五人に宣言しました。(実は一人と四匹とです。)
河童
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
皮
(
かは
)
が
破
(
やぶ
)
れ、
肉
(
にく
)
が
爛
(
たゞ
)
れて、
膿汁
(
うみしる
)
のやうなものが、どろ/\してゐた。
内臟
(
ないざう
)
はまるで
松魚
(
かつを
)
の
酒盜
(
しほから
)
の
如
(
ごと
)
く、
掻
(
か
)
き
廻
(
まは
)
されて、ぽかんと
開
(
あ
)
いた
脇腹
(
わきばら
)
の
創口
(
きずぐち
)
から
流
(
なが
)
れ
出
(
だ
)
してゐた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
見れば満身縦横に
腫
(
は
)
れている
創口
(
きずぐち
)
は、まだ熱と紅色をふくんで、触るるもいたましいばかりである。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
道庵は
手負
(
ておい
)
を
抱
(
いだ
)
き起して、一方には自分の羽織を脱いで、その肩先の
創口
(
きずぐち
)
をしっかりと捲き、血留めをしておいて、さて応急の手当を試みようとしたけれど、遺憾ながら
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
葉子は息も絶えそうに
呻吟
(
うめ
)
いていたが、
面
(
おもて
)
を
背向
(
そむ
)
けていた庸三が身をひいた時には、すでに
創口
(
きずぐち
)
が消毒されていた。やがて
沃度
(
ヨード
)
ホルムの
臭
(
にお
)
いがして、ガアゼが当てられた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私の受けた虐待の
創口
(
きずぐち
)
も今はまたすつかりふさがつて
怨恨
(
うらみ
)
の熖も消えてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
そして、静かに、顫える手で、膝を探って行くと、べとべととした血潮、開いた
創口
(
きずぐち
)
——眼を閉じて、指を——全身へ響く痛みを耐えて、創口へ入れて行くと、骨へ触れた。尖った骨であった。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
モコウがたずさえた
小刀
(
こがたな
)
をとって、
創口
(
きずぐち
)
をえぐった。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
それらの
創口
(
きずぐち
)
から出る
怨
(
うら
)
みの声が大連中に響き渡るほど
凄
(
すさま
)
じかったので、その以後はこの
一廓
(
ひとくるわ
)
を化物屋敷と呼ぶようになった。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は眼を細めにあけて、大理石の
石板
(
いしいた
)
に
横
(
よこた
)
えられた女の白い体と、胸の只中をナイフで無残に
刳
(
えぐ
)
られた赤い
創口
(
きずぐち
)
とを見た。
青蠅
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
その
根
(
こん
)
を
創口
(
きずぐち
)
に比して男子に説く趣向を妙案らしく
喋々
(
ちょうちょう
)
し居るが、その実東洋人にはすこぶる陳腐で、仏教の律蔵には産門を多くは
瘡門
(
そうもん
)
(すなわち創口)と書きあり
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
すると今までひざまずいて、トックの
創口
(
きずぐち
)
などを調べていたチャックはいかにも医者らしい態度をしたまま、僕ら五人に宣言しました。(実はひとりと
四匹
(
しひき
)
とです。)
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
箕浦は衣服をくつろげ、短刀を
逆手
(
さかて
)
に取って、左の脇腹へ深く突き立て、三寸切り下げ、右へ引き廻して、又三寸切り上げた。刃が深く入ったので、
創口
(
きずぐち
)
は広く開いた。
堺事件
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それは、
創口
(
きずぐち
)
を塞いでいる凝血の塊だったが、底を返して見て、検事は
真蒼
(
まっさお
)
になってしまった。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
縫いつけられて一旦、虚空を掴んで苦しがった擬いの神尾主膳、
創口
(
きずぐち
)
から矢のように
迸
(
ほとばし
)
る血まみれの槍の柄を両手に掴んで、苦しまぎれに抜こうとしたが抜くことができません。
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
創口
(
きずぐち
)
はずっと右側へ寄り、恐らく右胸か又は右腕あたりに当ることになります。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
創口
(
きずぐち
)
がまだ完全に
癒
(
い
)
えていないので、薬やピンセットやガアゼが必要であった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
創口
(
きずぐち
)
にできるだけ多くのガーゼを詰め込まれた彼の感じは、
他
(
ひと
)
が想像する倍以上に重苦しいものであった。彼は仕方なしにのそのそ歩いた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は
後退
(
あとすざ
)
りをして、犠牲者の様子を覗きこんだ。小さな懐中電燈の
燈
(
あか
)
りだけでは、シャツの上から刺した
創口
(
きずぐち
)
がどんな風か、血が出たか
何
(
ど
)
うかも見分けがつかなんだ。
空家
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
そんなもの今もあるにや、一九一四年ボンベイ版エントホヴェンの『グジャラット
民俗記
(
フォークロール・ノーツ
)
』一四二頁に或る術士は
符籙
(
ふろく
)
を以て人咬みし蛇を招致し、命じて
創口
(
きずぐち
)
から毒を吸い出さしめて癒す。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
私は深い恋愛に根ざしている熱烈な記憶を取り上げても、彼女の
創口
(
きずぐち
)
から
滴
(
したた
)
る血潮を「時」に
拭
(
ぬぐ
)
わしめようとした。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
針を海綿に
蔵
(
かく
)
して、ぐっと握らしめたる後、柔らかき手に
膏薬
(
こうやく
)
を
貼
(
は
)
って
創口
(
きずぐち
)
を快よく慰めよ。出来得べくんば
唇
(
くちびる
)
を血の出る局所に
接
(
つ
)
けて他意なきを示せ。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
此
(
この
)
二三
年
(
ねん
)
の
月日
(
つきひ
)
で
漸
(
やうや
)
く
癒
(
なほ
)
り
掛
(
か
)
けた
創口
(
きずぐち
)
が、
急
(
きふ
)
に
疼
(
うづ
)
き
始
(
はじ
)
めた。
疼
(
うづ
)
くに
伴
(
つ
)
れて
熱
(
ほて
)
つて
來
(
き
)
た。
再
(
ふたゝ
)
び
創口
(
きずぐち
)
が
裂
(
さ
)
けて、
毒
(
どく
)
のある
風
(
かぜ
)
が
容赦
(
ようしや
)
なく
吹
(
ふ
)
き
込
(
こ
)
みさうになつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
最初
下剤
(
げざい
)
をかけてまず腸を
綺麗
(
きれい
)
に掃除しておいて、それからいよいよ切開すると、出血の危険があるかも知れないというので、
創口
(
きずぐち
)
へガーゼを
詰
(
つ
)
めたまま
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この二三年の月日でようやく
癒
(
なお
)
りかけた
創口
(
きずぐち
)
が、急に
疼
(
うず
)
き始めた。疼くに
伴
(
つ
)
れて
熱
(
ほて
)
って来た。再び創口が裂けて、毒のある風が容赦なく吹き込みそうになった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
なお感じたのは、地面の上に手を
後
(
うしろ
)
へ突いて、
創口
(
きずぐち
)
をみんなの前に
曝
(
さら
)
している老人の顔に、何らの表情もない事であった。痛みも刻まれていない。苦しみも現れていない。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それはガーゼを詰め込んだ
創口
(
きずぐち
)
の周囲にある筋肉が一時に収縮するために起る特殊な心持に過ぎなかったけれども、いったん始まったが最後、あたかも呼吸か
脈搏
(
みゃくはく
)
のように
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今日
(
こんにち
)
迄
(
まで
)
の
經過
(
けいくわ
)
から
推
(
お
)
して、
凡
(
すべ
)
ての
創口
(
きずぐち
)
を
癒合
(
ゆがふ
)
するものは
時日
(
じじつ
)
であるといふ
格言
(
かくげん
)
を、
彼
(
かれ
)
は
自家
(
じか
)
の
經驗
(
けいけん
)
から
割
(
わ
)
り
出
(
だ
)
して、
深
(
ふか
)
く
胸
(
むね
)
に
刻
(
きざ
)
み
付
(
つ
)
けてゐた。それが
一昨日
(
をとゝひ
)
の
晩
(
ばん
)
にすつかり
崩
(
くづ
)
れたのである。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
今日
(
こんにち
)
までの経過から
推
(
お
)
して、すべての
創口
(
きずぐち
)
を
癒合
(
ゆごう
)
するものは時日であるという格言を、彼は自家の経験から割り出して、深く胸に刻みつけていた。それが
一昨日
(
おととい
)
の晩にすっかり
崩
(
くず
)
れたのである。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
創
常用漢字
小6
部首:⼑
12画
口
常用漢字
小1
部首:⼝
3画
“創”で始まる語句
創
創痍
創造
創痕
創立
創傷
創作
創業
創所
創管