別嬪べつぴん)” の例文
惡口屋わるくちやはんやこと、相變らず。……そらあきまへんとも、わたへなぞ。東京のおかたはんは皆別嬪べつぴんで、贅澤ぜいたくだすよつてな。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
なげはうも、なげられるはうも、へと/\になつてすわつたが、つたうへ騷劇さうげきで、がくらんで、もう別嬪べつぴんかほえない。財産家ざいさんか角力すまふひきつけでるものだ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
田舎にはめづらしいほどの別嬪べつぴんで、足利に行つて居る間に、鹿児島生れで、其土地の中学校の教師をしてゐた男に見染みそめられて、無理に懇望されてとついで行つた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「イヨウ、素敵な別嬪べつぴんが立つてるぢやねエか——いけはたなら、弁天様の御散歩かと拝まれる所なんだ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
別嬪べつぴんになつたねえ。」間延まのびの口調がいかにも誇張のない驚きをあらはしてゐる。
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
まア富貴楼ふつきらうのおくらさんかね、福分ふくぶんもあり、若い時には弁天べんてんはれたくらゐ別嬪べつぴんであつたとさ、たく横浜よこはま尾上町をのへちやうです、弁天通べんてんどほりと羽衣町はごろもちやうちかいから、それに故人こじん御亭主ごていしゆかめさんとふからさ。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
其の癖どんな別嬪べつぴんだらうといふ好奇心が彼を軽くこそぐるのだつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
「そやけど、ぢき、いゝ別嬪べつぴんはんにならはつてな……」
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
「相變らず別嬪べつぴんやなア、お前幾つや。」と、竹丸を棄ててお駒の方へ向き直つた。お駒はただ笑つてゐたけれど
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
影法師かげぼふしが、鐵燈籠かなどうろうかすかあかりで、別嬪べつぴんさんの、しどけない姿すがたうへへ、眞黒まつくろつて、おしかぶさつてえました。そんなところだれ他人たにんせるものでございます。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「ふウム、一理あるナ、——所で近来素敵すてき別嬪べつぴんが居るぢやねエか、老母おふくろ付きか何かで」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
あれは何処どこかの権妻ごんさいだかおくさんだか知れんが、人柄ひとがら別嬪べつぴんだのう。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
別嬪べつぴんでござんした。」たゞでもこのやくはつとまるところをしみ/″\れいをいはれたうへに、「たんまり御祝儀ごしうぎを。」とよごれくさつた半纏はんてんだが、威勢ゐせいよくどんぶりをたゝいてせて
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
不具になつても御厭おいとひなさらぬか、へ、自分がドンなに別嬪べつぴんだと思つて居るんだ、彼方あつちからも此方こつちからも引手ひくて数多あまたのは何の為めだ、容姿きりやうや学問やソンな詰まらぬものの為めと思ふのか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ところ旦那樣だんなさま別嬪べつぴんさんが、うやつて、手足てあし白々しろ/″\座敷ざしきなかすゞんでなさいます、周圍まはりを、ぐる/\と……とこからつぎ簀戸よしどはううらから表二階おもてにかいはうと、横肥よこぶとりにふとつた
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、四疊半よでふはんでも六疊ろくでふでも、琵琶棚びはだなつきの廣間ひろまでも、そこは仁體にんてい相應さうおうとして、これに調子てうしがついて、別嬪べつぴんこゑかうとすると、三味線さみせん損料そんれうだけでもおやすくない。しろ指環ゆびわぜいがかゝる。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、ときおぼえがあるから、あたりをはらつて悠然いうぜんとしてをしへた。——いまはもうだいかはつた——亭主ていしゆ感心かんしんもしないかはりに、病身びやうしんらしい、おかゆべたさうなかほをしてた。女房にようばう評判ひやうばん別嬪べつぴんで。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
追々おひ/\馴染なじみ度重たびかさなると、へい、朝顔あさがほはな打沈ぶちしづめたやうに、ゑり咽喉のどいろわかつて、くちひやうはらぬけれど、目附めつきなりひたひつきなり、押魂消おつたまげ別嬪べつぴんが、過般中いつかぢゆうから、おな時分じぶんに、わしかほはせると
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)