トップ
>
僻地
>
へきち
ふりがな文庫
“
僻地
(
へきち
)” の例文
僕はF君のような大人しい人があんな
僻地
(
へきち
)
でどうやら意中の人を見出したらしい様子なので、そのために一層F君を好ましく思った。
落穂拾い
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
詩人文人の家、先生学者の家より都市の旅館、
僻地
(
へきち
)
の農家に至るまで、掛物、額、屏風、
襖
(
ふすま
)
の装飾は多く画を画かずして書を書く。
病牀譫語
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
手提
(
てさげ
)
はすぐ分った。が、この荒寺、思いのほか、陰寂な
無人
(
ぶじん
)
の
僻地
(
へきち
)
で——頼もう——を我が耳で聞返したほどであったから。……
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もっとも、
殺伐
(
さつばつ
)
な戦場生活だの、
僻地
(
へきち
)
から
曠野
(
こうや
)
を
流浪
(
るろう
)
してきた身なので、よけいに、彼方の女性が美しく見えたのかもしれない。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此美人を此
僻地
(
へきち
)
に
出
(
いだ
)
すは
天公
(
てんこう
)
事を
解
(
げ
)
さゞるに似たりと
独
(
ひとり
)
歎息
(
たんそく
)
しつゝ
言
(
ものいは
)
んとししに、娘は
去来
(
いざ
)
とてふたゝび柴籠をせおひうちつれて立さりけり。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
▼ もっと見る
この谷が山間の一
僻地
(
へきち
)
で、
舟楫
(
しゅうしゅう
)
運輸の便があるでもなく、田野耕作の得があるでもなく、村々の大部分が高い米や塩を他の地方に仰ぎながらも
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
紀井から大和と、次第に北朝軍の手の届かない奥吉野の山間
僻地
(
へきち
)
へ
逃
(
のが
)
れ、一の宮を自天王と
崇
(
あが
)
め、二の宮を
征夷
(
せいい
)
大将軍
(
たいしょうぐん
)
に
仰
(
あお
)
いで、年号を
天靖
(
てんせい
)
と改元し
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼らは自身たちの領主がすでに明治に
降
(
くだ
)
ったと知ると、明治の飯を食わずと
連袂
(
れんべい
)
して山間の
僻地
(
へきち
)
に立て
籠
(
こも
)
り、今なお一団となって共産村を造っていた。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
山間
僻地
(
へきち
)
に多年潜む排外思想の結果、若き女の血に燃えるのを、脅威を以て抑圧していた、その不合理を
打砕
(
うちくだ
)
かせようと、直芳は熱誠を以て説き入った。
壁の眼の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
これはわが
國
(
くに
)
にてはいかなる
寒村
(
かんそん
)
僻地
(
へきち
)
にも
普及
(
ふきゆう
)
してゐる
注意事項
(
ちゆういじこう
)
であるが、かような
地割
(
ぢわ
)
れの
開閉
(
かいへい
)
に
關
(
かん
)
する
恐怖
(
きようふ
)
は
世界
(
せかい
)
の
地震地方
(
ぢしんちほう
)
に
共通
(
きようつう
)
なものだといつてよい
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
九谷という村は、加賀の
山中
(
やまなか
)
という温泉から、六、七里ばかりも渓流に沿って上った所にある山間の
僻地
(
へきち
)
で、今でもよほどの
物好
(
ものずき
)
でないと行けぬ位の山奥である。
九谷焼
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
専門の仕事の外にこの山間
僻地
(
へきち
)
にまで伸び来った敵国の触手を、まざまざと身辺に感じながら、目に見えぬ犯人との恐るべき戦闘状態を続けなければならなかった。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それから若干の山を隔てて加賀河北郡の川上にも五箇庄がある。越前にも二箇処の五箇があるが、
九頭竜
(
くずりゅう
)
川の支流を
溯
(
さかのぼ
)
って、
白山
(
はくさん
)
西側に接した五箇山は
僻地
(
へきち
)
である。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
こういった
辺鄙
(
へんぴ
)
な、長いあいだ人が住みついていた
僻地
(
へきち
)
でもっとも盛んになるのだが、アメリカのたいていの町や村を形づくっているのは移りあるくひとびとなので
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
長年の間老いた法師がお祈りいたしております神や仏が
憐
(
あわれ
)
みを一家におかけくださいまして、それでしばらくこの
僻地
(
へきち
)
へあなた様がおいでになったのではないかと思われます。
源氏物語:13 明石
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
今や我が国
都鄙
(
とひ
)
到
(
いた
)
る処として
庠序
(
しょうじょ
)
の設けあらざるはなく、
寒村
(
かんそん
)
僻地
(
へきち
)
といえどもなお
咿唔
(
いご
)
の声を聴くことを
得
(
う
)
、
特
(
こと
)
に女子教育の如きも近来
長足
(
ちょうそく
)
の進歩をなし、女子の品位を高め
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
されば
僻地
(
へきち
)
盗難繁かった処々は、庚申に祈りて盗品を求め、盗もまた気味悪くなってこれを返却した例多く、庚申講を組んで順次
青面金剛
(
せいめんこんごう
)
と三猿の絵像を祭りありく風盛んなり。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
昔、越後之国魚沼の
僻地
(
へきち
)
に、閑山寺の六袋和尚といって近隣に徳望高い老僧があった。
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
あの
白堊
(
はくあ
)
、あの石灰、あの
石膏
(
せっこう
)
、あの荒地や休耕地のきびしい単調さ、奥深い所に突然見えてくる農園の
早生
(
わせ
)
の植物、
僻地
(
へきち
)
と都市との混合した景色、兵営の太鼓が騒々しく合奏して
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
其時
(
そのとき
)
は
無論
(
むろん
)
、
新聞
(
しんぶん
)
の
號外
(
がうぐわい
)
によつて、
市井
(
しせい
)
の
評判
(
へうばん
)
によつて、
如何
(
いか
)
なる
山間
(
さんかん
)
僻地
(
へきち
)
の
諸君
(
しよくん
)
と
雖
(
いへど
)
も
更
(
さら
)
に
新
(
あたら
)
しき、
更
(
さら
)
に
歡
(
よろこ
)
ふ
可
(
べ
)
き
事
(
こと
)
を
耳
(
みゝ
)
にせらるゝであらうが、
私
(
わたくし
)
は
殊
(
こと
)
に
望
(
のぞ
)
む!
西
(
にし
)
、
玄海灘
(
げんかいなだ
)
の
邊
(
ほとり
)
より
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
いかなる寒村
僻地
(
へきち
)
でも、家々でその有合わす手だけで充分に生産ができる、日本でこしらえて、異国を相手に商売のできる第一のものはあれだと、こっちは見込みをつけてしまったがどうだ
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「南方の
僻地
(
へきち
)
には大蛇が多い。常にこの亀をそばに置いて、害を防げ」
中国怪奇小説集:08 録異記(五代)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
福沢諭吉氏が「西洋事情」は、寒村
僻地
(
へきち
)
まで行き渡りたりと聞けり。
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
チチコフは、飛んでもない
僻地
(
へきち
)
へ迷いこんだものだと気がついた。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
僻地
(
へきち
)
の人は、写真をとれば寿命を短縮すという。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
「時に、なんとも思いがけないご来訪ですが、そもそも、こんな
僻地
(
へきち
)
へのご旅行とは、何か、官命のご出張でもございますのか」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
井戸
(
ゐど
)
のふちに
茶碗
(
ちやわん
)
ゆゑ、けんのんなるべし。(かしや、かなざもの、しんたてまつる
云々
(
うんぬん
)
)これは
北海道
(
ほくかいだう
)
の
僻地
(
へきち
)
の
俚謠
(
りえう
)
なり。
寸情風土記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
此美人を此
僻地
(
へきち
)
に
出
(
いだ
)
すは
天公
(
てんこう
)
事を
解
(
げ
)
さゞるに似たりと
独
(
ひとり
)
歎息
(
たんそく
)
しつゝ
言
(
ものいは
)
んとししに、娘は
去来
(
いざ
)
とてふたゝび柴籠をせおひうちつれて立さりけり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
まして田舎も田舎、行きどまりの山奥に近い吉野郡の
僻地
(
へきち
)
であるから、たとい貧しい百姓家であってもわずか二代か三代の間にあとかたもなくなるようなことはあるまい。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
青森地方、即ち
南部
(
なんぶ
)
や
津軽
(
つがる
)
からも、はるかに九州のこの
僻地
(
へきち
)
まで、数名の門弟が来ている。
淡窓先生の教育
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
通行人があるところを見ると
僻地
(
へきち
)
でもなく、人家や街路があるところを見ると田舎でもなく、田舎の街道のように通りには
轍
(
わだち
)
の跡があり、草が茂っているところを見ると町でもなく
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
大原という処は
鬼怒
(
きぬ
)
水電工事の中心である。ために
入込
(
はいりこ
)
んでいる
工夫
(
こうふ
)
の数は三千人程あるという話だ。山間の
僻地
(
へきち
)
の割には景気がいいらしい。
商賈
(
しょうこ
)
もドシドシ建つようだし、人間の往来も多い。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
もっとも、この
播州
(
ばんしゅう
)
にいて、
僻地
(
へきち
)
の数郡を領すに過ぎない地方の一城主に、そんな達見を望むのは無理だともいえるのである。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
護送されたる一列の貧民は、果報
拙
(
つたな
)
くして御扶持を頂くことを得ざりき。
渠等
(
かれら
)
は青山の
僻地
(
へきち
)
なる
権田原
(
ごんだわら
)
にて
放鳥
(
はなしどり
)
となりぬ。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
古代印度語がこの世紀に少くも行政用としては遥々この中央アジアの
僻地
(
へきち
)
まで侵入していたのである。翌日スタインは次の収穫を期して、廃墟の南側の数房の発掘にとりかかった。
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
中国の
僻地
(
へきち
)
にいるかなしさには、黒田官兵衛も
疾
(
と
)
く噂は聞いていたが、およそのことを想像して、忘れるともなく忘れていた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
風波の
恐怖
(
おそれ
)
といってはほとんどありません——そのかわり、山の麓の隅の隅が、山扁の
嵎
(
ぐう
)
といった
僻地
(
へきち
)
で……以前は、里からではようやく
木樵
(
きこり
)
が通いますくらい
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その時はすぐ読んでみて、たいへん面白かったのであるが、それなりに忘れてしまっていた。それが二十年の後に、敗戦後の北海道の
僻地
(
へきち
)
で、わずかな疎開荷物の中から、ひょっくり現れたのである。
イグアノドンの唄:――大人のための童話――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
僻地
(
へきち
)
山間の悪戦を続けたこの四十日ばかりの間に、秀吉以下、部将たちの顔も、真っ黒に
陽焦
(
ひや
)
けしていた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一体こうした
僻地
(
へきち
)
で、これが源氏の
畠
(
はたけ
)
でなければ、さしずめ平家の
落人
(
おちゅうど
)
が隠れようという処なんで、毎度
怪
(
あやし
)
い事を聞きます。この道が開けません、つい以前の事ですが。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
また信長自身の胸にも、ふたたび
昔日
(
せきじつ
)
の寵遇はわが主人にないばかりか、明智家の領地までを、他の
僻地
(
へきち
)
へ
移封
(
いほう
)
させるお心がないとも断じきれないものがある。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この山間
僻地
(
へきち
)
の勤務へ、
懲戒
(
ちょうかい
)
という意味で、役付きを廻してよこしたのだという、厄介な男であった。
銀河まつり
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
陝西
(
せんせい
)
の北部といえば、まだ未開の
苗族
(
びょうぞく
)
さえ住んでいる。人文に遠い
僻地
(
へきち
)
であることはいうまでもない。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、三成どの、主人に不足はないが、
御辺
(
ごへん
)
と拙者とでは、身を置く地の理において相違がある。御辺は、中央の地に働き、拙者は北国の
僻地
(
へきち
)
を出ることはない。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
麾下
(
きか
)
の越後新田党といい、
僻地
(
へきち
)
の東国武士などは、その大半以上が、都を見るのも初めてだった。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遠い
僻地
(
へきち
)
でありながら、常に都の風聞とか中央の政情などにも、関心を持っている者が多かった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
当時、宋朝の文化は、帝室や都府の中心では、はやすばらしい発達途上を示してもいたが、未開大陸の
僻地
(
へきち
)
では人肉
嗜食
(
ししょく
)
の
蛮風
(
ばんぷう
)
などがなお一方にはのこっていたらしい。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「こちらから上総へ出向こうではないか。こんな
僻地
(
へきち
)
にいては、馳せ参ずる者どもも不便だ」
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こんな
僻地
(
へきち
)
の小城に似げなく、
搦手曲輪
(
からめてぐるわ
)
の一棟には、たくさんな火薬が貯えられてあった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……だから、貴公が、北国の
僻地
(
へきち
)
に生れたという
嘆
(
たん
)
も、何も
嘆
(
なげ
)
くにはあたらない。自分は一生、北辺の一隅から動くまいと思っても、天下がうごく、時雲は案外、
迅
(
はや
)
いものです
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僻
漢検準1級
部首:⼈
15画
地
常用漢字
小2
部首:⼟
6画
“僻地”で始まる語句
僻地窮境