“仏(ぶつ)” の例文
旧字:佛
地点は、森武蔵勢(ぜい)の拠(よ)っている岐阜ヶ嶽の下——仏(ぶつ)ヶ根(ね)池(いけ)のなぎさである。馬に水を飼い、馬の脚を、水に浸(つ)けて冷やしているのだ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さあ、念仏は何にしべいか。南(な)ァまァ陀(だ)ァ仏(ぶつ)にするか。ジンバラハラバイタァウンケンソバギャアノベイロシャノにするか」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
解脱(げだつ)〔仏(ぶつ)〕母(ぼ)の坂 というのでその解脱〔仏〕母の坂を登って行くと右側にノルサン(善財童子(ぜんざいどうじ)の住んで居る峰という意味)
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
樹島は静(しずか)に土間へ入って、——あとで聞いた預りものだという仏(ぶつ)、菩薩(ぼさつ)の種々相を礼しつつ、「ただ試みに承りたい。大(おおき)なこのくらいの像(すがた)を一体は。」
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蓋(けだ)し明道(めいどう)、伊川(いせん)、晦庵(かいあん)の仏(ぶつ)を排する、皆雄論博議あるにあらず、卒然の言、偶発の語多し、而して広く仏典を読まざるも、亦其の免れざるところなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
前に申しました「仏(ぶつ)とは何ぞや」「仏とはかわいた馬糞(ばふん)である。」雲門(うんもん)の「仏とは麻三斤(ぎん)である」などと申しますのも結局そうでありまして、雲が風に吹かれて空を流れる。
生活と一枚の宗教 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)、南無阿弥陀仏、南無(なむ)……阿弥陀(あみだ)……南無阿弥(なむあみ)……陀(だ)……仏(ぶつ)、南無(なむ)……」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
黙(だま)つて人の云(い)ふことを聞け、醋吸(すすひ)の三聖(せい)は結構(けつこう)でございます、なれども些(ち)と御祝儀(ごしゆうぎ)の席には向きませんかと存(ぞん)じます、孔子(こうし)に老子(らうし)、釈迦(しやか)は仏(ぶつ)だからお祝(いは)ひの席には掛(か)けられませんと
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでも彼等の夢に見える、大日如来の姿の中(うち)には、印度仏(ぶつ)の面影(おもかげ)よりも、大日孁貴が窺(うかが)われはしないでしょうか? 私(わたし)は親鸞(しんらん)や日蓮(にちれん)と一しょに、沙羅双樹(さらそうじゅ)の花の陰も歩いています。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかも澄ましたものだ。いかなるこれ仏(ぶつ)と問われて、庭前(ていぜん)の柏樹子(はくじゅし)と答えた僧があるよしだが、もし同様の問に接した場合には、余は一も二もなく、月下(げっか)の覇王樹(はおうじゅ)と応(こた)えるであろう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
俗伝にはかの時仏(ぶつ)竜王が己れを蓋(おお)いくれたを懌(よろこ)び、礼に何を遣ろうかと問うと、われら竜族は常に金翅鳥(こんじちょう)に食わるるから、以後食われぬようにと答え、仏すなわち彼の背に印を付けたので
「麤(あら)く斫(き)られたる石にも神の定めたる運あり。」とは沙翁の悟道なり。静かに物象を観ずれば、物として定運なきにあらず。誰か恨むべき神を知りそめたる。誰か喞(かこ)つべき仏(ぶつ)を識りそめたる。
山庵雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
俚諺(りげん)にいわく、「門前の小僧習わぬ経を読む」と。けだし寺院のかたわらに遊戯する小童輩は、自然に仏法に慣れてその臭気を帯ぶるとの義ならん。すなわち仏(ぶつ)の気風に制しらるるものなり。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
伊留満喜三郎 如何なるか是れ仏(ぶつ)。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
三世(さんぜ)の仏(ぶつ)皆座にあれば寒からず
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「南(な)ア無(む)ウ阿(あ)ア弥(み)イ陀(だ)ア仏(ぶつ)ウ」
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「南(な) 無(む) 阿(あ) 弥(み) 陀(だ) 仏(ぶつ)」
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
「つば競(ぜ)りの御決戦をお覚悟ならば、ここよりは、あれなる前山、仏(ぶつ)ヶ根(ね)山(やま)の方が、いちだんとよい、御旗場所かとおもわれます」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なお行くこと二里余にしてチベットの北原においては最も名高いタズン(七つの毛という。その意味は七仏(ぶつ)の毛をその寺内に埋めてある故なりという)
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
又其の儒を棄て仏(ぶつ)に入って今の身になってはいるものの、陰陽道の如何なるものかの大凡(おおよそ)は知っているのである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「——鱧(はも)あみだ仏(ぶつ)、はも仏と唱うれば、鮒(ふな)らく世界に生れ、鯒(こち)へ鯒へと請(しょう)ぜられ……仏と雑魚(ざこ)して居べし。されば……干鯛(ひだい)貝らいし、真経には、蛸(たこ)とくあのく鱈(たら)——」
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
附近に寺があるので、時々は哀しい南無阿弥陀(なむあみだ)ァ仏(ぶつ)の音頭念仏に導かれて葬式が通る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
のち人蟒老いて死せんとする時、仏(ぶつ)、舎利弗(しゃりほつ)して往き勧めて得脱(とくだつ)せしむ。
祖(そ)来(きた)る時は祖を殺しても鳴らし、仏(ぶつ)来(きた)る時は仏を殺しても鳴らした。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
卯(う)の花や仏(ぶつ)も願はず隠れ住む
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
ひとつには女性の侍(かしず)きが和(なご)ませて来た効でもあるにちがいないが、朝暮に仏(ぶつ)を拝し、歌を詠(よ)み出され、とにかくお変りの態(てい)はあらそえない。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新派開祖の建立堂(こんりゅうどう) そのネータン駅にチベットで一番ありがたいと言われて居る解脱(げだつ)〔仏(ぶつ)〕母(ぼ)の堂がある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「仏(ぶつ)を御学び遊ばして御道徳抜群にいらせられますれば、至極よろしゅうござりましょう。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吒吉尼天は魔だ、仏(ぶつ)だ、魔でない、仏(ほとけ)でない。吒吉尼天だ。人心を噉尽(かんじん)するものだ。心垢(しんく)を噉尽するものだ。政元はどういう修法をしたか、どういう境地にいたか、更に分らぬ。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一体禅(ぜん)とか仏(ぶつ)とか云って騒ぎ立てる連中ほどあやしいのはないぜ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「南無阿弥陀(なむあみだ)ァ仏(ぶつ)」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
毘舎離国の城へ参って、仏(ぶつ)は、食を乞われました。城中には、一王子があって、名を勇軍(ゆうぐん)と呼ぶ者です。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
逃虚子は仏(ぶつ)を奉じて、而(しか)も順世(じゅんせい)外道(げどう)の如く、遜志斎は儒を尊んで、而(しか)も浄行者(じょうぎょうしゃ)の如し。嗚呼(ああ)、何ぞ其の奇なるや。然(しか)も遜志斎も飲を解せざるにあらず。其の上巳(じょうし)南楼(なんろう)に登るの詩に曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私(わたくし)どもとても、堅く申せば思想界は大維新(だいいしん)の際(さい)で、中には神を見た、まのあたり仏(ぶつ)に接した、あるいは自(みず)から救世主であるなどと言う、当時の熊本の神風連(じんぷうれん)の如き、一揆(いっき)の起りましたような事も
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
酷烈ならずば汝等疾く死ね、暴(あ)れよ進めよ、無法に住して放逸無慚無理無体に暴(あ)れ立て暴れ立て進め進め、神とも戦へ仏(ぶつ)をも擲け、道理を壊(やぶ)つて壊りすてなば天下は我等がものなるぞと
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
仏眼金輪(ぶつげんこんりん)五壇ノ法とか、一字(じ)五反(はん)孔雀経(くじゃくきょう)とか、七仏(ぶつ)薬師熾盛光(やくししきせいこう)、五大虚空蔵(こくうぞう)、六観音、八字文殊、金剛童子ノ法などという、およそ聞くだに凄まじい咒法(じゅほう)ばかりで、読経の声はシワ嗄(が)れ
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金扇(きんせん)の馬簾(ばれん)が、ゆらりゆらり、そこから少し山蔭へかくされた頃——仏(ぶつ)ヶ根(ね)の山腹から裾にかけて、井伊兵部直政(いいひょうぶなおまさ)の赤一色の旗さし物や人数が、岩間岩間を山つつじの花が染めるように
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(中略)三先生既に斯文(しぶん)の宗主(そうしゅ)、後学の師範たり、仏老(ぶつろう)を攘斥(じょうせき)すというと雖も、必ず当(まさ)に理に拠(よ)って至公無私なるべし、即(すなわ)ち人心服せん。三先生多く仏書を探(さぐ)らざるに因って仏(ぶつ)の底蘊(ていおん)を知らず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
阿難の答えに、仏(ぶつ)はまだ、不満であったのでしょうか。こう仰せられたのです。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やはりただ、なむあみだ仏(ぶつ)——と、そう仰っしゃればようござんす」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)