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にぬり
ふりがな文庫
“
丹塗
(
にぬり
)” の例文
そこは十
帖
(
じょう
)
ほどの平座敷で、上段はなく、三方に
丹塗
(
にぬり
)
の
勾欄
(
こうらん
)
のある廊をまわし、坐ったままひろい展望をたのしむことができた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
檐
(
のき
)
に
風鐸
(
ふうたく
)
をつるし、
丹塗
(
にぬり
)
の唐格子の
嵌
(
はま
)
った丸窓があり、舗石の道が丸く
刳
(
く
)
ッた石門の中へずッと続いている。源内先生は
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「何度やつても同じ事だ。それより面倒でも一走り、おれの矢を探しに行つてくれい。あれは高天原の国から来た、おれの大事な
丹塗
(
にぬり
)
の矢だ。」
老いたる素戔嗚尊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もう
一
(
ひと
)
つ
爰
(
ここ
)
の
景色
(
けしき
)
の
中
(
なか
)
で
特
(
とく
)
に
私
(
わたくし
)
の
眼
(
め
)
を
惹
(
ひ
)
いたものは、
向
(
むか
)
って
右手
(
みぎて
)
の
山
(
やま
)
の
中腹
(
ちゅうふく
)
に、
青葉
(
おおば
)
がくれにちらちら
見
(
み
)
える
一
(
ひと
)
つの
丹塗
(
にぬり
)
のお
宮
(
みや
)
でございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
みるみる品物と人々の位置が定まると、手ぶらと思った先頭の老人はいつのまにか二個の
丹塗
(
にぬり
)
の大椀を手にしており、一つを膝そばに置き一つを捧げて私に差す。
加波山
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
▼ もっと見る
株立ちの
矮
(
ひく
)
い桜は落葉し尽して、からんとした中に、
山門
(
さんもん
)
の黄が勝った
丹塗
(
にぬり
)
と、八分の紅を染めた
楓
(
もみじ
)
とが、何とも云えぬ
趣
(
おもむき
)
をなして居る。余は御室が大好きである。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
葉桜の緑と、
丹塗
(
にぬり
)
の塔との配合が、色彩の上からはっきり頭に残るというだけではない。樹木の緑と建築物の赤との対照は、日本においてはむしろ平凡な景色に属する。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
そして、破れ果てた窓口の
蔀
(
しとみ
)
へ向って、吠えては飛びかかり、躍っては転げ落ちたりして、そのあたりの
丹塗
(
にぬり
)
の柱や壁ぶちを、めちゃめちゃに爪で掻きたてているではないか。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
第一に浅草といひさへすれば僕の目の前に現はれるのは大きな
丹塗
(
にぬり
)
の
伽藍
(
がらん
)
である。或はあの伽藍を中心にした五重塔や仁王門である。これは今度の震災にも幸と無事に焼残つた。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
汚れた敷布の上に
丹塗
(
にぬり
)
の枕が二つ並んだままにある。それは仲のよい菊龍と富江の「共同の」床であった。彼女等は大抵一緒になることはなかったので一つの床を二人で使っていた。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
燈
(
ともしび
)
一つに
附着合
(
くッつきあ
)
って、スッと鳥居を
潜
(
くぐ
)
って来たのは、三人
斉
(
ひと
)
しく山伏なり。
白衣
(
びゃくえ
)
に白布の
顱巻
(
はちまき
)
したが、
面
(
おもて
)
こそは
異形
(
いぎょう
)
なれ。
丹塗
(
にぬり
)
の天狗に、
緑青色
(
ろくしょういろ
)
の
般若
(
はんにゃ
)
と、
面
(
つら
)
白く鼻の黄なる狐である。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それ神の御子といふ
所以
(
ゆゑ
)
は、三島の
湟咋
(
みぞくひ
)
が女、名は
勢夜陀多良
(
せやだたら
)
比賣、それ
容姿麗
(
かほよ
)
かりければ、美和の大物主の神
一
、見
感
(
め
)
でて、その
美人
(
をとめ
)
の
大便
(
くそ
)
まる時に、
丹塗
(
にぬり
)
矢
二
になりて、その大便まる溝より
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
丹塗
(
にぬり
)
の
高欄
(
こうらん
)
美々
(
びび
)
しく、見上げるばかりの五重の塔が聳えている。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
丹塗
(
にぬり
)
のポクリねもかろく
どんたく:絵入り小唄集
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
『お
爺
(
じい
)
さま、あそこに
大
(
たい
)
そう
美
(
うつく
)
しい、
丹塗
(
にぬり
)
のお
宮
(
みや
)
が
見
(
み
)
えますが、あれはどなた
様
(
さま
)
をお
祀
(
まつ
)
りしてあるのでございますか。』
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
廣い門の下には、この男の
外
(
ほか
)
に誰もゐない。唯、所々
丹塗
(
にぬり
)
の剥げた、大きな
圓柱
(
まるばしら
)
に、
蟋蟀
(
きり/″\す
)
が一匹とまつてゐる。
羅生門
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
御免
(
ごめん
)
。」と
衝
(
つ
)
と
膝
(
ひざ
)
を
進
(
すゝ
)
めて、
畫
(
ゑ
)
の
面
(
おもて
)
にひたと
向
(
むか
)
うて、
熟
(
じつ
)
と
見
(
み
)
るや、
眞晝
(
まひる
)
の
柳
(
やなぎ
)
に
風
(
かぜ
)
も
無
(
な
)
く、
寂
(
しん
)
として
眠
(
ねむ
)
れる
如
(
ごと
)
き、
丹塗
(
にぬり
)
の
門
(
もん
)
の
傍
(
かたはら
)
なる、
其
(
そ
)
の
柳
(
やなぎ
)
の
下
(
もと
)
の
潛
(
くゞ
)
り
門
(
もん
)
、
絹地
(
きぬぢ
)
を
拔
(
ぬ
)
けて、するりと
開
(
あ
)
くと
画の裡
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
遠くからでも明らかに皇居の
大内裏
(
だいだいり
)
十二門の一劃とわかる官衙殿堂が、
孔雀色
(
くじゃくいろ
)
の
甍
(
いらか
)
や
丹塗
(
にぬり
)
の門廊とおぼしき
耀
(
かがや
)
きを放ッて、一大
聚落
(
じゅらく
)
をなしており、
朱雀
(
すじゃく
)
、大宮などを始め、一条から九条までの
大路
(
おおじ
)
や
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
丹塗
(
にぬり
)
の
欄
(
らん
)
の
長廊
(
わたどの
)
に
桜さく島:春のかはたれ
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
巾
(
はば
)
の
広
(
ひろ
)
い
石段
(
いしだん
)
、
丹塗
(
にぬり
)
の
楼門
(
ろうもん
)
、
群
(
むら
)
がる
鳩
(
はと
)
の
群
(
むれ
)
、それからあの
大
(
おお
)
きな
瘤
(
こぶ
)
だらけの
銀杏
(
いちょう
)
の
老木
(
ろうぼく
)
……チラとこちらから
覗
(
のぞ
)
いた
光景
(
ありさま
)
は、
昔
(
むかし
)
とさしたる
相違
(
そうい
)
もないように
見受
(
みう
)
けられました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
丹塗
(
にぬり
)
の柱、
花狭間
(
はなはざま
)
、
梁
(
うつばり
)
の波の
紺青
(
こんじょう
)
も、
金色
(
こんじき
)
の
竜
(
りゅう
)
も色さみしく、昼の月、
茅
(
かや
)
を
漏
(
も
)
りて、
唐戸
(
からど
)
に
蝶
(
ちょう
)
の影さす
光景
(
ありさま
)
、古き
土佐絵
(
とさえ
)
の画面に似て、しかも名工の
筆意
(
ひつい
)
に
合
(
かな
)
い、
眩
(
まば
)
ゆからぬが
奥床
(
おくゆか
)
しゅう
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ただ、所々
丹塗
(
にぬり
)
の
剥
(
は
)
げた、大きな
円柱
(
まるばしら
)
に、
蟋蟀
(
きりぎりす
)
が一匹とまっている。羅生門が、
朱雀大路
(
すざくおおじ
)
にある以上は、この男のほかにも、雨やみをする
市女笠
(
いちめがさ
)
や
揉烏帽子
(
もみえぼし
)
が、もう二三人はありそうなものである。
羅生門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
寿福寺の
丹塗
(
にぬり
)
の
伽藍
(
がらん
)
が、木々の彼方に
紅葉
(
もみじ
)
のように見えた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
厳
(
いつく
)
しき門の
礎
(
いしずえ
)
は、霊ある大魚の、
左右
(
さう
)
に浪を立てて白く、
御堂
(
みどう
)
を護るのを、
詣
(
もうず
)
るものの、浮足に
行潜
(
ゆきくぐ
)
ると、玉敷く床の奥深く、
千条
(
ちすじ
)
の雪の
簾
(
すだれ
)
のあなたに、
丹塗
(
にぬり
)
の唐戸は、
諸扉
(
もろとびら
)
両方に細めに
展
(
ひら
)
け
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
丹塗
(
にぬり
)
の柱にとまっていた
蟋蟀
(
きりぎりす
)
も、もうどこかへ行ってしまった。
羅生門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
丹塗
(
にぬり
)
の柱にとまつてゐた
蟋蟀
(
きり/″\す
)
も、もうどこかへ行つてしまつた。
羅生門
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
丹
常用漢字
中学
部首:⼂
4画
塗
常用漢字
中学
部首:⼟
13画
“丹塗”で始まる語句
丹塗矢