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ふりがな文庫
“
下手
(
へた
)” の例文
「国公、起きて見ろ、いやに荒っぽく門を叩く奴がある、こちとらの門なんぞは、
下手
(
へた
)
に叩かれたんではひっくり返ってしまわあな」
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「いよ/\以つてお前とは附き合ひたくないよ。人の女房に惚れて、
下手
(
へた
)
な碁などを打ちに通ふとは、何といふ間拔な
深草
(
ふかくさ
)
の少將だ」
銭形平次捕物控:230 艶妻伝
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
下手
(
へた
)
な論文を書いて見ていただくと、実に綿密に英語の訂正はもちろん、内容の枝葉の点に至るまで徹底的に修正されるのであった。
田丸先生の追憶
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
賄は七八人以下の
団体稼
(
だんたいかせ
)
ぎの時分には廻りコックにて、これにも初めは
極
(
ひど
)
く閉口したが今では仲々
下手
(
へた
)
なおさんどんなどはだしだよ。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
見物の人々は、彼の
下手
(
へた
)
カスの芸を見ないで、実物の原田重吉が、実物の自分に扮して芝居をし、日清戦争の幕に出るのを面白がった。
日清戦争異聞:(原田重吉の夢)
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
▼ もっと見る
一週間にいちどずつ、近所の中泉花仙とかいう、もう六十歳近い
下手
(
へた
)
くそな老画伯のアトリエに通わせた。さあ、それから
褒
(
ほ
)
めた。
水仙
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「
象
(
ぞう
)
は、
下手
(
へた
)
ですから、なにか、ほかのものを
造
(
つく
)
ってあげましょう。」といいました。けれど、
子供
(
こども
)
たちは、もう、
信
(
しん
)
じませんでした。
夏の晩方あった話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ところが私は毎日その母を訪れない振りをして極めて
下手
(
へた
)
に母の冷たさを誤魔化しているものだから、やがて辰夫は其れを見破り
母
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「おおニーナ。いまごろまで、なにをぐずぐずしていたんだ。
下手
(
へた
)
なことをやったんじゃないかと、わしは気が気じゃなかったぞ」
爆薬の花籠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
何やら、戦場へ向うようなここちもせず、船中で
下手
(
へた
)
な歌など作ってまいりましたが……いずれ
戦
(
いくさ
)
の終ったあとで御披露に及びましょう
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
明智はクチャクチャになった広告ビラを、
丁寧
(
ていねい
)
にひろげてそれを確かめた。そこには
下手
(
へた
)
な文句で次のような文章が印刷してあるのだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私の髪結は
下手
(
へた
)
ですから今朝結ったのをむしりこわしてまた外のに結わせましたなんぞと一日に二度も髪を結って騒いでいる人もある。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
いえ、別に前置きのつもりぢやなかつたんでございますけど……話が、から
下手
(
へた
)
でございましてね……。余計なことばかり申上げました。
顔
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
惡
(
わる
)
く
言
(
い
)
へば
傲慢
(
がうまん
)
な、
下手
(
へた
)
が
畫
(
ゑ
)
に
描
(
か
)
いた、
奧州
(
あうしう
)
めぐりの
水戸
(
みと
)
の
黄門
(
くわうもん
)
と
言
(
い
)
つた、
鼻
(
はな
)
の
隆
(
たか
)
い、
髯
(
ひげ
)
の
白
(
しろ
)
い、
早
(
は
)
や七十ばかりの
老人
(
らうじん
)
でした。
雪霊記事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
無筆のお妾は
瓦斯
(
ガス
)
ストーヴも、エプロンも、
西洋綴
(
せいようとじ
)
の料理案内という書物も、
凡
(
すべ
)
て
下手
(
へた
)
の
道具立
(
どうぐだて
)
なくして、巧に
甘
(
うま
)
いものを作る。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そのときKは登り口に小さな札を見つけたので、近寄ってゆくと、子供じみた、
下手
(
へた
)
な文字で、「裁判所事務局昇降口」と書いてあった。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
生中
(
なまなか
)
いぢくらずに置けば美しい火の色
丈
(
だけ
)
でも見られたものを、
下手
(
へた
)
に詩に
為
(
し
)
た
許
(
ばかり
)
に
本
(
もと
)
の面白い感情が失はれたのと同じ様な失望を感じた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
しかしこれほど父を自由にした姉の口先は、御常に比べると遥かに
下手
(
へた
)
であった。
真
(
まこと
)
しやかという点において遠く及ばなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「こいつは自分で飲むつもりだったが、まあそっちへ
進
(
あ
)
げる。
下手
(
へた
)
な薬なぞよりは
反
(
かえ
)
ってこの方が好い。毎日すこしずつお上り」
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
どの色も美しかったが、とりわけて藍と洋紅とは
喫驚
(
びっくり
)
するほど美しいものでした。ジムは僕より
身長
(
せい
)
が高いくせに、絵はずっと
下手
(
へた
)
でした。
一房の葡萄
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「それは、なアに」と、義雄は心配させない樣に答へて、「
下手
(
へた
)
ですが、大丈夫です、子供の時に落ちた經驗も二三度ついてゐますから。」
泡鳴五部作:04 断橋
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
「しかし切っかけを
下手
(
へた
)
にやると、此奴、避難したと思われる。
先方
(
むこう
)
は洒落を言いたい一心だ。その辺を要領好くやるんだね」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
いく度か
下手
(
へた
)
な画や写真に表われた急斜の左は、雪の岡でしきられて、村から街道を東に行けば、その峠をこして、グロース・シャイデック
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
あれが妖怪狐狸の類ならば、こんな
下手
(
へた
)
な化け方はしないでしょうが、そこが人間の情けなさから頗る深酷に
手古摺
(
てこず
)
っているのでありました。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
もう決して音楽をやるまい、やるにしてもできるだけ
下手
(
へた
)
にやってやろう、そして父を落胆さしてやろう、と彼は決心した。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
このおさらいは
下手
(
へた
)
な者が先に語る。多少上手な者が
後
(
あと
)
で語るのが通例である。そのため聴衆は先に語る人に悪口をいう。
幕末維新懐古談:01 私の父祖のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
種吉は、娘の頼みを
撥
(
は
)
ねつけるというわけではないが、別れる気の先方へ行って
下手
(
へた
)
に顔見られたら、どんな目で見られるかも知れぬと断った。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
政宗が
若
(
も
)
しも途中で
下手
(
へた
)
に何事か起した日には、
吾
(
わ
)
が領分では有るし、勝手は知ったり、大軍では有り、無論政宗に取って有利の歩合は多いが
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
お
婆
(
ばあ
)
さんになってもそうですが、若い娘さんなんか特に目立ちます。しかしおなじ
紅白粉
(
べにおしろい
)
をつかっても、
上手
(
じょうず
)
と
下手
(
へた
)
とでは、たいへん違います。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
けれどもたいへん
下手
(
へた
)
ですから、
見物人
(
けんぶつにん
)
がさっぱりありませんで、
非常
(
ひじょう
)
に
困
(
こま
)
りました。「甚兵衛の人形は
馬鹿
(
ばか
)
人形」と町の人々はいっていました。
人形使い
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「これからの
道行
(
みちゆき
)
を
下手
(
へた
)
に長々と講釈していると、却って御退屈でしょうから、もうここらで種明かしをしましょうよ」
半七捕物帳:21 蝶合戦
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
すなわちこのほうの話は
上手
(
じょうず
)
下手
(
へた
)
というかわりに、努力と勤勉とをすすめる教訓に、もちいられていたらしいのである。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ぼくは
農
(
のう
)
学校の三年生になったときから今日まで三年の間のぼくの
日誌
(
にっし
)
を
公開
(
こうかい
)
する。どうせぼくは字も
文章
(
ぶんしょう
)
も
下手
(
へた
)
だ。
或る農学生の日誌
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
自分で
全
(
ちゃっ
)
かり佐々木はうまいものだ! にしてしまって、
下手
(
へた
)
の横好きという
俗諺
(
ぞくげん
)
の通りに、私は到頭、文章家として立とうと決心したのであった。
骨を削りつつ歩む:――文壇苦行記――
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
雁
(
がん
)
であった。——空飛ぶ雁をゴミのようだったと私が言うのを、読者はあるいは私の
下手
(
へた
)
な作り話、大げさな言い方と笑いはせぬかと、私は恐れる。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
道場での稽古ぶりもずっと穏やかになり、
上手
(
じょうず
)
な者よりも
下手
(
へた
)
な者のほうに時間をかけ、手を取って教えるというふうな、入念なやりかたに変った。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ジャネットは思ったよりも大がらで、たくましくて日に
焦
(
や
)
けて男の様な体格をして居るのに
吃驚
(
びっくり
)
しました。ジャネットは英仏語がどちらも
下手
(
へた
)
です。
母と娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
『
下手
(
へた
)
な画工が
描
(
か
)
きそうな景色というやつに僕は時々出あうが、その実、実際の景色はなかなかいいんだけれども。』
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
それを
下手
(
へた
)
に手に取ろうとして失敗をすることなんぞは、避けたいと思っている。それでぐずぐずしていて、君にまで意気地がないと云われるのだ。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
下手
(
へた
)
であるのを
洒落
(
しゃ
)
れた書き方で紛らしてある字の品の悪いものだった。
灯
(
ひ
)
の前にいた夜の顔も
連想
(
れんそう
)
されるのである。
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
今のも
下手
(
へた
)
だとは言わないが、ほんとうに仮装の巧みな人物の仮装というものを、ハルトアンさん、あなたにも見せて上げたいようじゃなアという。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
下手
(
へた
)
に相手になると、いくらでも調子がつくばかりですよ。こう言う風に猛っている時は相手になる方が負けです。
華々しき一族
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
正月酒にへべれけに酔った彼は、酔ってろれつのまわらぬ
下手
(
へた
)
な口上で、文吉と元子の前にひれ伏したのであった。
日めくり
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
ただし
下手
(
へた
)
におだてるとツムジを曲げる春琴であるから必ずしも周囲の仕向けに乗せられたのではないかも知れぬさすがに彼女もこの時に至って佐助を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
いわれるようですが、
下手
(
へた
)
に刺激して、脳症でも起すとことですから、落着かれたら電話で連絡します。それまでは、どなたもおいでにならないように
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
もちろんあの
埴輪
(
はにわ
)
は、お
葬式
(
そうしき
)
の
時
(
とき
)
に
作
(
つく
)
つて
墓場
(
はかば
)
に
立
(
た
)
てたもので、
非常
(
ひじよう
)
に
骨
(
ほね
)
ををつて
作
(
つく
)
つたものではありませんが、その
粗末
(
そまつ
)
な
下手
(
へた
)
な
作
(
つく
)
り
方
(
かた
)
のうちにも
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
おかあはん、私は口が
下手
(
へた
)
で、よういわんさかい、あんたから、おいでやしたら、ようお礼いうてえやちゅうて。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
ドストエフスキーの文章はカラ
下手
(
へた
)
くそで
全
(
まる
)
で成っていないといってツルゲーネフの次位に置き、文学上の批判がともすれば文章の好悪に
囚
(
とら
)
われていた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
ちよつとこの題目ばかり見れば余り懸隔しをる故、そを置き違へるとは受取れぬ様なれど、実際俳句をものする上に
上手
(
じょうず
)
下手
(
へた
)
を問はず絶えずある事なり。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
これが角乗りといって川並得意の芸、浮いている代物だから
下手
(
へた
)
をすると仰向けに自分がざんぶと水の中、そこでこの角乗りは平素練習を怠らなかった。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
“下手”の意味
《名詞》
下 手(げしゅ)
手を下すこと、手をつけること、手ずからなすこと。
(出典:Wiktionary)
下
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
“下手”で始まる語句
下手人
下手糞
下手物
下手碁
下手廻
下手弓
下手者
下手謡
下手將棋
下手象戯