“いい”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
25.4%
唯々16.0%
易々9.8%
7.5%
5.9%
5.5%
5.5%
4.6%
2.9%
井伊2.9%
怡々2.9%
2.0%
1.0%
委蛇1.0%
逶迤1.0%
0.7%
依々0.7%
0.7%
善良0.7%
0.7%
伊井0.3%
依倚0.3%
唯唯0.3%
好個0.3%
射出0.3%
所謂0.3%
漪々0.3%
0.3%
註文0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
「自己の自由をげて公同の自由を伸ばす」とのいいにして、貧富智愚の差等にかかわらず人民みな平等に自由を享有することを指す。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
身は一介の与力ではあったが、自ずと備わる将帥の器、貝十郎の命のままに、城方の武士ども唯々いいとして従い、粛々として動き出した。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さるを、一戦もせず、御所の地たる京都を易々いいとして敵に渡すからには、あれみよ光秀こそは、何を奉じて天下に立たんつもりぞ。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
斗満から十勝の中川郡本別村ほんべつむらの役場までの十余里はまだいいとして、釧路の白糠しらぬか村役場までは足寄を経て近道の山越えしても中途露宿して二十五里
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「へい、……、」ちと変ったいいぐさをこの時はじめて気にしたらしく、杉というのは、そのままじっとして手を控えた。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いい塩梅あんばいにお天気が続きますね。しかし来月になったら、急にお寒くなりましょう。来年のお正月も又雪でしょうかねえ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「しなてる片岡山に、いいこやせる、その旅人たびとあはれ。親なしになれなりけめや、さすたけの君はやなき、飯に飢て臥せる、その旅人あはれ」
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
孫の隼人を初め江原もことの不思議に驚いて、この上は唯一図いちずに嘘だとか馬鹿馬鹿しいとかいい消して了う訳には往かぬ。
お住の霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いいえいけない、折角せっかく御気分がくなっていらっしゃるのに、こんな事をお聞かせするなんて法はないわ。
海浜荘の殺人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
当時幕府に勢力のある彦根ひこねの藩主(井伊いい掃部頭かもんのかみ)も、久しぶりの帰国と見え、須原宿すはらじゅく泊まり、妻籠宿つまごしゅく昼食ちゅうじき、馬籠はお小休こやすみで、木曾路を通った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
不孝の子は、ただ慈父これをあわれみ、不弟の弟は、ただ友兄これをゆるす。定省ていせい怡々いい膝下しっかの歓をつくあたわず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
傳「どうも感心でげすね、姉様ねえさんを大事になすって、お中がいいって実に姉弟でう睦ましくうちはねえてえ村中の評判でございますよ、へえ御免なさいよ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いいつけられて内儀は恐々こわごわ手をいて導けば、怪しき婦人は逆らわず、素直に夫婦に従いて、さもその情を謝するがごとく秋波斜めに泰助を見返り見返り、蹌踉よろよろとして出行きぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
画は青緑せいりょく設色せっしょくです。たにの水が委蛇いいと流れたところに、村落や小橋しょうきょうが散在している、——その上に起した主峯の腹には、ゆうゆうとした秋の雲が、蛤粉ごふんの濃淡を重ねています。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一説に遠く是を望めば蜿蜒裊娜えんえんじょうだとして百蛇の逶迤いいするがごとし因て名づくといふ猶尋ぬべし
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「アアいいこと」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しかも成るべく気品を見せながら、依々いいたり恋々たる風情で袂をわかつ。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
一体いったい小児こどもの時から、三十年近くのあいだ——ふと思い寄らず、二人のおんなの姿が、私の身の周囲へあらわれて、目に遮る時と云うと、いいにしろ、悪いにしろ、それが境遇なり、生活なりの一転機となるのが
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
性質ひと善良いいのは魯鈍のろまだ」。と促急込せきこんでひとり問答をしていたが
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
皆様みなさん、これじゃたまらん。ちと甲板かんぱんへおでなさい。涼しくッてどんなに心地こころもちいいか知れん。」
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こう見えたってはばかりながら役者だ。伊井いい一座の新俳優だ。明後日あさってからまた新富町しんとみちょうよ。出揃でそろったら見に来給え。いいかい。楽屋口がくやぐちへ廻って、玉水たまみずを呼んでくれっていいたまえ。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
西応房の猟師は女のことばを疑わなかった。彼は唯唯いいとして其の命に従った。すると
女仙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
元来もともと、木ッ端細工で、好個いい焚付けになる上に、屋根が生子板で、火が上へ抜けぬので、横へ横へと匍うからだろう。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
と、櫓の狭間はざまから、二百人あまりの射手の射る矢が、拳下がりの狙いうちに、しののように射出いいだされた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
壁とは目をえぎり、視覚を覆うものの所謂いいである。それを透して見んとする意志がかぎりなく働く。不自由と、必然を透して自由を得んとする努力、そこに芸術のもつ執拗性がある。
(新字新仮名) / 中井正一(著)
するとは如何に、眼の前は茫々漠々ぼうぼうばくばくとして何一ツ見えず、イヤ何一ツ見えないのでは無い、唯是れ漫々洋々として、大河だいがの如く大湖の如く大海だいかいの如く、漪々いいたり瀲々れんれんたり、汪々おうおうたり滔々とうとうたり
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いい加減に述べて、引き出しをいて、たちまち彼奴かやつの眼前へ打ちかえすと、無数の小銭が八方へ転がり走る。
挨拶の仕様がなかったので、柳吉は天候のことなど吃り勝ちに言うた。種吉は氷水を註文いいに行った。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)