いい)” の例文
ればといいこれを幕府の方に渡せば、殺さぬまでもマア嫌疑けんぎの筋があるとか取調べるかどがあるとかいっ取敢とりあえず牢には入れるだろう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
孫の隼人を初め江原もことの不思議に驚いて、この上は唯一図いちずに嘘だとか馬鹿馬鹿しいとかいい消して了う訳には往かぬ。
お住の霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鹿野武左衛門しかのぶざえもんの『鹿しか巻筆まきふで』(巻三、第三話)に、堺町さかいちょうの芝居で馬の脚になった男が贔屓ひいきの歓呼に答えて「いゝん/\といいながらぶたいうちをはねまわつた」
駒のいななき (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
せつ云、景気の句世間容易にする、もってほかの事也。大事の物也。連歌に景曲といい、いにしへの宗匠深くつつしみ一代一両句にはすぎず。景気の句初心まねよき故深くいましめり。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
男女なんにょの間変らじと一言ひとことかわせば一生変るまじきはもとよりなるを、小賢こさかしき祈誓三昧きしょうさんまい、誠少き命毛いのちげなさけは薄き墨含ませて、文句を飾り色めかす腹のうちなげかわしと昔の人のいいたるが
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「刎付けられなかったんじゃないか。すぐにいいなり次第になったんだろう。」
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それを貞之進は誠にしていつまでも此家ここに居たく、勘定といいたいのが云えずにむずついて居る間に時刻が移り、月高く屋の棟に隠れて、鳴る鐘は浅草の十一時、風に欵乃ふなうたの声も伝わらない
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
いいながら、ダク/\血の流れる足を引摺ひきずって、上総戸かずさどのもとにいざり寄り
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでも助かる道があるとおいいなら、それは嬉しく思ってそうしましょう。
「それはそれは、遅くなって御免ごめんなさい、何しろこんな所へ居なすっちゃ、身体からだるいから私が背負しょって行ってうちへ帰りましょう」といいながら、手に持っていた、薬瓶くすりびんをその岩の上に置いて
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
そもそも民選議院建設の時節は、国体の変じて君主専権より君民分権にうつるの時なり。この時や、人民は権利を得ることなれば、あるいは不承知あるまじきか、それすらいまだ屹度きっととはいいがたし。
いいさして怪老人はじっと愛之助の目を覗きこむようにしながら
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「あんた様は婆あさんがええとおいいなされたがな。」
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
船に乗組のりくんで居る人は皆若い人で、もうれが日本の訣別おわかれであるから浦賀に上陸して酒を飲もうではないかといいした者がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
が妻に対することでは有り、にやくやにいいまぎらして、拖泥たでい滞水の挨拶を以て其場を済ませて置くというようなことも仕無かったろうから、次第次第に夫婦の間は険悪になっていったであろう。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
歓楽なぞとおいいでない。この胸の中一ぱいに8870
いずれも皆驚いて、神奈川の組頭が捕まえられたと云うは何事だといいて、その翌日になってきいた所が、今の手紙の一件でう/\云う嫌疑けんぎだそうだと云う。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
闇のエレボスが父親で、よるが母親だとおいい