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ばふん
ふりがな文庫
“
馬糞
(
ばふん
)” の例文
礫が少し止むと、今度は店先へ
馬糞
(
ばふん
)
を投げ込んだり、裏の井戸へ猫の死骸を入れたり、全く手のつけやうのない惡戯が始まりました。
銭形平次捕物控:194 小便組貞女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
赤緒
(
あかお
)
の
下駄
(
げた
)
と云えば、
馬糞
(
ばふん
)
のようにチビた
奴
(
やつ
)
をはいている。だが、
雑巾
(
ぞうきん
)
をよくあててあるらしく古びた割合に木目が
透
(
す
)
きとおっていた。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
と、ふとんも
机
(
つくえ
)
も、
鎧
(
よろい
)
びつまでもここへもちこんできて、
馬糞
(
ばふん
)
の
臭
(
にお
)
いのプンプンする中に、平気で毎日毎日
寝起
(
ねお
)
きしていた。
三両清兵衛と名馬朝月
(新字新仮名)
/
安藤盛
(著)
生
(
い
)
ける
犬
(
いぬ
)
を
屠
(
ほふ
)
りて
鮮血
(
せんけつ
)
を
啜
(
すゝ
)
ること、
美
(
うつく
)
しく
咲
(
さ
)
ける
花
(
はな
)
を
蹂躙
(
じうりん
)
すること、
玲瓏
(
れいろう
)
たる
月
(
つき
)
に
向
(
むか
)
うて
馬糞
(
ばふん
)
を
擲
(
なげう
)
つことの
如
(
ごと
)
きは、
言
(
い
)
はずして
知
(
し
)
るベきのみ。
蛇くひ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
故に、氏郷はその若年時代には、柴田勝家の配下にあって、兵たちと、
馬糞
(
ばふん
)
の中の陣生活をしていたこともあるのである。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
駅の前の広場、といっても、石ころと
馬糞
(
ばふん
)
とガタ馬車二台、
淋
(
さび
)
しい広場に私と大久保とが
鞄
(
かばん
)
をさげてしょんぼり立った。
帰去来
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
折り詰めを開き見るに、
土塊
(
つちくれ
)
と
馬糞
(
ばふん
)
あるのみ。ここにおいて、老僕輩は全くこれを老狐の所為となし、自らこれにだまされたるを深く残念に思いたり
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
其の
赤児
(
あかご
)
をば
捨児
(
すてご
)
のやうに砂の上に投出してゐると、其の
辺
(
へん
)
には
痩
(
や
)
せた鶏が落ちこぼれた餌をも
𩛰
(
あさ
)
りつくして、馬の尻から
馬糞
(
ばふん
)
の落ちるのを待つてゐる。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
馬糞
(
ばふん
)
に汚れた県道筋を、一直線にとんできた自転車は、軒先にたっている鷲尾のまえで輪を描いてとまった。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
峡中の美橋、
美恵
(
みえ
)
橋が現れて来た。一名
褌
(
ふんどし
)
橋というのがそれだ。褌の節約と
馬糞
(
ばふん
)
の
拾集
(
しゅうしゅう
)
とから得た利益を積み立てて架橋したのが大正三年の洪水で流出した。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
今年の
自家
(
うち
)
の麦は、大麦も小麦も言語道断の不作だ。仔細は
斯様
(
こう
)
である。昨秋の
麦蒔
(
むぎまき
)
に
馬糞
(
ばふん
)
を
基肥
(
もとごえ
)
に使った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
凸凹
(
でこぼこ
)
の激しい、
円
(
まる
)
い石畳の間を粉のような
馬糞
(
ばふん
)
の
藁屑
(
わらくず
)
が埋めて、
襤褸
(
ぼろ
)
を着た
裸足
(
はだし
)
の子供たちが朝から晩まで往来で騒いでいる、代表的な貧民窟街景の一部である。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
そうして、
馬糞
(
ばふん
)
の重みに斜めに突き立っている
藁
(
わら
)
の端から、裸体にされた馬の背中まで
這
(
は
)
い
上
(
あが
)
った。
蠅
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「仏とはなんぞや」「
乾屎橛
(
カンシケツ
)
」かわいた
馬糞
(
ばふん
)
であると答えた禅宗の坊さんがあったはずであります。
生活と一枚の宗教
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
疵
(
きず
)
持つ足の千々岩は、今さら抗議するわけにも行かず、倒れてもつかむ
馬糞
(
ばふん
)
の
臭
(
しゅう
)
をいとわで、おめおめと練兵行軍の事に従いしが、この打撃はいたく千々岩を刺激して
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
障子に畳にお
神棚
(
かみだな
)
に漂って、小さなつむじ風であろう、往来の白い土と乾いた
馬糞
(
ばふん
)
とがおもしろいようにキリキリと舞いあがって消えるのが、格子戸ごしに眺められる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
汝
(
なんぢ
)
は空しき白日の呪ひに生きよ!——こんなふうの詩とも散文とも訳のわからない口述原稿を、
馬糞
(
ばふん
)
の多い其処の郊外の路傍に
佇
(
たゝず
)
んで読み返し、ふと気がつくと涙を呑んで
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
鮑貝
(
あわびがい
)
を
杓子
(
しゃくし
)
の様にこしらえたものを
携
(
たずさ
)
えて、街道に落ちて居る
馬糞
(
ばふん
)
拾いをして歩いたものだ。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「そう。昔はもっと小さく、幅も狭かった。あちこちに
馬糞
(
ばふん
)
が落ちているような橋だったよ」
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
しかしてまたその間各〻品格の差あるは免るべからざる事実ならずや(略)
馬糞
(
ばふん
)
を詠み
人々に答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
おかげで夕飯のたしになつたが、それからといふもの、日の暮れがたに町を歩いてゐると
馬糞
(
ばふん
)
がサツマに見えて、ついサンダルのさきで軽く小あたりに
蹴
(
け
)
つて見たくなつたものだ。
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
時
(
とき
)
としては柳条に
拠
(
よ
)
りて深処に
没
(
ぼつ
)
するを
防
(
ふせ
)
ぎしことあれども、
進
(
すす
)
むに従うて
浅砂
(
せんさ
)
の
岸
(
きし
)
となり、
遂
(
つひ
)
に沼岸一帯の
白砂
(
はくさ
)
を
現
(
げん
)
じ来る、砂土人馬の
足跡
(
そくせき
)
は
斑々
(
はん/\
)
として破鞋と
馬糞
(
ばふん
)
は所々に
散見
(
さんけん
)
す
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
しかし丁度日ざかりで、砂の白く乾いた道の上には私たちの影すらほとんど落ちない位だった。ところどころに
馬糞
(
ばふん
)
が光っていた。そうしてその上にはいくつも小さな白い蝶がむらがっていた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
凝血腸詰
(
ブウダン
)
をほおばる天使長ガブリエル、泰然と
大海老
(
オマア
)
を
弄
(
せせ
)
る
馬糞
(
ばふん
)
紙製の小豚、
羮
(
スウプ
)
をふき出す青面黒衣の
吸血鬼
(
ヴァンピール
)
、共喰いをする
西洋独活
(
アスペルジュ
)
、呂律のまわらぬライン葡萄酒の大樽、支那茶を吸い込む象の首
ノンシャラン道中記:04 南風吹かば ――モンテ・カルロの巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
夕方の、むし暑い風が、せまい銀座横町の
馬糞
(
ばふん
)
いろの
埃
(
ほこり
)
と、
蠅
(
はえ
)
とを、
塀
(
へい
)
ごしに運んできて、そら豆の色が青いほか、ちゃぶ台の上は、白っぽくなった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僕はその受け取ったる紙包みを開いて見れば、木の葉のみである。また、折り詰めを開けば
馬糞
(
ばふん
)
が詰めてある。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
満月の
輪廓
(
りんかく
)
はにじんでいた。めだかの模様の
襦袢
(
じゅばん
)
に
慈姑
(
くわい
)
の模様の綿入れ胴衣を重ねて着ている太郎は、はだしのままで村の
馬糞
(
ばふん
)
だらけの
砂利道
(
じゃりみち
)
を東へ歩いた。
ロマネスク
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
前に申しました「
仏
(
ぶつ
)
とは何ぞや」「仏とはかわいた
馬糞
(
ばふん
)
である。」
雲門
(
うんもん
)
の「仏とは麻三
斤
(
ぎん
)
である」などと申しますのも結局そうでありまして、雲が風に吹かれて空を流れる。
生活と一枚の宗教
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
終日、
肥汲
(
こえくみ
)
車や荷馬車のゴトゴトとひびいている退屈な町、
馬糞
(
ばふん
)
に汚れた一本筋の町を、一日に二三度は往復した。町並はひどく
不揃
(
ふぞろ
)
いで、ここでも不景気が
剥
(
む
)
き出しにあらわれていた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
しかし丁度日ざかりで、砂の白く乾いた道の上には私たちの影すらほとんど落ちない位だった。ところどころに
馬糞
(
ばふん
)
が光っていた。そうしてその上にはいくつも小さな白い蝶がむらがっていた。
楡の家
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
馬の尻から
馬糞
(
ばふん
)
の落ちるのを待っている。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
遊冶郎
(
ゆうやろう
)
がかッたるそうに帰って来る
吉原組
(
よしわらぐみ
)
の駕もあれば、昼狐につままれにゆく、勤番の
浅黄裏
(
あさぎうら
)
もぼつぼつ通る。午後の陽ざしに、
馬糞
(
ばふん
)
の
埃
(
ほこり
)
が黄色く立つ。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あるじは毎朝早く家の前の道路を掃除して
馬糞
(
ばふん
)
や
紐
(
ひも
)
や板切れを拾い集めてむだには捨てず、世には
何染
(
なにぞめ
)
、
何縞
(
なにじま
)
がはやろうと着物は無地の手織木綿一つと定め
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
さらに自ら
餅
(
もち
)
を作り、その中に
餡
(
あん
)
の代わりに
馬糞
(
ばふん
)
を包み込み、祈祷の御礼に出かけ
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
銀行員だった幾田君の青白い坊っちゃん坊ちゃんした顔を
憶
(
おも
)
いだしながら原稿をめくった。「退屈な町」というのが題名で、
馬糞
(
ばふん
)
に汚れた
此
(
この
)
町の事をスケッチしたものだが、まだ
稚
(
おさな
)
い作品だった。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
上
(
かみ
)
からのお
吩咐
(
いいつ
)
けとでもあれば、てんてこ舞して、道の
馬糞
(
ばふん
)
を取って砂まで
撒
(
ま
)
くが、弱い者の訴えなどに、どうして本気に耳をかして捜してなどくれるものか。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ああして道中の
馬糞
(
ばふん
)
掃除とか、何とか、出来ることは勤めながら、物乞いをしておりますようなわけで……
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
むかし——二十余年前には、この清洲のお城で、
馬糞
(
ばふん
)
を掃き、お草履をつかむ
御小人
(
おこびと
)
であった時代もある。その頃をわすれぬためとか。さても殊勝なお心がけよの
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ガラス工場の職工もいた、南京墓の番人もいた、貧乏異人館のコックもいた、競馬場の
馬糞
(
ばふん
)
さらいもいた、チイハの運送屋もいた。みんなそれぞれ、一理屈を
酬
(
むく
)
いた。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
若葉の夕闇に、ここかしこ、陣屋の
炊煙
(
すいえん
)
が上がっていた。どんな
幽邃
(
ゆうすい
)
な寺院も、ひとたび軍馬の営となると、そこは忽ち
旺盛
(
おうせい
)
な日常生活の
厨房
(
ちゅうぼう
)
や
馬糞
(
ばふん
)
のぬかるみになった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
坂の途中に、切れ
草鞋
(
わらじ
)
、手拭、折れ矢、笠、
馬糞
(
ばふん
)
などが踏みにじったように散乱していた。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれど、彼の人数の如きは、遥か
下
(
しも
)
の方にあって、町屋の軒端に
佇
(
たたず
)
み、主君の
貴賓
(
きひん
)
が通る往来の
馬糞
(
ばふん
)
を掃き取らせたり、野良犬を追ったり、辻の
戒
(
いまし
)
めに気を配ったりしているに過ぎないのである。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
馬糞
(
ばふん
)
だけだよ、ここにあるのは」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
馬
常用漢字
小2
部首:⾺
10画
糞
漢検準1級
部首:⽶
17画
“馬糞”で始まる語句
馬糞茸
馬糞墨
馬糞煙草
馬糞受
馬糞石
馬糞紙
馬糞臭
馬糞先生
馬糞線香