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首垂
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うなだ
ふりがな文庫
“
首垂
(
うなだ
)” の例文
だが、お信さんは身動きもせず、深く覚悟を決してゐるもののやうに、向う向きに撫で肩の背を円めながら、ぢつと頭を
首垂
(
うなだ
)
れてゐた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
融川は俯向き
首垂
(
うなだ
)
れていた。膝からかけて駕籠一面飛び散った血で
紅斑々
(
こうはんはん
)
、
呼息
(
いき
)
を刻む肩の揺れ、腹はたった今切ったと見える。
北斎と幽霊
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
別れろ/\と攻め立てられてG師の前に弱つて
首垂
(
うなだ
)
れてゐる圭一郎がいぢらしくもあり、恨めしくもあり、否、それにも増して
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
居間ではエリスが
手巾
(
ハンカチ
)
を眼にあてて、深い椅子に腰を下ろしたまま、じっと
首垂
(
うなだ
)
れていた。ビアトレスと坂口は言葉もなく、その傍に佇んだ。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
以前の巨犬は、何か返事の使命を待つものの如く、また使命の重きに悩むものの如く、
首垂
(
うなだ
)
れて、おとなしく控えている。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
まだ、
湖
(
みずうみ
)
の
上
(
うえ
)
が
鉛色
(
なまりいろ
)
に
明
(
あ
)
けきらぬ、
寒
(
さむ
)
い
朝
(
あさ
)
、
彼
(
かれ
)
は、ついに
首垂
(
うなだ
)
れたまま
自然
(
しぜん
)
との
闘争
(
とうそう
)
の一
生
(
しょう
)
を
終
(
お
)
わることになりました。
がん
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彼は両手で杖にすがり、
脣
(
くちびる
)
はまっ白になり、額は筋立っていたが、その高い身体は
首垂
(
うなだ
)
れてるマリユスの上にそびえた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
治兵衛はこう言って
首垂
(
うなだ
)
れました。見たところ四十前後、
大家
(
たいけ
)
の主人らしい落着きと品の中にも、何となく迷信深そうな、
篤実
(
とくじつ
)
らしさも思わせます。
銭形平次捕物控:005 幽霊にされた女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ほんたうに?」と僕が、稍屹ツとなつて念をおすと、Gは、がつくりと
首垂
(
うなだ
)
れた。そして極くかすかに
点頭
(
うなづ
)
いた。
センチメンタル・ドライヴ
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
途端
(
とたん
)
に
又
(
また
)
指
(
ゆび
)
を
立
(
た
)
てつゝ、
足
(
あし
)
を
一巾
(
ひとはゞ
)
、
坊主
(
ばうず
)
が
退
(
さが
)
つた。
孰
(
いづれ
)
も
首垂
(
うなだ
)
れた
二人
(
ふたり
)
の
中
(
なか
)
へ、
草
(
くさ
)
に
甲
(
かう
)
をつけて、あはれや、
其
(
それ
)
でも
媚
(
なまめ
)
かしい、
優
(
やさ
)
しい
腕
(
かひな
)
が
仰向
(
あふむ
)
けに
落
(
お
)
ちた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
やがて、土蔵の戸口から足音がして、次郎の
首垂
(
うなだ
)
れている顔の前をゆっくり通りぬけた。その足音は、一つ一つ、次郎の
鼓膜
(
こまく
)
を栗のいがのように刺戟した。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「私に死を禁じたのは神ではありませんでした。それは……。」と云って彼は
首垂
(
うなだ
)
れている女をじっと見た。
湖水と彼等
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
クラブで遊び疲れたあげく、タッタ一人で
首垂
(
うなだ
)
れて、トボトボと歩きながら自宅の方へ帰りかけた私はフト顔を上げた。そこいら中がパアット明るくなったので……。
怪夢
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
首垂
(
うなだ
)
れて居る男に向って斯う叫んだのでありました、——バラされない内に、へえ左様ですかと
下手
(
したて
)
に出たらどうだい、女だからってお前さん方に舐められる様な
妾
(
あたし
)
じゃないんだよ、ねえ
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
成吉思汗
(
ジンギスカン
)
はその間、たえず淋しそうな微笑を浮かべ、ともすれば考え込むが、そのようすを人に覚られまいと、気がついたように
合爾合
(
カルカ
)
姫へ笑いかける。姫は終始
首垂
(
うなだ
)
れて、一語も発しない。
若き日の成吉思汗:――市川猿之助氏のために――
(新字新仮名)
/
林不忘
、
牧逸馬
(著)
玄白斎は、片手を、炉べりへついたまま、
首垂
(
うなだ
)
れて、肩で呼吸をしていたが
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
喇叭の腕に巻きつかれた中で、じっと竦んだまま
首垂
(
うなだ
)
れてゆくイレーネの首の白さを眼にしながら、彼は寂しさを感じた。そして今度は眼の大きな踊子に
狙
(
ねら
)
いをつけ餅殻を投げてみるのだった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
前の日、ホームズは終日眉根をよせた顔を
首垂
(
うなだ
)
れて、強い黒煙草をパイプにつめかえつめかえ部屋の中を歩き廻ってばかりいて、私が何を話しかけても何を訊ねても石のように黙りこくっていた。
白銀の失踪
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
母親は頭の中に起つたことを持て餘して來ると、よく庭の隅や物置の隅に蹲んで
首垂
(
うなだ
)
れてゐた。良吉は一日の過半は机の前に首垂れてゐる。……首垂れてゐる二人の氣持に相違はなさゝうだつた。
母と子
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
首垂
(
うなだ
)
れてモセ嬶は言った。
芋
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
悄然
(
しょうぜん
)
として数馬も
首垂
(
うなだ
)
れる。殺されたのに疑いなさそうである。生血が未だ乾かないのを見ると殺人の兇行の行われたのはほんの
最近
(
いましがた
)
に相違ない。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
竜之助は、また
首垂
(
うなだ
)
れて酒を飲み出す。怖ろしさから傍へ寄ったお松の
化粧
(
けしょう
)
の香りが
紛
(
ぷん
)
としてその酒の中に散る。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼はいつも
首垂
(
うなだ
)
れて歩くのが癖であった。彼がプリューメ街の
角
(
かど
)
を曲がろうとした時、すぐそばに声がした。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そんなときは、百
姓
(
しょう
)
は、
振
(
ふ
)
り
向
(
む
)
いて
後
(
うし
)
ろに
首垂
(
うなだ
)
れている、
自分
(
じぶん
)
の
牛
(
うし
)
をにくにくしげににらみました。
百姓の夢
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
中
(
うち
)
から風も吹くようなり、
傍正面
(
わきしょうめん
)
の姿見に、
勿
(
な
)
、映りそ夢の姿とて、
首垂
(
うなだ
)
るるまで顔を
背
(
そむ
)
けた。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
木下正治は、絵具箱のカバンを肩にかけ、十五号大のカンヴァスを重そうに左の小脇に抱え、右手を外套のポケットにつっ込んで、
首垂
(
うなだ
)
れながら、荒凉たる晩冬の野を帰って来た。
二つの途
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
八郎太は、床柱に凭れて、
首垂
(
うなだ
)
れて、腕を組んだまま、静かにつづけた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
佐平は
首垂
(
うなだ
)
れて股引の血を見詰めながら
釘抜藤吉捕物覚書:02 梅雨に咲く花
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
こう云われても白萩は、今にも折れそうな細い
頸
(
くび
)
をじっと
首垂
(
うなだ
)
れているばかりで、返辞しようとはしなかった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
首垂
(
うなだ
)
れたり、
溜息
(
ためいき
)
をしたり、
咳
(
しわぶ
)
いたり、
堅炭
(
かたずみ
)
を
埋
(
い
)
けた大火鉢に
崩折
(
くずお
)
れて
凭
(
もた
)
れたり、そうかと思うと
欠伸
(
あくび
)
をする、老若の患者、薬取がひしと詰懸けている玄関を、へい、御免ねえ
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それからまた樫の絵の前に戻ってきて、椅子に腰を落しながら、
首垂
(
うなだ
)
れて考え込んだ。
二つの途
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
吉右衛門は
首垂
(
うなだ
)
れてしまった。
寺坂吉右衛門の逃亡
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
剃刀の
刃
(
やいば
)
の
蒼
(
あお
)
ずんで冴えたのも、何となく、その黒髪の
齢
(
よわい
)
を縮めて、玉の緒を断たんとする恐ろしき
夜叉
(
やしゃ
)
の
斧
(
おの
)
の
許
(
もと
)
に、覚悟を
極
(
き
)
めて
首垂
(
うなだ
)
れた、寂しき
俤
(
おもかげ
)
に
肖
(
に
)
て見えたのであった。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見えなくなったその後を芳江は
暫時
(
しばし
)
眺めていたがふと寂しそうに
首垂
(
うなだ
)
れた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
萠
(
も
)
え出でんとする芽は、その重みの下に押し
潰
(
つぶ
)
される。人の心は息がつけなくなる。ただ
首垂
(
うなだ
)
れて、おのれの停滞した存在を見守るのほかはない。生命の力は
萎微
(
いび
)
し、生きんとする意力は鈍ってくる。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
夫人がその
風采
(
とりなり
)
、その
容色
(
きりょう
)
で、看護婦を率いた
状
(
さま
)
は、常に天使のごとく拝まれるのであったに、いかにやしけむ、近い頃、殊に今夜あたり、色艶
勝
(
すぐ
)
れず、
円髷
(
まるまげ
)
も重そうに
首垂
(
うなだ
)
れて
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
坐ると一緒に
首垂
(
うなだ
)
れたが、細い首には保ち兼ねるようなたっぷりとした黒髪に、
瓜実顔
(
うりざねがお
)
をふっくりと包ませ、パラリと下がった
後
(
おく
)
れ毛を時々掻き上げる細い指先が白魚のように白いのだけでも
三甚内
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
高倉玄蔵はすっかり
悄気
(
しょげ
)
かえった風で、黙って
首垂
(
うなだ
)
れていた。
電車停留場
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
娘は
乱髪
(
みだれがみ
)
になって、その花を持ったまま、膝に手を置いて、
首垂
(
うなだ
)
れて黙っていた。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
若衆は深く感動したが、言葉もなくて
首垂
(
うなだ
)
れた。
紅白縮緬組
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
寂しさの上に
凄
(
すご
)
いのに、すぐ目を反らして
首垂
(
うなだ
)
れた。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「はい」と云うと
首垂
(
うなだ
)
れてしまった。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
浪路は、と見ると、
悄然
(
しょうぜん
)
と身をすぼめて
首垂
(
うなだ
)
るる。
小春の狐
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お鶴は
頭
(
つむり
)
おもたげに、
首垂
(
うなだ
)
れながら
合点
(
がってん
)
々々。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、なぜか多津吉は肩を
揺
(
ゆす
)
って、
首垂
(
うなだ
)
れた。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
われ
頷
(
うなず
)
きぬ。小親は襟に
首垂
(
うなだ
)
れつつ
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
御新姐
(
ごしんぞ
)
は
唯
(
ただ
)
首垂
(
うなだ
)
れているばかり。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
はっと
首垂
(
うなだ
)
れたが、目に涙一杯。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、もの寂しそうに
首垂
(
うなだ
)
れた。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と観念の
眼
(
まなこ
)
を閉じて
首垂
(
うなだ
)
れた。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
首
常用漢字
小2
部首:⾸
9画
垂
常用漢字
小6
部首:⼟
8画
“首”で始まる語句
首
首肯
首尾
首級
首途
首領
首魁
首筋
首縊
首枷