鉄槌かなづち)” の例文
旧字:鐵槌
朝早くから鉄槌かなづちでカンカンと革を打ちつけながら、あとからあとから車輪の脂を舐めに来る犬どもを引つきりなしに追ひ立てた。
翁は、自から大きな鉄槌かなづちを取り上げて、少女の両手を拡げさせて、動脈の打つ手頭てくびのあたりへ五寸釘をち込んで、白木の十字架に打ち附けた。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
鉄槌かなづちで叩いたのでなければ、恐ろしい強力ごうりきです、——どうして刺したろう——平次はフトそんな事を考えておりました。
鉄槌かなづちんなに大きく振って川をあるくことはもう何年ぶりだらう。波が足をあらひ水はつめたくしてゐる。
台川 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
……別に鉄槌かなづち、うむ、赤錆あかさび、黒錆、青錆のくぎ、ぞろぞろと……青い蜘蛛くもあか守宮やもり、黒蜥蜴とかげの血を塗ったも知れぬ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
向うは一面の田圃たんぼで、すぐ眼の下には川が青々と流れて、その流れに沿うた道ばたの一軒の家から、最前の鉄槌かなづちの音が引っきりなしにきこえて来ます。
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
もしもちとなり破壊れでもしたら同職なかま恥辱はじ知合いの面汚し、うぬはそれでも生きて居らりょうかと、とても再び鉄槌かなづち手斧ちょうなも握ることのできぬほど引っしかって
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しばらくは父の押木おしぎの上に一ぱいに散らかっている鉄槌かなづちだの、たがねだの、やすりだのを私にいじらせてくれた。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
網で捕えてまき数車を積み焼くに、薪尽きても燃えず灰中に立ち毛も焦げず、っても刺しても入らず、打てば灰嚢のごとし、鉄槌かなづちで数十度打ってようやく死ねど
小僧こぞうや。小「へえ。旦「おとなりいつてノ蚊帳かや釣手つりてを打つんだから鉄槌かなづちして下さいとつてりてい。小「へえ……いつまゐりました。旦「してれたか。 ...
吝嗇家 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼は時々とき/″\ながら、左のちゝしたに手を置いて、もし、此所こゝ鉄槌かなづちで一つどやされたならと思ふ事がある。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その棚板を左手でかかえ、右手で鉄槌かなづちを、口で釘を三、四本含んで圓太郎は、荒神様と鼠入らずの間の板壁のところまでゆくと、瞬くうちに棚をひとつ吊りあげた。
円太郎馬車 (新字新仮名) / 正岡容(著)
胸の骨が出ていると鉄槌かなづちで叩いて押し込んだり、喉の切口から空気を吹込んでふくらませたりします。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
鉄槌かなづちを以て器械に附着したる氷雪を打毀うちこわす等、その他千種万態ばんたいなる困難辛苦を以て造化の試験を受けてやや整頓のちょに就かんとせし所に、はからずもさい登山しきたりたり
去年のあのころ、道太の頭脳はまるで鉄槌かなづちちのめされたようになっていたので、それを慰めるつもりで、どうせ今日は立てないからと、辰之助は彼をこの家へ引っ張ってきた。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その時に、あとから来た男が駈け寄って、なにか鉄槌かなづちのような物で女の髷のあたりを叩きました。薄暗くって、よくは判りませんでしたが、女はそれぎりでぐったり倒れたようでした。
鉄槌かなづちに鶴嘴ですよ。全くこれくらい坑夫にとって、手近で屈強な武器はありませんからね。しかも坑夫たちは安全燈ランプと同じように、大事な仕事道具として必らず一つずつは持っております。
坑鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
仕事場のふいごまわりには三人の男が働いていた。鉄砧かなしきにあたる鉄槌かなづちの音が高く響くと疲れ果てた彼れの馬さえが耳を立てなおした。彼れはこの店先きに自分の馬を引張って来る時の事を思った。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
右の斜面の鼠色じみた帆の幌の小舎こやの内では、ふんどしひとつの船大工が船の内側を河心かしんへ向けて、ととんとん、ととんとんとんと釘を打ち打ちしている。ほれぼれとしたものだ。遊ぶようなその鉄槌かなづちの手。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
鉄槌かなづちをこんなに大きく振って川をあるくことはもう何年ぶりだろう。なみが足をあらい水はつめたくしている。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
神職 ……居眠りいたいて、ものもあろうず、かんふたを打つよりも可忌いまわしい、鉄槌かなづちを落し、くぎこぼす——釘は?……
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は時々寐ながら、左の乳の下に手を置いて、もし、此所ここ鉄槌かなづちで一つどやされたならと思う事がある。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
被害者の右脇に在る鉄槌かなづちを右手で(犯人を右利きと仮定して)取上げて、老爺おやじの頭を喰らわせるのに都合のいい位置を考え考え、上り框に腰を掛け直してみた結果
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あるいは高く或は低く絶えずかちかちと鉄槌かなづちの音を響かせている細工場の中から、(父は屡〻しばしば留守だった……)、よく頓狂とんきょうな奴だとみんなから叱られてばかりいた佐吉という小僧が
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「お半を殺したのは大工らしいというのは、鉄槌かなづちからですか」
お代や、胡桃餅を拵えよう。和女おまえ鉄槌かなづち
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
老人ろうじんはだまってしげしげと二人のつかれたなりを見た。二人ともおおきな背嚢はいのうをしょって地図を首からかけて鉄槌かなづちっている。そしてまだまるでの子供こどもだ。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さみしい、しんとした中に手拍子てびょうしそろって、コツコツコツコツと、鉄槌かなづちの音のするのは、この小屋に並んだ、一棟ひとむね同一おなじ材木納屋なやの中で、三個さんこの石屋が、石をるのである。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
脳天の中央に、鉄槌かなづち様の鈍器で叩き破られた穴がポコンといて、真黒な血のひもがユラユラとブラ下がっていた。何等の苦悶の形跡あとも無い即死と見えた……という簡単な死に方だ。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこを窺って、清五郎が鉄槌かなづちで頭をひと撃ち……
(あっ、こっちですか。今日は。ご飯中はんちゅうをどうも失敬しっけいしました。ちょっとおたずねしますが、この上流じょうりゅうに水車がありましょうか。)わかいかばんをって鉄槌かなづちをさげた学生だった。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
煙の中にあいたたえて、あるいは十畳、二十畳、五畳、三畳、真砂まさごの床に絶えては連なる、平らな岩の、天地あめつちしき手に、鉄槌かなづちのあとの見ゆるあり、削りかけのやすりの目の立ったるあり。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
トタンに使い終った重たい鉄槌かなづちを無意識に、犯人の鼻の先へゴロリと投出す。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
うつつに膝を直さんとする懐中より、一ちょう鉄槌かなづちハタと落つ。カタンと鳴る。仕丁。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一人の変に鼻のとがった、洋服を着てわらぢをはいた人が、鉄砲でもないやりでもない、をかしな光る長いものを、せなかにしょって、手にはステッキみたいな鉄槌かなづちをもって、ぼくらの魚を
さいかち淵 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
と云いながら、鞄の中から鉄槌かなづちを一つ取り出しました。
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
一人のへんはなとがった、洋服ようふくてわらじをはいた人が、鉄砲てっぽうでもないやりでもない、おかしな光る長いものを、せなかにしょって、手にはステッキみたいな鉄槌かなづちをもって、ぼくらの魚を
さいかち淵 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
地質調査をするときはこんなどこから来たかわからないあいまいな岩石もの鉄槌かなづちを加へてはいけないと教へようかな。すぐ眼の前を及川が手拭てぬぐひを首に巻いて黄色の服で急いでゐるし、云はうかな。
台川 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
地質調査ちしつちょうさをするときはこんなどこから来たかわからないあいまいな岩石もの鉄槌かなづちを加えてはいけないと教えようかな。すぐの前を及川おいかわ手拭てぬぐいくびいて黄色のふくいそいでいるし、おうかな。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)