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豊
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とよ
ふりがな文庫
“
豊
(
とよ
)” の例文
旧字:
豐
いつか
越後
(
えちご
)
の人がこの娘を見て、自分の国は女の美しい国だが、お
豊
(
とよ
)
さんのように美しいのは、見たことがないと云ったそうである。
蛇
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
母親のお
豊
(
とよ
)
は学校の時間割までをよく
知抜
(
しりぬ
)
いているので、長吉の帰りが一時間早くても、
晩
(
おそ
)
くても、すぐに心配して
煩
(
うるさ
)
く質問する。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
近江屋
治兵衛
(
じへえ
)
は観音堂の屋根の見える限りでは、並ぶ者ないと言われる
大分限
(
だいぶげん
)
、女房お
豊
(
とよ
)
との間に生れた一人娘のお雛は
銭形平次捕物控:005 幽霊にされた女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「さあ唯今
些
(
ちよつ
)
と手が放せませんので、御殿の方に居りますから、どうか
彼方
(
あちら
)
へお出なすつて。
直
(
ぢき
)
其処
(
そこ
)
ですよ。婢に案内を為せます。あの
豊
(
とよ
)
や!」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
豊
(
とよ
)
は碁石の
清拭
(
きよぶ
)
きせよ。
利介
(
りすけ
)
はそれそれ
手水鉢
(
ちょうずばち
)
、糸目の
椀
(
わん
)
は
土蔵
(
くら
)
にある。
南京
(
なんきん
)
染付け
蛤皿
(
はまぐりざら
)
、それもよしかこれもよしか、光代、光代はどこにいる。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
▼ もっと見る
そうして、
豊
(
とよ
)
、豊という母の声を聞いた。その声が非常に遠くにある。それで手に取るように明らかに聞える。——母は五年前に死んでしまった。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
麻雀ガールの
豊
(
とよ
)
ちゃんが、鼻の頭に噴きだした玉のような汗を、クシャクシャになった
手帛
(
ハンカチ
)
で拭き拭き、そう云った。
麻雀殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
問題の湯治中瑠璃子に附添って世話をしていた婆やの
豊
(
とよ
)
が、一人ぽっちで、わしと同じ箱に乗っていたではないか。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私の
家
(
うち
)
には、その片腕の熊さんや、
赤褌
(
あかべこ
)
の
豊
(
とよ
)
さんやら、たわし売りのお
吉
(
よし
)
さんやら、灰買いの
重
(
じゅう
)
どんなどがいた。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
浪子が去られしより、一月あまりたちて、山木は親しく川島
未亡人
(
いんきょ
)
の薫陶を受けさすべく行儀見習いの名をもって、娘お
豊
(
とよ
)
を川島家に入れ置きしなりき。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「
豊
(
とよ
)
が聞いて来ましたの。坂口さんのところの旦那さまはあんな怖いお顔をして、あれでナカ/\ねって、津田さんの奥さんがお笑いになったそうですよ」
朝起の人達
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
朝日の
豊
(
とよ
)
さか
昇
(
のぼ
)
りと夕日のくだち、日の出と日の入りとを本式としていたことは、神をお祭り申す
祝詞
(
のりと
)
というものの中に、そういう文句のあるのを見てもわかる。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「わたしが死んだら、留吉はどうなるだろう。けっして私は留吉より先へ死んではならぬ」というのが、ことし四十五歳になる母親お
豊
(
とよ
)
の平素の願望でありました。
白痴の知恵
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
勘三郎
(
かんざぶろう
)
がそれに熱中しはじめたのはいつごろのことか分っていない。ともかくお
豊
(
とよ
)
が嫁に来たときにはすでに勘三郎のやまさがしは誰知らぬ者なきありさまになっていた。
藪落し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「まったく
豊
(
とよ
)
さんの言う通りさ。けれども、姐さんもずいぶん無理をいってあの人をいじめるんだからね。いくら相手がおとなしくっても、あれじゃあ我慢がつづくまいよ」
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
金ちやんも勝ちやんも、うすのろの
豊
(
とよ
)
ちやんも、栄蔵にさそはれてやつて来た。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
母というはお
豊
(
とよ
)
といい、言葉の少ない、柔和らしく見えて
確固
(
しっかり
)
した気象の女でしたが、僕を
叱
(
しか
)
ったこともなく、さりとて甘やかす程に
可愛
(
かわい
)
がりもせず、言わば寄らず触らずにして居たようです。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「おおお
豊
(
とよ
)
さん、これに見えてか、えろうわたしは遅れましたわいな」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
雪祭は
睦月
(
むつき
)
の
神事
(
かむごと
)
、その雪は田の面の
鎮
(
しづ
)
め、雪こそは
豊
(
とよ
)
の年の、穂に穂積む
稔
(
みのり
)
のしるし、その雪を神に祈ると、その雪に神と遊ぶと、山峡や
小峡
(
をがひ
)
の子らが、あな
幽
(
かそ
)
か、鬼の子鬼が、雪祭
四方
(
よも
)
の鎮めと
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
宮人は
豊
(
とよ
)
の明りにいそぐ
今日
(
けふ
)
日かげも知らで暮らしつるかな
源氏物語:42 まぼろし
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
豊
(
とよ
)
の
足穂
(
たりほ
)
も、
他
(
あだ
)
し
人
(
びと
)
、
刈
(
か
)
り干しにけむ、いつの
間
(
ま
)
に。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
豊
(
とよ
)
おか姫の、宮の鉾なり
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
姉娘の
豊
(
とよ
)
なら、もう
二十
(
はたち
)
で、遅く取るよめとしては、年齢の懸隔もはなはだしいというほどではない。豊の器量は十人並みである。
安井夫人
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
母親のお
豊
(
とよ
)
は学校の時間割までをよく
知抜
(
しりぬ
)
いてゐるので、
長吉
(
ちやうきち
)
の帰りが一時間早くても、
晩
(
おそ
)
くても、すぐに心配して
煩
(
うるさ
)
く質問する。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「でも川島のおばあさんが泣きましょうよ。——川島てば、お母さま、お
豊
(
とよ
)
さんがとうと逃げ出したんですッて」
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
部屋の中には
乳母
(
うば
)
のお
豊
(
とよ
)
、ドアの外の廊下には書生の
青山
(
あおやま
)
が、
夫々
(
それぞれ
)
見張り役を勤めている上に、そのドアは外から鍵をかけ、ちょっと洗面所へ行くにも、中からノックして
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
わたしは千葉の者であるが、
馬琴
(
ばきん
)
の八犬伝でおなじみの里見の家は、
義実
(
よしざね
)
、義
成
(
なり
)
、義
通
(
みち
)
、
実尭
(
さねたか
)
、義
豊
(
とよ
)
、義
尭
(
たか
)
、義
弘
(
ひろ
)
、義
頼
(
より
)
、義
康
(
やす
)
の九代を伝えて、十代目の
忠義
(
ただよし
)
でほろびたのである。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
妹のお
豊
(
とよ
)
は一つ違いの十八歳、姉に優る美しさと、
辰巳
(
たつみ
)
っ子らしい
気象
(
きしょう
)
を謳われましたが、役人の目を
憚
(
はば
)
かって、寄り付く親類縁者も無いのに業を煮やし、柳橋から芸者になって出て
礫心中
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
また
畏
(
かし
)
こくも
尊
(
とう
)
とくも仰ぎ望まれたのは、大陸でもそうだったかも知れぬが、海のとなかの島国にあっては、ことに早朝の一刻、
旭
(
あさひ
)
の
豊
(
とよ
)
さかのぼりといわれた日出の前と後とであった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
筑波根に朝ゐ夕ゐる旗雲の
豊
(
とよ
)
の
紅
(
あけ
)
見て出ては刈るらむ
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
私
豊
(
とよ
)
の手伝でも致して、
此方
(
こなた
)
に一生奉公を致します。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
豊
(
とよ
)
の
世
(
よ
)
と
称
(
たた
)
ふるもよし、夢の世と
観
(
かん
)
ずるもよし。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
豊
(
とよ
)
のあそびに
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
長吉
(
ちやうきち
)
をば
檜物町
(
ひものちやう
)
でも
植木店
(
うゑきだな
)
でも
何処
(
どこ
)
でもいゝから一流の
家元
(
いへもと
)
へ
弟子入
(
でしいり
)
をさせたらばとお
豊
(
とよ
)
に
勧
(
すゝ
)
めたがお
豊
(
とよ
)
は断じて
承諾
(
しようだく
)
しなかつた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
菅茶山は嘗て蘭軒の姉
幾勢
(
きせ
)
に尾道の
女画史
(
ぢよぐわし
)
豊
(
とよ
)
が画を贈つたことがあつて、今又重て贈るべしや否やを問うてゐる。豊とは何人であらうか。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「昨年来は長々お世話に相成りましてございますが、娘——
豊
(
とよ
)
も
近々
(
ちかぢか
)
に嫁にやることにいたしまして——」
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
大君の
御笑
(
みゑま
)
ひ
思
(
も
)
へば朝ぼらけ日はさしのぼり
豊
(
とよ
)
の旗雲
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「ほんとさ。お
前
(
まへ
)
さん。」お
豊
(
とよ
)
は首を長く
延
(
のば
)
して、「私の
僻目
(
ひがめ
)
かも知れないが、
実
(
じつ
)
はどうも
長吉
(
ちやうきち
)
の
様子
(
やうす
)
が心配でならないのさ。」
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
忠兵衛の祖先は山内
但馬守
(
たじまのかみ
)
盛豊
(
もりとよ
)
の子、
対馬守
(
つしまのかみ
)
一豊
(
かずとよ
)
の弟から出たのだそうで、江戸の商人になってからも、
三葉柏
(
みつばがしわ
)
の紋を附け、名のりに
豊
(
とよ
)
の字を用いることになっている。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
日はのぼる、旗雲の
豊
(
とよ
)
の茜に
新頌
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
お
豊
(
とよ
)
は
今戸橋
(
いまとばし
)
まで歩いて来て
時節
(
じせつ
)
は
今
(
いま
)
正
(
まさ
)
に
爛漫
(
らんまん
)
たる春の四月である事を始めて知った。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「尾道女画史」
豊
(
とよ
)
である。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
師匠のお
豊
(
とよ
)
は縁日ものの植木鉢を並べ、
不動尊
(
ふどうそん
)
の掛物をかけた
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
を
後
(
うしろ
)
にしてべったり
坐
(
すわ
)
った
膝
(
ひざ
)
の上に
三味線
(
しゃみせん
)
をかかえ、
樫
(
かし
)
の
撥
(
ばち
)
で時々前髪のあたりをかきながら、掛声をかけては弾くと
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
“豊”の意味
《固有名詞》
(とよ) 九州における旧国称、現在の大分県及び福岡県東部。とよのくに。律令施行時に、豊前と豊後に分割された。
(出典:Wiktionary)
豊
常用漢字
小5
部首:⾖
13画
“豊”を含む語句
豊饒
豊頬
豊凶
豊艶
豊海橋
天真宗豊祖父尊様
豊国
豊太閤
豊麗
豊穣
飯豊
豊島
豊浦
豊作
豊醇
豊年
豊公
田豊
豊鑑
豊富
...