づめ)” の例文
ところへ、ふとこの頃、玄蕃が元指南番の職を奉じていた宮津の城主京極丹後守が今度江戸づめとなって出府したという噂を聞いた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
磯の沙浜にはところどころ筆草ふでくさが生えていた。其処は緩い傾斜になって夫其の登りづめに松林があり普請役場の建物があった。
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
づめ志道軒しどうけんなら、一てんにわかにかきくもり、あれよあれよといいもあらせず、天女てんにょ姿すがたたちまちに、かくれていつかたらいなか。……
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
藩中にある福澤を呼べと云うことになって、ソレで私を呼びに来たので、その時江戸づめの家老には奥平壹岐おくだいらいきが来て居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
勾引かどはかせし馬士まご松五郎に相違有まじ依ては其方共の決斷けつだん甚だくら依怙贔屓えこひいき沙汰さたに聞ゆるぞ此申譯があらば申聞よとあるに本多家の役人共追々吟味づめの樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二葉亭のお父さんは尾州藩だったが、長い間の江戸づめで江戸の御家人ごけにんしていた。お母さんも同じ藩の武家生れだったが、やはり江戸で育って江戸風に仕込まれた。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
これはおかしい、つりといえばちょうどその時、向うづめの岸にしゃがんで、ト釣っていたものがあったでござる。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
最早もう九年ばかり以前の事だ、当時私の宅へよく遊びに来たしば警察署づめの某氏の実見談じっけんだんである。
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
たゞ此かげに遊びて風雨にやぶやすきをあいす「はせを野分のわきしてたらひに雨をきく夜哉」此芭蕉庵の旧蹟きうせきふか清澄町きよすみちやう万年橋の南づめむかひたる今或侯あるこう庭中ていちゆうに在り、古池のあと今に存せりとぞ。
「ええ今まで九州の炭坑におりましたが、こないだ東京づめになりました。なかなかうまいです。わたしなぞにでも朋友のように話します。——先生あの男がいくら貰ってると思いなさる」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この原にオランダ人献上の大臼砲だいきゅうほうを据えようというので、御鉄砲御用衆といわれる躑躅つつじの間づめのお歴々が、朝がけから、露もしとどな夏草を踏みしだき、間竿けんざおを持った組下を追いまわして
ひどい煙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その理由の第一は、時勢既に変じて多人数たにんずの江戸づめはその必要を認めないからである。何故なにゆえというに、もと諸侯の参勤、及これに伴う家族の江戸における居住は、徳川家に人質を提供したものである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この夏(元禄七年であった)——彼が、国許から転役を命じられて、江戸づめに廻されて来た理由も、そのごつい浪人骨がいんを為していた。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
追駈て走りづめにて來給きさたまひしとなれさだめてお草臥の事ならん今よりいづれを尋ね給ふ共夜中にては知申まじ見ぐるしさを厭ひ給はずば今宵は此所にて夜を明し明なば早く此村の者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たゞ此かげに遊びて風雨にやぶやすきをあいす「はせを野分のわきしてたらひに雨をきく夜哉」此芭蕉庵の旧蹟きうせきふか清澄町きよすみちやう万年橋の南づめむかひたる今或侯あるこう庭中ていちゆうに在り、古池のあと今に存せりとぞ。
昨年きょねんのことで、妙にまたいとこはとこがからみますが、これから新宿の汽車や大久保、板橋を越しまして、赤羽へ参ります、赤羽の停車場ステエションから四人づめばかりの小さい馬車が往復しまする。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さるお方は、ひとりも山にはおらないそうでございます。山上へまかるにも、いちいち京都づめのお奉行か、安土のおゆるしを
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松代まつしろ十萬石じふまんごく世襲せしふして、まつづめ歴々れき/\たり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つけられしかども一旦中山殿奉行所にて裁許さいきよの有りし事件ことがらなれば何と無く斟酌しんしやく有て暫時しばらくかんがへ居られしが又猶申さるゝは其折道十郎なる者吟味づめに相成りしわけには之なく牢死らうししたる故其儘に成りをりしなり存生ぞんしやうならば外に吟味の致し方も有りしならんしかるに只今の一言奉行所の不行屆ふゆきとゞきの樣に上の御政度せいど
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
江戸づめとなってから、癖の悪い馬より手綱たづなの取りにくい万太郎付きの近侍きんじとなっている、相良金吾さがらきんごとよぶ武士でした。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三条大橋づめの旅舎の前にも、志士とよぶかんぬきざしが五、六名かたまって、旅舎の立て札に、何かぶつぶつ云っていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「昨日、御老中よりの御飛札により、お召しを承ってまかりこした宮本武蔵と申すものでござる。控え所づめお役人方までお申し入れ願わしゅうございます」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
修築しゅうちく手入ていれなどの場合ばあい用意よういに、工匠こうしょう上下じょうげする足がかりがむねのコマづめから角垂木かどたるきあいだにかくしてあるもので、みんな上へ上へと気ばかりあせっていたので
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで安く積っても四千石や五千石の捨扶持すてぶちと、ささづめ番頭ばんがしらのお役付が、帰る先にはブラ下がっている。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「二の丸づめ物頭ものがしら、初鹿野伝右衛門でござる。御城代に折入って、お会い申さねばならぬことが出来、夜ぶんを押して訪ねて参ったのじゃ。取次いで給われい」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
繁氏しげうじ(細川)。山の手の助けに行け。三河ノ三郎(吉良)。なぎさづたいに御影みかげうしづめに駈けろ」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸表づめの頃、彼を、君公に推挙した関係から、今では殆ど、一族の交わりをしているその角兵衛。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふだんは二日づめの一日休みであったが、この土用中は、交代に七日ずつの賜暇しかをもらっていた。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世阿弥がさくを出て、石子牢にいる一八郎と話をまじえたなどということは、山づめの役人、誰一人として気がつかなかったが、永らく蟄伏ちっぷくしていた世阿弥の心は、その日から
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「連れの万吉という者が、京橋南づめ鯉屋こいやと申す船宿から借りうけましたもの」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸づめに廻されて来て、かえってよかったと、その秋から冬まで思っていた。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
有るのは、旧藩の江戸づめ知辺しるべだが、故郷元くにもとを追われたおれ達夫婦の事情を知っている奴等が、一両の合力ごうりきもしてくれる筈はなし——又そんな所へ恥曝はじさらしをして迄、出世に偓促あくせくしたくもない。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身どもは大阪表のある蔵屋敷づめの者であるが、同僚たちと語らって、何ぞ趣向しゅこうの変った連歌れんがの催しをやりたいというところから、この山の額堂ならば、雅味がみもあり、静かなことはこの上もないので
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
農人橋のうにんばしの東づめじゃ。そこにはたしか、住居すまいもあったように思う」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「大阪づめでいた頃には、足繁く、啓之助が通ったものだ」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)