言語ことば)” の例文
「うんにゃ、あのまた気高い処から言語ことば付の鷹揚な処から容子ようすがまるで姫様よ。おいら気がおくれて口が利悪ききにくい。」「その癖優しいだ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
愛語とは、慈愛のこもった言語ことばをもって、他人によびかけることです。利行とは、善巧な方便てだてをめぐらして、他人の生命をつちか行為おこないです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
かくてまた我に曰ひけるは、彼己が罪を陳ぶ、こはネムブロットなり、世に一の言語ことばのみ用ゐられざるは即ちそのあしき思ひによれり 七六—七八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
自分のめいの家へきて、にもなんて変なことをいう——子供の心は単純で、かげりをもった言語ことばの深いあやを知らない。
挙動そぶり言語ことばが変って来まする。これをシコタマ掴んだお医者に。せてしまえばこっちのものだよ。静養させるは表面うわべの口実。花のつぼみが開かぬまんまに。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼祈り得る時はなんじの特別のめぐみなぐさめとを要せず、彼祈り能わざる時彼は爾の擁護を要する最も切なり、余は慈母がその子の病める時に言語ことばに礼を失し易く
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
しいたけたぼにお掻取かいとり、玉虫色の口紅くちべにで、すっかり対馬守おそばつきの奥女中の服装なりをしているが、言語ことばつきや態度は、持ってうまれた尺取り横町のお藤姐御あねごだ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
他の人もかれがこしにはさみたるわらを見て行者ぎやうじやなる事をしり、むごんなれば言語ことばをかけず人々つゝしむ事也。
当時とうじ言語ことば含蓄がんちくふかいともうしますか、そのままではとてもわたくしどものちかぬるところがあり、わたくしとしては、不躾ぶしつけりつつも、何度なんど何度なんどいかえして
もう二人とも言語ことばを発するどころの騒ぎではなかつた。氷つたやうに夢中でオールに噛り付いた。
初夏 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
つい不用意にいった差別的の言語ことばにも、いわゆる徹底的糾弾が加えられました。内心には本当に悔悟しないものまでが、「後悔至極」という謝罪状を書かせられました。
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
宛然さながら、自分の持つてゐる鋭い刃物に対手が手を出すのを、ハラ/\して見てゐる様な気がしてゐたが、信吾の言語ことばは、故意わざとかは知れないが余りに平気だ、余りに冷淡だ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
これを廝に告げんとすれど、悲しや言語ことば通ぜざれば、かれは少しも心付かで、阿容々々おめおめ肴を盗み取られ。やがて市場に着きし後、代物しろもの三分みつひとつは、あらぬに初めて心付き。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
余所よその国の言葉が国際語になつては承知せん、何でも自分の国の言葉を採用しろと主張する、到底とても相談のまとまる見込はない、そこで是はどうでも何か新しい言語ことばを作つて
エスペラントの話 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
蓋原文は言語ことばに近く訳文は言語ことばに遠ければなり、又本多作左が旅中家に送りし文に曰く「一ぴつもうす火の用心ようじん阿仙おせんなかすな、うまこやせ」と火をいましむるは家をまもる第一緊要的きんようてきの事
松の操美人の生埋:01 序 (新字新仮名) / 宇田川文海(著)
婦人は普通の俗字だも知るはまれにて漢字からもじ雅言がげんを知らず仮名使てにをはだにもわきまへずへんつくりすらこころ得ざるに、ただ言語ことばをのみもて教へてかかするわが苦心はいふべうもあらず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
馬頭尊の御堂の古びたるがいと小やかに物さびて見えたるさま、画としても人の肯うまじきまで珍らかにめでたければ、言語ことばを以ては如何にしてか見ぬものをして点頭うなずかしむることを得ん
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
僧侶ばうずが驚いて、うろ覚えの華厳経の言語ことばなど引張り出して色々頼んでみたが、広沢は二度と筆を執り上げようとしなかつた。僧侶ばうずはぶつ/\ぼやきながらも、流石に三つ四つお辞儀をして帰つた。
林藏は段々い心持に酔って来ましたので仮名違いの言語ことばで喋ります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
母親から突き放されたこの幼児の廻らぬ舌でしゃべることは、自分自身の言語ことばのように、誰よりも一番よく父親に解った。いらいらしたような子供の神経は、時々大人をてこずらすほど意地を悪くさせた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ロミオ さア、その文字もじその言語ことばってをればなう。
探偵と云う言語ことばを聞いた、主人は、急ににがい顔をして
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
中津川は美濃の國なり國境くにざかひ馬籠まごめと落合の間の十こくたふげといふ所なり國かはれば風俗も異なりて木曾道中淳朴じゆんぼくふうは木曾川の流と共にはなれてやゝ淫猥の臭氣あり言語ことばも岐阜と名古屋半交はんまぜとなり姿形すがたかたちも見よげになれり氣候も山を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
老婆は歔欷きよきして言語ことばなし
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
今夜中に助け出して、財産も他手ひとでには渡さないから、必ず御案じなさるな。と言語ことばを尽して慰むれば、うなずくようにまなこを閉じぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また斯の如く一のグイード他のグイードより我等の言語ことばの榮光を奪へり、しかしてこの二者ふたりを巣より逐ふ者恐らくは生れ出たるなるべし 九七—九九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
洋行というむずかしい言語ことばで言いあらわそうとした間違いを平気で、いってみれば、あの方がダラ幹さんという方? ときく人がある、ああしたなまはんかな
はなはだしきに至りては彼の病中余の援助を乞うにあたって——たとい数月間の看護のために余の身も精神も疲れたるにもせよ——あららかなる言語ことばを以てこれに応ぜざりし事ありたり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
唯一本の銚子に一時間もかゝりながら、東京へ行つてからの事——言語ことば可成なるべく早くあらためねばならぬとか、二人がまだ見た事のない電車への乘方とか、掏摸すりに氣を附けねばならぬとか
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
マイル言語ことば4・29(夕)
山の神や、小児連中こどもれんじゅうあごが干上るもんですから、多時しばらく扶持ふちを頂いて来いって、こんなに申しますので、お言語ことばわたりに舟、願ったりかなったりでございます。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
我見しに、かのジョーヴェの燈火ともしびの中には愛のきらめきのあるありて、われらの言語ことばをわが目に現はせり 七〇—七二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
気障きざ厭味いやみもない、言語ことばから挙動ものごしから、穏和おとなしいづくめ、丁寧づくめ、謙遜づくめ。デスと言はずにゴアンスと言つて、其度ちよいと頭を下げるといつたふう。風采は余り揚つてゐなかつた。
そのまた老爺さんの言語ことばがふるっている。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
片言をいふ間母を愛しこれに從ふ者も、言語ことば調とゝのふ時いたれば、これが葬らるゝを見んとねがふ 一三三—一三五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
言語ことばのみでなく、凡ての事が然う云つた調子で、随つて何日でも議論一つ出る事なく、平和で、無事で、波風の立つ日が無いと共に、部下したの者に抑圧はあるけれど、自由の空気がちつとも吹かぬ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひとツ人の聞馴ききなれない、不思議な言語ことばがあつたんです。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其頃、一体が不気味な顔であるけれども、まだ前科者に見せる程でもなく、ギラギラする眼にも若い光が残つて居て、言語ことばも今の様にぞんざいでなく、国訛りの「ねす」を語尾につける事も無かつた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひとひと聞馴きゝなれない、不思議ふしぎ言語ことばがあつたんです。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)