見違みちが)” の例文
うちよりけておもていだすは見違みちがへねどもむかしのこらぬ芳之助よしのすけはゝ姿すがたなりひとならでたぬひとおもひもらずたゝずむかげにおどろかされてもの
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あるがたに、不意ふいむすめかえってきました。両親りょうしんは、見違みちがえるようにうつくしく、快活かいかつになっていたのにおどろいたのです。
笑わない娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「とぼけちゃいけねえ。人間にんげん人形にんぎょう見違みちがえるほどおに七ァまだ耄碌もうろくしちゃァいねえよ。ありゃァ菊之丞きくのじょうちげえあるめえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
母親も一寸ちよつとけむに巻かれた形で進物しんもつの礼を述べたのち、「きれいにおなりだね。すつかり見違みちがへちまつたよ。」とつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
にも見違みちがへるわけのものではないが図抜づぬけあまおほきいから一寸ちよツとがつかぬであつた、なんはたけでも、甚麼どんな履歴りれきのあるぬまでも、此位このくらゐひるはあらうとはおもはれぬ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼は小父おじをどんなに見違みちがえていたことかと考えた。自分じぶんから見違えられていたために、小父はかなしんでいるのだと考えた。彼は後悔こうかいねんにうたれた。こうさけびたい気がした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
言葉遣いも教科書の通りである。本当に三ヵ月の間に、見違みちがえるように好い子になったというところだが、つまりは人工的変質へんしつをさせたのであって、人間性を失ったのである。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
まへいてちよいと子柄こがらげたよ、本当ほんたうにまア見違みちがいちまつたよ、一人でたのかい、なに近江屋あふみや旦那だんなを、ムヽはぐれて、うかい、ぢやア何処どこかで御飯ごぜんべたいが
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
少数のものは、あの女をかいたからだと云つた。会員の一二は全く大きいからだと弁解した。大きいにはちがひない。幅五寸に余る金のふちけて見ると、見違みちがへる様に大きくなつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それは全く飛ぶという言葉のあてはまったような恰好でした。私は何か見違みちがいをしたのだろうと思いかえして、両眼りょうがんをこすってみましたが、確かにその人間はフワリフワリと空中を飛んでいるのです。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
久八は我が身の後ろへ引廻ひきまはし私しが引負ひきおひに相違なくの者の仕業しわざでは御座りませぬと聞より五兵衞大いに怒りおのれ久八め今迄伊勢五の白鼠しろねずみ忠義者ちうぎものよと世間せけんでも評判うけし身ならずや此五兵衞迄然樣さやうに思ひしは大いなる見違みちがひなり扨も/\五十兩と言ふ大金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
や、あしや、かおはいっそうふかくなって、そして、見違みちがえるほどにやつれていたからです。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
眞黒まつくろげたかほなかに、だけひからして、見違みちがへるやう蠻色ばんしよくびたかれは、比較的ひかくてきとほ座敷ざしき這入はいつたなりよこになつて、あにかへりをけてゐたが、宗助そうすけかほるやいな
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
へえ、今日けふきました。女「いたえ……だから馬鹿ばかには出来できないものだよ、本当ほんたうかみさまの御利益ごりやくだよ、しかしまア見違みちがへるやうなをとこになつたよ。梅「へえ、あなたは何処どこのおかたで。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
つれて丁字屋へ出かけしが先兩三日は目見めみえに差置さしおく樣にとの事なれば其まゝに差置て長庵は歸りける丁字屋にてはお文が容子ようすたれあつ田舍娘ゐなかむすめと見る者なく傍輩はうばい娼妓しやうぎはづるばかりなれば流石さすがに長庵が骨折ほねをりあらはれし所にて在所に在し其時とは親の十兵衞さへも見違みちがへる程なれば主人半藏方にても十分氣にいりお文へ何故に身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これはゆめでないかとおどろきまして、さっそくかがみまえにいってうつった姿すがたますと、くろなつやつやしたかみがたくさんになって、そのうえ自分じぶんかおながら、見違みちがえるようにうつくしくなっていました。
夕焼け物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)