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薄縁
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うすべり
ふりがな文庫
“
薄縁
(
うすべり
)” の例文
血に染んだ部屋、檢死の後で一應清めた相で、生濕りの上に
薄縁
(
うすべり
)
などを敷いて、その上に床を取り、死骸を其處に寢かしてあります。
銭形平次捕物控:257 凧糸の謎
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
僕は始めから千代子と一つ
薄縁
(
うすべり
)
の上に坐るのを快く思わなかった。僕の高木に対して
嫉妬
(
しっと
)
を起した事はすでに明かに自白しておいた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
二人は無聊のつれづれから、
薄縁
(
うすべり
)
を敷いた縁側へ、お互にゴロリと転りながら、先刻から文字の
穿鑿
(
せんさく
)
に興じ合っているのであった。
高島異誌
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私は便所の近くの
薄縁
(
うすべり
)
を敷いた長四畳に弧坐して夜となく昼となく涙にむせんだ。自ら責めた。一切が思ひがけなかつた。恐ろしかつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
最初は椽先へ
薄縁
(
うすべり
)
を敷いて、そこへ脱刀した袴姿で坐らせて、段々と訊問したが、存外包み隠さず、ありのままを申し立てたのであった。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
▼ もっと見る
室は八坪ばかりの広さで、何の飾りけもないのがかえって
清々
(
すがすが
)
と見えた。床には、
簀掻藁
(
すがきわら
)
を
展
(
の
)
べ、そのうえに
薄縁
(
うすべり
)
が
布
(
し
)
いてある。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寝間の
粗壁
(
あらかべ
)
を切抜いて形ばかりの明り取りをつけ、藁と
薄縁
(
うすべり
)
を敷いたうす暗い書斎に、彼は金城鉄壁の思いかで、
籠
(
こも
)
っていた。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
家族が食事したり、茶を飲んだり、客を迎えたりする
炉辺
(
ろばた
)
の板敷には
薄縁
(
うすべり
)
を敷いて、耕作の道具食器の類はすべてその
辺
(
あたり
)
に置き並べてある。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
茶店とはいえ、
唯
(
た
)
だ木蔭に四つ五つの縁台を並べ、それへ
薄縁
(
うすべり
)
を敷き、其上に坐布団を置いた至って粗末な露店である。
秩父宮殿下に侍して槍ヶ岳へ
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
僕は
薄縁
(
うすべり
)
の上に
胡坐
(
あぐら
)
を
掻
(
か
)
いて、
麦藁
(
むぎわら
)
帽子を脱いで、ハンケチを出して額の汗を
拭
(
ふ
)
きながら、舟の中の人の顔を見渡した。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それでその前年かに親父は死んだのださうだが、板の間に
薄縁
(
うすべり
)
を
一板
(
いちまい
)
敷いて、その上で往生したと云ふくらゐの始末だ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
森「表は人が立つといけねえ、連れて来た人は少し怪我人の様な病人の様な変な者だが、
薄縁
(
うすべり
)
か何か敷いてくんねえ……おい友さん腰を掛けねえ」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と、毛利先生は立ち上って、自分の腰かけて居た椅子を緑川に与え、室の隅にあった
薄縁
(
うすべり
)
をもって来て床に敷かれた。
闘争
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
小さなカンテラがついているばかりで、よく分らぬけれど、柱も何もないコンクリートの壁、赤茶けた
薄縁
(
うすべり
)
、どうやら地底の
牢獄
(
ろうごく
)
といった感じである。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
畳はどんなか知らぬが、部屋一面に
摩切
(
すりき
)
れた縁なしの
薄縁
(
うすべり
)
を敷いて、ところどころ布片で、
破目
(
やぶれめ
)
が綴くってある。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
「願念寺さん、ようお越し。」と言つて、白衣に紫地五郎丸の袴を穿いた父は、禿頭を光らしつゝ、煙草盆片手に、
薄縁
(
うすべり
)
を敷き込んだ縁側まで出迎へると
ごりがん
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
小さい
薄縁
(
うすべり
)
を敷いてある火鉢の傍で、ここの
賄所
(
まかないじょ
)
から来る膳や、毎日毎日家から運んでくる重詰めや、時々は近所の
肴屋
(
さかなや
)
からお銀が
見繕
(
みつくろ
)
って来たものなどで
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
八月はじめの朝、わたしが赤坂へたずねてゆくと、半七老人は縁側に
薄縁
(
うすべり
)
をしいて、新聞を読んでいた。
半七捕物帳:34 雷獣と蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
家の
主人
(
あるじ
)
は喜んで迎へた。そして皆が
厩舎
(
うまや
)
を出て裏庭に廻つた時は、座敷の縁側に
薄縁
(
うすべり
)
を布いて酒が持ち出された。それを断るは此処等の村の礼儀ではなかつた。
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
薄縁
(
うすべり
)
を二枚、押入から取り出して、クルクルと庭へ敷き並べ、その上へ、色のさめた毛氈を一枚、申しわけのように載せて、自分はサッサと座敷へ上って参ります。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
さっきは満足な畳だと思って見たのは「
薄縁
(
うすべり
)
」とも「畳」ともつかないもので「わら」の
床
(
とこ
)
のある処もあり、ない処もある非常にでこぼこした見るから哀れなもので
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
二人は其処の
素床
(
すゆか
)
に
薄縁
(
うすべり
)
を敷いてもらって、汗を拭き、茶をのみ、菓子を食いながら眼を
騁
(
は
)
せた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
お兄様はと見返ると、
板張
(
いたばり
)
に
薄縁
(
うすべり
)
を敷いたのに、
座蒲団
(
ざぶとん
)
を肩にあて、そこらにあった煙草盆から火入れを出し、横にしたのを
枕
(
まくら
)
にして、目を閉じて寝ていらっしゃいます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
次に牀自身も二元性を表わそうとする。
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
と畳とは二元的対立を明示していなければならない。それ故に、
床框
(
とこがまち
)
の内部に畳または
薄縁
(
うすべり
)
を敷くことは「いき」ではない。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
そこは八帖ばかりの広さで、光るほど拭きこんだ板敷の上に
薄縁
(
うすべり
)
が敷かれ、——それは白い
晒木綿
(
さらし
)
で
掩
(
おお
)
われていたが、女の裸の躯はその上へ仰向けに寝かされてあったのだ。
赤ひげ診療譚:02 駈込み訴え
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「さあ、暑かつたらう。涼んでくんさい、冷たい水が汲んであるが一杯飲まつしやい。」とお光は広間の板間に
薄縁
(
うすべり
)
を敷きながら、仏壇に拝して仏間から出て来た平三に言つた。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
風は
冷
(
つめた
)
し、
呼吸
(
いき
)
ぬきかたがた、買った敷島をそこで吸附けて、
喫
(
ふ
)
かしながら、堅い
薄縁
(
うすべり
)
の板の上を、足袋の裏
冷々
(
ひやひや
)
と、
快
(
い
)
い心持で
辷
(
すべ
)
らして、懐手で、一人で桟敷へ帰って来ると
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
婆さんは汗を滴らしながら、
薄縁
(
うすべり
)
をしいて、中央へ大きなお粥の釜を据えた。そしてもう一度「みなさん御飯ですよ」と叫んだ。こうした世界にも階級があった。冬子とお幸が上席に向き合った。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
薄縁
(
うすべり
)
を敷きつめ、いちめんに蒲団を並べて寝ているのは、こけ猿の茶壺を奪還すべく、はるばる故郷柳生の郷から上京してきた高大之進の一隊、
大垣
(
おおがき
)
七
郎右衛門
(
ろうえもん
)
、
寺門一馬
(
てらかどかずま
)
、
喜田川頼母
(
きたがわたのも
)
、
駒井甚
(
こまいじん
)
三
郎
(
ろう
)
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
裏の方は根太板のままでそれに
薄縁
(
うすべり
)
が処まばらに敷いてあった。
死体の匂い
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私は台所に
薄縁
(
うすべり
)
を敷いて寝る事になったのでございます。
男女同権
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
今日は
薄縁
(
うすべり
)
三畳の檻の中
檻の中
(新字新仮名)
/
波立一
(著)
薄縁
(
うすべり
)
に
尿
(
いばり
)
して逃る蛙かな
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
血潮に汚された畳を
剥
(
は
)
がして、
薄縁
(
うすべり
)
を敷いた四畳半の上がり
框
(
かまち
)
に腰を下ろして、そう言いながらも平次は、腰の煙草入を抜きました。
銭形平次捕物控:018 富籤政談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
空いた場所の畳だか
薄縁
(
うすべり
)
だかが、黄色く光って、あたりを
伽藍堂
(
がらんどう
)
の如く
淋
(
さび
)
しく見せた。彼は高い所にいた。其所で弁当を食った。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
半蔵が
挨拶
(
あいさつ
)
に行って見たころは、
駿河
(
するが
)
は上段の間から
薄縁
(
うすべり
)
の敷いてある廊下に出て、
部屋
(
へや
)
の柱に
倚
(
よ
)
りかかりながら
坪庭
(
つぼにわ
)
へ来る雨を見ていた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それもきわめて古風な舟で、
舟縁
(
ふなべり
)
に彫刻が施してある。
真鍮
(
しんちゅう
)
の金具、青羅紗の
薄縁
(
うすべり
)
、やはり非常に独創的である。薬草道人の使用舟であろう。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
かぢ「それじゃア
疲労
(
くたび
)
れてるだろうから、あの二畳へ往って
木片
(
こッぱ
)
を隅の方へ片付けて、
薄縁
(
うすべり
)
を敷いてお
寐
(
ね
)
」
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
砂のうえに
毛氈
(
もうせん
)
や
薄縁
(
うすべり
)
をしいて、にぎり飯や
海苔巻
(
のりまき
)
の
鮓
(
すし
)
を頬張っているのもあった。彼等はあたたかい潮風に吹かれながら、飲む、食う、しゃべる、笑うのに余念もなかった。
半七捕物帳:32 海坊主
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
きたない
薄縁
(
うすべり
)
の上にぺちやんこに捩伏せた時の、Z・K氏の強い負け惜しみを苦笑に紛らさうとした顏を思ふと、この何年にもない痛快な笑ひが哄然と込みあげたが、同時に
足相撲
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
撫で下ろした柱の下から、今度は、敷いてある
薄縁
(
うすべり
)
をソッとさぐり廻して行って
八寒道中
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
言
(
い
)
ふ/\
燈心
(
とうしん
)
を
点
(
とも
)
して、
板敷
(
いたじき
)
の
上
(
うへ
)
へ
薄縁
(
うすべり
)
を
伸
(
の
)
べたり、
毛布
(
けつと
)
を
敷
(
し
)
く……
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
どの部屋も六帖であるが、窓は北に向いていてうす暗く、畳なしの床板に
薄縁
(
うすべり
)
を敷いただけという、いかにもさむざむとした感じだった。窓の下に古びた小机があり、
蒲
(
がま
)
で編んだ
円座
(
えんざ
)
が置いてある。
赤ひげ診療譚:01 狂女の話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私の寝台の下に
薄縁
(
うすべり
)
を敷いて、その上の薄い蒲団の上に縮まつて寝て居たが、私は夜更などに眼を覚して、明るい電燈の光に照らされた父の
赭
(
あか
)
ら顔を寝台の上から眺めやつて、懐しさと感謝の念とに
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
たった一枚の
薄縁
(
うすべり
)
、後ろ手に両手を突いて、胸を反らせて大きい呼吸をする女の肩が、ともすれば男の肩に触れて——あッ、又あの馥郁たる異香が——
奇談クラブ〔戦後版〕:12 乞食志願
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
呼出しになりました時に、五郎治の
弟
(
おとゝ
)
四郎治が
罷
(
まか
)
り出ます事になりお縁側の処へ
薄縁
(
うすべり
)
を敷き、其の上に遠山權六が坐って居ります。お目付は正面に居られます。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
薄縁
(
うすべり
)
の敷かれた長廊下には、現在諸家から持ち運ばれた無数の音物が並べられてあった。屏風類、書画類、器類、織物類、太刀類、印籠類、等々の音物であった。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
船の軒にかけてあるほおずき
提灯
(
ちょうちん
)
や、そこらに敷いてある毛氈や
薄縁
(
うすべり
)
のたぐいは、何者かに引っ掴まれたように
虚空
(
こくう
)
遙かに巻きあげられた。人々は悲鳴をあげてうろたえ騒いだ。
半七捕物帳:32 海坊主
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
浪人者の乗っている、燈火のついていない屋形船から、一本の小柄が投げ出されて、三人の兄弟の乗っている、屋形船の障子をつらぬいて、
薄縁
(
うすべり
)
の上へ落ちたことである。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
入口寄りの方は綺麗に
掃
(
は
)
き清めて、一部には
薄縁
(
うすべり
)
などを敷いてあり、南の方に小さい窓が切つてあつて、頭の上は奧の方だけが頑丈な半二階で、其處にもガラクタが入つて居る樣子です。
銭形平次捕物控:220 猿蟹合戦
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
薄
常用漢字
中学
部首:⾋
16画
縁
常用漢字
中学
部首:⽷
15画
“薄”で始まる語句
薄
薄暗
薄紅
薄明
薄暮
薄荷
薄闇
薄汚
薄氷
薄墨