筋肉きんにく)” の例文
勘次かんじには主人しゆじんうち愉快ゆくわいはたらくことが出來できた。かれ體躯からだむし矮小こつぶであるが、そのきりつとしまつた筋肉きんにく段々だん/″\仕事しごと上手じやうずにした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これも、ほがらかな秋を謳歌おうかする人間か、きいていても筋肉きんにくがピクピクしてきそうな口笛だ。健康けんこう両足りょうあしで、軽快けいかい歩調ほちょうで、やってくるのがわかるような口笛だ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鹿猪等の骨を見るに筋肉きんにく固着こちやくし居りし局部にはするどき刄物にてきづを付けしあと有り。此は石にてつくれる刄物はものを用ゐて肉を切りはなしたる爲にしやうぜしものたる事疑ふ可からず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
老師らうしといふのは五十格好がつかうえた。赭黒あかぐろ光澤つやのあるかほをしてゐた。その皮膚ひふ筋肉きんにくことごとくしまつて、何所どこにもおこたりのないところが、銅像どうざうのもたらす印象いんしやうを、宗助そうすけむねけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
試験はかえる筋肉きんにくを取ってこまやかな糸のごとき一部分をはかりにかけて、この筋肉をもっておのれの重量の何倍ある物質をささえうるか。すなわち筋肉きんにくの力を証明する主意と心得た。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
足のかたちでもこし肉付にくつきでも、またはどうならちゝなら胸なら肩なら、べて何處どこでもむツちりとして、骨格こつかくでも筋肉きんにくでも姿勢しせいでもとゝのツて發育はついくしてゐた。加之それにはだしろ滑々すべ/″\してゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
筋肉きんにくのあたりを延びて行く…………
メランコリア (旧字旧仮名) / 三富朽葉(著)
かれはさうでなくてもかつてはき/\とくちいたこともなく、殊更ことさら勘次かんじたいしてはしなびたかほ筋肉きんにくさらしがめてるので
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
どれもこれも山男のようなたくましい筋肉きんにくと、獰猛どうもう形相ぎょうそうをもっていて、尻切襦袢しりきりじゅばんへむすんだ三じゃくおびこしには、一本ずつの山刀やまがたなと、一本ずつの鉱石槌かなづちをはさんでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宗助そうすけならんでゐるものも、一人ひとりとしてかほ筋肉きんにくうごかすものはなかつた。たゞ宗助そうすけこゝろなかで、おくからの何物なにものかをけた。すると忽然こつぜんとしてれいひゞきかれみゝこたへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はなはだ例が不吉ふきつであるが、精神病院にいってみると、やさしい女の乱暴するのをめるために大男が五人もかかることを見ると、いかに女の筋肉きんにくに力のひそんでいるかに驚かされる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かれなはふにも草鞋わらぢつくるにも、それある凝塊しこりすべての筋肉きんにく作用さよう阻害そがいしてるやうで各部かくぶ疼痛とうつうをさへかんずるのであつた。器用きようかれ手先てさき彼自身かれじしんものではなくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
はだ筋肉きんにくさむかぜ抵抗ていかうして、一時いちじ緊縮きんしゆくするやうふゆ心持こゝろもちするどくるうちに、ある快感くわいかんおぼえたので、宗助そうすけ御米およねもあゝうちにばかりいてはくない、氣候きこうくなつたら
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
均斉きんせいのとれた四筋肉きんにくの見事さ。春とは見ちがえるばかり背丈ぜいも育っている。