あたし)” の例文
それであたしもっぱら案内役をうけたまわったんで、何か御覧になりたいものはって云ったら、阪神間の代表的な奥さんに会わせろってっしゃるの
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あたし吃驚びっくりしていると、その手でひとつ、招き猫のような格好をしておいて、鼻の下へもっていって差恥はにかんだように首を縮めて笑う。
新吉は微温ぬるい茶をんで出しながら、「あたしなんざ駄目です。小野君のように、体に楽をしていて金をける伎倆はたらきはねえんだから。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
さ「えゝあたしア是まで寸白すばくを知りませんよ、それに此間こないだは又結構なお香物こう/\をくだすって有難うございました、あれさ、お重ねよう」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
沢子 ——秋ちやん、——あんたはあたしには、本当の姉さんの様に思へる。秋ちやんが居なかつたら私、もうとつくに死んでしまつてゐるわ。
疵だらけのお秋 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
「それどころか、恐ろしい病気にかかってるあたしの子供もね、助けがなくて死ぬようなこともないでしょう。これで安心だわ。」
人を入て別話わかればなしを持出したから、あたしゃもう踏んだりたりの目に逢わされて、口惜くやしくッて口惜しくッて、何だかもうカッと逆上のぼせッちまって
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
その賞与だって、そっくりあたしの手に渡してくれるんじゃないんだからね。だけど近頃じゃ私たち二人はまあ隠居見たようなもので、月々食料を
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「もしもし姉さん、あたし……わかった? 今ねえあたし中西屋さんに居んのよ、よれよれって云うんだもの……姉さん来ない? え? いらっしゃいよ、よ、ね?」
町の展望 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
あたしどうしたんですか、歸る途中で急に息が苦しくなつて歩けなくなつたものですから、どうしたらいゝかと思つて、少らくあそこのところで休んでゐました
金魚 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
思ひ返して父に向ひ「ナニネお父さん、おッ母さんは今に帰つて来るだらふよ。何ぞ用ならその間、あたしが」
小むすめ (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「お気の毒さまですね。あたしすつかり身につまされちまつた。と言ふのはね……」と小説本を大事さうに畳みながら、「うちの人もちやうど御主人と同じやうな病気でね。」
「では、あたしがとんでまいりましては?」と、オウムがかごの中から、羽ばたきをして言いました。
金のくびかざり (新字新仮名) / 小野浩(著)
「でも、あたし、急に怖くなつたんですもの、——濟みませんけれど、八五郎さん代つて下さいな」
まアそれで勘弁しておくれよ。出入ではいりするものは重にあたしばかりだから私さえ開閉あけたてに気を
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「あなたがたがどなたも来て下さらないなら、ジムとあたしが行きます。」と母が言った。
まあなん上手じょうずあし使つかことったら! それにからだもちゃんとぐにててるしさ。ありゃ間違まちがいなしにあたしさ。よくりゃ、あれだってまんざら、そうっともなくないんだ。
あたしア、置いてってくださいな、この土地へ」
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「……どうです。あたしが云った通りでしょう」
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あたしたちだって助けてやる心算つもりでしたわ。」
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
『叔父さんがあたしに同情してるわ。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あたしうちでも、いくつ弓張りや手丸提燈てまるちょうちんを入れて出してやったかわからない。議事堂です、議事堂ですと、各自みんなが口々に言った。
「今度はあたしが人間で三人犬にならないか。私がお菓子や何かを投げてやるから、みんな四つ這いになって其れを喰べるのさ。ね、いゝだろ」
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
無かろうもんならまた何時いつうかのようなつらい思いをしなくッちゃアならないやアネ……だからあたしが言わないこっちゃアないんだ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「なにこりゃあたし持前もちまえだから仕方がない。昔からふとった事のない女なんだから。やッぱりかんが強いもんだからね。癇で肥る事が出来ないんだよ」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
兼「あたしも御新造様を竹ヶ崎までお送り申して、帰りにゃア是非半ちゃんに逢いいからあたしの来た事を知らしてお呉れな」
どうしてあんな奴をこの辺にほうっておくんでしょう。あたしの前歯二本を抜けなんて、ほんとに恐ろしいわ。髪の毛ならまたえもしようが、歯はね。
「死んでもかまわないって云うのが本当だということは分っているけれどね……あたしはそれはこまるんです」
そうすると女は、途中で、あんまり遠いから、あたしはよしてうちへかえりたいと言いました。ギンは
湖水の女 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「あるとも言い、ないとも言うが、あたしは見たことがないから何とも言えませんよ」
あたしはまアそんなことは仕ない積りだが、それでも、ツイ忘れることが有るからね、お前さんも屑屋なんかに気を附けておくれよ。木戸から入るにゃ是非お前さんうちの前を通るのだからね」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あたしあ、うんとガアガアってやったけど、からっきし駄目だめ! なんとしてもみずれさせること出来できないのさ。まあもっとよくせてさ、うん、うん、こりゃあ間違まちがいなし、七面鳥めんちょうたまごだよ。
あたしは、お目ざめのうたをうたって上げるわ。」と、オウムは言いました。
金のくびかざり (新字新仮名) / 小野浩(著)
あたしなんか一晩中ふるえていたわ。
青年と死 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あたしはときものの興味を、今でも多分にもっている。背筋の上から、ずっと下の針止めにはさみを入れておいて、ツーと一筋に糸をぬくのがすきだ。
だからお勢みたようなこんな親不孝なもんでもそう何時までもお懐中ぽっぽあすばせてもおけないと思うと私は苦労で苦労でならないから、此間こないだあたしがネ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
これはあたしでないとめんと向って誰もあなたに云えない事だと思うから云いますがね。——お秀さんに智慧ちえをつけられて来たと思っては困りますよ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そんな会社の名、あたしは聞いたことあれへなんだ。———本店は巴里パリにあって、大資本の会社やねんてなあ」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
小言こごとはれたので態々わざ/″\買ひにたんです、うかあたしさゝうな世辞せじがあるなら二ツ三ツ見せて下さいな。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おくみさん、もうおやすみなさいな。十二時よ。あたしもそろ/\目をつぶりかけるわ。」
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
「懲りてるのさあたし、この前名古屋へ行った時、全くどこ歩いてるのか分らなかった」
町の展望 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「まあおめでたい人たちだわ。四十フランですとさ。ねえ、ナポレオン金貨二つだわ。どうしてあたしにそんなお金がもうけられると思ってるんでしょう。ばかなものね、この田舎の人たちは。」
それに御宅は御人数ごにんずも多いんだから入用いることも入用サね。あたしのとこなんか二人きりだから幾干いくら入用いりゃア仕ない。それでも三銭五銭と計量炭はかりずみを毎日のように買うんだからね、全くやりきれや仕ない
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あたしの歩き人形にはおくつを二つ。
金のくびかざり (新字新仮名) / 小野浩(著)
あたしだって彼様あんな窮屈なとこくよか、芝居へ行った方が幾らいか知れないけど、石橋さんの奥様おくさんに無理に誘われてことわり切れなかったンだもの。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ここで一言いわせてもらえば、ここまで書いてきた日本橋で、あたしという子供が、すこしでも小利口に見えるようならば、書きかたが大変わるく、なっていないのだ。
「でも比田のいるうちは、いくら病身でも無能やくざでもあたしが生きていてらないと困るからね」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「やっぱりあたしが不注意やってんなあ。電話かけたりする時に何とかあの人に分らんような云い方もあってんけど、まさか子供にせたりするとは思てえへんよってに、………」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「すゞ子ちやんあたしもこんちは。」と、それは/\おほよろこびでかう言ひました。
ぽつぽのお手帳 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
ねえさん旦那だんなはあれツきりらつしやらないか、らつしやらないかツて、度々たび/\あたしきますから、ナニ早晩いまに屹度きつとらつしやるから其様そんなに心配しんぱいをおしでないよツて、つてるんですもの
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)