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うるお
ふりがな文庫
“
潤
(
うるお
)” の例文
生暖い街は
潤
(
うるお
)
いを帯びて見えた。不安と険悪さは夜になる程ひどくなった。それを恐れないのは、マアタイにくるまった乞食だけだ。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
「日本酒よりかえっていいのよ。後で頭が痛くならないから。」と
咽喉
(
のど
)
の焼けるのを
潤
(
うるお
)
すために、飲残りのビールをまた一杯干して
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
神像のような口と
頤
(
おとがい
)
、——その色合が純然たる暗褐色から濃いきらきらした黒玉色へ変る、異様な、烈しい、
円
(
つぶら
)
な、
潤
(
うるお
)
いのある
眼
(
まなこ
)
しめしあわせ
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
大震災以後土地の気分がこわれた上に鉄道が開通し自動車の世の中になってからは町全体が昔の様な
潤
(
うるお
)
いが欠けてしまった感じがする。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何処かしっとりした
潤
(
うるお
)
いに欠けてい、道行く人の顔つき一つでも変に冷たく白ッちゃけているように見えるのは
何故
(
なぜ
)
であろうか。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
悉
(
ことごと
)
く水田地帯で、陸羽国境の
山巒
(
さんらん
)
地方から
山襞
(
やまひだ
)
を
辿
(
たど
)
って流れ出して来た荒雄川が、南方の丘陵に沿うて耕地を
潤
(
うるお
)
し去っている。
荒雄川のほとり
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
しかし、
彼女
(
かのじょ
)
のものの考え方には、どことなく
面白
(
おもしろ
)
いところがあったので、
家
(
うち
)
の
中
(
なか
)
のつまらない
仕事
(
しごと
)
もそのために
活気
(
かっき
)
づき、
潤
(
うるお
)
いが
生
(
しょう
)
じた。
母の話
(新字新仮名)
/
アナトール・フランス
(著)
習慣的に抑制されて穏かになっている顔は、
潤
(
うるお
)
いのあるきらきらした一双の眼のために、例の一風変った
仮髪
(
かつら
)
の下で始終明るくされていた。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
早熟な彼女は、身体こそ少年の様にしなやかであったが、睫毛の長い二かわの目には、已に大人の
媚
(
こび
)
と
潤
(
うるお
)
いをたたえていた。
江川蘭子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しまもとき/″\
潤
(
うるお
)
いにあずかれる金銭上のことにかけても気前のよい人たちでした。たゞ一人、池上だけは、しまはあまり好きませんでした。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
紅
(
くれな
)
いは眼の
縁
(
ふち
)
を薄く染めて、
潤
(
うるお
)
った
眼睫
(
まつげ
)
の奥から、人の世を夢の底に吸い込むような光りを中野君の方に注いでいる。高柳君はすわやと思った。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
不思議な輝きと
潤
(
うるお
)
いがあり、情味と魅力においては、旧時代のあらゆるソプラノを圧倒したばかりでなく、年齢のハンディキャップさえなければ
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
追う気もなく、騎虎の勢いで自斎が四、五丁駈け散らして来たが、益もないことと思い返して、そこから見えた川床へ、渇いた喉を
潤
(
うるお
)
しに降りて行った。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大粒な黒眼に激しい
潤
(
うるお
)
いを湛えて、沈鬱な口調で主人の上にふりかかった恐ろしい災禍について語るのだった。
死の快走船
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
濃い眉毛に大きな眼に——その眼はいつも
潤
(
うるお
)
っていて、男の心をそそるような、
艶
(
なまめ
)
きと媚びとを持っていた。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
柔らかな、
潤
(
うるお
)
いの乏しい、大きく開いた子供の眼は、
曈々
(
とうとう
)
として上る朝日の光りを避けた。真昼の光りでさえ、この弱い子供の眼は、瞳に映るのを怖れている。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
かく久しく断食した人が定を出たら
酥油
(
そゆ
)
を注いで全身を
潤
(
うるお
)
し、さて犍稚を鳴らして
寤
(
さ
)
ますがよいと答えた。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
重々しい調べのうちに甘い
潤
(
うるお
)
いもあり珍しいものだが、明かに人麿作と記されている歌に旋頭歌は一つもないのに、人麿歌集には
纏
(
まと
)
まって旋頭歌が
載
(
の
)
って居り
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
そこらが一ト片着き片着いてしまうと、
衆
(
みんな
)
は火鉢の傍へ寄って、母親が
汲
(
く
)
んで出す朝茶に
咽喉
(
のど
)
を
潤
(
うるお
)
した。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
シネクネと
身体
(
からだ
)
にシナを付けて、語音に
礼儀
(
れいぎ
)
の
潤
(
うるお
)
いを持たせて、
奥様
(
おくさま
)
らしく気取って挨拶するようなことはこの細君の大の
不得手
(
ふえて
)
で、
褒
(
ほ
)
めて
云
(
い
)
えば
真率
(
しんそつ
)
なのである。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私が特に農村の副業としてかかる品の発展を熱望する
所以
(
ゆえん
)
は、これによってただに北国の貧村が
潤
(
うるお
)
うのみでなく、真に地方的な産物として栄えると思えるからである。
蓑のこと
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
彼は、正木の家でのように、自由にたらふく食うことは出来なかったが、何かしら、これまでに知らなかった食卓の
潤
(
うるお
)
いというものを、子供心に感ずることが出来た。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
といいながらおぬいさんを見ると、書物に見入っているとばかり思っていたその人は、
潤
(
うるお
)
いの細やかなその眼をぱっちりと開けて、探るように彼を見ているのだった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
が、その娘らしい表情と
潤
(
うるお
)
いのある肉声とは、容易にイワノウィッチの心に食い入ってしまった。
勲章を貰う話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
支那はいまこの科学の力に依って、大にしては列国の侵略と戦い、その独立性を保全し、小にしては民衆個々の日常生活を
潤
(
うるお
)
し新生の希望と努力をうながすべきである。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
青沼は無言のまましかも彼自身の気のせいか、眼を
潤
(
うるお
)
わせながら、数回頭を下げて
挨拶
(
あいさつ
)
した。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
概念的に明確な漢詩は叙情的に
潤
(
うるお
)
うた律動の細かい唐詩に変わった。そうしてこの偉大な変遷の時代が、推古より天平に至る我々の時代と、ちょうど相応じているのである。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
この水がインドへ指して来てインドを
潤
(
うるお
)
して居るから、そこでこの四大河の根源の池のある所の事を取ってこの地方全体の名にすることは当り前の事であるという考えから
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
これという実も花も持たぬままに、
潤
(
うるお
)
いを求めて地を這いまわる
蘚苔
(
こけ
)
のようなもの、又は風に任する浮草式生活の気楽さに囚われている者に到っては殊に夥しいのであります。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私は、過ぎし水と山の旅を追想しては、貧困な人生にせめて
潤
(
うるお
)
いを求めているのである。
利根川の鮎
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
これが村の
潤
(
うるお
)
いになるから、父は評判が好かった。もう一方東金家も作り酒屋として着々発展した。東金君のお父さんは父と違って、ナリもフリも構わない。真黒になって働く。
村一番早慶戦
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
その感じは祈りとか望みとかいうような、すべての
潤
(
うるお
)
うた感じを殺してしまうようないやなものでした。いったいこの島にはえている草や木はどうしてこんなに
醜
(
みにく
)
いのでしょう。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
「アララギ」第六巻第三号で「歌の
潤
(
うるお
)
い」という歌論のもとで、大いに
褒
(
ほ
)
められ、それが先生の最後に近い歌論ともなったことは、私にとってまことに感銘のふかいところである。
左千夫先生への追憶
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
そのとき干した貝が水にほとびるように、両方の目に
潤
(
うるお
)
いが出た。女は目があいた。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それが、この春久し振りに郷里の家に帰って暮すようになってからは、どうも、もう昔のような
潤
(
うるお
)
いのある姿が、この樹木からさえ
汲
(
く
)
みとれないのを、つくづく私は奇異に思っていた。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
なれども悲しいかな国は今、その小判に欠けておる。これを救うは異人共との交易があるのみじゃ。交易致さば国に小判が流れ入るは
必定
(
ひつじょう
)
、小判が流れ入らば水じゃ。低きを
潤
(
うるお
)
す水じゃ。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
この一見まずい材料をもってして、貴族、名門の口を
潤
(
うるお
)
すべき料理を考案しなければならなかった。こうした材料、こうした土地柄が、立派な料理の花を咲かせたのは理の当然といえよう。
味覚馬鹿
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
この際余は口の内に一種の不愉快を感ずると共に、
喉
(
のど
)
が
渇
(
かわ
)
いて全く
潤
(
うるお
)
いのない事を感じたから、用意のために枕許の盆に載せてあった甲州
葡萄
(
ぶどう
)
を十粒ほど食った。何ともいえぬ旨さであった。
九月十四日の朝
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
雨脚
(
あまあし
)
の強弱はともかくも、女は
雨止
(
あまや
)
みを待つもののごとく、静に薄暗い空を仰いでいた。額にほつれかかった髪の下には、
潤
(
うるお
)
いのある大きな
黒瞳
(
くろめ
)
が、じっと遠い所を眺めているように見えた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼はその椀を
執
(
と
)
って脂肪の浮いたその汁に口をつけた。それは旨いとろりとする味であった。……省三は乾いた
咽喉
(
のど
)
をそれで
潤
(
うるお
)
していると、眼の前に青あおとした
蘆
(
あし
)
の葉が一めんに見えて来た。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
少し
尻
(
しり
)
さがりの眼も細かったが、絶えず
羞
(
はにか
)
んでいるような
潤
(
うるお
)
いがあり、人に目礼をしたり話しかけたりするときには、まるで恋でも語りかけるのかと思うほど、その眼の潤いが情熱的にみえた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして精神のうちにさわやかな柔らかい
潤
(
うるお
)
いを生じさして、
醇乎
(
じゅんこ
)
たる思索の、あまりに
峻厳
(
しゅんげん
)
な輪郭をなめらかにし、処々の欠陥や
間隙
(
かんげき
)
をうずめ、全体をよく結びつけ、観念の角をぼかしてくれる。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その代りに彼は、妹の頬に浮んでいる美しい赤い血の色や、よく
潤
(
うるお
)
うている口の中や、その奥で見え隠れしている宝玉のような光沢を持った純白な歯やに我れにもなくじっと見入っているのであった。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
矢張草葺だが、さすがに家内何処となく
潤
(
うるお
)
うて、屋根裏には一ぱい玉蜀黍をつり、土間には寒中
蔬菜
(
そさい
)
を
囲
(
かこ
)
う
窖
(
あなぐら
)
を設け、
農具
(
のうぐ
)
漁具
(
ぎょぐ
)
雪中用具
(
せっちゅうようぐ
)
それ/″\
掛
(
か
)
け
列
(
なら
)
べて、
横手
(
よこて
)
の馬小屋には馬が高く
嘶
(
いなな
)
いて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
老いの眼はもう涙に
潤
(
うるお
)
ってる。母はずっと省作にすり寄って
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
「
戯
(
ふざ
)
けなさんな。とにかく、ここで咽喉を
潤
(
うるお
)
して行こう」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「なるほど、そう言われて仔細に見ると、地鉄に
潤
(
うるお
)
いがあって、弱いようなところに深い強味がある、全く拙者共の目の届かぬも道理」
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
豺は、それから、なみなみと
注
(
つ
)
いだ一杯の酒で
咽
(
のど
)
を
潤
(
うるお
)
したり、頭のタオルを取替えたりして元気をつけると、二番目の食物を集めにかかった。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
そして、目全体の感じが、ガラス玉みたいに、滑っこくて、固くて、しかもひからびた様に、
潤
(
うるお
)
いがなくなっていた。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
仮りに共鳴を起さぬように
石膏
(
せっこう
)
のごとき練り物がよいとしても、材料そのものが音を吸収してしまって、
潤
(
うるお
)
いもなく光もないふやけた音になってしまう。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
潤
常用漢字
中学
部首:⽔
15画
“潤”を含む語句
浸潤
湿潤
潤沢
利潤
谷崎潤一郎
潤色
潤滑油
秀潤
刪潤
温潤
潤筆料
潤味
徳潤
辻潤
迂潤
豊潤
潤州
潤澤
岡本潤
鮮潤
...