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滾
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こぼ
ふりがな文庫
“
滾
(
こぼ
)” の例文
心の中では男泣きに涙を
滾
(
こぼ
)
して居りますが、私はそれと反対で日々夜々何一つの不安をも感ぜず、喜ばるるばかりでございます。
ある抗議書
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「それはゴールデン・バットについてなのだ。君はあすこの床の上に、バットがバラバラ
滾
(
こぼ
)
れているのに気がつかなかったかい」
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それでも
狡獪
(
かうくわい
)
な
雀
(
すゞめ
)
の
爲
(
ため
)
に
籾
(
もみ
)
のまだ
堅
(
かた
)
まらないで
甘
(
あま
)
い
液汁
(
しる
)
の
如
(
ごと
)
き
状態
(
じやうたい
)
をなして
居
(
ゐ
)
る
内
(
うち
)
から
小
(
ちひ
)
さな
嘴
(
くちばし
)
で
噛
(
か
)
んで
夥
(
したゝ
)
かに
籾殼
(
もみがら
)
が
滾
(
こぼ
)
された。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
Fは、いつもこの鸚鵡のことを「怠け鸚鵡」と叱つて、何を教へても少しも覚えないと
滾
(
こぼ
)
してゐたので、私はさういふ名前を与へたのだつた。
鸚鵡の思ひ出
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
種彦初め一同は一時に酒の酔を
醒
(
さ
)
ましてしまった。女中はもう涙をほろほろ
滾
(
こぼ
)
しながら相手選ばず事情を訴えようとする。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
私の望んでいた、たった一つの活路! それも今は全く絶たれてしまったのだろうか。私はもう涙も
滾
(
こぼ
)
れなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
そして、抱き起された為か、その傷口から
滾
(
こぼ
)
れ出る血潮が、恰度、その深紅の水着が、海水に溶けたかのように、ぽとり、ぽとりと、垂れしたたっていた。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
と
飛
(
と
)
び
退
(
さが
)
って両手をつかえた老骨は、それより他の言葉が出ぬほどな感激に
昂
(
たかぶ
)
らされてぼろぼろと涙を
滾
(
こぼ
)
した。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其時は寂心馬に打乗り威儀かいつくろいて路を打たせていたが、
忽
(
たちま
)
ち
滾
(
こぼ
)
るように馬から
下
(
くだ
)
り、あわてて走り寄って、なにわざし給う御房ぞ、と
詰
(
なじ
)
り
咎
(
とが
)
めた。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
葉子は折れた万年筆を
叩
(
たた
)
きつけて、インキの
壜
(
びん
)
も
破
(
わ
)
ってしまった。インキがたらたら畳のうえにまで
滾
(
こぼ
)
れた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それでも左官といふ商賣は辛いものだと
滾
(
こぼ
)
し拔いてゐるんですよ。そりやまあ寒いときに泥いぢりをするんですから、どうで樂な仕事ぢやありませんけれど……。
俳諧師
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかも雨後の
雫
(
しずく
)
は
燦々
(
さんさん
)
と所在の
岩角
(
がんかく
)
、洞門にうち響きうち響き、降るかとばかりに
滾
(
こぼ
)
れしきる。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
門柱の
傍
(
そば
)
に松葉
牡丹
(
ぼたん
)
が咲き
滾
(
こぼ
)
れている。浅田は少年時代の記憶に関係したある寺院の境内の光景を目に浮べた。湿っぽい線香の
匂
(
にお
)
いまでが、身の
周囲
(
まわり
)
に漂っているのを感じた。
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
と云ううちに奈良原翁の巨大な両眼から、熱い涙がポタポタと
滾
(
こぼ
)
れ落ちるのを筆者は見た。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私はそのときあの西国巡礼の歌を聞いてもすぐに涙の
滾
(
こぼ
)
れるような気持ちであった。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
開場式さえあげれば入金の道がつくので、それを目当にして高利貸の手から短かい期限で、涙の
滾
(
こぼ
)
れるような利子の一万円を借入れ、新築披露の宴を張り、開場式を華々しく挙行した。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
相手は急に
間誤間誤
(
まごまご
)
し出して、と、と、飛んでもねえ、と、ムキになって否定しましたが、
不図
(
ふと
)
パセティックな調子となり、でも、
沁々
(
しみじみ
)
考げえりゃあ
他人事
(
ひとごと
)
じゃ御座んせん、と
滾
(
こぼ
)
しました。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
「はい」と言ったまま、娘はきゅうに下を向いて、はらはらと涙を
滾
(
こぼ
)
した。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
若さの匂いが
滾
(
こぼ
)
れ出すような水々しい肌に喪服の黒はよく似あう。
顎十郎捕物帳:24 蠑螈
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
勘五郎の返事を
背後
(
うしろ
)
に聴いて、平次は穴倉の中に入って行きました。入口の石の上に、したたか
蝋涙
(
ろうるい
)
が
滾
(
こぼ
)
れているだけ、穴倉の中には、埃が一寸ほども積って、人の入った様子などはなかったのです。
銭形平次捕物控:073 黒い巾着
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
口をすぼめて、
滾
(
こぼ
)
れでる微笑をおし殺して彼は云うのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
加奈江の母親も明子の母親も
愚痴
(
ぐち
)
を
滾
(
こぼ
)
した。
越年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
鰹節
(
かつおぶし
)
や生米を
噛
(
かじ
)
って露命を
繋
(
つな
)
ぎ、
岩窟
(
いわや
)
や樹の下で、雨露を
凌
(
しの
)
いでいた幾日と云う長い間、彼等は一言も不平を
滾
(
こぼ
)
さなかった。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そこで帆村は、屍体発見当日、手洗所の鏡の前に、フランス製の
白粉
(
おしろい
)
が
滾
(
こぼ
)
れていたことなどを検事のために話して聞かせた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その上を私の足跡だけが、一筋に、はらはらと小魚のやうに
滾
(
こぼ
)
れてゐます。——私は、はるか向方の着物のところまで足跡を追うて、見渡しました。
晩春の健康
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
現在の、櫓の上に、陽をあびて立った、黒吉の心は、幸福が、歓喜の浪に乗って、惜気もなく
滾
(
こぼ
)
れていた。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
彼等
(
かれら
)
はじり/\と
喉
(
のど
)
が
焦
(
こ
)
げる
樣
(
やう
)
に
感
(
かん
)
じても
苦
(
にが
)
い
顏
(
かほ
)
を
蹙
(
しか
)
めつゝ
飮
(
の
)
んで
見
(
み
)
る
者
(
もの
)
さへある。
比較的
(
ひかくてき
)
少量
(
せうりやう
)
な
酒
(
さけ
)
が
注
(
つ
)
ぐ
度
(
たび
)
に
手
(
て
)
にする
度
(
たび
)
に
筵
(
むしろ
)
の
上
(
うへ
)
に
滾
(
こぼ
)
れても
彼等
(
かれら
)
は
惜
(
をし
)
まない。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「わたしはあれを買った万さんを
識
(
し
)
っているが、安物買いの銭うしないで、とんだ食わせものを背負い込んだと、しきりに
滾
(
こぼ
)
しぬいていましたよ。はははははは」
半七捕物帳:27 化け銀杏
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
胃腸の弱い瀬川はたまに猪口を手にするだけで、
盃洗
(
はいせん
)
のなかへ
滾
(
こぼ
)
し滾しして、
呑
(
の
)
んだふりをしていたが、お茶もたて花も
活
(
い
)
け、
庖丁
(
ほうちょう
)
もちょっと腕が利くところから、
一廉
(
いっかど
)
の食通であり、(未完)
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
其の時刻ともなれば亭主の放蕩に女らしい
愚痴
(
ぐち
)
を
滾
(
こぼ
)
す事すら諦らめて了い、水仕事と育児労働と、——子供は生来の虚弱体質で絶えず腸カタルやら風邪に冒されて居て手の掛る事は並大抵で無く
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
「あれ……そんな事を遊ばしてはいけません。……
滾
(
こぼ
)
れます、お茶が」
柳生月影抄
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いい煙だ、寂しいいい紅葉だ、せめてもう少し温まつてと、紅葉を焚いて、枝の紅葉ももう末かと仰いで見れば、はらはらとまた
滾
(
こぼ
)
れてくる。もういい、もういい、いい程に焚いて朝飯にしませう。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
勘五郎の返事を
背後
(
うしろ
)
に聽いて、平次は穴倉の中に入つて行きました。入口の石の上に、したゝか
蝋涙
(
らふるゐ
)
が
滾
(
こぼ
)
れてゐるだけ、穴倉の中には、埃が一寸ほども積つて、人の入つた樣子などはなかつたのです。
銭形平次捕物控:073 黒い巾着
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
美奈子は、朝母と顔を見合すと、運動会の日を雨に降られた少女か何かのやうに、
滾
(
こぼ
)
すやうに言つた。瑠璃子には美奈子の失望が分らなかつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
丈太郎は伯父の死体を見ると、ハラハラと
泪
(
なみだ
)
を
滾
(
こぼ
)
した。そして後をふりかえって係官の前にツカツカと進むより、ヒステリックな声で
喚
(
わめ
)
きたてた。
人造人間事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
道理で、昏々と眠つてゐた私は、月から
滾
(
こぼ
)
れ落ちる冷い滴が、乾いた喉をうるほすのに足りないで、水に浮んだ魚の姿で夢中になつてパクパクと滴を貪つてゐた。
環魚洞風景
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
「
兼
(
かね
)
さんすつかり
惚
(
ほれ
)
られつちやつた」と
風呂桶
(
ふろをけ
)
の
傍
(
そば
)
からいつた。おつぎは
顏
(
かほ
)
を
赧
(
あか
)
くして
慌
(
あわたゞ
)
しく
手桶
(
てをけ
)
を
持
(
も
)
つて
遁
(
に
)
げた。一
杯
(
ぱい
)
に
汲
(
く
)
んだ
手桶
(
てをけ
)
の
水
(
みづ
)
が
少
(
すこ
)
し
波立
(
なみだ
)
つて
滾
(
こぼ
)
れた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
そして又、ぴったりと身についた水着からは、
滾
(
こぼ
)
れるような魅惑の線が、すべり落ちている……。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「殿様のお
咳
(
せき
)
の薬を、
御書
(
ごほん
)
を取りのける
弾
(
はず
)
みに、つい
滾
(
こぼ
)
してしもうて」
柳生月影抄
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
滾
(
こぼ
)
れもあへず、
下葉
(
したは
)
の
面
(
おもて
)
をゆり動かせば
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
憤りの涙も
滾
(
こぼ
)
れるのだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
美奈子は、朝母と顔を見合すと、運動会の日を雨に降られた少女か何かのように、
滾
(
こぼ
)
すように言った。瑠璃子には美奈子の失望が分らなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
敬二は自分の
頬
(
ほ
)
っぺたをギュッとつねってみたが、やっぱり目から涙が
滾
(
こぼ
)
れおちるほどの痛みを感じたから。
○○獣
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今は隈なくすき透つて藻の蔭に沈んでゐる蒸汽船や瀬戸物の破片などまでがはつきりと見えたし崖の小笹の間から
滾
(
こぼ
)
れる水を招んで気ながに湛えた泉水の水なので
村のストア派
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
饑
(
ひも
)
じさと、恐ろしさと、苦痛と、寒気と、そして他の座員の嘲笑とが、もう毎度の事だったが、黒吉の身の周りに、
犇々
(
ひしひし
)
と迫って、思わずホロホロと
滾
(
こぼ
)
した血のような涙が、荒削りの床に
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
ほろほろと涙が
滾
(
こぼ
)
れ落ちそうになる。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
「その物語にある莫大な財産というのは、僅かこればかりの
滾
(
こぼ
)
れ残ったような金貨だの宝石なのでしょうか」
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
『
貴方
(
あなた
)
の家だけで、お祖母さんを独占してはいやよ。お祖母さんもお祖母さんだ、青山の家へばかり行って』などと、妻の姉妹が、不平を
滾
(
こぼ
)
すほどでありました。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
さうかと思ふと名状し難い寂しさが潮のやうに込みあげて来て危く涙が
滾
(
こぼ
)
れさうになつたりした。
熱い風
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
彼こそは
実
(
げ
)
に光り
滾
(
こぼ
)
るる力の電池
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
滾
漢検1級
部首:⽔
14画
“滾”を含む語句
滾々
滾滾
滾転
滔々滾々
滾〻
滾沸