うぬ)” の例文
杖に縋って早や助かれ。むすめやい、女、金子は盗まいでも、自分の心がうぬが身を責殺すのじゃわ、たわけ奴めが、フン。わしを頼め、膝を
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かせ。この天城四郎を善人だといった奴は、天下にうぬをもって嚆矢こうしとする。第一、俺にとって大なる侮辱だ。おれは悪人だ、大盗だ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「力はあるが、大した剣腕うでではないで、こんど出て来たら、拙者が真ッぷたつにしてくれるテ。なあ、うぬらア騒がずと見物しとれ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「たわけな武者修業、剣法ではうぬには勝てぬけども、鎌の手の妙術、自然に会得した滝之助たきのすけだ。むざむざ尻叩しりたたきを食うものか」
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
生煮えの葛湯キッセリうぬの親爺が息をつめてくたばつてしまやあええ!——往来で乱暴を働らいたり、碌でもない歌を作つて唄つたりしをつて……。
懺悔の重さに耐えかねてのたうち廻わっている心持ちが、うぬのような偽善者に易々やすやす解って堪まるものか。俺はお前と反対なのだ。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「何だと思やあ立聴きをしやぁがる、うぬのような下司根性に何が分るんだ、二度とこんな卑しい真似をしやがると叩き出すぞ」
おもかげ抄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「なにを云やあがるんだ。うぬの知ったことじゃあねえ」と、又蔵は面をふくらせて這い起きた。「ぐずぐず云やあがると今度はうぬが相手だぞ」
半七捕物帳:11 朝顔屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
仙「うぬの方が余っ程無礼だ、己が仲人ちゅうにんに這入ったのに頭巾を冠って、挨拶ええさつをするってえ事が有るか、頭巾を取れヤイ、面ア出して見せろヤイ」
チッバ なんぢゃ、いてゐながら、和睦わぼくぢゃ! 和睦わぼくといふことば大嫌だいきらひぢゃ、地獄ぢごくほどに、モンタギューの奴等やつらほどに、うぬほどにぢゃ。卑怯者ひけふものめ、覺悟かくごせい!
此方は東京も日本橋の出身でしょう? 黙っちゃいませんや。『人を見損うな』と言い返しますと、『うぬ等こそ人を見損うな。亀山の勘六さんを知らないか?』
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もしもちとなり破壊れでもしたら同職なかま恥辱はじ知合いの面汚し、うぬはそれでも生きて居らりょうかと、とても再び鉄槌かなづち手斧ちょうなも握ることのできぬほど引っしかって
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
馬鹿にしたなうぬは水呑村の水呑百姓なりしをせん旦那の御蔭にて一人前の百姓に取立られたる其恩儀おんぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
泊り泊りの宿を重ねてとりが鳴くあずまの空と来やがる、くなそねむな、おや抜きゃがったな、抜いたな、お抜きなすったな、あいてッ、あ痛ッ、斬ったな、うぬ、斬りゃがったな
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「てやんでェ、はッつけめ。こッとらァ、かッたァ三河町でェ。うぬらの手ごちにあうもんけえ」
寄席行灯 (新字新仮名) / 正岡容(著)
うぬ記憶おぼえとけ、深川のよし兄いてで鳴らしたもんだい、手前達てめいツたちの樣な、女たらしに、一文たりとも貰ふ覺えはないぞ、ヘツ、どうだい、そのつらは、いやにキヨロツキやがつて
二十三夜 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
何だ此畜生こんちきしやううぬ何故なんしや此家ここに居る? ウン此狐奴きつねめ、何だ? 寝ろ? カラ小癪な! 黙れ、この野郎。黙れ黙れ、黙らねえか? 此畜生奴、乞食ほいど癩病どす、天理坊主! 早速しらからと出て行け、此畜生奴!
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「こんな目に逢ったのもうぬのお蔭だ」
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
うぬ野狐、またせた。と得三室外へ躍出づれば、ぱっと遁出にげだす人影あり。廊下の暗闇やみに姿を隠してまた——得三をぞ呼んだりける。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「見やがれ、つらいろが変りやがった。うぬはなんだろう、大聖寺だいしょうじの前田の家来か九谷の陶器作すえものつくりのせがれだろう。うまくましていやがるな」
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うぬのその黒い髭と、それからこの豚尾が——ほうら、もう耳を二たまはりも巻けるわい——これがどちらもうぬのどたまから消えてなくなるんだぞ!
「いまここへ鼻猪之の奴が逃げ込んで来ただろう、どこへ隠した、下手に庇いだてをしやぁがるとうぬも唯あ置かねえぞ」
無頼は討たず (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
……が、有難や戻って来た! ……明日からはまた昔通りの鬼火の姥殿になれるのじゃ! ……憎いはうぬ! 汝浮藻!
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
權「黙れ、おれア見ていたぞ、咬付きもしねえ犬を斬るには何か理由わけがあるだろう、云わなければうぬ絞殺しめころすが何うだ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「くせのわるいこの濡れ燕の斬ッ尖、どこへとんでいくか知れねえから、うぬらッ! そのつもりで来いよっ!」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
うぬ!』と俥を置いて組みついて来ましたが、此方は機先を制しています。私も加勢をして到頭叩き倒してしまい、行きがけの駄賃に踏んだりたりしてやりました
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
高の知れたる蚯蚓膨みゝずばれに一日なりとも仕事を休んで職人共のかみに立てるか、うぬちつとも知るまいがの、此十兵衞はおろかしくて馬鹿と常〻云はるゝ身故に職人共が軽う見て
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
しかいまこそあまったるうえてをるうぬ今夜こんや推參すゐさんに、やがてにがあぢせてくれうぞ。
うぬ、どうするか——。日本橋近くなったとき、ソーッと今松は相手を盗み見た。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
折せたぞサア是からはうぬが身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うぬ贔屓ひいきに目がくらんで、今までは知らなかったが、海に千年、川に千年、こうを経た古狸、攫出つかみだしておつけの実にする、さあせろ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
春日新九郎? ……聞いたこともない奴。そのわけはそこにある。何でうぬこそ俺の門人、また俺に縁故の深いざる組の金井一角を
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ええつ、うぬたち悪魔のみうちめ、とつとと消え失せやがればいいに!」指をあてて耳に蓋をしながら、祖父が呶鳴つた。
「黙りおろう山賊ども! うぬらの姦計かんけいにあざむかれておめおめ山砦へ引かれるほどの愚かな振舞いを致すと思うか! 二度と申すな、聞く耳持たぬ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
長「金がほしいくれえなら、此の金を持ってやアしねえ、うぬのような義理も人情も知らねえ畜生の持った、けがらわしい金はらねえ、けえすから受取っておけ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
万が一にも仕損じてはお上人様源太親方に十兵衞の顔が向られうか、これ、生きても塔ができねばな、此十兵衞は死んだ同然、死んでも業を仕遂げればうぬおやぢは生て居るはい
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
この頓痴奇とんちきめッ! うぬみてえな野郎がいるから、どこへ行ってもお艶さんが苦労をするんだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
うぬ。さっさと帰らねえと……」
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
さあこれをお飲みなさい。と病人の口のはたに持行けば、おもてを背けて飲まんとせず。手をもて力無げに振払い、「うぬ、毒薬だな。とまなこみはりぬ。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だが、当分は見遁みのがしてやら。おれにゃ別の大望があるからよ。けッ! それさえなけりゃ、うぬなんぞ、半日だッてこの人間界へおくもんけえッ!
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「司馬又助は俺の仲間、うぬらを屋敷へ引き入れたも、汝らをここへ引き出したも、仲間同志のよしみと知らぬか!」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
どこの悪党が皮外套トゥループを裏がへしになど著てわるさをさらしをるかと思つたのに! みんなうぬの仕業なのぢやな
うぬらも峯松の同類にちげえねえ、伊香保の木暮八郎ンとこにお前方めえがた逗留して居る時分、おらア知んねえけれども、何だか御用達の旦那さまだとか金持だとかなま虚言ぞらいて
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
高の知れたる蚯蚓膨みみずばれに一日なりとも仕事を休んで職人どものかみに立てるか、うぬはちっとも知るまいがの、この十兵衛はおろかしくて馬鹿と常々云わるる身ゆえに職人どもが軽う見て
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
うぬをどんなに探したことか——ふふふ、運の尽きだ! いくぜ、おいッ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
やかましいやい。と白きうなじ鷲掴わしづかみ、「この阿魔、生意気に人ごのみをしやあがる。うぬどうしてもかれないか。と睨附ねめつくれば、お藤は声を震わして、 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さっ来い! 御曹子の新九郎は生きているぞ、酔っちゃいるがこの初鰹はつがつおは、うぬらの手掴みにはちと難かしい、それとも見事料理してみる気なら、庖丁を
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乾兒が場銭をさらいに来たわ! ……うぬらに賭場を荒らされるような、高萩一家と思っているか! ……さあみんなこの野郎を、袋叩きにして追い返せ!
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うぬを叩きのめして……そのしゃっ面を台なしにしてくれるぞ! さあ、行きゃあがれ! さっさと出ていけ!
うぬ、何うして此処こけえ来た、お嬢さま、あんた何うして此の野郎を連れて入らっしゃいました、此の野郎、汝、何んだと、面目なくってお目にかゝられた義理じゃねえと