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比丘尼
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びくに
ふりがな文庫
“
比丘尼
(
びくに
)” の例文
私はこの
老女
(
ひと
)
の
生母
(
ははおや
)
をたった一度見た覚えがある。
谷中
(
やなか
)
御隠殿
(
ごいんでん
)
の
棗
(
なつめ
)
の木のある家で、
蓮池
(
はすいけ
)
のある庭にむかった
室
(
へや
)
で、お
比丘尼
(
びくに
)
だった。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
綺麗な尼だったそうだよ、
比丘尼
(
びくに
)
長屋には
法体
(
ほうたい
)
の
売女
(
ばいた
)
も居る世の中だから目黒の尼寺は大した人気だったと言っても嘘じゃ無さそうだ。
銭形平次捕物控:241 人違い殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
出女
(
でおんな
)
、入り鉄砲」などと言われ、女の旅は関所関所で食い留められ、
髪長
(
かみなが
)
、尼、
比丘尼
(
びくに
)
、
髪切
(
かみきり
)
、
少女
(
おとめ
)
などと一々その風俗を区別され
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
夜鷹、舟まんじゅう、麦湯売り、
比丘尼
(
びくに
)
、山ねこ、雑多な名でよばれているが、闇に咲く白粉の女たちであることに変りはない。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
絢爛
(
けんらん
)
な色彩の古画の諸仏、
羅漢
(
らかん
)
、
比丘
(
びく
)
、
比丘尼
(
びくに
)
、
優婆塞
(
うばそく
)
、
優婆夷
(
うばい
)
、象、
獅子
(
しし
)
、
麒麟
(
きりん
)
などが四壁の紙幅の内から、ゆたかな光の中に泳ぎ出す。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
「よくもオレにドクを盛りゃがったな。化けて出てやるからそう思え。江戸の小町ムスメは気をつけろ。みんな
比丘尼
(
びくに
)
小町に食われちまうぞ」
右門捕物帖:17 へび使い小町
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
宗右衛門橋から
比丘尼
(
びくに
)
橋、いわゆる大根河岸に沿った一劃を白魚屋敷といって、ここに一般に大鍋と呼ばれている鍋屋という大きな旅籠がある。
釘抜藤吉捕物覚書:13 宙に浮く屍骸
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
和尚は
手槍
(
てやり
)
を小脇にかい込んで、忍び足に本堂の方へ行く。後には
比丘尼
(
びくに
)
の
梵妻
(
ぼんさい
)
が
手燭
(
てしょく
)
を
袖
(
そで
)
におおいながらついている。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
その光で見ると、白麻の
衣
(
きぬ
)
に
黒絽
(
くろろ
)
の
腰法衣
(
こしごろも
)
。年の頃四十一二の
比丘尼
(
びくに
)
一人。肉ゆたかに
艶々
(
つやつや
)
しい顔の色。それが眼の光を
険
(
けわ
)
しくしているのであった。
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
欺
(
あざむ
)
く本人も憎いようだが、恐らくは本人自身も、常陸坊であり、ないしは八百
比丘尼
(
びくに
)
なることを、何かわけがあって固く信じていたものと思われる。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一人の
比丘尼
(
びくに
)
が
訪
(
おとず
)
れて来た。女中が「お比丘尼さまがお見えになりました」といって丁寧に取次いだ。会ってみると、姿を変えたさきの少女である。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
比丘尼
(
びくに
)
は
前名
(
ぜんみょう
)
を熊と申す女に
似気
(
にげ
)
ない放蕩無頼を致しました
悪婆
(
あくば
)
でございまするが、今はもう改心致しまして、
頭髪
(
あたま
)
を
剃
(
そ
)
り落し、鼠の着物に腰衣を着け
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
毬栗
(
いがぐり
)
の丸い
恰好
(
かっこう
)
のいい頭が、若い
比丘尼
(
びくに
)
みたいに青々としている。皮膚の色は近頃流行のオリーブって奴だろう。眼の
縁
(
ふち
)
と
頬
(
ほお
)
がホンノリして唇が
苺
(
いちご
)
みたいだ。
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
又定生の外祖母と稱するものも別本に見えてゐる。「貞圓妙達
比丘尼
(
びくに
)
、天明七年
丁未
(
ていび
)
八月十一日」と書し、深川佐賀町一向宗と註してあるものが
即
(
すなはち
)
是
(
これ
)
である。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
一人の見知らぬ
比丘尼
(
びくに
)
が彼女の側に立って、百駄の蓮茎を注文し、自ら蓮糸をとった。天女のような一人の美女が、その蓮糸から美しい
曼陀羅
(
まんだら
)
を織り出した。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
塩竈街道の燕沢、いわゆる「蒙古の碑」の付近に
比丘尼
(
びくに
)
坂というのがある。坂の中途に比丘尼塚の碑がある。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
『その同じ時、あなた
比丘尼
(
びくに
)
となりましょう。一雄(
註
(
ちゅう
)
、長男)小さい坊主です。いかに可愛いでしょう。毎日経よむと墓を
弔
(
とむら
)
いするで、よろこぶの生きるです』
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
比丘尼
(
びくに
)
が木魚の音を聞き分けるごとく、椽の下からでも音さえたしかであればすぐ禿頭だなと
出所
(
しゅっしょ
)
を鑑定する事が出来る。「そこでちょっと君を
煩
(
わずら
)
わしたいと思ってな……」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
先ず『諸国咄』の序文に「世間の広き事国々を見めぐりてはなしの種をもとめぬ」とあって、湯泉に棲む魚や、
大蕪菁
(
おおかぶら
)
、大竹、二百歳の
比丘尼
(
びくに
)
等、色々の珍しいものが挙げてある。
西鶴と科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
博奕
(
ばくち
)
打ちの仲間へ入って、博奕は打つ、
赤坂
(
あかさか
)
の勘兵衛長屋の
比丘尼
(
びくに
)
狂いはする、そのうえ、このごろは、その比丘尼をうけだして、夜も昼も入り浸ってると云うことだが、だいち
四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「
俺
(
おい
)
らの買った六文はな、
比丘尼
(
びくに
)
あがりの女と見え、ツルツルに頭が禿げていたっけ」
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
母も二十年の悪夢から
醒
(
さ
)
め、はじめて母のいやしからぬ血筋を二人に打ち明け、わが身の現在のあさましさを歎き、まっさきに黒髪を切り、二人の娘もおくれじと
剃髪
(
ていはつ
)
して三人
比丘尼
(
びくに
)
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
一木内相が人間に性慾があるのを発見したのは、仏様に臍があるのを見つけたと同じやうに、非常な発見で、この場合内相が若い
比丘尼
(
びくに
)
のやうに声を立てて泣かなかつたのは、流石に男である。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
晋の釈宝唱の『
比丘尼
(
びくに
)
伝』二に〈竹林寺の静称尼戒業精苦、
誦経
(
ずきょう
)
四十五万言云々、常に一虎あり、称に従って去来す、もし坐禅せば左右に蹲踞す、寺内諸尼もし罪失を犯し、時に懺悔せずんば
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
二、十一日、
澄見
(
ちようこん
)
と申す
比丘尼
(
びくに
)
、秀林院様へお目通り致し候。
糸女覚え書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「ほんとに
儘
(
まま
)
になるならば
比丘尼
(
びくに
)
か巡礼にでもなりたい……」
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
諸天
(
しよてん
)
諸菩薩
(
しよぼさつ
)
比丘
(
びく
)
比丘尼
(
びくに
)
全都覚醒賦
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
女教師鴎外、芸妓紅葉、女生徒
漣
(
さざなみ
)
、女壮士
正太夫
(
しょうだゆう
)
、
権妻
(
ごんさい
)
美妙、女役者
水蔭
(
すいいん
)
、
比丘尼
(
びくに
)
露伴、
後室
(
こうしつ
)
逍遥、踊の師匠眉山、町家の女房柳浪。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
それから
比丘尼
(
びくに
)
(比丘尼姿の売女)とか、
船饅頭
(
ふなまんじゅう
)
(浜辺の小舟で売色した私娼)という下等の売春婦に、江戸の市民は決して近づかない。
平次放談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
室町将軍の奥につかえていたという
比丘尼
(
びくに
)
があるし、父は武田の臣だったの、松永久秀の縁類の者だのという女が、この中にはずいぶんある。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
比丘尼
(
びくに
)
小町うんぬんの
妖々
(
ようよう
)
たるなぞのみでしたから、名人の秀麗な面がしだいしだいに
蒼白
(
そうはく
)
の度を加え、烱々たるまなざしが静かに徐々に閉じられて
右門捕物帖:17 へび使い小町
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
東晋
(
とうしん
)
の大司馬
桓温
(
かんおん
)
は威勢
赫々
(
かくかく
)
たるものであったが、その晩年に一人の
比丘尼
(
びくに
)
が遠方からたずねて来た。
中国怪奇小説集:04 捜神後記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
小家には崖に面する窓があって、窓の
裡
(
うち
)
にはいつも円頂の
媼
(
おうな
)
がいた。「綺麗な
比丘尼
(
びくに
)
」と父は云った。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
彼等に選挙に対する自覚を望むのは、
比丘尼
(
びくに
)
に○○を出させるより無理な注文かも知れぬ。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
そこに住む出家、
比丘尼
(
びくに
)
、だいこく、
所化
(
しょけ
)
、男色の美少年、その他
青侍
(
あおざむらい
)
にいたるまで、田畑を耕すこともなくて
上白
(
じょうはく
)
の飯を食い、糸を採り
機
(
はた
)
を織ることもなくてよい
衣裳
(
いしょう
)
を着る。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
とすれば、それは道徳としての権威を失いはせぬか。この疑問は僧尼の心にも起こった。ある時一人の
比丘尼
(
びくに
)
が道元に問うて言う——世間の女房などにも仏法を学んでいるものがある。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
諸国に数多の跡を留めたトラという
比丘尼
(
びくに
)
は、立山および白山に伝えているトウロの
姥
(
うば
)
、さては大和の金峰山で古く説く所のトラン尼と、起原は皆一つであろうという迄は前にすでに説いたが
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
昔熊野詣りの
比丘尼
(
びくに
)
一人ここへ来て宿る。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
御影
(
みかげ
)
にいつく
比丘尼
(
びくに
)
の
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
構えこんでいる黒光りの
角蔵
(
かど
)
を
睨
(
にら
)
んで、その奥座敷におさまる
比丘尼
(
びくに
)
婆の、
絽
(
ろ
)
の十徳を着た女隠居に当りちらすのだった。
旧聞日本橋:23 鉄くそぶとり(続旧聞日本橋・その二)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
一里が一丁に見えるおらんだ渡りの遠眼鏡というのは、これだ。何が見えた? ……
千日前
(
せんにちまえ
)
の原ッぱで、
比丘尼
(
びくに
)
が踊りを踊ってるだろう? 嘘だ。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「てへ、さう來ると手入らずに綺麗な
比丘尼
(
びくに
)
が出來るが、今度は一番若いお浪が、可哀想に髮を切られましたよ」
銭形平次捕物控:254 茶汲み四人娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
その露路の奥に善昌という尼が住んでいる。以前は小鶴といって、そこらを托鉢の
比丘尼
(
びくに
)
であったが、六、七年前から自分の家に弁財天を祭って諸人に参拝させることにした。
半七捕物帳:21 蝶合戦
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ことに女の旅は厳重をきわめたもので、髪の長いものはもとより、そうでないものも
尼
(
あま
)
、
比丘尼
(
びくに
)
、
髪切
(
かみきり
)
、
少女
(
おとめ
)
などと通行者の風俗を区別し、乳まで探って真偽を確かめたほどの時代だ。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
舟まんじゅう、
蹴
(
け
)
ころ、夜たか、
比丘尼
(
びくに
)
、山ねこ、
呼出
(
よびだし
)
、躍り子、
白人
(
はくじん
)
、
脚摘
(
あしつみ
)
、地獄、蔭間、等々々の名は、みなそれらの闇の花の代名詞だった。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
世間並の息子だと、これは十七文字の都々逸ぢや濟みませんよ、先づ手重いのは八文字を踏む歌舞の
菩薩
(
ぼさつ
)
、手輕なところで、目と鼻の間の槇町の
比丘尼
(
びくに
)
——
銭形平次捕物控:260 女臼
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
今は、七十を越して、
比丘尼
(
びくに
)
のように
剃髪
(
ていはつ
)
している石井とめ女を、途中で見かけたという便りを
叔父
(
おじ
)
からもらったが、この章を終るまでに
探
(
たず
)
ね出せなかったので、錦子との交錯は不明だ。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
兄の
了庵
(
りょうあん
)
について、禅門に入った。佳麗な
比丘尼
(
びくに
)
は、
清楚
(
せいそ
)
な梅みたいに鎌倉中の山門を色めかせたにちがいあるまい。
美しい日本の歴史
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「お前なんかも、その真似をして、
比丘尼
(
びくに
)
長屋から、目鼻立の良いのを一人引っこ抜く気になっちゃ困るぜ」
銭形平次捕物控:241 人違い殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
このよし原が浅草
田圃
(
たんぼ
)
に移され、新吉原となってからでも、享楽地としては人形町通りを境にして親父橋
寄
(
よ
)
りに、葭町、堺町、
葺屋
(
ふきや
)
町側に三座の
櫓
(
やぐら
)
があり、かげま茶屋、
色子
(
いろこ
)
、
比丘尼
(
びくに
)
が
繁昌
(
はんじょう
)
した。
旧聞日本橋:07 テンコツさん一家
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
“比丘尼”の意味
《名詞》
比丘尼(びくに)
出家した女性の仏教徒。尼、尼僧。
中世の尼の姿をして諸国を巡り歩いた一種の芸人。勧進比丘尼、絵解き比丘尼。 後に堕落し、語義3の由来ともなる。転じて近世には、屁負い比丘尼、科負い比丘尼 の語源となった。
江戸時代、尼僧姿をした下級の売春婦、私娼。
(出典:Wiktionary)
比
常用漢字
小5
部首:⽐
4画
丘
常用漢字
中学
部首:⼀
5画
尼
常用漢字
中学
部首:⼫
5画
“比丘尼”で始まる語句
比丘尼寺
比丘尼坂
比丘尼店
比丘尼衆
比丘尼御所
比丘尼横丁
比丘尼頭巾