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毅然
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きぜん
ふりがな文庫
“
毅然
(
きぜん
)” の例文
かれらの人物の
毅然
(
きぜん
)
たるきびしさと端正な男らしさとを思った。そしてゆううつな微笑をうかべた。かれらならなんと言うであろう。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
と、今まで
毅然
(
きぜん
)
として立っていた、直也の男性的な顔が、妙にひきつッたかと思うと、彼の
赭
(
あかぐろ
)
い頬を、涙が、
滂沱
(
ぼうだ
)
として流れ落ちた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「戦いの後と見えまして、衣裳は千切れ手傷を負い、無惨な有様ではございますが、容貌秀麗態度
毅然
(
きぜん
)
、立派なものでございます」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
美しいがうえにも
毅然
(
きぜん
)
たる萩乃の威に気おされて、こんどは門之丞、あわれみを乞うがごとくに、トンと膝をついてうなだれた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
かかる危険を前にして確固
毅然
(
きぜん
)
たるその老人は、ただ何ということもなく本来からして勇気と親切とを兼ねそなえてるもののように思われた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
と
狂気
(
きちがい
)
笑
(
わら
)
いする。臙脂屋は聞けども聞かざるが如く、此勢に木沢は少しにじり
退
(
すさ
)
りつつ、益々
毅然
(
きぜん
)
として
愈々
(
いよいよ
)
苦りきり
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
伸子は、
毅然
(
きぜん
)
たる決意を明らかにした。彼女は自身の運命を犠牲にしてまでも、或る一事に
緘黙
(
かんもく
)
を守ろうとするらしい。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
而
(
しか
)
も断じて行えば鬼神もこれを避く。彼がこの
毅然
(
きぜん
)
たる勇気を振い起して、全欧州にこの教義を宣伝した結果は
如何
(
いかん
)
。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
けれどこれも諸葛
瑾
(
きん
)
の空想だけにとどまっていた。
毅然
(
きぜん
)
たる関羽の前に、彼はそんな使者に立って行ったことすら恥かしく思わずにいられなかった。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかも
根柢
(
こんてい
)
の足場に於て、民衆と同じ詩的精神の線上に立っているところの、一の
毅然
(
きぜん
)
たる
風貌
(
ふうぼう
)
を有する人物である。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
其處は
白嘴鴉
(
みやまがらす
)
の群に未だ隱れてゐた。「始めに見るのは正面だ」と私は心を
決
(
き
)
めた。「先づ直ぐにあの立派な鋸壁が、
毅然
(
きぜん
)
として私の眼を打つだらう。 ...
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
主人が
妄想
(
もうそう
)
に
落
(
お
)
ちて、いたずらに立てるあいだに、花前は二
頭
(
とう
)
三頭とちゃくちゃくしぼり
進
(
すす
)
む。かれは
毅然
(
きぜん
)
たる
態度
(
たいど
)
でそのなすべきことをなしつつある。
箸
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
博士は、列から離れて、一種
毅然
(
きぜん
)
たるようすで教授のほうへ歩いて行った。もう蒼ざめた顔はしていなかった。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
未熟
(
みじゅく
)
ながらも妾が代りて師匠となりいかにもして彼が望みを達せしめんと欲する
也
(
なり
)
、汝等が知る所に
非
(
あら
)
ず
疾
(
と
)
くこの場を去るべしと
毅然
(
きぜん
)
として云い放ちければ
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
能
(
よ
)
くその
所天
(
おっと
)
を
援
(
たす
)
けて
後顧
(
こうこ
)
の
憂
(
うれ
)
いなからしめ、あるいは一朝不幸にして、その
所天
(
おっと
)
に
訣
(
わか
)
るることあるも、独立の生計を営みて、
毅然
(
きぜん
)
その操節を
清
(
きよ
)
うするもの
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
近代音楽史の上に、
慎
(
つつ
)
ましやかながら、
毅然
(
きぜん
)
として
聳
(
そび
)
ゆるセザール・フランクの姿は
尊
(
とうと
)
くもなつかしい。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
土の礫を避けて身体を
踞
(
かが
)
めていたが、大きな石塊がどさりと彼の肩にあたると、突然すっくと身体を起し、胸を張って、正面の敵に向かって
毅然
(
きぜん
)
としてつっ立った。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
伸一先生
(
しんいちせんせい
)
の
柔和
(
にうわ
)
にして
毅然
(
きぜん
)
たる
人物
(
じんぶつ
)
は、これ
等
(
ら
)
の
教訓
(
けうくん
)
を
兒童
(
こども
)
の
心
(
こゝろ
)
に
吹
(
ふ
)
き
込
(
こ
)
むに
適
(
てき
)
して
居
(
ゐ
)
たのです。
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
文字のとおりに「恐縮」である。私には、何もできぬのだ。私には、何一つ
毅然
(
きぜん
)
たる言葉が無いのだ。祖国愛の、おくめんも無き宣言が、なぜだか、私には、できぬのだ。
鴎
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
だがいずれにせよ、この老人が自分の信念をぐんぐん押し通してゆく
毅然
(
きぜん
)
たる生活態度に、チェーホフが及びがたく学びがたいものを痛切に感じていたことだけは争えない。
チェーホフ試論:――チェーホフ序説の一部として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
いや、このときほどアビルが
毅然
(
きぜん
)
と見えたことはない。神秘と威厳にアビルは輝いていた。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
カーキ
色
(
いろ
)
の
服
(
ふく
)
に
戦闘帽
(
せんとうぼう
)
を
被
(
かぶ
)
って、
赤
(
あか
)
いたすきをかけた
父親
(
ちちおや
)
は
肩幅
(
かたはば
)
の
広
(
ひろ
)
い
姿勢
(
しせい
)
を
毅然
(
きぜん
)
として、
日
(
ひ
)
の
丸
(
まる
)
の
旗
(
はた
)
を
持
(
も
)
ったみんなから
送
(
おく
)
られて、
平常
(
へいぜい
)
は、あまり
人
(
ひと
)
の
通
(
とお
)
らないさびしい
路
(
みち
)
を
僕はこれからだ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
峠の頂上に達して振り返れば、
屏風
(
びょうぶ
)
を立てたごとき山腹の
路
(
みち
)
は赤くなって見える。遠くには湯の湖、戦場ヶ原を隔てて男体山が
毅然
(
きぜん
)
として雲表に
聳
(
そび
)
え立っている。雄大な眺めだ。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
宮の夫人はそれに比べて少し
派手
(
はで
)
な性質であって、心を許さない人には
毅然
(
きぜん
)
とした態度もとる型の人らしくはあるが、自分へは同情が深く、どうして自分の恋から身をはずそう
源氏物語:51 宿り木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
独逸クルウの
誰
(
だれ
)
かの
愛人
(
リイベ
)
とみえる、一人のゲルマン娘は、いつも
毅然
(
きぜん
)
としていて、練習時間には、
慎
(
つつ
)
ましく、ひとり日蔭
椅子
(
いす
)
に
坐
(
すわ
)
り、編物か、読書に
耽
(
ふけ
)
っていて、その
端麗
(
たんれい
)
な姿にも
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
あの『貴族の家』に出るみずからを雲井のひばりに比べ、野の
百合
(
ゆり
)
にたとえた詩人を思う。麻のなかに高居した、
毅然
(
きぜん
)
たる威厳を持っている芸術家はたいがい純潔な人のようである。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
他の一隅には、誰も附添っていない一人の負傷者が、打捨てられ、
毅然
(
きぜん
)
たる様子で横たわっていた。前の美青年に比べて、遥かに立派な態度と映ったが、彼の容貌は美しくはなかった。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
烏啼は、
毅然
(
きぜん
)
としていた。藤代女史は、さすがに照れて、隅っこへ小さくなる。
すり替え怪画:烏啼天駆シリーズ・5
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「剣を
鞘
(
さや
)
に収めよ、父の我に賜いたる酒杯は、われ飲まざらんや」(ヨハネ一八の一一)、そうイエスは静かに言って僕の耳を癒し給うてから、捕手の人々に向かい
毅然
(
きぜん
)
として言い給うた
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
五カ条の御誓文の御趣意に
悖
(
もと
)
る行為は致しておりましても、我我明治に生れました若い男女は、彼ら前代の人たちと反対に、
毅然
(
きぜん
)
として現代の新精神を貫徹致すことに努力したいと思います。
女子の独立自営
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
毅然
(
きぜん
)
として友に降らざりしヨブも、今は神御自身の直示に接して、この謙遜の心態に入るに至ったのである。しかも彼の悟りし所はなお足らざりしと見え、エホバはなお教え給うたのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
若宮の子供とは思えぬ
毅然
(
きぜん
)
とした言葉に女院は涙を新たにした。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
毅然
(
きぜん
)
と
聳
(
そび
)
えていた大土蔵造りの有名な呉服店だった。
旧聞日本橋:02 町の構成
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
というや、青年は
毅然
(
きぜん
)
として
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
擲弾兵
(
てきだんへい
)
のごとく
毅然
(
きぜん
)
として、思想家のごとく勇壮であった。ただ全ヨーロッパ動揺の機会に対しては不安を覚え、政治的大冒険には不適当であった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
さっき、馬の背では、さしも疲れたかに見えた彼が、そこに立つと、
毅然
(
きぜん
)
たる影を宇宙に
印
(
しる
)
していた。彼には楽しみがあって疲れはないようである。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
陰謀を企てた人間として、いますこしは男らしい、
毅然
(
きぜん
)
としたところがあってもいい。刑罰のもとに、こうまでへこたれてしまわなくってもいいと思う。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
兼吉
(
かねきち
)
と
五郎
(
ごろう
)
は
洗
(
あら
)
いものをしている。
花前
(
はなまえ
)
が
例
(
れい
)
の
毅然
(
きぜん
)
たる
態度
(
たいど
)
で
技師
(
ぎし
)
先生のまえにでた。技師はむろん主人と見たので、いささかていねいに用むきを
談
(
だん
)
ずる。
箸
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
と法水はこころもち臆したような顔色になったが、その口の下から、眉を上げ
毅然
(
きぜん
)
と云い放ったものがあった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
くじき、われわれの
毅然
(
きぜん
)
たる心を、これほど完全に押しつぶしてしまうのは、たしかにあの神なのだ……
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
毅然
(
きぜん
)
たる立派な態度を何様して保ち得られたろう! であるから氏郷の佐沼の後詰は辺土の小戦のようであるが、他の多くの有りふれた戦には
優
(
まさ
)
った遣りにくい戦で
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
満廷の朝臣たちが
戦
(
おのゝ
)
き恐れ、或は板敷の下に
這
(
は
)
い入り、或は
唐櫃
(
からびつ
)
の底に隠れ、或は畳を
担
(
かつ
)
いで泣き、或は
普門品
(
ふもんぼん
)
を
誦
(
ず
)
しなどする中で、時平がひとり
毅然
(
きぜん
)
として剣を抜き放ち
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
だがいずれにせよ、この老人が自分の信念をぐんぐん押し通して行く
毅然
(
きぜん
)
たる生活態度に、チェーホフが及びがたく学びがたいものを、痛切に感じていたことだけは争えない。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
おどろきのうちにも
毅然
(
きぜん
)
として、ああして理のたった言葉でたしなめた萩乃——あれほどの強い、正しい、美しい女性を見たことがないと、左膳はスッカリ感心してしまったのだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そこにモオパスサンの
毅然
(
きぜん
)
たる男性が在る。男は、女になれるものではない。女装することは、できる。これは、皆やっている。ドストエフスキイなど、
毛臑
(
けずね
)
まるだしの女装で、大真面目である。
女人創造
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その忠魂記念塔は、今ではS公園内に
天空
(
てんくう
)
を
摩
(
ま
)
して
毅然
(
きぜん
)
と建っている。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「もう僕は貴君の自由にならない。」と、Bは
毅然
(
きぜん
)
としていった。
扉
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
白眉朱面
(
はくびしゅめん
)
、
金鎧
(
きんがい
)
まばゆきばかり装って、
毅然
(
きぜん
)
と突っ立ち、手に
黄鉞
(
こうえつ
)
を杖ついて、八方を睨まえ、かりそめにも軍門をみだりに出入なすを許しません。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
毅然
(
きぜん
)
として、なにかかたく信ずるところあるがごとき花前は、その
技
(
わざ
)
においてもじつに
神
(
かみ
)
に
達
(
たっ
)
している。
箸
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
しかるにポンメルシーは、
旗檣
(
きしょう
)
の綱に三色旗を翻えさし、
毅然
(
きぜん
)
としてイギリス二等艦の砲弾の下を通過した。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
毅
漢検準1級
部首:⽎
15画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“毅然”で始まる語句
毅然直行