“きぜん”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
毅然68.1%
喟然19.8%
巋然3.3%
几前1.1%
巍然1.1%
悸然1.1%
気前1.1%
紀善1.1%
起善1.1%
飢涎1.1%
鬼髯1.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
と、今まで毅然きぜんとして立っていた、直也の男性的な顔が、妙にひきつッたかと思うと、彼のあかぐろい頬を、涙が、滂沱ぼうだとして流れ落ちた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
僕はカッフェーの卓子にって目には当世婦女の風俗を観、心には前代名家の文章を想い起すや、喟然きぜんとしてわが文藻の乏しきを悲しまなければならない。
申訳 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その時余は大概四十何人の席末を汚すのが例であったのに、先生は巋然きぜんとして常に二三番をくだらなかったところをもって見ると、頭脳は余よりも三十五六枚がた明晰めいせきに相違ない。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と命じ、やがて沐浴もくよくして、几前きぜんに坐った。それこそ、蜀の天子に捧ぐる遺表であった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いずれにしても奇怪なる起伏凹凸きふくおうとつをなして居り、丘陵があるかと思えば、泉水が流れ、雑木林があるかと思えば、巍然きぜんとして洋風の塔がそびえたっていたりする。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お俊は悸然きぜんとした気もちだった。ふと気を変え、自分の心の暗みを手さぐるような気で、こう言ってさぐりを入れて見るようになった。
童話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
わちきのお父さんを歌俳諧の交際つきあいで知って居るから、身請をして妹分にして、松山の姓を立てさせて遣り度いって今話があったばかりなんですのに、気前きぜんを悪くして腹を立ってはいけませんよ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
天子の正朔せいさくを奉ぜず、あえて建文の年号を去って、洪武三十二年と称し、道衍どうえん帷幄いあくの謀師とし、金忠きんちゅう紀善きぜんとして機密に参ぜしめ、張玉、朱能、丘福きゅうふくを都指揮僉事せんじとし
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「石岡起善きぜんって人、知ってるんでしょう」と敏夫は続けた
ばちあたり (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
混再拝シテもうス。書ならびニ詩話ヲかたじけなくス。厳粛ノ候尊体福履、家ヲ挙ゲテ慰浣いかんセリ。シテ賜フ所ノ詩話ヲ読ム。巻ヲ開イテ咫尺しせきニシテ飢涎きぜんたちまチ流ル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そうまなこは百錬の鏡というもおろかである。怒れる鬼髯きぜんは左右にわかれ、歯は大きな唇を噛み、眉、まなじり、髪のさき、すべて逆しまに立って、天も衝かん形相である。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)