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喟然
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きぜん
ふりがな文庫
“
喟然
(
きぜん
)” の例文
一度、しかとしめて
拱
(
こまぬ
)
いた腕を
解
(
ほど
)
いて、やや震える手さきを、
小鬢
(
こびん
)
に
密
(
そっ
)
と触れると、
喟然
(
きぜん
)
として
面
(
おもて
)
を暗うしたのであった。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
僕はカッフェーの卓子に
憑
(
よ
)
って目には当世婦女の風俗を観、心には前代名家の文章を想い起すや、
喟然
(
きぜん
)
としてわが文藻の乏しきを悲しまなければならない。
申訳
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
後水戸学の
宿儒
(
しゅくじゅ
)
会沢
(
あいざわ
)
、豊田の諸氏に接し、その談論を聞き、
喟然
(
きぜん
)
として嘆じて曰く、「
身
(
み
)
皇国に生れ、皇国の皇国たる所以を知らず、何を以て天地の間に立たん」
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
「黒い方がいいだろう。
生
(
なま
)
じ白いと鏡を見るたんびに
己惚
(
おのぼれ
)
が出ていけない。女と云うものは始末におえない物件だからなあ」と主人は
喟然
(
きぜん
)
として
大息
(
たいそく
)
を
洩
(
も
)
らした。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
嗚呼
(
あゝ
)
是れ健康なる思想の表彰として賀すべきの事なりや、
抑
(
そもそ
)
も亦
喟然
(
きぜん
)
として歎ずべきの事なりや。
凡神的唯心的傾向に就て
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
▼ もっと見る
わがちゃァちゃんは、フロックコートに身を固めたわが小柴市兵衛君は、すぐ眼のまえに
突兀
(
とっこつ
)
とそそり立った、不恰好な、半西洋の三階建を指さして
喟然
(
きぜん
)
としていった。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
ト文三は
慄然
(
ぶるぶる
)
と
胴震
(
どうぶるい
)
をして
唇
(
くちびる
)
を
喰
(
く
)
いしめたまま
暫
(
しば
)
らく
無言
(
だんまり
)
、
稍
(
やや
)
あッて
俄
(
にわか
)
に
喟然
(
きぜん
)
として歎息して
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
九十一歳になる彼の父は、若い頃は
村吏
(
そんり
)
県官
(
けんかん
)
として農政には深い趣味と経験を有って居る。其子の家に滞留中此田川の
畔
(
くろ
)
を歩いて、
熟々
(
つくづく
)
と水を眺め、
喟然
(
きぜん
)
として「
仁水
(
じんすい
)
だ
喃
(
なあ
)
」と嘆じた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
……これを見た呉青秀は
喟然
(
きぜん
)
として決するところあり、一番自分の彩筆の力で天子の迷夢を醒まして、国家を泰山の安きに置いてやろうというので、新婚
匆々
(
そうそう
)
の黛夫人に心底を打ち明けて
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
曰く、
暮春
(
ぼしゅん
)
春服既に成り、
冠者
(
かんじゃ
)
五、六人、
童子
(
どうじ
)
六、七人を得て、
沂
(
き
)
(水の上)に
沿
(
そ
)
(浴)い
舞雩
(
ぶう
)
(の下)に
風
(
いた
)
り詠じて帰らん。夫子
喟然
(
きぜん
)
として嘆じて曰く、吾は点に
与
(
くみ
)
せん。三子者出でて
曾皙
(
そうせき
)
後
(
おく
)
る。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
それを見やった薬草道人、
喟然
(
きぜん
)
嘆息をしたものである。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
喟然
(
きぜん
)
として
私
(
わたし
)
は
歎
(
たん
)
じた。
人間
(
にんげん
)
は
斯
(
そ
)
の
徳
(
とく
)
による。むかし、
路次裏
(
ろじうら
)
のいかさま
宗匠
(
そうしやう
)
が、
芭蕉
(
ばせを
)
の
奧
(
おく
)
の
細道
(
ほそみち
)
の
眞似
(
まね
)
をして、
南部
(
なんぶ
)
のおそれ
山
(
やま
)
で、おほかみにおどされた
話
(
はなし
)
がある。
木菟俗見
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
喟然
(
きぜん
)
として歎息せざるを得なかつた次第である。
来訪者
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
彼は
喟然
(
きぜん
)
として
大息
(
たいそく
)
していう。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
狐床の火の玉小僧、馬琴の
所謂
(
いわゆる
)
、きはだを
甞
(
な
)
めたる
唖
(
おうし
)
のごとく、
喟然
(
きぜん
)
として
不言
(
ものいわず
)
。ちょうど車夫が唐縮緬の風呂敷包を持って来たから、黙って引手繰るように取った。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
噫
(
ああ
)
、と
喟然
(
きぜん
)
として天井を仰いで歎ずるのを見て、誰が赤い顔をしてまで、貸家を聞いて上げました、と
流眄
(
しりめ
)
にかけて、ツンとした時、失礼ながら、家で命は
繋
(
つな
)
げません、貴女は御飯が炊けますまい。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、
喟然
(
きぜん
)
として歎じて、こんどは、ぐたりとその板へ
肘
(
ひじ
)
をつく。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(
喟然
(
きぜん
)
とする。)
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
医師
(
せんせい
)
喟然
(
きぜん
)
として
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
喟
漢検1級
部首:⼝
12画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画