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びんしょう
ふりがな文庫
“
敏捷
(
びんしょう
)” の例文
じっさい動物は
羨
(
うらや
)
ましい。私は、
敏捷
(
びんしょう
)
に枝から枝へ、金網から地上へ跳びまわっている猿が
羨望
(
せんぼう
)
に堪えなかった。実に元気な動物だ。
動物園の一夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
猿沢夫人は痩せぎすの、
敏捷
(
びんしょう
)
そうな身体つきの女性です。顔は美しいけれどもやや険があって、それは
牝豹
(
めひょう
)
か何かを
聯想
(
れんそう
)
させました。
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
しかしもう梢から梢へくぐり抜ける小鳥たちの影には春らしい
敏捷
(
びんしょう
)
さが見られた。暮方になると、近くの林のなかで
雉
(
きじ
)
がよく
啼
(
な
)
いた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
頼もしくないこと
夥
(
おびただ
)
しい話であるが、一方からいえば、がんりきの
敏捷
(
びんしょう
)
を信じきって、捕手の働きにタカをくくっているとも見える。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかのみならず更に一団の少年俳家が多く出て俳句といひ写実的小品文といひ
敏捷
(
びんしょう
)
に軽妙に作りこなす処は天下敵なしといふ勢ひで
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
すばらしい
敏捷
(
びんしょう
)
に生れついているような彼女の姿は、サッと、うしろの幕を懐剣で裂いて、消えこむように、囲いの裏へ飛び下りた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あなたがたは恋人の心を直感するように
敏捷
(
びんしょう
)
に、
幼児
(
おさなご
)
を愛するように誠実に、時代の優良な新人物を選択することが出来るはずである。
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
その上に乗っている仲買人たちは、ほとんど欧米人が占めていた。彼らは微笑と
敏捷
(
びんしょう
)
との武器をもって、銀行から銀行を駆け廻るのだ。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
敏捷
(
びんしょう
)
なお延は、相手を
見縊
(
みくび
)
り
過
(
す
)
ぎていた事に気がつくや否や、すぐ取って返した。するとお秀の方で、今度は岡本の事を
喋々
(
ちょうちょう
)
し始めた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
アントアネットはきれいな
栗
(
くり
)
色髪の子で、上品で正直なフランス式の小さな丸顔、
敏捷
(
びんしょう
)
な眼つき、つき出た
額
(
ひたい
)
、ほっそりした
頤
(
あご
)
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
花
(
はな
)
は、つくづくとはじめて
見
(
み
)
る
敏捷
(
びんしょう
)
そうな
渡
(
わた
)
り
鳥
(
どり
)
の、きれいな
羽
(
はね
)
の
色
(
いろ
)
と、
黒
(
くろ
)
い
光
(
ひか
)
った
目
(
め
)
と、
鋭
(
するど
)
いとがったつめとをながめたのであります。
公園の花と毒蛾
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
複雑な環境の変化に適応せんとする不断の意識的ないし無意識的努力はその環境に対する観察の精微と
敏捷
(
びんしょう
)
を招致し養成するわけである。
日本人の自然観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
下っ引の
勝
(
かつ
)
が飛んで来ました。
鋳掛勝
(
いかけかつ
)
という中年男で、乾し固めたような小さい身体ですが、ガラッ八などよりは物事が
敏捷
(
びんしょう
)
に運びます。
銭形平次捕物控:080 捕物仁義
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼はシーニ街の方からやってきて、プティート・トリュアンドリー小路に向いてる補助の防寨を
敏捷
(
びんしょう
)
に乗り越えてきたのだった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
だからケンが登山でならした腕だと自慢しても、また玉太郎が身体が軽く
敏捷
(
びんしょう
)
だといばっても、ラウダにはとうていかなわない。
恐竜島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
シャンとすると、驚くべき
敏捷
(
びんしょう
)
さで、そこに置いてあった煉瓦を取り、
鏝
(
こて
)
を持ち、
漆喰
(
しっくい
)
をすくって、壁の穴へ、煉瓦を二重に積み始めた。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
正井は
膝
(
ひざ
)
を乗り出してから、しばらく黙って
敏捷
(
びんしょう
)
に葉子の顔色をうかがっていたが、これなら大丈夫と見きわめをつけたらしく
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そして、うすい人参色のばさっとした眉毛の下から
敏捷
(
びんしょう
)
な灰色の視線を動かして、夫人と会見を終って来た三人の表情をよみとろうとした。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
右側に通る電車の後を
敏捷
(
びんしょう
)
に突き切り途端に鼻先きを
掠
(
かす
)
める左側の電車を、線路の中道に立止まって
遣
(
や
)
り過すときに掌で電車の腹を
撫
(
な
)
でる。
豆腐買い
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
おまけに祝言なんというやつはたいてい宵のくちにやるものだから、両方に義理を立てるとすればよっぽど
敏捷
(
びんしょう
)
に動かないと間に合わない。
主計は忙しい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
樺は一見神経質らしい、それでいやに
沈着
(
おちつ
)
きすました若い男で、馬も
敏捷
(
びんしょう
)
な
相好
(
そうごう
)
の、足腰の
締
(
しま
)
った、雑種らしい灰色なんです。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
するとそのとき、どろみぞからあがっていた石太郎は、ちくしょうと口ばしって、目にもとまらぬ
敏捷
(
びんしょう
)
さで、いたちを地べたへたたきつけた。
屁
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
いつのまにか
敏捷
(
びんしょう
)
に借り出してきたとみえて、棒はなをそろえながら待っていたのは、お
陸尺
(
ろくしゃく
)
つきのお屋敷
駕籠
(
かご
)
が二丁——。
右門捕物帖:20 千柿の鍔
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
碧緑
(
へきりょく
)
とも
紫紺
(
しこん
)
とも思われて、油を塗ったような光沢がある。胴体はいかにも
華奢
(
きゃしゃ
)
であるが、手足はよく均衡が取れていて、行動が
敏捷
(
びんしょう
)
である。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
誰が廻しているのだろう?
敏捷
(
びんしょう
)
らしい
小兵
(
こひょう
)
の武士が、笑いながら棹をあやつっている。
秦式部
(
はたしきぶ
)
が曲芸をしているのである。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ミチはきつい眼になり、その白い頬を
痙攣
(
けいれん
)
させ、構えもせずに
牝豹
(
めひょう
)
を思わせる
敏捷
(
びんしょう
)
さで男に飛びつくと、その口に近い皮膚を力をこめて
抓
(
つね
)
った。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
しかし聡明な、
敏捷
(
びんしょう
)
な思索家でいらっしゃるあなたには、わたくしの思っている事は、
造做
(
ぞうさ
)
もなくお分りになりましょう。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
生命
(
いのち
)
を
取留
(
とりと
)
めたのも此の下男で、同時に
狩衣
(
かりぎぬ
)
を
剥
(
は
)
ぎ、緋の
袴
(
はかま
)
の
紐
(
ひも
)
を
引解
(
ひきほど
)
いたのも——鎌倉殿のためには
敏捷
(
びんしょう
)
な、忠義な奴で——此の下男である。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
前にもちょっといった通り稀には
敏捷
(
びんしょう
)
な娘はその結婚のために髪を洗うということを知って泣いて髪を洗わないのがある。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
又指の
尖
(
さき
)
の余り細り過ぎているような手が、いかに動かずに、殆ど象徴的に膝の上に繋ぎ合わされていたか、その癖その同じ手が、いかに
敏捷
(
びんしょう
)
に
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
いわんやわが邦人のごとき
敏捷
(
びんしょう
)
円活そのもっとも融通変化、境遇に従い、事情に従い、適用の資格に富むをもって世界に評判高きものにおいてをや。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
彼は
敏捷
(
びんしょう
)
に身を
躱
(
かわ
)
したので、ちょうど床から立ち上がった友人が伊東の代わりにすっかりビールを
被
(
かぶ
)
ってしまった。
暴風雨に終わった一日
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
それが男よりもズット
敏捷
(
びんしょう
)
で、
向不見
(
むこうみず
)
と来ているのですから、Aはイヨイヨ
仰天
(
ぎょうてん
)
して、悲鳴を揚げながら逃げ迷う。
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お座敷も殊勝に
敏捷
(
びんしょう
)
にしていたので倉持にもそこいらの芸者から受ける印象とは一風ちがった
純朴
(
じゅんぼく
)
なものがあった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
かれはやせて
敏捷
(
びんしょう
)
そうな少年だが、頭は
扇
(
おうぎ
)
のように開いてほおが細いので友達はしゃもじというあだ名をつけた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
二人と同じようにほっそりしていて、同じようにきちんとした服を着ており、また同じようにしなやかで
敏捷
(
びんしょう
)
であった。だが、まったくちがってもいた。
城
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
そしてこの人のどこに潜んでゐたかと思はれるほどの
敏捷
(
びんしょう
)
な身のこなしで、小さなくぐり戸を押しあけると、その孔から風のやうに出ていつてしまつた。
春泥:『白鳳』第一部
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
敏捷
(
びんしょう
)
そうな三十余りの人です。後になって、その人が小六を妻にしました。養子なのでしたが、
家附
(
いえつき
)
の娘を
棄
(
す
)
てたのです。その娘は私の学校友達でした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
富田君がその間を水をのませ、言葉をかけつつ、
敏捷
(
びんしょう
)
に立ち回っている。自分の力で動ける者は独りもいない。
長崎の鐘
(新字新仮名)
/
永井隆
(著)
綺麗
(
きれい
)
に
鬚
(
ひげ
)
を剃って、
敏捷
(
びんしょう
)
な顔つきをしていた。長い黒の
外套
(
がいとう
)
に、
焦茶色
(
こげちゃいろ
)
フェルト帽、きびきびした早口だった。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
闇太郎の行動は、例によって、
敏捷
(
びんしょう
)
を極めているのだが、今夜は、相手は、なかなか厳しい準備が出来ていた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
私は、ころんだり、傷したりしながら、猿のように
敏捷
(
びんしょう
)
な兵さんの後姿を追いながら山中をかけて歩いた。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
外濠
(
そとぼり
)
の電車が来たのでかれは乗った。
敏捷
(
びんしょう
)
な眼はすぐ美しい着物の色を求めたが、あいにくそれにはかれの願いを満足させるようなものは乗っておらなかった。
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
少年と見て
侮
(
あなど
)
ってかゝったらしかったが、鎗の穂先が数十匹の
蝗
(
いなご
)
の飛ぶように
敏捷
(
びんしょう
)
に、寸刻の
隙間
(
すきま
)
もなく迫って来るので、三四合すると早くも斬り立てられて
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
会見はひそかにかつ
敏捷
(
びんしょう
)
に行われた。巡査等はすべて主任刑事の命令の下に行動した。捜索課長と主任刑事の二人は足音を忍ばせて庭を通って、家の中に入った。
探偵小説アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
四分の一マイルほどあるこの通りを、彼はそんなに年をとった人間には全く思いもよらない
敏捷
(
びんしょう
)
さで駈け下り、追っかけるのに私は非常に難儀をしたほどであった。
群集の人
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
今の政府はただ力あるのみならず、その智恵すこぶる
敏捷
(
びんしょう
)
にして、かつて事の機に
後
(
おく
)
るることなし。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
沙金は、石段の上に腰をおろすかおろさないのに、
市女笠
(
いちめがさ
)
をぬいで、こう言った。小柄な、手足の動かし方に
猫
(
ねこ
)
のような
敏捷
(
びんしょう
)
さがある、
中肉
(
ちゅうにく
)
の、二十五六の女である。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
客は其音が此
家
(
や
)
へ自分の尋ねて来た時、何処からか
敏捷
(
びんしょう
)
に飛出して来て脚元に
戯
(
じゃ
)
れついた若い
狗
(
いぬ
)
の首に着いていた余り善くも鳴らぬ小さな鈴の音であることを知った。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それから私立探偵が私の隣へかけると、白髪の老翁は老人とも思えぬ
敏捷
(
びんしょう
)
さで、その前の空席を取った。
之
(
これ
)
で四人が
膝
(
ひざ
)
を交えた訳だが前の二人は間もなく会話を始めた。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
敏
常用漢字
中学
部首:⽁
10画
捷
漢検準1級
部首:⼿
11画
“敏”で始まる語句
敏
敏感
敏子
敏達
敏活
敏夫
敏速
敏馬
敏才
敏腕家