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ゆす
ふりがな文庫
“
揺
(
ゆす
)” の例文
旧字:
搖
と、いうことは
素気
(
そっけ
)
ないが、話を
振切
(
ふりき
)
るつもりではなさそうで、肩を
一
(
ひと
)
ツ
揺
(
ゆす
)
りながら、
鍬
(
くわ
)
の
柄
(
え
)
を返して
地
(
つち
)
についてこっちの顔を見た。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼はグッタリしている松吉を助け起してその胸ぐらを一と
揺
(
ゆす
)
ぶりして、呼吸のあるのを確めた上、裏口から飛鳥のように逃げだした。
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と思ふと三縁山増上寺の鐘の音が、静に潮の匂のする欄外の空気を
揺
(
ゆす
)
りながら、今更のやうに暦の秋を二人の客の胸にしみ渡らせた。
鼠小僧次郎吉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
大きい身体を
揺
(
ゆす
)
つて、いつも案内なしに入つて来る。張帥の
言伝
(
ことづて
)
はみなこの老人が持つて来るのだ。新民屯に近い同郷人ださうだ。
南京六月祭
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
水をのませても、水天宮様の
御符
(
ごふ
)
を飲ませても、
擦
(
さす
)
っても
揺
(
ゆす
)
ぶっても、お直はもう正体がないので、彼女も途方にくれてしまった。
半七捕物帳:35 半七先生
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
何者とも知れずバラバラと京極方へ
砂礫
(
すなつぶて
)
を飛ばす者があり、矢来を
揺
(
ゆす
)
って罵り返す宮津城下の町人の叫びも凄まじく雑音の中に響いた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いや、どうして/\、
洋琴
(
ピアノ
)
は大好きでさ。」小説家はこれまでいろんな荒仕事をして来たらしい、
巌丈
(
がんぢやう
)
な両肩を
揺
(
ゆす
)
ぶりながら笑つた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
婆
(
ばア
)
さんの肩へ手をかけて
揺
(
ゆす
)
ぶりながら耳に口をつけて呼んで見たが、返事はなく、手を放せばたわいなく倒れてしまうらしい。
買出し
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
芝居じみた
一刹那
(
いっせつな
)
が彼の予感を
微
(
かす
)
かに
揺
(
ゆす
)
ぶった時、彼の神経の
末梢
(
まっしょう
)
は、眼に見えない風に
弄
(
なぶ
)
られる細い小枝のように
顫動
(
せんどう
)
した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、それを聴いた瞬間、検事と熊城は椅子を
揺
(
ゆす
)
って笑いこけたが、法水だけは、この娘の幻に、不思議な信頼を置いているかの如くに見えた。
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
よっぽど柳には性のあった土地と見えて、この庭の真中にも、柔かい芽を出した大きい、柳の木が一本、羊のようにフラフラ背を
揺
(
ゆす
)
っていた。
風琴と魚の町
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
笹村が持ち込んで来た行李に腰かけて、落着きのない家を見廻していると、岡田の細君は、
背
(
せなか
)
で泣く子を
揺
(
ゆす
)
りながら縁側をぶらぶらしていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と葉子はなお
怒
(
おこ
)
って見せようとしたが、いかにも刻みの荒い、単純な、他意のない男の顔を見ると、からだのどこかが
揺
(
ゆす
)
られる気がして来て
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
名を呼びつづけて、上半身を
揺
(
ゆす
)
ぶっていると、珠子がパッチリと目を開いた。アア殺されたのではなかった。ただ気を失っていたばかりなのだ。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と云って、又行き止まりへ追い込まれた記者は、
彼
(
あ
)
れか此れかと考えながら、落し穴からもがき出るように肩を
揺
(
ゆす
)
った。
蘿洞先生
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
船は時々子供がするように、身体を
揺
(
ゆす
)
った。棚からものが落ちる音や、ギ——イと何かたわむ音や、波に横ッ腹がドブ——ンと打ち当る音がした。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
それからほかの猿はまた尻を米友の方へ向けてバタバタ叩いたり、木の枝を
揺
(
ゆす
)
ったりして、しきりに米友に向って挑戦をするらしいのであります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
客車の入口のところに立ったまゝ絶えず
天秤棒
(
てんびんぼう
)
を
揺
(
ゆす
)
っている様子が如何にも
狂気染
(
きちがいじ
)
みていましたから念の為めに訊いて見ますと、鮎だと言うのです
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
少しは
小言
(
こごと
)
を言ったり、
揺
(
ゆす
)
り、かわいがり、寝せつけ、そしてそれを生きてるもののように考える、それらのことのうちに女の未来が含まれている。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
硝子窓にさらさらと落葉が当って
轟々
(
ごうごう
)
と北風が家を
揺
(
ゆす
)
って、その
毎
(
たび
)
に、かたんかたんと窓の障子が鳴るのであった。
点
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
といって
叱
(
しか
)
りました。こういいながら茶人は、自分で庭へ下りていって、
樹
(
き
)
を
揺
(
ゆす
)
ったのです。そして庭一面に、紅の木の葉を、散りしかせたのでした。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
七十郎は飲もうとして、
銚子
(
ちょうし
)
に酒がないのを知り、大きな声で辻村と呼んだ。又之助、酒がないぞとどなり、それからぐらっと頭を
揺
(
ゆす
)
って甲斐を見た。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女はその赤ん坊をごく静かに
揺
(
ゆす
)
ぶりながら、ぼんやり見とれていると、ふいに、今までの
憤
(
いか
)
りも憎しみも一つの
涯
(
かぎ
)
りない温情の中へ溶けこんで行った。
小さきもの
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
その前、明治から大正に移る夏、大井川を初めて歩いて、その山と谷に、燃える心身を浸らせたあとで、この黒部の谷は、また大いに自分の心を
揺
(
ゆす
)
った。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
クリストフの一言に奥底まで
揺
(
ゆす
)
られた。そして夢中になって心の中を
披瀝
(
ひれき
)
した。彼の理想主義はその隠れたる魂の上に、
閃々
(
せんせん
)
たる詩の光輝を投げかけた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
山奥の
谷郷
(
たにさと
)
村駐在所の国道に面したホコリだらけの
硝子戸
(
ガラスど
)
をケタタマシク
揺
(
ゆす
)
ぶりながら、一人の青年が叫んだ。
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
与兵衛は鉄砲を取直して、そつと木の枝の間から
覗
(
のぞ
)
いて見ますとその樫の木の上に大きな
猿
(
さる
)
が二疋、
頻
(
しき
)
りに枝を
揺
(
ゆす
)
ぶりながら樫の実を取つて居るのでした。
山さち川さち
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
今度は葉隠れをやめて、森の木の影の微風に
揺
(
ゆす
)
らるる上を踏んで行くという趣向を考えたが、
遂
(
つい
)
に句にならぬので、とうとう森の中の小道へ這入り込んだ。
句合の月
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
とヨハンはでっぷりした腹部を
揺
(
ゆす
)
りつつ、
赧顔
(
あからがお
)
をなおからからと笑わせて一人先に橋を渡っていくのだった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
その瞬間に、遥かにずしんと響く異様な音響がしたと思う間もなく、大地を
揺
(
ゆす
)
って上下動の地震が来た。家はめきめき
軋
(
きし
)
み、畳は湧きかえるように持上った。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
「なりたい。」そう、フェミストクリュスは、
麺麭
(
パン
)
をむしゃむしゃやりながら、首を左右に
揺
(
ゆす
)
ぶって答えた。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
渾身の力にても、引つ張られても貧乏
揺
(
ゆす
)
りもせず微笑する処は大と小の価値を十分現してるが
扨
(
さて
)
勝負となると物理学上の定理は応用されぬ。乞ふ星取表を見よ。
怪物取組画譜:出羽ヶ嶽その日その日
(新字旧仮名)
/
岡本一平
(著)
ごろりと
直
(
すぐ
)
に横っ倒しになり、
掻巻
(
かいまき
)
を鼻の
辺
(
あたり
)
まで
揺
(
ゆす
)
り上げてしまう。仕方が無いから五郎治はそろり/\と跡へ
退
(
さが
)
る。一同気の毒に思い、一座白け渡りました。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
膝
(
ひざ
)
のうえにのせられて、お船のように
揺
(
ゆす
)
られたことや、やさしい子守唄をうたって貰ったことなどが、ひっそりと、まるで夕暮の影のように、胸に残っていました。
シンデレラ
(新字新仮名)
/
水谷まさる
(著)
そしてこの女を更によく知りますと、彼女に会いたい、会いたいという思いだけが、一種名状しがたい、深い、云い知れぬ興奮で、わたくしの心を
揺
(
ゆす
)
ぶるのでした。
墓
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
ついぞ誠の
嘆
(
なげき
)
にこの体を
揺
(
ゆす
)
られた事は無い。ついぞ一人で
啜泣
(
すすりなき
)
をしながら寂しい道を歩いた事はない。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
お繁はまた母に抱かれたまま泣出して、乳をあてがわれても、
揺
(
ゆす
)
られても、どうしても泣止まなかった。何故こんなに泣くんだろう、と家内はもう持余して了った。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
おくみはお向ひの家の門の電気が、往来を区切つてさしてゐる中に立つて、坊ちやんを
揺
(
ゆす
)
ぶつてゐた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
すぐ裏が寄席で、夜毎、寄席噺子が洩れ聞こえてくると、寄席へのノスタルジアに全身全魂が烈しく
揺
(
ゆす
)
られ、この心事をそのまま、のちに私は小説「圓朝」へ写した。
わが寄席青春録
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
瓢箪ぼっくりこ——つながってしゃがんで、両方に体を
揺
(
ゆす
)
って歩みを進めて、あとの
後
(
あと
)
の千次郎と、
唱
(
うた
)
いながらよぶと、一番
後
(
うしろ
)
の子が、ヘエイと返事をして出てくる。
旧聞日本橋:02 町の構成
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
すると、畳敷の方の柱の根に横坐りにして見ていた
内儀
(
かみ
)
さん——ともよの母親——が、は は は は と太り
肉
(
じし
)
を
揺
(
ゆす
)
って「みんなおとッつあんに一ぱい喰った」と笑った。
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
お隣の部屋の鼎咲子はさすがに当てられ気味で、時々大きい音をさせたり、気取った咳などをしますが、秀子は西洋人のように、美しい肩を
揺
(
ゆす
)
って、微笑をするだけでした。
流行作家の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
後妻はふと所天が
己
(
じぶん
)
を起せと云った事を思い出したので、手を延ばして所天の肩を
揺
(
ゆす
)
った。
藍微塵の衣服
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それだからこそ、颱風が吹いても地震が
揺
(
ゆす
)
ってもびくとも動かぬ殿堂が出来たのである。
津浪と人間
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
戸外
(
そと
)
は日が明るく照って、近所から、チーン、チーンと鍜冶の槌の音が強く耳に響いて来る。何処か少し遠い処で地を
揺
(
ゆす
)
るような機械の音がする。今朝は何だか湿りっ気がない。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
閉め切ってる
破家
(
あばらや
)
のうちに響いた声が、すっと外へ筒抜けてしまって、後がしいんとなった。久七は駄々っ児のように身を
揺
(
ゆす
)
っていたが、いきなり上り口の柱へしがみついていった。
特殊部落の犯罪
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
三尺四方程の大さに引き離される氷の各片が、切り離されると共に水中に陥る。それが氷鋏と称する大きな鋏で挟み上げられる。挟みあげられたあとの水には星が映つて
揺
(
ゆす
)
れてゐる。
諏訪湖畔冬の生活
(新字旧仮名)
/
島木赤彦
(著)
そして蜜を取らうとして、雄蕋を
揺
(
ゆす
)
ると、そのからだに花粉がくつつく。虫はそれを運んで花から花へと飛ぶのだ。土蜂が花粉だらけになつて花から出て来るのは誰れでも見る事だ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
出ぬ乳をあてがって、畳の足に引っかかる一間の中をあっちこっちと動物園の
虎
(
とら
)
のようにして
揺
(
ゆす
)
って歩くが、どうしても泣きやまぬ時などは、いっそ放り出してしまおうかと思うほどだ。
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
趙七爺は頭を
揺
(
ゆす
)
って言った。「どうあっても仕方がない。辮子の無い者はこれこれの罪に当る、と一条一条、書物の上に明白に出ている。家族が何人あろうともそんなことは
頓著
(
とんちゃく
)
しない」
風波
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
揺
常用漢字
中学
部首:⼿
12画
“揺”を含む語句
動揺
揺曳
揺籃
揺椅子
揺蕩
一揺
揺動
揺々
蕩揺
揺起
揺上
揺落
揺籠
小揺
偏揺
揺下
揺出
揺据
大揺
揺笑
...