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所詮
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しょせん
ふりがな文庫
“
所詮
(
しょせん
)” の例文
和尚さまは『お気の毒であるが、
母子
(
おやこ
)
は一体、あなたが禍いを避ける工夫をしない限りは、お嬢さまも
所詮
(
しょせん
)
のがれることはできない』
半七捕物帳:01 お文の魂
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
源太郎の
介抱
(
かいほう
)
を馬子に任せておいて、竜之助は立って前後を見る。乗って来た馬は駄馬である、
所詮
(
しょせん
)
敵を追うべき物の用には立たぬ。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
所詮
(
しょせん
)
町奉行の
白州
(
しらす
)
で、表向きの
口供
(
こうきょう
)
を聞いたり、役所の机の上で、
口書
(
くちがき
)
を読んだりする役人の夢にもうかがうことのできぬ境遇である。
高瀬舟
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
芸術の美は
所詮
(
しょせん
)
、市民への奉仕の美である。このかなしいあきらめを、フロオベエルは知らなかったしモオパスサンは知っていた。
逆行
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
所詮
(
しょせん
)
牛をそらすくらいならば、なぜ車の輪にかけて、あの
下司
(
げす
)
を
轢
(
ひ
)
き殺さぬ。怪我をしてさえ、手を合せて、随喜するほどの
老爺
(
おやじ
)
じゃ。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
所詮
(
しょせん
)
二葉亭は常に現状に満足出来ない人であった。絶間なく跡から跡からと煩悶を製造しては手玉に取ってオモチャにする人であった。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そこでもう
所詮
(
しょせん
)
叶
(
かな
)
わぬと思ったなり、これはこの山の
霊
(
れい
)
であろうと考えて、杖を
棄
(
す
)
てて膝を曲げ、じりじりする
地
(
つち
)
に両手をついて
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
所詮
(
しょせん
)
は地を離れ得ない生活である。だが罪に流れがちな、苦しみに沈みがちなこの世を、少しでも温めようと訪れる者たちがある。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
彼が新年の賀状を兄に送るや、
乍
(
たちま
)
ちその本色を顕わして曰く、「
一度
(
ひとたび
)
血を見申さざる内は、
所詮
(
しょせん
)
忠義の人も
著
(
あらわ
)
れ申さぬかと存じ奉り候」
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
縁起
(
えんぎ
)
でもないことだが、ゆうべわたしは、
上下
(
じょうげ
)
の
歯
(
は
)
が一
本
(
ぽん
)
残
(
のこ
)
らず、
脱
(
ぬ
)
けてしまった
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
ました。
情
(
なさけ
)
ないが、
所詮
(
しょせん
)
太夫
(
たゆう
)
は
助
(
たす
)
かるまい
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
愛なき結婚が生んだこの不遇と、この不遇から受けた
痛手
(
いたで
)
から私の生涯は
所詮
(
しょせん
)
暗い
帳
(
とばり
)
の中に終るものだと
諦
(
あきら
)
めた事もありました。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
所詮
(
しょせん
)
するに詩人のイデヤは、他のすべての芸術家のそれに
優
(
まさ
)
って、情熱深く燃えてるところの、文字通りの「夢」の夢みるものであろう。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「だけど僕らの力は余りに弱い。僕らにはどうすることもできない。運命だ。
所詮
(
しょせん
)
人は運命の外に在ることができないんだ……」
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
所詮
(
しょせん
)
、だらしのないぼくが、そんなにも女色が
嫌
(
きら
)
いだったというのは
偏
(
ひと
)
えに、あなたからの手紙の御返事を待っていたからです。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
兄弟に
倣
(
なら
)
って、ほかの
徒士勢
(
かちぜい
)
も、どっと後戻りして来た。両側の家々から火を噴いているので、
所詮
(
しょせん
)
、熱くて通れないのである。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
日本は今日の財力を守って孤島に
退嬰
(
たいえい
)
し、果して
能
(
よ
)
く無限に繁殖するその人口を維持する事が出来ようか。
所詮
(
しょせん
)
不可能である。
三たび東方の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
一通り出来るようじゃな、と老人が
穏
(
おだや
)
かな微笑を
含
(
ふく
)
んで言う。だが、それは
所詮
(
しょせん
)
射之射
(
しゃのしゃ
)
というもの、好漢いまだ
不射之射
(
ふしゃのしゃ
)
を知らぬと見える。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「
青山
(
せいざん
)
愛執
(
あいしゅう
)
の色に塗られ、」「
緑水
(
りょくすい
)
、
非怨
(
ひえん
)
の糸を永く
曳
(
ひ
)
く」などという古人の詩を見ても人間現象の姿を、むしろ現象界で確捕出来ず
所詮
(
しょせん
)
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「ふびんな男、すて置くわけにもまいるまいのう、
所詮
(
しょせん
)
手をつけたもの、宿縁によって、いかがでござろう、運び入れて遣わしては?——」
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
所詮
(
しょせん
)
は、愚痴と悪念が修羅の大猛火を燃やす魔界の
現出
(
げんしゅつ
)
なのであって、条理もなければ理非もない。いわんや人情などの通じる世界ではない。
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
生きながらえても、
所詮
(
しょせん
)
命の無駄使いじゃ。わしも決意した、機会をうかがって奴らに思い知らせてやる所存じゃ。仲綱、今はこらえてくれい
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
姫のうえは気の毒に思う。だが
所詮
(
しょせん
)
、俺が引っさらって見たところであの姫の救いにはならぬ、この俺の救にもならぬ。……
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
この反歌は、金銀珠宝も
所詮
(
しょせん
)
、子の宝には及ばないというので、長歌の実事を詠んだのに対して、この方は
綜括
(
そうかつ
)
的に詠んだ。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
彼は
所詮
(
しょせん
)
国へは帰れないという心を切に感じて来た。その心は国の方へ帰って行く人を見ることによって余計に深められた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
万が一お
咎
(
とが
)
めの筋でもあるようなら
私
(
わし
)
は
所詮
(
しょせん
)
逃れぬ処だと、とうから覚悟はきめていますが、お
互
(
たがい
)
にどうかまアそんな事にはなりたくないもの。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
所詮
(
しょせん
)
、彼等は私と全く異った世界に住む男達であった。そして、私は、吉良兵曹長の中に住む鬼を、理解するには、あまりにも疲れ過ぎている。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
所詮
(
しょせん
)
人間は地球を脱出する事が出来ない如く人の心と自然との形のデリケートなる連関によってあらゆる傾向の芸術は生れて行くのではないか。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
「山路草葉から僕んとこへまで渡り歩こうという女なんだ。あれが
止
(
や
)
まなくちゃ文学なんかやったって
所詮
(
しょせん
)
駄目だぜ。」
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それを知りたいばかりに喜久井町の家で
欝
(
ふさ
)
ぎこんで湿っぽい日を暮しているものの、そこにいたって
所詮
(
しょせん
)
分るあてのないものとなればどこか他の
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
所詮
(
しょせん
)
我々は自分で夢の
間
(
ま
)
に製造した爆裂弾を、思い思いに
抱
(
いだ
)
きながら、一人残らず、死という遠い所へ、談笑しつつ歩いて行くのではなかろうか。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
折角鳥に生れて来ても、たゞ腹が
空
(
す
)
いた、取って食ふ、
睡
(
ねむ
)
くなった、巣に入るではなんの
所詮
(
しょせん
)
もないことぢゃぞよ。
二十六夜
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
妙信
所詮
(
しょせん
)
かなわぬまでも裏山の滝津の中へ身をひそめているより道はございませぬ、和尚様。大事でございます。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
仏教への門 いったい古人もしばしばいっているように、仏教への門は、
所詮
(
しょせん
)
「信」であります。信ずる心です。しかも信とは、愛し敬うこころです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
所詮
(
しょせん
)
は
生命
(
いのち
)
さえも
危
(
あぶ
)
ないという恐ろしい
修羅場
(
しゅらじょう
)
になっておりますから「これでは、どうも仕方がない。生命あっての
物種
(
ものだね
)
だ。何もかも
抛
(
ほう
)
り出してしまえ」
幕末維新懐古談:14 猛火の中の私たち
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
僕には
所詮
(
しょせん
)
そんなことの想像のできるはずはなく、ただ身ぶるいするばかりであった。幽霊はまた言いつづけた。
世界怪談名作集:17 幽霊の移転
(新字新仮名)
/
フランシス・リチャード・ストックトン
(著)
所詮
(
しょせん
)
彼は「夢見る男」でありました。一生涯、そうして、夢の中では
有頂天
(
うちょうてん
)
の美に酔いながら、現実の世界では、何というみじめな対照でありましょう。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
経済ということも一理ではあるが、かといって、いくら金をかけたところで、
所詮
(
しょせん
)
、人間はうなぎの大好物がなんであるかを知ることは困難のようである。
鰻の話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
たとえ、児童に、それ自らの生活があるとはいいながら、
所詮
(
しょせん
)
その時代の動きを反映せざるわけにはいかない。
時代・児童・作品
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
(三)ヒヤーこりゃ
如何
(
どう
)
じゃ。アノ四角
奴
(
め
)
、一夜の
中
(
うち
)
に八角に成りよった。この分でわまた明日わ、十角や二十角にも成るだろう、こりゃ
所詮
(
しょせん
)
叶
(
かな
)
わぬわイ。
三角と四角
(その他)
/
巌谷小波
(著)
現に銀座を出て、
単身
(
たんしん
)
この
横浜
(
はま
)
に流れて来たのも、
所詮
(
しょせん
)
は大きいムッとするものを感じたせいではなかったか。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
所詮
(
しょせん
)
、自由になる金は知れたもので、得意先の理髪店を
駆
(
か
)
け廻っての集金だけで細かくやりくりしていたから、みるみる不義理が
嵩
(
かさ
)
んで、
蒼
(
あお
)
くなっていた。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
所詮
(
しょせん
)
人間は生きている間は何らかの戦争はまぬがれえない、しかして平和の戦争における最も有力の武器はすなわち文明的新知識の応用であることを思えば
民族の発展と理科
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
薬師如来の
未曾有
(
みぞう
)
の光りを、根源において
湧出
(
ゆうしゅつ
)
せしめたものは、
所詮
(
しょせん
)
白鳳の祈りに他ならないであろうから。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
所詮
(
しょせん
)
は、兄上が押えつけて、その申し分を用いなかったがための蜂起とは判りませぬか? 手前に、家督を仰せつけられる御慈悲がござりますなら、手前の
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
だけど
所詮
(
しょせん
)
はどこへ行っても淋しい一人身なり。小屋が閉まると、私は又
溝鼠
(
どぶねずみ
)
のように部屋へ帰って来る。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
はて、ダイドーは
自墮落女
(
じだらくをんな
)
で、クレオパトラは
赤面
(
あかつら
)
の
乞食女
(
こじきをんな
)
、ヘレンやヒーローは
賣女
(
ばいぢょ
)
、
賤女
(
せんぢょ
)
で、シスビは
碧瞳
(
あをめだま
)
ぢゃ
何
(
なん
)
のかのと
申
(
まう
)
せども、
所詮
(
しょせん
)
は
取
(
と
)
るに
足
(
た
)
らぬ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
これは戦争の性格だ。その性格に自由はない。かりに作戦の許す最大限の自由を許したにしても、戦争に真実の自由はなく、
所詮
(
しょせん
)
兵隊は人間ではなく人形なのだ。
特攻隊に捧ぐ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
だから
晩
(
おそ
)
かれ早かれ、
所詮
(
しょせん
)
は情に負けてしまう人なんだ、——これは、ちゃんと決ったことなんです。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「マニラ人は可愛想だったが、事件の元凶たる不徳漢が
所詮
(
しょせん
)
天罰を免れ
能
(
あた
)
わなかったという事実は、我々一同を満足させた、小牛はいうまでもなく返却した…………」
撥陵遠征隊
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
孫四郎のかくものが現におもしろいことは否定できないにしろ、ただ「おもしろい」というだけにすぎぬ芸術は
所詮
(
しょせん
)
三流以上のものではあり得ないと裕佐は思っていた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
“所詮”の意味
《名詞》
つまるところ。最後に行き着く所。
(仏教)経文などによって表される道理。
《形容動詞》
望ましくはないが、最後にはその結果に行き着くさま。つまるところは。
(出典:Wiktionary)
“所詮”の解説
所詮(しょせん)は、日本語の二字熟語の一つ。仏教においての用語、古語でもある。
(出典:Wikipedia)
所
常用漢字
小3
部首:⼾
8画
詮
常用漢字
中学
部首:⾔
13画
“所詮”で始まる語句
所詮人界