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憔悴
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しょうすい
ふりがな文庫
“
憔悴
(
しょうすい
)” の例文
「今日、里見十左に会った」甲斐は暗い壁のほうへ眼をやりながら云った、「——失明して、躯もすっかり
憔悴
(
しょうすい
)
しているようだった」
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
汚い着物に引きかえて、顔丈けは、汚れてもいなければ、栄養不良の為に
憔悴
(
しょうすい
)
してもいなかった。目鼻立ちのよく整った、真白な肌。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と麗人糸子は、
憔悴
(
しょうすい
)
した面に
身躾
(
みだしな
)
みの頬紅打って、香りの高い煎茶の湯呑みを捧げ、帆村の深呼吸をしているバルコニーに現われた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
が、そうした風光のうちを、熱海から伊東へ辿る二人の若い武士は、二人とも病犬か何かのように険しい、
憔悴
(
しょうすい
)
した顔をしていた。
船医の立場
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
魂の輝きを浮かべてる
憔悴
(
しょうすい
)
したその顔、熱い炎が燃えてるビロードのような美しいその眼、
怜悧
(
れいり
)
そうな長いその手、無格好なその身体
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
鼠色
(
ねずみいろ
)
の壁と、不景気なガラス窓とに囲まれた、
伽藍
(
がらん
)
のような講堂には、何百人かの罹災民諸君が、雑然として、
憔悴
(
しょうすい
)
した顔を並べていた。
水の三日
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一夜を
妓楼
(
ぎろう
)
に明かした彼は
伯母
(
おば
)
への手前、そういう場合にすぐそれと
気取
(
けど
)
られるような
憔悴
(
しょうすい
)
した後ろ暗いさまを見せまいとして
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
この二つの心がわたしの
胸
(
むね
)
の中でいつもかみあっておりますので、わたしはこんなに
憔悴
(
しょうすい
)
いたしてしまったのでございます。ええそうです。
おしどり
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
が、四人のひどい
憔悴
(
しょうすい
)
の仕方を見ると、ごく簡単な説明だけで、この一年の辛苦が、どんなにひどいものだったか充分に想像できるのだった。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
が、持ぬしは、意気沈んで、
髯
(
ひげ
)
、髪もぶしょうにのび、
面
(
おもて
)
は
憔悴
(
しょうすい
)
はしていたが、素純にして、しかも謹厳なる人物であった。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして、思いなしか、眼の光にも曇りが出来て、何となしに
憔悴
(
しょうすい
)
した表情がこの人の全外容に表われているのであった。
雑記(Ⅱ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
あの方は驚くほど
憔悴
(
しょうすい
)
なすっていられるように見えた。そのお
痩
(
や
)
せ方やお顔色の悪いことは、私の胸を一ぱいにさせた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
二三日の間に
憔悴
(
しょうすい
)
のあらわれた顔を新道へ向け、その長い道の上にちょこんと滑稽に干されている仏壇を眺めていたが
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
同じ年(一八八九年)の暮、二年前に独艦上に姿を消して以来まるで消息の知れなかった前々王ラウペパが、ひょっこり
憔悴
(
しょうすい
)
した姿で戻って来た。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
どことなく老いて
憔悴
(
しょうすい
)
している母が、第一番に言った言葉は、「待っとったけん! わしも気が小さくなってねえ……」
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
こんな言葉をかわした後、間もなくお民はしたくのできた
膳
(
ぜん
)
を台所から運んで来た。
憔悴
(
しょうすい
)
した夫のためにつけた一本の
銚子
(
ちょうし
)
をその膳の上に置いた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
といわれ、はじめて気がついたように折竹をみると、色こそ、
猓玀
(
ローロー
)
の
𤠫𤠫
(
リューシ
)
のような
夷蛮
(
いばん
)
と異らないが、どこかに影がうすれたような
憔悴
(
しょうすい
)
の色がある。
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
たゞ何事にも堪えて、その苦悩に絞られて、心や身体から刻々に精力が脱けて行くのを必死の緊張で眺めているだけだ。蝶ちゃんは、僕の
憔悴
(
しょうすい
)
を軽蔑する。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
しかし、長陣の
窶
(
やつ
)
れと、苦慮の
憔悴
(
しょうすい
)
は、
唇
(
くち
)
のまわりの
髭
(
ひげ
)
にも、
落
(
お
)
ち
窪
(
くぼ
)
んでいる眼にも
蔽
(
おお
)
い得ないものがある。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「年が行ってしまうと恥ずかしい目にあうものです。こんな恋の
憔悴
(
しょうすい
)
者にせめて話を聞いてやろうという寛大な気持ちをお見せになりましたか。そうじゃない」
源氏物語:20 朝顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
齢
(
とし
)
五十に満たざるがごとくなれど、
眼
(
まなこ
)
の色、よのつねのものには似ず、面色
憔悴
(
しょうすい
)
して蒼白く、手には珠数を下げ僧衣古びたれどみずから別をなす格位を保てり。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
私は日々に
憔悴
(
しょうすい
)
し、血色が悪くなり、皮膚が老衰に
澱
(
よど
)
んでしまった。私は自分の
養生
(
ようじょう
)
に注意し始めた。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
初めは一種の
畏怖
(
いふ
)
と親しみであったものが、逆に
嵩
(
こう
)
じて、茫然と限界に拡がり満ちる痴川の生存そのものを
忌
(
い
)
み呪う気持が伊豆の
憔悴
(
しょうすい
)
した孤独を
饒舌
(
じょうぜつ
)
なものにした。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
遥か彼方の松に白鷺の群がるのを見れば、ややっ、あれは源氏の白旗ではないかと浮足立ち、海に野雁が鳴けば、敵兵の
鬨
(
とき
)
の声かと顔色を変えた。誰もが
憔悴
(
しょうすい
)
していた。
現代語訳 平家物語:08 第八巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
「駄目だよサッチゃん。十月まで
保
(
も
)
たないよ。
憔悴
(
しょうすい
)
しちゃったよ。寝なきゃあならないんだ」
雨の玉川心中:01 太宰治との愛と死のノート
(新字新仮名)
/
山崎富栄
(著)
丹尾の顔は疲労のためか、酔いのせいか、四日前にくらべると、すこし
憔悴
(
しょうすい
)
し荒んでいた。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
永い闘いに
憔悴
(
しょうすい
)
しきった顔にいっそうの苦悩の色をみせながらルーダオは
径々
(
みちみち
)
つぶやいていた。耕作小舎に辿りつくと、ルーダオは妻と十四になる娘とだけを伴って中に入った。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
鬚
(
ひげ
)
蓬々
(
ほうほう
)
として顔色
憔悴
(
しょうすい
)
していたが、事件発生後一週間目に当る去る三十一日夜、
何処
(
いずこ
)
よりか一通の女文字の手紙が同氏宛配達されて以来、
何故
(
なにゆえ
)
か精神に異状を来たしたものらしく
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
いかに紋也の
憔悴
(
しょうすい
)
したことか! 眼窩がくぼんで蔭をなしている。頬の肉がゲッソリと落ち込んで、頬骨が高く立っている。髷はほぐれて乱れた髪を、枕の外へはみ出させている。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
憔悴
(
しょうすい
)
しぼろをまとい疲れ切ってる防寨の人々は、二十四時間の間一食もせず、一睡もせず、余すところは数発の弾のみとなり、ポケットを探っても弾薬はなく、ほとんど全員傷を受け
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
A・B・C・C(原子爆弾影響研究所)で診察して
貰
(
もら
)
うと、皮膚の一部を切とって、研究のため、本国へ送られたというのである。この前見た時にくらべると、兄の顔色は
憔悴
(
しょうすい
)
していた。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
衰残
(
すいざん
)
、
憔悴
(
しょうすい
)
、
零落
(
れいらく
)
、失敗。これほど
味
(
あじわ
)
い深く、自分の心を打つものはない。
暴風
(
あらし
)
に吹きおとされた泥の上の花びらは、朝日の光に咲きかける
蕾
(
つぼみ
)
の色よりも、どれほど美しく見えるであろう。
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
晝間
(
ひるま
)
から一と間に閉じ籠って病人のようにしていることがしば/\であったし、
餘所目
(
よそめ
)
にもひどく
憔悴
(
しょうすい
)
して、
鬱々
(
うつ/\
)
としているように見えたので、そう云う父が子供にはひとしお薄気味悪く
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
さなきだに
彼
(
かれ
)
の
憔悴
(
しょうすい
)
した
顔
(
かお
)
は
不幸
(
ふこう
)
なる
内心
(
ないしん
)
の
煩悶
(
はんもん
)
と、
長日月
(
ちょうじつげつ
)
の
恐怖
(
きょうふ
)
とにて、
苛責
(
さいな
)
まれ
抜
(
ぬ
)
いた
心
(
こころ
)
を、
鏡
(
かがみ
)
に
写
(
うつ
)
したように
現
(
あら
)
わしているのに。その
広
(
ひろ
)
い
骨張
(
ほねば
)
った
顔
(
かお
)
の
動
(
うご
)
きは、
如何
(
いか
)
にも
変
(
へん
)
で
病的
(
びょうてき
)
であって。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
とにかく、江戸の市中を、喰うものも喰わず、
喪家
(
そうか
)
の
狗
(
いぬ
)
のように、雪溶けの
泥濘
(
でいねい
)
を蹴たててうろつき廻っていた。そして、その暮方に、
憔悴
(
しょうすい
)
しきった顔をして、ぼんやり両国の橋の
袂
(
たもと
)
へ出てきた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
手に/\薪を負ひて
樵路
(
しょうろ
)
を下り来るに逢ひ、顛末を語り介抱せられて家に帰り着きたりしが、心中
鬱屈
(
うっくつ
)
し顔色
憔悴
(
しょうすい
)
して食事も進まず、妻子等色々と保養を加へ、五十余日して漸く回復したりと也。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
私は、黒住が来たら、いまの今まで、約束の時間を無視したことを、詰ってやろう、と心構えにしていたのだが、一目彼の様子を見ると、その余りに
憔悴
(
しょうすい
)
した容貌に押されて、口を
噤
(
つぐ
)
んでしまった。
蝕眠譜
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
彼は自分の心からの
憔悴
(
しょうすい
)
を彼女の前で隠した。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
また
憔悴
(
しょうすい
)
した絶望の表情も見えなかった。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
肉体の
憔悴
(
しょうすい
)
は彼と大差なかったが、私の頭髪は、あの穴の中の数日間に、全く色素を失って、八十歳の老人の様に真白に変っていた。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
年よりも
遙
(
はる
)
かにもの識らずだった彼女は、恐怖と苦痛と不眠とで、数日のうちに驚くほど
憔悴
(
しょうすい
)
した。松室には病身の
姑
(
しゅうとめ
)
がいた。
柘榴
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
第二にその後ろ姿は伝吉の心に
描
(
えが
)
いていたよりもずっと
憔悴
(
しょうすい
)
を極めていた。伝吉はほとんど一瞬間人違いではないかと云う疑いさえ抱いた。
伝吉の敵打ち
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この男は、オーストリア帝国の一首相の
親戚
(
しんせき
)
に当たる名家の貴族であって、気取りやで、道楽者で、
伊達
(
だて
)
者で、早くも
憔悴
(
しょうすい
)
してしまっていた。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
あの方は驚くほど
憔悴
(
しょうすい
)
なすっていられるように見えた。そのお痩せ方やお顔色の悪いことは、私の胸を一ぱいにさせた。
楡の家
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
子規の葬式の日、
田端
(
たばた
)
の寺の門前に立って会葬者を見送っていた人々の中に、ひどく
憔悴
(
しょうすい
)
したような虚子の顔を見出したことも、思い出すことの一つである。
高浜さんと私
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
お目にかかるまでは、どんなに
憔悴
(
しょうすい
)
しておられるかと思っていたんですが、この様子ならばもう大丈夫です。ひとつ、御安心なさるようによくかきましょう。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
頼政はもう
咳
(
せき
)
もしない。
憔悴
(
しょうすい
)
していた顔色にも、近頃にない元気を取りもどして、矢つぎ早に、訊ね出した。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私は、初めてその男の姿をマジマジと観察したのだったが、思ったよりは遙かに、若い男だった。
年齢
(
とし
)
のころは二十四五でもあろうか。だが非常に
憔悴
(
しょうすい
)
していた。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あんまり朝鮮王の逃足が早いので、一明使は朝鮮王が、日本軍の先鋒を承って居るのではないかと疑ったが、王の顔色
憔悴
(
しょうすい
)
して居るのを見て疑を晴した程である。
碧蹄館の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
この二日のうちに、いよいよもって
憔悴
(
しょうすい
)
した源右衛門とむかいあって坐っているのが、仙波阿古十郎。
顎十郎捕物帳:08 氷献上
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
“憔悴”の意味
《名詞》
憔悴(しょうすい)
痩せ衰えること。やつれること。
(出典:Wiktionary)
憔
漢検1級
部首:⼼
15画
悴
漢検1級
部首:⼼
11画
“憔”で始まる語句
憔
憔忰
憔々
憔心
憔懆
憔萎
憔衰