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惨憺
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さんたん
ふりがな文庫
“
惨憺
(
さんたん
)” の例文
旧字:
慘憺
一足入ると、ここは更に
惨憺
(
さんたん
)
たる有様です。かなり取乱した中に床を敷いて、町内の外科が、新助の傷の手当をしているところへ
銭形平次捕物控:023 血潮と糠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
とても
抱一
(
ほういつ
)
などと比すべきものではない、抱一の画の趣向なきに反して光琳の画には一々意匠
惨憺
(
さんたん
)
たる者があるのは怪しむに足らない。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
耄
(
ぼ
)
けなさるな——と言外に含ませて、老人の幻想はむざんに壊された。彼の
惨憺
(
さんたん
)
たる思いは、顔のかたちをありありと
歪
(
ゆが
)
めていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
惨憺
(
さんたん
)
たる経営である。これさえ描き上ればと、あてがあるのであらゆる物を売って、絵具にかえた。構図はできた。線描もすすんで行く。
田崎草雲とその子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分に対して
反
(
そむ
)
き去っているということ、その反き去ってしまった結果として、
惨憺
(
さんたん
)
たる家庭争議がついにこのたびの業火となって、家財
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
惨憺
(
さんたん
)
たるようすをしたこの四人の男は、じつは昨年の春まで、大学の研究室で『
中性子
(
ヌウトロン
)
放射』の研究に没頭していた若い科学者たちだった。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
されば孤独のわびしさを忘れようとしてひたすら詩興の
救
(
すくい
)
を求めても詩興更に湧き来らぬ時憂傷の情ここに始めて
惨憺
(
さんたん
)
の
極
(
きょく
)
に
到
(
いた
)
るのである。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼は、この
惨憺
(
さんたん
)
たる事実に対して、何物をも感じなかったようだった。ただ、金が少々あればいいのだった。それが万事を解決するだろう。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
それが——と思うと、やにわにテエブルの角を
跨
(
また
)
いで、しばらく適度に苦心
惨憺
(
さんたん
)
したのち、その十
法
(
フラン
)
札を挟んで悠々と持って行ってしまった。
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
そして
楼蘭
(
ろうらん
)
を中心とする一帯の発掘に
惨憺
(
さんたん
)
たる
辛苦
(
しんく
)
をなめた上に、更に楼蘭を起点とする古代支那路線をたずね、「塩の結晶の
耀
(
かがや
)
く
無涯
(
むがい
)
の
曠野
(
こうや
)
」
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
諸君、その武田博士が苦心
惨憺
(
さんたん
)
、心血をそそいで設計したのが『最上』級四隻だ。今さら米国海軍が舌をまいて驚いたって、何も不思議ではない。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
だが、生糸が下落して、
惨憺
(
さんたん
)
たる目に逢った養蚕家は製産費の低減、製産額の増加によって防止する外にないと考えた。
大阪を歩く
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
又もや
惨憺
(
さんたん
)
たる苦心研究を積ませられたものであるが、さてそのあげく、イヨイヨ一行を谷山家に乗込ませて見ると、案ずるよりも生むが易いで
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ここで北方の山の写真を一枚写すことになって、
可
(
か
)
なり強く吹きつける寒い北風に曝されながら、浅井君が苦心
惨憺
(
さんたん
)
してやっとシャッターを切った。
初旅の大菩薩連嶺
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
昨夜は淵明が食を乞ふの詩を読みて、其清節の高きに服し、今夜は
惨憺
(
さんたん
)
たる実聞をものして、思はず袖を
湿
(
ぬ
)
らしけり。
鬼心非鬼心:(実聞)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
成るたけ西洋臭くしようと苦心
惨憺
(
さんたん
)
しているらしく、よくよく見ると、
凡
(
およ
)
そ外部へ露出している肌と云う肌には粉が吹いたようにお白粉が塗ってあり
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お
品
(
しな
)
がそれ
程
(
ほど
)
苦勞
(
くらう
)
した
米穀
(
べいこく
)
の
問題
(
もんだい
)
が
其
(
そ
)
の
死後
(
しご
)
四五
年間
(
ねんかん
)
の
惨憺
(
さんたん
)
たる
境遇
(
きやうぐう
)
から
漸
(
やうや
)
く
解決
(
かいけつ
)
が
告
(
つ
)
げられようとしたのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
飯田松川に比べると、三分の一の距離しかない片桐松川ではむしろ
惨憺
(
さんたん
)
たる
悲歌
(
エレジー
)
を聞いたけれども、飯田松川の長流では反対に安逸の浪費をさえ感じた。
二つの松川
(新字新仮名)
/
細井吉造
(著)
丁度その時、不二子の
惨憺
(
さんたん
)
たる
懊悩
(
おうのう
)
も知らぬげに、明智は何を思いついたのか、実に突拍子もない質問を発した。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そりゃあるいは雨も降ろう、
黒雲
(
くろくも
)
も
湧
(
わ
)
き起ろうが、それは、
惨憺
(
さんたん
)
たる黒牛の背の
犠牲
(
ぎせい
)
を見るに忍びないで、天道が泣かるるのじゃ。月が
面
(
おもて
)
を
蔽
(
おお
)
うのじゃ。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
而
(
しか
)
して世に熟せず世の奥に貫かぬ心には、人生の不調子、不都合を見初める時に、初理想の
甚
(
はなは
)
だ
齟齬
(
そご
)
せるを感じ、想世界の風物何となく人を
惨憺
(
さんたん
)
たらしむ。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と突然に、
惨憺
(
さんたん
)
たる光景を呈した。イギリス軍の左方、フランス軍の方からいえば右方に当たって、胸甲騎兵の縦列の先頭は恐るべき叫びをあげて立ち上がった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
甲は老牧師エリパズ、乙は壮年有能の神学者ビルダデ、丙は少壮有為の実務家ゾパルであった。三人到り見れば、ヨブの実状は思いの
外
(
ほか
)
に
惨憺
(
さんたん
)
たる有様であった。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
さては! お探ね者の御書院番を見破られたかな?!——と、今、ここで
訴人
(
そにん
)
をされて押えられては、この七日間、苦心
惨憺
(
さんたん
)
、
韜晦
(
とうかい
)
して来たのが何にもならない。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
凝乎
(
じっ
)
と私は空間の一点を凝視したまま、
身動
(
みじろ
)
ぎもしなかったが、妻の肉体を手に入れるどころか! 苦心
惨憺
(
さんたん
)
の結果、やっとここまで漕ぎ付けた妻と私との距離を
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
今や
角燈
(
かくとう
)
の火に
照
(
てら
)
し
出
(
いだ
)
されたる、
此
(
こ
)
の暗い
空屋
(
あきや
)
の内の光景は
惨憺
(
さんたん
)
、実に眼も当てられぬものであった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
吾が
煩悶
(
はんもん
)
の活を見るに、彼等が
惨憺
(
さんたん
)
の死と
相同
(
あひおなじ
)
からざるなし、
但殊
(
ただこと
)
にするところは去ると留るとのみ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
途中で日が没して雨でも降って来るとすこぶる
惨憺
(
さんたん
)
を極めねばならない、八時半に出合の処を出発して闊葉樹林の下に繁茂屈曲している
石楠花
(
しゃくなげ
)
や、熊笹を蹈み分けて
平ヶ岳登攀記
(新字新仮名)
/
高頭仁兵衛
(著)
関東大震災を経験した俺には、こういう
惨憺
(
さんたん
)
たる眺めは、何も生れて初めてのことではなかったが
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
きのう僕は彼らを相手に苦心
惨憺
(
さんたん
)
してね、君の来るのを待ってたんだよ。僕は皆に君の来ることを話したもんだから……まず最初は社会主義の見地から始まったのさ。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
爾来
(
じらい
)
「夏の女の姿」は不幸にも僕には
惨憺
(
さんたん
)
たる
幻滅
(
げんめつ
)
の象徴になつてゐる。日盛りの銀座の美人などは
如何
(
いか
)
に
嬋娟窈窕
(
せんけんえうてう
)
としてゐても、うつかり敬意を表するものではない。
鷺と鴛鴦
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そしてこの
惨憺
(
さんたん
)
たる一角に、ひとつの差物が微動もせずはためいていた、「墨絵かぶら」のさしものである、数珠を描き添えた墨絵かぶらの差物は一歩も動かなかった。
青竹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それも専門家的の苦心
惨憺
(
さんたん
)
というのでなくて、
尋常
(
じんじょう
)
の言葉で無理なくすらすらと云っていて、これだけ充実したものになるということは時代の
賜
(
たまもの
)
といわなければならない。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
すなわち試験以前の一
旬間
(
じゅんかん
)
の
惨憺
(
さんたん
)
たるさまは父兄友人はいうまでもなく、少しく今日の日本の教育並びに試験の制度を知るものは、察するにあまりありというくらいである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
そうなれば、予審判事がKに関する
嘘
(
うそ
)
っぱちの報告を苦心
惨憺
(
さんたん
)
してでっちあげた末、深夜に来てみると女のベッドが
空
(
から
)
であるというような場面も、いつか起りうるわけである。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
此
(
この
)
動力(源因)は
即
(
すなは
)
ち術語の罪過にして、世俗の所謂過失及び刑法の所謂犯罪等と混同すべからず。
例之
(
たとへ
)
ば
茲
(
こゝ
)
に曲中の人物が数奇不過不幸
惨憺
(
さんたん
)
の境界に終ることありと仮定せよ。
罪過論
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
その質朴な美、その色ざめた中にある雅趣、人物の姿は
惨憺
(
さんたん
)
哀愁人に迫るものがあった。
探偵小説アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
当時朝鮮の非常時内閣の大臣として、苦心
惨憺
(
さんたん
)
の奔走をして居た
柳成竜
(
りゅうせいりゅう
)
が来て、陣中に会見した。成竜平壌の地図を開き地形を指示したが、如松は倭奴
恃
(
たの
)
む処はただ鳥銃である。
碧蹄館の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ジャズ・バンド、マルセル・シュオブに似たセロ弾き、グロテスクな洋服師思い出すボンベイの過去、いまではロシアで苦心
惨憺
(
さんたん
)
アンナ・ニコロを祝福して、私は最期迄知ってしまう。
恋の一杯売
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
蘇武がさりげなく語るその数年間の生活はまったく
惨憺
(
さんたん
)
たるものであったらしい。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
では、飛行機といわず、単に
飛翔機
(
ひしょうき
)
といおう。幽霊船の甲板で、独楽のように、ぐるぐる廻りながら、苦心
惨憺
(
さんたん
)
して製作しているのが、この飛翔機だ。いやむしろ、風船といった方がいい。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
れいの
見栄坊
(
みえぼう
)
の気持から、もし万一ひっぱり出されても、何とかして恥をかかずにすまして、助手さんたちの期待を裏切らぬようにしたいと苦心
惨憺
(
さんたん
)
して、さまざま工夫をこらしている
様
(
さま
)
が
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「これこそ自分が十余年間苦心
惨憺
(
さんたん
)
して造ろうとして造り得なかった理想の至魚だ。自分が出来損いとして捨てて顧みなかった金魚のなかのどれとどれとが、いつどう交媒して孵化して出来たか」
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ある土曜日の午後、僕は画布を前にして、レモンイェローの効果に苦心
惨憺
(
さんたん
)
していますと、速達、という声がして、一通の手紙がヒラリと舞い込みました。裏を返すと、渋谷・陳根頑と記してある。
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
その女のために忍んで来た
惨憺
(
さんたん
)
たる胸中を考えれば考えるほど、そんな破滅になってしまったのがあまりに理不尽であるように思えてどうしたらこの耐えがたい胸を鎮めることが出来るかと思った。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
A博士は
曾
(
かつ
)
て、人工心臓即ち人工的に心臓を作って、本来の心臓に
代
(
かわ
)
らしめ、
以
(
もっ
)
て、人類を各種の
疾病
(
しっぺい
)
から救い、
長生
(
ちょうせい
)
延命をはかり、更に進んでは起死回生の実を挙げようと苦心
惨憺
(
さんたん
)
した人であって
人工心臓
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
それは
惨憺
(
さんたん
)
たるものであったが、他にどうすることもできないので、顔を見合わしたままで黙っていた。しかも女の悲しそうな顔といたましい
姿
(
すがた
)
とは、人をしてその肺腑を苦しましめるものがあった。
連城
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
しかもじつに
惨憺
(
さんたん
)
たる苦悩を経験したことだろう。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
その光景は
惨憺
(
さんたん
)
たるものがあった。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「考えましたよ。苦心
惨憺
(
さんたん
)
です」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
惨
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
憺
漢検1級
部首:⼼
16画
“惨憺”で始まる語句
惨憺極
惨憺悲愴