“悲(かなしみ)” の例文
だがもうそれは八時すぎ、丁度番組の第一の「秋の悲(かなしみ)」の切れたところで、場内の灯火(あかり)のいろがなぜか暗く疲れ切つた感じでした。
井上正夫におくる手紙 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
婦人の婚姻に因りて得(う)る処のものは概(おほむ)ね斯の如し。而(しかう)して男子もまた、先人曰(いは)く、「妻なければ楽(たのしみ)少く、妻ある身には悲(かなしみ)多し」
愛と婚姻 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あの奥さんを失う悲(かなしみ)から出た不平ではない。自己を愛する心が傷つけられた不平に過ぎない。大村が恩もなく怨(うらみ)もなく別れた女の話をしたっけ。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
笑ふかと見れば泣き、泣くかと見れば憤(いか)り、己(おのれ)の胸のやうに際(そこひ)も知らず黒く濁れる夕暮の空に向ひてその悲(かなしみ)と恨とを訴へ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
痩(やせ)たりや/\、病気揚句(あげく)を恋に責(せめ)られ、悲(かなしみ)に絞られて、此身細々と心引立(ひきたた)ず、浮藻(うきも)足をからむ泥沼(どろぬま)の深水(ふかみ)にはまり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一種の甘い悲(かなしみ)に酔ひ惚(ほ)れて、私は風の落ちた薄暗の小径をとぼ/\と辿つた。私は自分の家へ帰れるだらうか。
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
闇(やみ)にも歡(よろこ)びあり、光(ひかり)にも悲(かなしみ)あり麥藁帽(むぎわらばう)の廂(ひさし)を傾(かたむ)けて、彼方(かなた)の丘(をか)、此方(こなた)の林(はやし)を望(のぞ)めば、まじ/\と照(て)る日(ひ)に輝(かゞや)いて眩(まば)ゆきばかりの景色(けしき)。自分(じぶん)は思(おも)はず泣(な)いた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
七夕の竹ヤ々々は心涼しく、師走(しはす)の竹ヤ/\は(すゝはらふ竹うりなり)聞(きく)に忙(せはし)。物皆季に応(おう)じて声をなし、情に入る事天然の理なり。胡笳(こか)の悲(かなしみ)も又然らん。
君と余とは中学時代以来の親友である、殊に今度は同じ悲(かなしみ)を抱きながら、久し振りにて相見たのである、単にいつもの旧友に逢うという心持のみではなかった。
我が子の死 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
して見ると詩人は常の人よりも苦労性で、凡骨(ぼんこつ)の倍以上に神経が鋭敏なのかも知れん。超俗の喜びもあろうが、無量の悲(かなしみ)も多かろう。そんならば詩人になるのも考え物だ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
己の喜(よろこび)だの悲(かなしみ)だのというものは、本当の喜や悲でなくって、謂(い)わば未来の人生の影を取り越して写したものか、さもなくば本当に味のある万有のうつろな図のようなものであって
「僕達は親友では無かったか」私は愁(うれい)に捉えられながら、彼の心を動かそうとした。「いいや僕達は親友の筈だ。二人の心は一つであった。喜(よろこび)も悲(かなしみ)も一緒に感じ、そうして慰め合ったものだ。 ...
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この椅子はあれがまだ生れぬ世を、喜(よろこび)につけ悲(かなしみ)につけ、2695
かくて我は悲(かなしみ)のさなかに遺(のこ)されつ、泣かんとす
何(なん)ともわかぬ悲(かなしみ)を思はしむる目付あり。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
われのに似たる悲(かなしみ)をする人ありや。
あはれ今 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
あるは恐る、悲(かなしみ)に絶望に捧げむと
母 (旧字旧仮名) / アダ・ネグリ(著)
驚(おどろ)きもせずはた悲(かなしみ)もせず
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
「悲(かなしみ)」の螺(かひ)かとばかり
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
病(やまひ)に塵(ちり)に悲(かなしみ)に
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
故(ゆゑ)に幾日の後に待ちて又かく聞えしを、この文にもなほ験(しるし)あらずば、彼は弥増(いやま)す悲(かなしみ)の中に定めて三度(みたび)の筆を援(と)るなるべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
闇(やみ)にも歓(よろこ)びあり、光にも悲(かなしみ)あり、麦藁帽(むぎわらぼう)の廂(ひさし)を傾けて、彼方(かなた)の丘、此方(こなた)の林を望めば、まじまじと照る日に輝いて眩(まば)ゆきばかりの景色。自分は思わず泣いた。
画の悲み (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
七夕の竹ヤ々々は心涼しく、師走(しはす)の竹ヤ/\は(すゝはらふ竹うりなり)聞(きく)に忙(せはし)。物皆季に応(おう)じて声をなし、情に入る事天然の理なり。胡笳(こか)の悲(かなしみ)も又然らん。
ああ、悲(かなしみ)の翼(つばさ)は己の体に触れたのに、己の不性(ぶしょう)なために悲(かなしみ)の代(かわり)に詰まらぬ不愉快が出来たのだ。(物に驚きたるように。)もう暗くなった。己はまた詰まらなくくよくよと物案じをし出したな。
去歳(こぞ)の春すが漏(もり)したるか怪しき汚染(しみ)は滝の糸を乱して画襖(えぶすま)の李白(りはく)の頭(かしら)に濺(そそ)げど、たて付(つけ)よければ身の毛立(たつ)程の寒さを透間(すきま)に喞(かこ)ちもせず、兎(と)も角(かく)も安楽にして居るにさえ、うら寂しく自(おのずから)悲(かなしみ)を知るに
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
年寄の手の顫(ふる)えたるは、老(おい)のためとも悲(かなしみ)のためとも知れず。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
悲(かなしみ)の隣に喜(よろこび)があり、喜の隣に悲があるのです。
悲(かなしみ)、削(そ)ぎしやつれがほ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
昔より悲(かなしみ)の母
病(やまひ)に塵(ちり)に悲(かなしみ)に
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
一時に両親(ふたおや)に別れて、死目にも逢(あ)はず、その臨終と謂へば、気の毒とも何とも謂ひやうの無い……凡(およ)そ人の子としてこれより上の悲(かなしみ)が有らうか、察し給へ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
一人の男懐(ふところ)より児(こ)をいだして姑(しうと)にわたしければ、悲(かなしみ)と喜(よろこび)と両行(りやうかう)の涙(なみだ)をおとしけるとぞ。
貴様、運命の鬼が最も巧(たくみ)に使う道具の一は『惑(まどい)』ですよ。『惑』は悲(かなしみ)を苦(くるしみ)に変ます。苦悩(くるしみ)を更に自乗させます。自殺は決心です。始終惑(まどい)のために苦んで居る者に、如何(どう)して此決心が起りましょう。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
わたしがこの世に生きていた間(あいだ)の生活の半分はラヴェンデルの草の優しい匂(におい)のように、この部屋の空気に籠っている。人の母の生涯というものは、悲(かなしみ)が三分(ぶ)一で、後(あと)の二分(ぶ)は心配と責苦(せめく)とであろう。
喜(よろこび)の日にも悲(かなしみ)の日にも、あなたの歌と意地とは
悲(かなしみ)削(そ)ぎしやつれがほ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
悲(かなしみ)さらに深まさる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
悲(かなしみ)節(せつ)を守りつぐ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
悲(かなしみ)の色(いろ)口(くち)にあり。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
悲(かなしみ)の色口(いろくち)にあり。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)