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怯
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おく
ふりがな文庫
“
怯
(
おく
)” の例文
中にも苦味走つた顔の男は、巡査の人を見るやうな見方をしたと思つたので、八は
癪
(
しやく
)
に
障
(
さは
)
つたが、
怯
(
おく
)
れ
気
(
ぎ
)
が出て下を向いてしまつた。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
とは云っても覚えが有るものでございますから、
其所
(
そこ
)
は相手が女ながらも心に
怯
(
おく
)
れが来て段々後へ下る。すると段々見物の人が
群
(
たか
)
って
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかし、こうして覚えのある足に馬力をかけてさえいれば、たとえ安達ヶ原であろうと、
唐天竺
(
からてんじく
)
であろうと、
怯
(
おく
)
れを見せるがものはない。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「ホホホホホホ。何を
怯
(
おく
)
れていやるのじゃ、駕の中には
妾
(
わらわ
)
がおります。怖いと思うたら、先の者へぶつけた途端にそちたちは逃げるがよいぞ」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
美女 (
怯
(
おく
)
れたる
内端
(
うちわ
)
な態度)もうもう、決して、
虚飾
(
みえ
)
、
栄燿
(
えよう
)
を見せようとは思いません。あの、ただ活きている事だけを知らせとう存じます。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
そへて
梟
(
ふくろふ
)
の
叫
(
さけ
)
び
一段
(
いちだん
)
と
物
(
もの
)
すごしお
高
(
たか
)
決心
(
けつしん
)
の
眼光
(
まなざし
)
たじろがずお
心
(
こゝろ
)
怯
(
おく
)
れかさりとては
御未練
(
ごみれん
)
なり
高
(
たか
)
が
心
(
こゝろ
)
は
先
(
さき
)
ほども
申
(
まを
)
す
通
(
とほ
)
り
決
(
きは
)
めし
覺悟
(
かくご
)
の
道
(
みち
)
は
一
(
ひと
)
つ
二人
(
ふたり
)
の
身
(
み
)
を
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
阿Qは近頃割合に人の尊敬を受け、自分もいささか
高慢稚気
(
こうまんちき
)
になっているが、いつもやり合う人達の面を見ると、やはり心が
怯
(
おく
)
れてしまう。ところが今度に限って非常な
勢
(
いきおい
)
だ。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
角の家の腰障子を開けて出て来た小女が、じろ/\と顔を覗き込んで行ったのでたちまち
怯
(
おく
)
れが差し、その隣の淀文へ這入ることが出来ずに、行過ぎて元の広小路へ出てしまった。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
「親の敵——で悪ければ兄の敵、それで気に入らなきゃ朋輩の敵だ。
怯
(
おく
)
れたか山浦」
大江戸黄金狂
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
御
(
お
)
腹召されんとて藤四郎の刀を以て、三度まで引給えど
曾
(
かつ
)
て切れざりしとよ、ヤイ、合点が行くか、藤四郎ほどの名作が、切れぬ筈も無く、我が君の
怯
(
おく
)
れたまいたるわけも無けれど
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
いかに
阿修羅
(
あしゅら
)
のように荒れたとて、敵ではないにきまっているのに、さも、尚
恃
(
たの
)
むところありげに、
怯
(
おく
)
れも見せず
佇
(
たたず
)
む姿には、必勝を期するものの自信がありありと見えるのだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
されど友は我を伴ひしことなく、我も亦獨り往かん心を生ずることなかりき。こは見んことの願はしからざるにあらず、心の
怯
(
おく
)
れたるなり。むかしベルナルドオの我にいひしことあり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
兼ねて覚悟はしていたものの、いざ申し上げるとなって見ると、今更のように心が
怯
(
おく
)
れたのです。しかし御主人は無頓着に、
芭蕉
(
ばしょう
)
の葉の
扇
(
おうぎ
)
を御手にしたまま、もう一度
御催促
(
ごさいそく
)
なさいました。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
由平
(
よしへい
)
は我にかえってからしまったと思った。由平は
怯
(
おく
)
れた自分の心を叱って、再び身を躍らそうとした。と、其の時
背後
(
うしろ
)
の方から数人の話声が聞こえて来た。由平は無意識に林の中へ身を隠した。
阿芳の怨霊
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
張扇
(
はりおうぎ
)
をたゝき立てるのは先ずこのくらいにして、さて本文に這入りますと、なにを云うにも敵の大軍が野にも山にも満ち/\ているので、さすがの日本勢もそれを望んで少しく気
怯
(
おく
)
れがしたらしい。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
失せもあへぬそのかみの日の
怯
(
おく
)
れたる弱きこころに
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
立ち
怯
(
おく
)
れがしてしまうのです。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
仲間
(
ちゅうげん
)
は
仰向
(
あおむけ
)
になって見ると驚きました。
傍
(
かたわ
)
らに一
本揷
(
ぽんさし
)
の品格の
好
(
い
)
い男が
佇
(
たゝず
)
んで居るから少し
怯
(
おく
)
れて居ました。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「
怯
(
おく
)
れたか。策か。いずれにしても
卑怯
(
ひきょう
)
と見たぞ。——約束の刻限は
疾
(
と
)
く過ぎて、もう
一刻
(
ひととき
)
の余も経つ。巌流は約を
違
(
たが
)
えず、最前からこれにて待ちかねていた」
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何事もなくても、こんな風に
怯
(
おく
)
れがちなお玉の
胆
(
きも
)
をとりひしいだ事が、越して来てから三日目にあった。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それは
怯
(
おく
)
れたわけではないけれども、明日の決心を思う時は、血肉がじっとしてはおられないのであります。それはそうあるべきはずです。しかるにこの人は平気で寝刃を合せています。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
友は
些
(
いさゝか
)
の
怯
(
おく
)
れたる氣色もなく、かのダンテを詠ずる詩を
誦
(
ず
)
したり。式場は忽ち水を打ちたるやうに鎭まりぬ。
讀誦
(
どくじゆ
)
の力あるに、聽くもの皆感動したるなり。われは初より隻句を
遺
(
のこ
)
さず
諳
(
そらん
)
じたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
爰
(
ここ
)
にいたりて自然の
勢
(
いきおい
)
、最早
与
(
く
)
みし
易
(
やす
)
からぬやうに
覚
(
おぼ
)
ゆると同時に、肩も
竦
(
すく
)
み、
膝
(
ひざ
)
もしまるばかり、
烈
(
はげ
)
しく恐怖の念が起つて、
単
(
ひとえ
)
に頼むポネヒルの銃口に宿つた星の影も、消えたかと
怯
(
おく
)
れが生じて
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
𤢖は一匹でなかったが、
他
(
た
)
は入口に立って格闘の模様を窺っていたらしい。で、今や
真先
(
まっさき
)
の一匹が
斯
(
かか
)
る始末となったので、少しく
怯
(
おく
)
れが出たのかも知れぬ。
何
(
いず
)
れも奥へ
引退
(
ひきさが
)
って、再び石を投げ初めた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
いらざるところへ勇気が出て敵は川添いの裏二階もう
掌
(
て
)
のうちと単騎
馳
(
は
)
せ向いたるがさて行義よくては成りがたいがこの辺の
辻占
(
つじうら
)
淡路島通う千鳥の幾夜となく音ずるるにあなたのお手はと逆寄せの当坐の
謎
(
なぞ
)
俊雄は至極御同意なれど
経験
(
ためし
)
なければまだまだ心
怯
(
おく
)
れて宝の山へ入りながらその手を
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
主人は
起
(
た
)
つて外を見た。丁度八と目を見合せるやうになつたが、
固
(
もと
)
より藪の中が見える筈はない。八は少しも
怯
(
おく
)
れたやうな気はしないで、
却
(
かへつ
)
て主人を
好
(
い
)
い
旦那
(
だんな
)
らしいと思つた。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
生半可
(
なまはんか
)
、ひとの心や気もちのうごきに敏感になったから、かえって、こっちの手が
怯
(
おく
)
れるのだ。日観なども、眼をとじて一撃を
揮
(
ふ
)
り落せば、実は
脆
(
もろ
)
い
土偶
(
でく
)
みたいなものかも知れないのだ
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ふーん、死に
怯
(
おく
)
れたな」
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
鳴神
(
なるかみ
)
のおとの
絶間
(
たえま
)
には、おそろしき天気に
怯
(
おく
)
れたりとも見えぬ「ナハチガル」鳥の、
玲瓏
(
れいろう
)
たる声振りたててしばなけるは、淋しき路を
独
(
ひとり
)
ゆく人の、ことさらに歌うたふ
類
(
たぐい
)
にや。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「叔父上。あなたは、この
期
(
ご
)
になって、さては
怯
(
おく
)
れに襲われましたな」
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「はい。」
怜悧
(
れいり
)
らしい目を見張つて、存外
怯
(
おく
)
れた様子もなく堀を
仰
(
あふ
)
ぎ
視
(
み
)
た。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
怯
(
おく
)
せず、弥九郎は、前へすり寄った。ほとんど、膝もふれあう程まで。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
末造はつと席を
起
(
た
)
った。そして廊下に出て見ると、腰を
屈
(
かが
)
めて、曲角の壁際に
躊躇
(
ちゅうちょ
)
している爺いさんの
背後
(
うしろ
)
に、
怯
(
おく
)
れた様子もなく、物珍らしそうにあたりを見て立っているのがお玉であった。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
後に立って、
睨
(
ね
)
めつけている内匠頭へ、
怯
(
おく
)
れもなく、振り向いて
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「忠次、いみじくも申したり。
臆
(
おく
)
したる者の眼には、田に飛ぶ
白鷺
(
しらさぎ
)
も、敵の旗かと見えて
怯
(
おく
)
れ立つとか。はははは、まず両人の報告の程度なら、信長も大安心というもの——家康どの、祝されてよかろう」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「何故? 今になって
怯
(
おく
)
れを取るのか」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
怯
(
おく
)
れたかっ」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
怯
漢検準1級
部首:⼼
8画
“怯”を含む語句
卑怯
卑怯者
怯気
怯々
怯懦
気怯
物怯
勇怯
怯者
聞怯
御卑怯
怯勇
怯々然
心怯
氣怯
卑怯至極
悪怯
怯弱
怯気々々
怯惰
...