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引掴
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ひッつか
ふりがな文庫
“
引掴
(
ひッつか
)” の例文
と
謂
(
い
)
うと
斉
(
ひと
)
しく、まだ酒のある茶碗を置いた塗盆を、飛上る足で
蹴覆
(
けかえ
)
して、羽織の
紐
(
ひも
)
を
引掴
(
ひッつか
)
んで、横飛びに台所を消えようとして
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と一生懸命に組付いて長二の鬢の毛を
引掴
(
ひッつか
)
みましたが、何を申すも急所の深手、諸行無常と
告渡
(
つげわた
)
る浅草寺の鐘の
音
(
ね
)
を
冥府
(
あのよ
)
へ
苞
(
つと
)
に
敢
(
あえ
)
なくも、其の儘息は絶えにけりと
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
脱けても知らずに口を
開
(
あ
)
いて、小さな舌を出したなりで、一向正体がない……其時忽ち
暗黒
(
くらやみ
)
から、
茸々
(
もじゃもじゃ
)
と毛の生えた、節くれ立った大きな腕がヌッと出て、正体なく寝入っている所を
無手
(
むず
)
と
引掴
(
ひッつか
)
み
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
英吉は、ここぞ、と土俵に仕切った形で、片手に花の
茎
(
じく
)
を
引掴
(
ひッつか
)
み、片手で
髯
(
ひげ
)
を
捻
(
ひね
)
りながら、目をぎろぎろと……ただ冴えない光で
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
学円 何が今まで我慢が出来よう、
鐘堂
(
つりがねどう
)
も知らない前に、この
美
(
うつくし
)
い水を見ると、
逆蜻蛉
(
さかとんぼ
)
で口をつけて、手で
引掴
(
ひッつか
)
んでがぶがぶと。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
途端に
引込
(
ひっこ
)
めた、
年紀
(
とし
)
の若い
半纏着
(
はんてんぎ
)
の手ッ首を、即座の冷汗と取って置きの
膏汗
(
あぶらあせ
)
で、ぬらめいた手で、夢中にしっかと
引掴
(
ひッつか
)
んだ。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
古新聞で火をつけて、金網をかけました。処で、火気は当るまいが、
溢出
(
はみで
)
ようが、皆
引掴
(
ひッつか
)
んで頬張る気だから、二十ばかり
初茸
(
はつたけ
)
を一所に載せた。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
手の裏かえす無情さは、足も手もぐたりとした、烈日に裂けかかる氷のような
練絹
(
ねりぎぬ
)
の、紫玉のふくよかな胸を、
酒焼
(
さかやけ
)
の胸に
引掴
(
ひッつか
)
み、
毛脛
(
けずね
)
に挟んで
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
引掴
(
ひッつか
)
んでまで、
撫
(
な
)
でつけた、
鬢
(
びん
)
の毛が、
煩
(
うるさ
)
くも頬へかかって、その都度脈を打って血や通う、と次第に
烈
(
はげ
)
しくなるにつれ、上へ釣られそうな、夢の針、
汀
(
みぎわ
)
の
嫗
(
おうな
)
。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(おお、稲妻が天王寺の森を走る、……何じゃ、これは、烏の死骸をどうするんじゃい。)と
引掴
(
ひッつか
)
んで来て、しかも
癪
(
しゃく
)
に障った様子で、
婆々
(
ばばあ
)
の前へ
敲
(
たた
)
きつけた。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見張員と休息員と無頼漢等を
引挟
(
ひっぱさ
)
んで、片手に一人ずつ
引掴
(
ひッつか
)
めば、
洩
(
も
)
れたる者も逃げんとはせず。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とばかりで、肩で
呼吸
(
いき
)
して、草に
胡坐
(
あぐら
)
したまま、
己
(
おの
)
が膝を
引掴
(
ひッつか
)
んで、せいせい言って唇を震わす。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
産婦が
屏風
(
びょうぶ
)
の
裡
(
うち
)
で、
生死
(
いきしに
)
の境、
恍惚
(
うっとり
)
と弱果てた
傍
(
わき
)
に、
襷
(
たすき
)
がけの
裾端折
(
すそはしょり
)
か何かで、ぐなりとした
嬰児
(
あかんぼ
)
を
引掴
(
ひッつか
)
んで、
盥
(
たらい
)
の上へぶら下げた処などは、腹を
断割
(
たちわ
)
ったと言わないばかり
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
可恐
(
おそろし
)
く蛇ずきの
悪戯
(
いたずら
)
で、
秋寂
(
あきさ
)
びた冷気に珍らしい湯のぬくもりを心地よげに出て来る蛇を、一度に押えてせっちょうして、遁げ込む石垣の尾を二疋も三疋も、
引掴
(
ひきつか
)
み、
引掴
(
ひッつか
)
み
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
引合せたコオトの襟を
引掴
(
ひッつか
)
んで、何か、自分の胸が窮屈そうに、こう
踠
(
もが
)
いて、
引開
(
ひっぱだ
)
けようとしたんだがね、思う通りにならなかったもんだから、(ええ)と云うと、かと
開
(
はだ
)
けた
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鬼の
支
(
つ
)
いた棒見るような帆柱の下から、皮の
硬
(
こわ
)
い
大
(
おおき
)
な手が出て、
引掴
(
ひッつか
)
んで抱込みます。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
引掴
(
ひッつか
)
んじゃ
不可
(
いけな
)
い、そっとそっと。」これが
鶯
(
うぐいす
)
か、かなりやだと、伝統的にも世間体にも、それ
鳥籠
(
とりかご
)
をと、
内
(
うち
)
にはないから買いに出る
処
(
ところ
)
だけれど、
対手
(
あいて
)
が、のりを
舐
(
な
)
める
代
(
しろ
)
もので
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
外套も帽も
引掴
(
ひッつか
)
んで、
階
(
きざはし
)
を下りる、足が
辷
(
すべ
)
る。そこへ
身体
(
からだ
)
ごと包むような、金剛神の
草鞋
(
わらじ
)
の影が、
髣髴
(
ほうふつ
)
として
顕
(
あらわ
)
れなかったら、渠は、この山寺の石の壇を、
径
(
こみち
)
へ
転落
(
ころげお
)
ちたに相違ない。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
よだれを
垂々
(
たらたら
)
と垂らしながら、
占
(
しめ
)
た! とばかり、やにわに
対手
(
あいて
)
の
玉将
(
たいしょう
)
を
引掴
(
ひッつか
)
むと、大きな口をへの
字形
(
じなり
)
に結んで見ていた
赭
(
あか
)
ら
顔
(
がお
)
で、
脊高
(
せいたか
)
の、胸の大きい
禅門
(
ぜんもん
)
が、
鉄梃
(
かなてこ
)
のような親指で
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
引掴
(
ひッつか
)
んで
膝去
(
いざ
)
り出した、煙草入れ押戻しさまに、たじたじとなって、
摺下
(
ずりさが
)
って
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
頤
(
おとがい
)
細って
痩
(
や
)
せさらぼい、
年紀
(
とし
)
六十に余るのが、
肉
(
しし
)
の落窪んだ胸に骨のあらわれたのを
掻
(
か
)
いはだけて、細帯ばかり、
跣足
(
はだし
)
でしかも
眼
(
まなこ
)
が血走り、
薪雑木
(
まきざっぽう
)
を
引掴
(
ひッつか
)
んで、飛出したと思うと
突然
(
いきなり
)
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「動!」と
喚
(
わめ
)
くと、一子時丸の襟首を、長袖のまま
引掴
(
ひッつか
)
み、壇を
倒
(
さかしま
)
に引落し、ずるずると広前を、石の大鉢の
許
(
もと
)
に
掴
(
つか
)
み去って、いきなり衣帯を
剥
(
は
)
いで裸にすると、
天窓
(
あたま
)
から
柄杓
(
ひしゃく
)
で浴びせた。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それでも油でかためた
銀杏返
(
いちょうがえし
)
をちょきんと結んだのが
尖
(
とが
)
って、
鬱金木綿
(
うこんもめん
)
の筒袖の袖口を綿銘仙の下から
覗
(
のぞ
)
かせた、炭を
引掴
(
ひッつか
)
んだような手を、突出した胸で拝むように組んで、肩を
窄
(
すぼ
)
めながら
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やっと
柵
(
しがらみ
)
にかかった海草のように、土方の手に
引摺
(
ひきず
)
られた
古股引
(
ふるももひき
)
を、はずすまじとて、
媼
(
ばあ
)
さんが曲った腰をむずむずと動かして、溝の上へ膝を
摺出
(
ずりだ
)
す、その
効
(
かい
)
なく……博多の帯を
引掴
(
ひッつか
)
みながら
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「巣、巣どころか、
己
(
おら
)
あ樹の枝から
這
(
は
)
いかかった、土蜘蛛を
引掴
(
ひッつか
)
んだ。」
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
羽ばたきをしてる奴を
引掴
(
ひッつか
)
んで両手で袖の下へ抱え込むと、雨戸が一枚ばったり内へ
煽
(
あお
)
ったんですが、
赫
(
かっ
)
として顔が熱かったのも道理、見る間に裏返しに倒れ込むとめらめらと燃えてましょう。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あたかもその時、役者の名の余白に描いた、
福面女
(
おかめ
)
、
瓢箪男
(
ひょっとこ
)
の端をばさりと
捲
(
まく
)
ると、
月代
(
さかやき
)
茶色に、
半白
(
ごましお
)
のちょん
髷仮髪
(
まげかつら
)
で、眉毛の
下
(
さが
)
った十ばかりの男の
児
(
こ
)
が、
渋団扇
(
しぶうちわ
)
の柄を
引掴
(
ひッつか
)
んで、ひょこりと登場。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と言う、
頸首
(
えりくび
)
を、空から
天狗
(
てんぐ
)
に
引掴
(
ひッつか
)
まるる心地がして
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
引
常用漢字
小2
部首:⼸
4画
掴
漢検準1級
部首:⼿
11画
“引”で始まる語句
引
引込
引摺
引返
引張
引掛
引籠
引立
引緊
引出