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幾条
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いくすじ
ふりがな文庫
“
幾条
(
いくすじ
)” の例文
旧字:
幾條
白きは空を見よがしに貫ぬく。白きものの一段を尽くせば、
紫
(
むらさき
)
の
襞
(
ひだ
)
と
藍
(
あい
)
の襞とを
斜
(
なな
)
めに畳んで、白き
地
(
じ
)
を不規則なる
幾条
(
いくすじ
)
に裂いて行く。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
霜枯
(
しもが
)
れそめた
矮
(
ひく
)
い
薄
(
すすき
)
や
苅萱
(
かるかや
)
や他の枯草の中を、人が踏みならした路が
幾条
(
いくすじ
)
か
麓
(
ふもと
)
から
頂
(
いただき
)
へと通うて居る。余等は其一を伝うて上った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
木の葉は
何時
(
いつ
)
か知らぬ間に散ってしまって、
梢
(
こずえ
)
はからりと
明
(
あかる
)
く、細い黒い枝が
幾条
(
いくすじ
)
となく空の光の中に高く
突立
(
つった
)
っている。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
陣々、
柵
(
さく
)
という柵、門という門から、旗もけむり、馬もいななき、あたかも
堰
(
せき
)
を切って出た
幾条
(
いくすじ
)
もの奔流の如く、全魏軍、先を争って、五丈原へ馳けた。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
目の前の提灯屋の屋根瓦の隙間から、白い
蕨
(
わらび
)
のような煙が、
幾条
(
いくすじ
)
となくスーッスーッと立ちのぼり始めた。手首を挟まれた女は早くも迫る運命に気がついた。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
まだ世馴れざる里の子の
貴人
(
きにん
)
の前に出でしように
羞
(
はじ
)
を含みて
紅
(
くれない
)
潮
(
さ
)
し、額の皺の
幾条
(
いくすじ
)
の
溝
(
みぞ
)
には
沁出
(
にじみ
)
し
熱汗
(
あせ
)
を
湛
(
たた
)
え、鼻の
頭
(
さき
)
にも
珠
(
たま
)
を湧かせば
腋
(
わき
)
の下には雨なるべし。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
こう思っていたんだが、……そう思う間もなく
襖
(
ふすま
)
をあけて社長がとびだして来た、額と頬ぺたにひっ
掻
(
か
)
き傷が
幾条
(
いくすじ
)
もでき、そこから血が出ているのをおれは見た。
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
やがて彼は小さな身体と大きな頭を地中に棒のように立っている鋤の大きな
把手
(
ハンドル
)
にもたれさせた。その眼はからっぽで額には
幾条
(
いくすじ
)
も
襞
(
ひだ
)
がただしくならんでおった。
作男・ゴーの名誉
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
蜂
(
はち
)
の巣のやう穴だらけで、炉の煙は
幾条
(
いくすじ
)
にもなつて
此処
(
ここ
)
からも
潜
(
もぐ
)
つて壁の外へ
染
(
にじ
)
み出す、
破屏風
(
やれびょうぶ
)
を
取
(
とり
)
のけて、さら/\と手に触れると、蓑はすつぽりと
梁
(
はり
)
を
放
(
はな
)
れる。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
立っている
華奢
(
きゃしゃ
)
な長身が、いたましくわなわなと顫えて、男泣きの涙が、
幾条
(
いくすじ
)
となく地に落ちた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
バラバラと
押
(
お
)
っ
取巻
(
とりま
)
く官兵、ギラリギラリと
幾条
(
いくすじ
)
かの刃が芳年の眼に焼け付きました。
芳年写生帖
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
線は鉄の黒、葉の「ダミ」は銅の緑。幹は黄土の黄を呈する。裏も辺に近き個所は刷毛目、その上に指頭で引いた強い
幾条
(
いくすじ
)
かの線が入る。この窯では各種の器物ができたであろう。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
太陽
(
たいよう
)
はいつかまた雲の間にはいり太い白い光の
棒
(
ぼう
)
の
幾条
(
いくすじ
)
を山と野原とに
落
(
おと
)
します。
チュウリップの幻術
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
捨吉は帳場の
側
(
わき
)
へ行って立って、皆の激しく働くさまを眺めた。
尖
(
とが
)
った出刃を手にして最初の縄を切る吉どんの手つきを。皆なで
寄
(
よ
)
って
群
(
たか
)
って
幾条
(
いくすじ
)
かの縄を解く腰つきを。開かれる薦包を。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私
(
わたくし
)
が
初
(
はじ
)
めてお
目
(
め
)
にかかった
時
(
とき
)
のお
服装
(
なり
)
は、
上衣
(
うわぎ
)
が
白
(
しろ
)
の
薄物
(
うすもの
)
で、それに
幾枚
(
いくまい
)
かの
色物
(
いろもの
)
の
下着
(
したぎ
)
を
襲
(
かさ
)
ね、
帯
(
おび
)
は
前
(
まえ
)
で
結
(
むす
)
んでダラリと
垂
(
た
)
れ、その
外
(
ほか
)
に
幾条
(
いくすじ
)
かの、ひらひらした
長
(
なが
)
いものを
捲
(
ま
)
きつけて
居
(
お
)
られました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
釜
(
かま
)
の周囲には
沸
(
わ
)
き上がって流れだした米の汁が、かさかさに
幾条
(
いくすじ
)
となくこびりついて、あるものは吉野紙を
貼
(
は
)
りつけたごとくに見える。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
東京の方を見ると、
臙脂色
(
えんじいろ
)
の
空
(
そら
)
に煙が
幾条
(
いくすじ
)
も真直に上って居る。一番南のが、一昨日火薬が
爆発
(
ばくはつ
)
して二十余名を
殺傷
(
さっしょう
)
した目黒の火薬庫の煙だ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
その炎の色を映して、
幾条
(
いくすじ
)
にも裂けている相模川の水は、あたかも
坩堝
(
るつぼ
)
の溶液が砂利の間を煮え流れているよう。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
柱から柱へ
幾条
(
いくすじ
)
ともなく綱を渡して、三十人以上居る、宿の女中たちの衣類が掛けてあったんです。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まず※は
幾条
(
いくすじ
)
にも
割
(
わ
)
れ
裂
(
さ
)
ける、それでもって打たれるので
※
(
かわ
)
の裂目のひりひりしたところが
烈
(
はげ
)
しく
触
(
さわ
)
るから、ごくごく浅い
疵
(
きず
)
ではあるが
松葉
(
まつば
)
でも散らしたように
微疵
(
かすりきず
)
が顔へつく。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
この溝渠には曾て月見橋とか雪見橋とか呼ばれた小さな橋が
幾条
(
いくすじ
)
もかけられていたのであるが、それ等旧時の光景は今はわずかに小林清親の風景板画に於てのみ之を見るものとなった。
上野
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
幾条
(
いくすじ
)
の流れが
何処
(
いずこ
)
から
来
(
きた
)
り、如何に合さり、何処へ行くのか、地図のみが知っている。
玖珠
(
くす
)
川、大山川、
三隈
(
みくま
)
川、花月川、そうして筑後川、それらの凡てを一身に
繋
(
つな
)
ぐのが水郷日田である。
日田の皿山
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
けれどもその腹は一分と
経
(
た
)
たないうちに、恐るべき波を
上下
(
じょうげ
)
に描かなければやまない。そうして熱そうな汗の球が
幾条
(
いくすじ
)
となく背中を流れ出す。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
幾条
(
いくすじ
)
もの幕の彼方に、かなり
距
(
へだ
)
ててはいたが、その声は、上総介のいるあたりへも、十分に届く声量であった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
幾条
(
いくすじ
)
も幾条も
家
(
うち
)
中の縁の糸は両親で
元緊
(
もとじめ
)
をして、
颯
(
さっ
)
さらりと
鵜縄
(
うなわ
)
に
捌
(
さば
)
いて、娘たちに浮世の波を
潜
(
くぐ
)
らせて、ここを先途と
鮎
(
あゆ
)
を呑ませて、ぐッと手許へ
引手繰
(
ひったぐ
)
っては、
咽喉
(
のど
)
をギュウの、獲物を占め
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「長安へ出る道はほかにも
幾条
(
いくすじ
)
もあるのに、丞相には、なぜいつもきまって、
祁山
(
きざん
)
へ進み出られるのですか」
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
城太郎の元気な足の前には、河も山もあったものではないが、春の晴着を
装
(
よそお
)
っているお通には、すぐ眼のまえに現われた
幾条
(
いくすじ
)
もの加茂の水に、はたと困った。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
幾条
(
いくすじ
)
も持っているために、隣接の諸国、たとえば、北条、徳川、織田、斎藤などにしても、彼と外交し、彼と戦い彼と
悶着
(
もんちゃく
)
するなど、明けても暮れても、応接にいとまがなかった。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
打
(
ぶ
)
つかる所でぶつかり、分れては
幾条
(
いくすじ
)
にもなり、水と石と高低の多い土地とが、噛みあい、
奔激
(
ほんげき
)
し合って、やや落着いている所はまた、身を没しるような
茅
(
かや
)
の沼地というような原始的な姿だった。
鬼
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
幾
常用漢字
中学
部首:⼳
12画
条
常用漢字
小5
部首:⽊
7画
“幾”で始まる語句
幾度
幾
幾何
幾歳
幾日
幾人
幾許
幾年
幾個
幾干