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ふりがな文庫
“
平常着
(
ふだんぎ
)” の例文
第一、昨夜の曲者は
衣摺
(
きぬず
)
れの音なんかしなかったぜ。百五十石や百八十石の御家人じゃ、
平常着
(
ふだんぎ
)
に羽二重や
綸子
(
りんず
)
を着るはずはない。
銭形平次捕物控:126 辻斬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それに八丈の
唐手
(
もろこしで
)
の細いのが一枚入って居ります、あとは
縞縮緬
(
しまちりめん
)
でお裏が宜しゅうございます、お
平常着
(
ふだんぎ
)
に遊ばしても、お下着に遊ばしても
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
佃は
平常着
(
ふだんぎ
)
に着かえ、さも、のうのうしたように自分の机の前の椅子に体をなげ下した。彼は、体中で伸びをしながら、うしろの伸子に云った。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
咄嗟の場合で、しかも男の人の眼に寝間着だか、
平常着
(
ふだんぎ
)
だかそんな見分けがつくはずがありません。それも有喜子がでたらめをしゃべったのです。
機密の魅惑
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
他の者が
平常着
(
ふだんぎ
)
なのに父と私とだけ(私は男の子としては一人子なのです。父の四十二の時の誕生だと云ひますから齡もたいへん違つてゐたのです)
樹木とその葉:31 故郷の正月
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
▼ もっと見る
お神さんは、ひざまずいて、包みの
紐
(
ひも
)
を解く。すると、その中からアントワアヌの
平常着
(
ふだんぎ
)
が出て来た。休暇で来るなら自分で持って来るはずである。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
平常着
(
ふだんぎ
)
だけは脱いで、よそゆきの着替えをして行った形跡は充分あるから、それが若い番頭にとっては、せめてもの気休めとなるくらいのものです。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
支度を、と断るまでもなく、
平常着
(
ふだんぎ
)
のままで出は出たが、——その時、横向きになって、壁に向うと、手を離した。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この二人の友人が伊那の山吹村をさして
発
(
た
)
って行く姿をも、半蔵は
寝衣
(
ねまき
)
の上に
平常着
(
ふだんぎ
)
を引き掛けたままで見送った。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「美……美紅姫……が……お
平常着
(
ふだんぎ
)
のままで……
寝台
(
ねだい
)
の中で……コ、コ、氷のように……冷たくなって……」
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
物哀れな気持ちになっていて明石は十三
絃
(
げん
)
の琴を
弾
(
ひ
)
きながら縁に近い所へ出ていたが、人払いの声がしたので、
平常着
(
ふだんぎ
)
の上へ
棹
(
さお
)
からおろした
小袿
(
こうちぎ
)
を掛けて出迎えた。
源氏物語:28 野分
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
その時お信さんは、伯父が許さなかつたにも拘らず、ぷん/\怒り泣きながら、それに
抗
(
あらが
)
つて停車場まで見送りにと言つて、
平常着
(
ふだんぎ
)
のまゝ逃げるやうに出て行つた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
彼女の
平常着
(
ふだんぎ
)
を引っかけ、襟を合したその両手を、そのまま胸に押しあてて、歩いてみようか坐ってみようかと思い惑った形で、なおじっと立ちつくしてるのだった。
変な男
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
白粉
(
おしろい
)
に汚れた赤い襟の
平常着
(
ふだんぎ
)
の
雛妓
(
おしやく
)
のやうな姿をしたお光を連れて、
愛宕神社
(
あたごじんしや
)
へ行つた時、
内部
(
なか
)
の
空洞
(
うつろ
)
になつてゐる
大銀杏
(
おほいてふ
)
に蜂が巣を作つてゐるのを見付けて、
二人
(
ふたり
)
相談の上
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
平常着
(
ふだんぎ
)
のまゝで
御座
(
ござ
)
りましたかと
問
(
と
)
へば、はあ
羽織
(
はをり
)
だけ
替
(
か
)
えて
行
(
ゆ
)
かれたやうで
御座
(
ござ
)
んす、
何
(
なに
)
か
持
(
も
)
つて
行
(
ゆき
)
ましたか、いゑ
其
(
その
)
やうには
覺
(
おぼ
)
えませぬと
有
(
あ
)
るに、はてなと
腕
(
うで
)
の
組
(
く
)
まれて
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
みのるは包みを拵へてから、
平常着
(
ふだんぎ
)
の上へコートを着て義男の枕許で膝の紐を結んだ。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
鏡子は
平常着
(
ふだんぎ
)
の銘仙に重ねられた紫地の水色の大きい菊のある襟を合せながら云つた。
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
扮装
(
ふんそう
)
は、少年少女は
平常着
(
ふだんぎ
)
のままでも
好
(
よ
)
い、その
他
(
ほか
)
は子供の空想の産物で好いが、先生は威厳を損じない程度にのどかな人物であること、
猟人
(
かりうど
)
はずんぐりしていて意気なあわてもの
春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
一ツにはまたその人の
身装
(
みなり
)
我のみならで、誰の注意をも惹きしなり。先づその一ツを挙げていはば、白紺大名の手織じま。これぞこの人の夏冬なしの
平常着
(
ふだんぎ
)
にて、しかもまた一張羅なれば。
葛のうら葉
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
軈
(
やが
)
て智恵子は、『それでは一寸。』と会釈して、『失礼ですわねえ。』と言ひ乍ら、
室
(
へや
)
の隅で着換に懸つたが、何を思つてか、取出した
衣服
(
きもの
)
は其儘に、着てゐた紺絣の
平常着
(
ふだんぎ
)
へ、袴だけ穿いた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
やにわに、
平常着
(
ふだんぎ
)
の上へ甲胃をつけたように。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
第一、昨夜の曲者は、
衣摺
(
きぬずれ
)
の音なんかしなかつたぜ。百五十石や百八十石の御家人ぢや、
平常着
(
ふだんぎ
)
に羽二重や
綸子
(
りんず
)
を着る筈はない。
銭形平次捕物控:126 辻斬
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
お浜は医者を待つ用意で寝衣を
平常着
(
ふだんぎ
)
に着換えようとして、ようやく少し静まった郁太郎を、そっと蒲団の上に置こうとすると、郁太郎はまたひーと泣き出す。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
此の頃の老妓は中々見識のあったもので、只今湯に出かけまする姿ゆえ、
平常着
(
ふだんぎ
)
の上へ
黒縮緬
(
くろちりめん
)
の羽織を引ッかけ、糠袋に手拭を持ってお村の
宅
(
うち
)
の門口へ立ちまして
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
動けなくなる前に、せめて咲二の
平常着
(
ふだんぎ
)
だけでも、まとめたいと、お咲は妙にがらん洞になったような心持を感じながら、鍵裂きを繕ったり、腰上げをなおしたりした。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
あれも
矢
(
や
)
つ
張
(
ぱり
)
いたづら
者
(
もの
)
と
烟管
(
きせる
)
を
置
(
お
)
いて
立
(
たち
)
あがる、
女猫
(
めねこ
)
よびにと
雪灯
(
ぼんぼり
)
に
火
(
ひ
)
を
移
(
うつ
)
し
平常着
(
ふだんぎ
)
の八
丈
(
ぢよう
)
の
書生羽織
(
しよせいばをり
)
しどけなく
引
(
ひき
)
かけて、
腰引
(
こしひき
)
ゆへる
縮緬
(
ちりめん
)
の、
淺黄
(
あさぎ
)
はことに
美
(
うつ
)
くしく
見
(
み
)
えぬ。
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
上草履
(
うはざうり
)
の
爪前
(
つまさき
)
細
(
ほそ
)
く
嬝娜
(
たをやか
)
に
腰
(
こし
)
を
掛
(
か
)
けた、
年若
(
としわか
)
き
夫人
(
ふじん
)
が、
博多
(
はかた
)
の
伊達卷
(
だてまき
)
した
平常着
(
ふだんぎ
)
に、お
召
(
めし
)
の
紺
(
こん
)
の
雨絣
(
あまがすり
)
の
羽織
(
はおり
)
ばかり、
繕
(
つくろ
)
はず、
等閑
(
なほざり
)
に
引被
(
ひつか
)
けた、
其
(
そ
)
の
姿
(
すがた
)
は、
敷詰
(
しきつ
)
めた
絨氈
(
じうたん
)
の
浮出
(
うきい
)
でた
綾
(
あや
)
もなく
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
軈て智惠子は、『それでは一寸。』と會釋して、『失禮ですわねえ。』と言ひ乍ら、室の隅で着換へに懸つたが、何を思つてか、取出した衣服は其儘に、着てゐた紺絣の
平常着
(
ふだんぎ
)
へ、袴だけ穿いた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
平常着
(
ふだんぎ
)
のまましかも夜陰に、叩き苦しき戸を叩きぬ。
心の鬼
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
岡っ引にしては少し手堅い
平常着
(
ふだんぎ
)
のまま、まず三町四方もあろうかと思うような板塀の外をグルリと一と廻りしてみました。
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
頭に手拭を
姐
(
ねえ
)
さんかぶりしている、小脇に
目籠
(
めかご
)
を抱えている、そうして道庵先生の方がきちんとした旅姿なのに、少女はちょっと
草履
(
ぞうり
)
をつっかけただけの
平常着
(
ふだんぎ
)
であることが
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と云いながら庭口の縁側の障子を明けて出て来ましたのは、年頃四十五六の人物の
宜
(
い
)
い御新造で、
平常着
(
ふだんぎ
)
ゆえ
紬
(
つむぎ
)
ぐらいではありますが、お屋敷は堅いもので紋付を着て居ります。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
上草履
(
うわぞうり
)
の
爪前
(
つまさき
)
細く
※娜
(
たおやか
)
に腰を掛けた、年若き夫人が、博多の
伊達巻
(
だてまき
)
した
平常着
(
ふだんぎ
)
に、お
召
(
めし
)
の
紺
(
こん
)
の
雨絣
(
あまがすり
)
の羽織ばかり、
繕
(
つくろ
)
はず、
等閑
(
なおざり
)
に
引被
(
ひっか
)
けた、
其
(
そ
)
の姿は、
敷詰
(
しきつ
)
めた
絨氈
(
じゅうたん
)
の
浮出
(
うきい
)
でた
綾
(
あや
)
もなく
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
梅ちやんの着てゐる
紺絣
(
こんがすり
)
の
単衣
(
ひとへ
)
、それは嘗て智恵子の
平常着
(
ふだんぎ
)
であつた!
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
岡つ引にしては少し
手堅
(
てがた
)
い
平常着
(
ふだんぎ
)
の儘、先づ四町四方もあらうかと思ふやうな板塀の外をグルリと一と廻りしてみました。
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
善「
家
(
うち
)
の悴は和けえ着物でなければ着ないのさ、なアにこれは
平常着
(
ふだんぎ
)
で、
結城紬
(
ゆうきつむぎ
)
だ」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「氣がきかないお樂だな。お前のところには、お
淺
(
あさ
)
とかいふ娘があつた筈ではないか。
酌
(
しやく
)
も大事なおもてなしだ、
平常着
(
ふだんぎ
)
のまゝで構はぬ、出せ/\」
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
お村の
姿
(
なり
)
は南部の藍の
乱竪縞
(
らんたつじま
)
の
座敷着
(
ざしきぎ
)
を
平常着
(
ふだんぎ
)
に
下
(
おろ
)
した
小袖
(
こそで
)
に、
翁格子
(
おきなごうし
)
と
紺繻子
(
こんじゅす
)
の腹合せの帯をしめ、髪は達摩返しに結い、
散斑
(
ばらふ
)
の
櫛
(
くし
)
に
珊瑚珠
(
さんごじゅ
)
五分玉
(
ごぶだま
)
のついた
銀笄
(
ぎんかん
)
を
挿
(
さ
)
し、
前垂
(
まえだれ
)
がけで
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
平次はさう言つて、逃げる思案もつかず、ぼんやり立つてゐるお銀の手に、一とかさねの
平常着
(
ふだんぎ
)
を投げてやるのです。
銭形平次捕物控:321 橋場の人魚
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
平次はそう言って、逃げる思案もつかず、ぼんやり立っているお銀の手に、一とかさねの
平常着
(
ふだんぎ
)
を投げてやるのです。
銭形平次捕物控:321 橋場の人魚
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「気がきかないお楽だな。お前のところには、お
浅
(
あさ
)
とかいう娘があったはずではないか。
酌
(
しゃく
)
も大事なおもてなしだ、
平常着
(
ふだんぎ
)
のままで構わぬ、出せ出せ」
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
平常着
(
ふだんぎ
)
のまま、仏間の後ろの暗い廊下で、後ろから
匕首
(
あいくち
)
で、左貝殻骨の下を縫われ、
紅
(
あけ
)
に染んで死んでいたのです。
銭形平次捕物控:074 二度死んだ男
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
絹の
縞物
(
しまもの
)
は少し
平常着
(
ふだんぎ
)
に
贅沢
(
ぜいたく
)
ですが、時めく
流行
(
はやり
)
医者の娘としては、騒ぎの中にも良い
嗜
(
たしな
)
みです。
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
八五郎はあわてて
平常着
(
ふだんぎ
)
を引つ掛けながら、それでも
減
(
へ
)
らず口を叩いてゐるのでした。
銭形平次捕物控:142 権八の罪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
八五郎はあわてて
平常着
(
ふだんぎ
)
を引っ掛けながら、それでも減らず口を叩いているのでした。
銭形平次捕物控:142 権八の罪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
目鬘
(
めかつら
)
を付けて踊り歩くにしても、さすがに異装のまま自分の家から出かけるのが近所の人の手前極りの悪いものか、ここから
平常着
(
ふだんぎ
)
のままで出かけて、橋を渡って柳原の知合の家で
銭形平次捕物控:036 八人芸の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
四方
(
あたり
)
の調度も、部屋の空気も、三室銀子が
曾
(
かつ
)
て経験したこともないほど豪勢で、ホームスパンの
平常着
(
ふだんぎ
)
や、カールの崩れた髪や、伝線病の靴下などが、妙に気になってならなかったのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:16 結婚ラプソディ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「殺しに他所行も
平常着
(
ふだんぎ
)
もあるものか。来い、八」
銭形平次捕物控:134 仏師の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
平常着
(
ふだんぎ
)
のままだね」
銭形平次捕物控:032 路地の足跡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
平常着
(
ふだんぎ
)
のまゝだね」
銭形平次捕物控:032 路地の足跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
平
常用漢字
小3
部首:⼲
5画
常
常用漢字
小5
部首:⼱
11画
着
常用漢字
小3
部首:⽬
12画
“平常”で始まる語句
平常
平常衣
平常服
平常帯
平常底
平常心
平常穿
平常著
平常通
平常遣