“外面(そと)” の例文
主人「なるほど妙な訳だ。受精した玉子と受精せん玉子と外部(そと)から見て解るかね」中川「外面(そと)からでは解らんが割ってみるとよく解る」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
実に是邂逅(めぐりあひ)の唐突で、意外で、しかも偽りも飾りも無い心の底の外面(そと)に流露(あらは)れた光景(ありさま)は、男性(をとこ)と男性との間に稀(たま)に見られる美しさであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
日はとっぷり暮れたが月はまだ登らない、時田は燈火(ひ)も点(つ)けないで片足を敷居の上に延ばし、柱に倚(よ)りかかりながら、茫然(ぼんやり)外面(そと)をながめている。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
やがて、箒を畳の上へなげ出して、裏の窓の所へ行って、立ったまま外面(そと)をながめている。そのうち三四郎も拭き終った。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
四つになる倅の幸三郎は、陽(ひ)のあるうちは外面(そと)に追いやられ、日が暮れると、床の中に追い込まれてしまいます。
折節(おりから)孰(いづ)れも途方(とほう)に暮(く)れて居(お)りましたから、取敢(とりあ)へず之(これ)を遣(や)ツて見樣(みよう)と云(い)ふので、父親(ちゝおや)が子供(こども)の兩足(りようあし)を捕(とら)へて中(ちう)に釣(つる)し、外面(そと)を向(む)かして膝(ひざ)で脊髓(せきずい)を撞(つ)きました、トコロガ
召波一人、その静かな一間に在って、低い垣ごしに外面(そと)の麦畑を見ている趣を想像せよ。召波はこの時詩情動いて「元日や草の戸ごしの麦畑」という句を得たのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
又、こうなるように、自分だけが外面(そと)で活動を続けてきたんだ。一本の指が切られたって、残った九本はやはり活躍するにきまっている。それに血管が作用してる限りは……
罠を跳び越える女 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
肥料にするかせぬか分(わか)らぬが行きさえすれば呉れるから、それをドッサリ貰(もらっ)て来て徳利(とくり)に入れて、徳利の外面(そと)に土を塗り、又素焼の大きな瓶(かめ)を買て七輪にして沢山(たくさん)火を起し
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
大「外面(そと)から見ますと田舎家(いなかや)のようで、中は木口を選んで、なか/\好事(こうず)に出来て居ります」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
夫から今度は時刻と場所の關係だ、室内に二人の人物が居て實にしめやかな話しをして居るのにも拘らず室外は豪雨が降つて夫に風さへ混じる外面(そと)の景色を書いては釣合が取れない。
作物の用意 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
海老錠(えびぢやう)のおりた本殿(ほんでん)の扉が向ふの方に見えて、薄暗い中から八寸ぐらゐの鏡が外面(そと)の光線を反射してゐた。扉の金具(かなぐ)も黄色く光つて、其の前の八足(やつあし)には瓶子(へいし)が二つ靜かに載(の)つてゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
この倶楽部が未(ま)だ繁盛していた頃のことである、或(ある)年の冬の夜、珍らしくも二階の食堂に燈火(あかり)が点(つ)いていて、時々(おりおり)高く笑う声が外面(そと)に漏れていた。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あとから「まあ、左(さ)うです」と答へた。女は全く歯(は)を隠した。静かに席を立つて、窓の所へ行つて、外面(そと)を眺め出(だ)した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
四つになる伜の幸三郎は、陽のあるうちは外面(そと)に追ひやられ、日が暮れると、床の中に追ひ込まれてしまひます。
モシできる事なら、大理石の塊(かたまり)のまん中に、半人半獣の二人がかみ合っているところを彫ってみたい、塊の外面(そと)にそのからみ合った手を現わして。
号外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「ええ」と言って少し躊躇(ちゅうちょ)した。あとから「まあ、そうです」と答えた。女はまったく歯を隠した。静かに席を立って、窓の所へ行って、外面(そと)をながめだした。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「その三疊には、そつと外面(そと)へ出られる口があるのか」
主人(あるじ)は便所の窓を明けたが、外面(そと)は雨でも月があるから薄光(うすあかり)でそこらが朧(おぼろ)に見える。窓の下はすぐ鉄道線路である。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
代助は首から上を捩(ね)じ曲げて眼を外面(そと)に着けながら、幾たびか自分の眼を擦(こ)すった。然(しか)し何遍擦(こす)っても、世界の恰好(かっこう)が少し変って来たと云う自覚が取れなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雨(あめ)が次第(しだい)に強(つよ)くなつたので外面(そと)の模樣(もやう)は陰鬱(いんうつ)になるばかり、車内(うち)は退屈(たいくつ)を増(ま)すばかり眞鶴(まなづる)の巡査(じゆんさ)がとう/\
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
代助は首(くび)から上(うへ)を捩(ね)ぢ曲(ま)げて眼(め)を外面(そと)に着(つ)けながら、幾(いく)たびか自分の眼(め)を擦(こ)すつた。然し何遍擦(こす)つても、世界の恰好が少し変つて来(き)たと云ふ自覚が取れなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ただ喫驚(びっくり)した余りに怒鳴り、狼狽(うろた)えた余(あまり)に喚いたので、外面(そと)に飛び出したのは逃げ出したるに過ぎない。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
外面(そと)は大方朧(おぼろ)であろう。晩餐に半(はん)ぺんの煮汁(だし)で鮑貝(あわびがい)をからにした腹ではどうしても休養が必要である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お前これを見たな!」と叫けんで「可(よ)し私にも覚悟がある、覚悟がある」と怒鳴りながらそのまま抽斗を閉(し)めて錠を卸し、非常な剣幕で外面(そと)に飛び出して了(し)まった。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それから二三分は全(まつた)く静かになつた。部屋は煖炉(だんろ)で温(あたゝ)めてある。今日(けふ)は外面(そと)でも、さう寒くはない。風(かぜ)は死に尽した。枯(か)れた樹(き)が音(おと)なく冬の日(ひ)に包(つゝ)まれて立つてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そうして先生の今まで腰をおろして窓から頭だけを出していた一番光に近い椅子に余は坐(すわ)った。そこで外面(そと)から射(さ)す夕暮に近い明りを受けて始めて先生の顔を熟視した。
ケーベル先生 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
更に巧に、寝間を出て、縁(えんがわ)の戸を一分又た一分に開け、跣足(はだし)で外面(そと)に首尾能く出た。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
外面(そと)は雨なので、五六人の乗客は皆傘(かさ)をつぼめて杖(つえ)にしていた。女のは黒蛇目(くろじゃのめ)であったが、冷たいものを手に持つのが厭(いや)だと見えて、彼女はそれを自分の側(わき)に立て掛けておいた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『奥でお寝(やす)みな。』半ばしかるように言った。お梅は泣き出しそうな顔をして頭を振って外面(そと)へ出た。月は冴(さ)えに冴え、まるで秋かとも思われるよう。庭木の影がはっきりと地に印(いん)している。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
寝台(ねだい)を這(は)い下りて、北窓の日蔽(ブラインド)を捲(ま)き上げて外面(そと)を見おろすと、外面は一面に茫(ぼう)としている。下は芝生の底から、三方煉瓦(れんが)の塀(へい)に囲われた一間余(いっけんよ)の高さに至るまで、何も見えない。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうしてその時は外面(そと)を狂い廻る暴風雨(あらし)が、木を根こぎにしたり、塀(へい)を倒したり、屋根瓦を捲(め)くったりするのみならず、今薄暗い行灯(あんどん)の下(もと)で味のない煙草(たばこ)を吸っているこの自分を
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ケートは窓から外面(そと)を眺(なが)める。小児(しょうに)が球(たま)を投げて遊んでいる。彼等は高く球を空中に擲(なげう)つ。球は上へ上へとのぼる。しばらくすると落ちて来る。彼等はまた球を高く擲つ。再び三度。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがて、箒を畳の上(うへ)へ抛(な)げ出して、裏の窓の所へ行つて、立つた儘外面(そと)を眺めてゐる。そのうち三四郎も拭(ふ)き終つた。濡れ雑巾を馬尻(ばけつ)の中(なか)へぼちやんと擲(たゝ)き込んで、美禰子の傍(そば)へ来(き)て、並(なら)んだ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
部屋は暖炉(だんろ)で暖めてある。きょうは外面(そと)でも、そう寒くはない。風は死に尽した。枯れた木が音なく冬の日に包まれて立っている。三四郎は画室へ導かれた時、霞(かすみ)の中へはいったような気がした。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)