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堪
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こた
ふりがな文庫
“
堪
(
こた
)” の例文
その島は
夷岐戸島
(
いきどじま
)
と名づけられて、嵐のあと、空気の冷たく身に
堪
(
こた
)
えるころには、落日の縞を浴びて、毛多加良島からも遠望された。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
『鰍?』と敬之進は舌なめずりして、『鰍、結構——それに、油汁と来ては
堪
(
こた
)
へられない。斯ういふ晩は暖い物に限りますからね。』
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
駆け出した、とても歩いたりしてはをられなかつたから——砂が猛々しく
焦
(
や
)
けてゐて誰にも到底素足では踏み
堪
(
こた
)
へられなかつた。
熱い砂の上
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
丁度私がナスから一人かえるときグズついたようにグズつき一寸の淋しさなど身に
堪
(
こた
)
えるのであろうとわかり、心がしずまった。
日記:13 一九二七年(昭和二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それでも、どうにか斯うにか次ぎの停車場まで持ち
堪
(
こた
)
えて、
這々
(
ほう/\
)
の
体
(
てい
)
でプラットフォームから改札口へ歩いて行く自分の姿の哀れさみじめさ。
恐怖
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
しかし斬られないその先に、老人はユラユラと左へ傾き、そこでしばらく持ち
堪
(
こた
)
えていたが、精気全く尽きたと見え、前のめりに地に仆れた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
押借りも
為
(
し
)
ようといふ
質
(
たち
)
で、丁度幕末の
悪侍
(
わるざむらひ
)
といふのだが、度胸だけは
吽
(
うん
)
と
堪
(
こた
)
へたところのある始末にいかぬ奴だつた。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
いくらおつさんが口説いてもいふ事をきかないと云ふけれど、それも何時迄持
堪
(
こた
)
へるかわからない。萬一暴力に訴へたら、それつきりではないか。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
やがて床につかえる。樽を並べて戸板を敷いて居ても、もう其の内水はどんどん押して来て、家の内では
堪
(
こた
)
え切れぬ。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
負け惜しみを言うわけではないが、あれは、僕だからこそ踏み
堪
(
こた
)
える事が出来たのだ。他の人だったら、必ずあの場合、何か罪を犯したに違いない。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
Aは実際は、それ程水練に熟練していなかったので、間もなく手足に水の冷たさが
堪
(
こた
)
えた。そして、だんだん草臥れて、息が乱れて来るのがわかった。
花嫁の訂正:――夫婦哲学――
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
両肩の上に置いた其の女の柔い掌の
堪
(
こた
)
え、そして、かつてカテリイヌを新吉が抱えたときのあの華やかな圧迫。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「あア、あア、」とやがて
平手
(
ひらて
)
で左の肩を
叩
(
たた
)
きながら、「何しろ流動物ばかりだから、腹に
堪
(
こた
)
えがなくて
直
(
じ
)
き
労
(
つか
)
れる。カラキシ意気地がなくなッちゃった。」
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
その夜は雪山の間の巌の中に泊り、その翌十九日もまた同じような道を西北に進みターシンラという大きな雪山の坂に懸りましたが何分にも寒くて
堪
(
こた
)
えられない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
こう云われれば胸に釘で、用人もぎっくり
堪
(
こた
)
えます。承知の上で屋敷へ帰って、平吉には因果をふくめて暇を出すと、門の外には幸次郎が待っていて、すぐ御用……
半七捕物帳:58 菊人形の昔
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
矢っ張り先方の方が強い。投げ出すどころか、捩じ倒されて、二つ撲られた。しかし直ぐ起き直って、又取っ組んだ。又捩じ倒されそうになったが、
纔
(
わず
)
かに持ち
堪
(
こた
)
えた。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
恐らく最初の結婚で、男と云うものの醜くさを散々
味
(
あじわ
)
わされた為、それが又純真な
傷
(
きずつ
)
き
易
(
やす
)
い娘時代で一段と
堪
(
こた
)
えたと見え、
癒
(
いや
)
しがたい男
嫌
(
ぎら
)
いになってしまったのでしょう。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
平常
(
ふだん
)
ならそれなりに
嫣然
(
にっこり
)
して他愛なくなるんですが、此の頃は優しくされるにつけて一層悲しさが増してまいり、溜息ついて苦労するのが伊之吉の身にも
犇々
(
ひし/\
)
と
堪
(
こた
)
えます。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
いちじくと言われたので、僕はまた国府津の二階住いを冷かされたように胸に
堪
(
こた
)
えた。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
兵部大輔にとつても、此だけは
他事
(
ひとごと
)
ではなかつた。おなじ大伴幾流の中から、四代続いて氏
ノ
上職を持ち
堪
(
こた
)
へたのも、第一は宮廷の思召しもあるが世の中のよせが重かつたからだ。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
地獄の針の山を、痒がる
土根性
(
どこんじょう
)
じゃ。茨の鞭では
堪
(
こた
)
えまい。よい事を申したな、別に
御罰
(
ごばつ
)
の当てようがある。何よりも先ず、その、世に浅ましい、鬼畜のありさまを見しょう。見よう。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そんなことでお
了
(
しま
)
ひですね、——尤も、殺された孫三郎は飛んだ道樂者で、叶屋へ泊ると
四宿
(
しじゆく
)
の遊びは
堪
(
こた
)
へられねえ——と言つて、毎晩拔け出しては、新宿へ遊びに行つたんださうで
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
面長の美人であるが、蒼白で、痩せ衰へて、この年齢まで持ち
堪
(
こた
)
へてきた花やかさが
遽
(
あわただ
)
しげに失せやうとし、日毎に老ひ込むやうであつた。陰鬱な日は、
顳顬
(
こめかみ
)
に大きな膏薬を貼つてゐた。
蝉:――あるミザントロープの話――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「まったく。小柳が客止めになるわけでげすよ。当時まったく
堪
(
こた
)
えられやせんからな。それに今日は松鯉の越後伝吉がとんだ好い。極めつけのおせんの駕訴で手に汗を握らせやしたしなあ」
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
然
(
しか
)
し
宗助
(
そうすけ
)
が
興味
(
きようみ
)
を
有
(
も
)
たない
叔父
(
をぢ
)
の
所
(
ところ
)
へ、
不精無精
(
ふしやうぶしやう
)
にせよ、
時
(
とき
)
たま
出掛
(
でか
)
けて
行
(
ゆ
)
くのは、
單
(
たん
)
に
叔父
(
をぢ
)
甥
(
をひ
)
の
血屬
(
けつぞく
)
關係
(
くわんけい
)
を、
世間並
(
せけんなみ
)
に
持
(
も
)
ち
堪
(
こた
)
へるための
義務心
(
ぎむしん
)
からではなくつて、いつか
機會
(
きくわい
)
があつたら
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
道は
矮草帯
(
わいそうたい
)
へぬけ、さらに裸の砂と岩地にかかった。秀之進はずんずん登ってゆく。休みなしである。足どりはゆっくりしているがさすがに
堪
(
こた
)
えるので、大助の
饒舌
(
じょうぜつ
)
もだんだん途切れだした。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「それが一番身に
堪
(
こた
)
えるんだけれども、もうそんな事を言ってはおられなくなってしまったのよ。子供の事を思うと空おそろしくなるけれど、私とても、とても勝てなくなってしまったの。」
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
よし来たとその綱を引張る。所が
握飯
(
にぎりめし
)
を
喰
(
くわ
)
せる、酒を飲ませる。
如何
(
どう
)
も
堪
(
こた
)
えられぬ面白い話だ。散々酒を飲み握飯を
喰
(
くっ
)
て八時頃にもなりましたろう。
夫
(
そ
)
れから一同塾に
帰
(
かえっ
)
た。所がマダ焼けて居る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「
堪
(
こた
)
えられねえぞ。畜生っ、こう、突いたら何うする」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
可笑
(
おか
)
しく成る時には、アハハ、アハハ、独りでもう
堪
(
こた
)
えられないほど笑って、そんなに可笑しがって
被入
(
いら
)
っしゃるかと思うと、今度は又
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
叔父
(
おじ
)
にさえあさましき
難題
(
なんだい
)
云い
掛
(
かけ
)
らるゝ世の中に赤の他人で
是
(
これ
)
ほどの
仁
(
なさけ
)
、胸に
堪
(
こた
)
えてぞっとする程
嬉
(
うれ
)
し悲しく、
咽
(
む
)
せ返りながら、
吃
(
きっ
)
と思いかえして
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そう茅野雄にたしなめられて、かつは鋭く睨められたが、根が浮世を目八分に見ている、身分不詳の弦四郎には、
堪
(
こた
)
えるところが少なかったらしい。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しばらく持ち
堪
(
こた
)
えてはいたが、その後いろいろな事業に手を出した末が、地所ぐるみ人に取られた。その前に先祖から伝えられていた金も道具も
失
(
な
)
くしていた。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
怪我の少い身構えの法をさえ持ち
堪
(
こた
)
えることができず、
謂
(
い
)
わば手放しで、節度のない恋をした。
ダス・ゲマイネ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
去年の秋頃からお前さんのからだは餘ほど弱つてゐるところへ、今年の餘寒が身に
堪
(
こた
)
へたのだから、だん/\に時候が好くなつて、花でも咲くやうになれば、自然に癒る。
近松半二の死
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
染之助の舞台姿に別れる私の悲しさが、段々私の小さい胸に、ひしひしと
堪
(
こた
)
えて来る頃でした。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
幸いに杖があったものですからその杖で踏み
堪
(
こた
)
えた訳ですがさて進むことが出来ない。後に引き返そうとしますと大分向うへ
摩
(
す
)
れ落ちて居るのでどうも後に帰ることが出来ない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「何が暢気だろう、このくらい暢気でない事はない。小使と私と二人口でさえ、今の月謝の収入じゃ苦しい処へ、貴女方親子を
背負
(
しょ
)
い込むんだ。静岡は六升代でも痩腕にゃ
堪
(
こた
)
えまさ。」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ヨロヨロとなって、危く踏み
堪
(
こた
)
えた俥夫は、また二言三言悪口を吐いた。客も「何が出来るものか!」というように、負けずに愚弄するのを見ると、庸之助の病的な憤怒が絶頂に達した。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
兵部大輔にとっても、此はもう、
他事
(
ひとごと
)
ではなかった。おなじ大伴幾流の中から、四代続いて氏上職を持ち
堪
(
こた
)
えたのも、第一は宮廷の御恩徳もあるが、世の中のよせが重かったからである。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
いやもう
私
(
わし
)
は酒は飲まず、
外
(
ほか
)
に
楽
(
たのし
)
みも無いので、まア甘い物でも食い、茶の一杯も飲むくらいが何よりの楽み、それに私はまア此の
疝気
(
せんき
)
が有るので、疝気を揉まれる心持は
堪
(
こた
)
えられぬて
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかし宗助が興味を
有
(
も
)
たない叔父の所へ、
不精無精
(
ふしょうぶしょう
)
にせよ、時たま出掛けて行くのは、単に叔父
甥
(
おい
)
の血属関係を、世間並に持ち
堪
(
こた
)
えるための義務心からではなくって、いつか機会があったら
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
衰弱した身體には隨分
堪
(
こた
)
へるのである。
貝殻追放:012 向不見の強味
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
つまり
彼奴
(
きゃつ
)
のトンマぶりを、そっくり芝居に仕組んだあげく、
彼奴
(
きゃつ
)
の眼の前にブラ下げたって訳さ。胸に
堪
(
こた
)
える五寸釘! そいつがこれだ。『名人地獄』だ!
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
グッと踏み
堪
(
こた
)
える力がなくて、毎日のように友人を代りばんこに尋ねて、同じ愚痴を繰り返して、安価のお座なりの同情で、やっと淋しさをまぎらして居るような河野の態度も
神の如く弱し
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「あの男の御世辞と来たら、
堪
(
こた
)
えられないようなことを言うが……しかし、正直な男サ」
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
思わず、崖へころがりますと、
形代
(
かたしろ
)
の釘でございましょう、針の山の土が、ずぶずぶと、この
乳
(
ちち
)
へ……
脇
(
わき
)
の下へも
刺
(
ささ
)
りましたが、ええ、痛いのなら、うずくのなら、骨が裂けても
堪
(
こた
)
えます。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その曲者も中々
堪
(
こた
)
えた奴で、
私
(
わっち
)
へ
一太刀
(
ひとたち
)
浴
(
あび
)
せやがった、やられたなと思ったが、幸いに仕事の帰りで、左官道具をどっさり
麻布
(
さいみ
)
の袋に入れて
背負
(
しょ
)
っていたので、
宜
(
い
)
い
塩梅
(
あんばい
)
に切られなかった
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
総軍はこれを聞いてウンと腹の中に
堪
(
こた
)
えが出来た。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
重荷は持ち
堪
(
こた
)
えがたく、眼前の利益に離れ候次第、難渋言語に絶し候儀に御座候。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
堪
常用漢字
中学
部首:⼟
12画
“堪”を含む語句
堪兼
堪忍
居堪
堪能
得堪
堪難
持堪
御堪能
不堪
押堪
一堪
堪忍袋
御堪忍
手堪
堪弁
堪能者
亦堪嗟
静思堪喜
難堪
踏堪
...