喋舌しやべ)” の例文
喋舌しやべるな/\? さあ始めろ! あの滅茶苦茶に賑やかな when you are aloneおまへがたつたひとりのときに あの Fox-trot!」
センチメンタル・ドライヴ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
ちやうど道臣が朝の日供につくに拜殿へ出てゐたので、千代松は竹丸を相手にして、社務所を兼ねた家の勝手口でこんなことを喋舌しやべつてゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
御新姐樣ごしんぞさままへへおあそばしたやうにえましたものでござりますから、かね胸充滿むねいつぱい申譯まをしわけをうか/\喋舌しやべつたでござります。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
色がはりした、黒いまぐろをつまんで、平気でお喋舌しやべりしてゐる。没落しつこのない原始的な女の強さが、富岡には憎々しかつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
「君は独逸語が喋舌しやべれるんだね。一寸待つてくれ。今朋輩を起して来るから。丁度今は士官が居ないから一等都合がいいんだよ。」
べら/\べら/\と口中を泡だらけにして喋舌しやべり立てる其綾子さんの監督の下に赤い机掛を掛けてチョコナンと坐つてゐた。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
平次が問ひかけると、娘多世里は自分の喋舌しやべり過ぎたことに氣が付いたらしく、ハツと口をつぐんで平次の顏を見上げました。
新聞しんぶん今朝けさまへつくしてしまつたし、ほん元氣げんきもなし、ねむくもなし、喋舌しやべ對手あひてもなし、あくびもないし、さてうなると空々然くう/\ぜん
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
なにかゝつちや不可いけませんがね。だまつてむかふ喋舌しやべらして、いてゐるぶんには、すこしも危險きけんはありません。たゞ面白おもしろだけです
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ミラア先生は、その時この室にゐたたつた一人の先生で、彼女をとりまいて立つてゐる大きい生徒のむれは、眞面目なけはしい顏付で喋舌しやべつてゐた。
「今顔洗つて直ぐ行くから、一寸待つて居て言うて呉れ——お前余計なことを喋舌しやべらねばよかつたのに——」
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
「そうだとも、そうだとも。こりや一つなんとかせにあなるめえ」そのくせなに一つたことはないのです。たゞ喋舌しやべるばかりです。たくも出來できないんでせう。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
一体、私は左様他人ひとのことを喋舌しやべるのが嫌ひです——まして、貴方とは今日始めて御目に懸つたばかりで——
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
意地にでも黙つてゐたいんだけれど、あなたは、若いに似合はず、人の心の中を見抜くことがお上手だから、うつかり喋舌しやべらされてしまつたんです。さうです。
ママ先生とその夫 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
勝は外を通つてる人の聲を聞いても時々氣疎けうといことがありますぞな。ようあんな下卑たことを大きな聲で喋舌しやべつて、げら/″\笑つて居られると愛相あいそが盡きてしまふ。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
これしからん事をするものだな、どうか勘忍かんにんしてやつてれまいか。亭「いや勘忍かんにん出来できません、れをたすけるとほかつて喋舌しやべるからいけません……おかんきましたよ。 ...
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
行くみちでも新太郎ちやんは、紙鳶のことばかり話した。そして話に夢中になつてゐるときは、背中の赤ん坊が泣いても、ほつたらかして置き、口をとがらして喋舌しやべるのであつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
と、少し調子づいて、喋舌しやべり續けてゐたS中尉は、その聲にふいと言葉を途切つて、一すすり番茶をすすると、また始めました。四人の眼が好奇心に輝いてゐたのは云ふまでもありません。
S中尉の話 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
仕方なく又次の日に行くと、今度は文句無しに喋舌しやべつてくれた。
足相撲 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
「えへん、えへん、えへん。」と續けさまに咳をした道臣は、千代松が喋舌しやべる電報の中味を、竹丸やお駒に聞かせぬやうにしようとした。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
成程林檎は沈黙家むつゝりやだが、芸者はよくお喋舌しやべりをする。そして一番悪いのは長次郎氏のやうな人に、よく解らない事を喋舌しやべる事だ。
喋舌しやべり捲くるのを、唯一のお世辭と思ひ込んで居るのでせう、平次もやゝ暫らく、此饒舌の大氾濫はんらんを、どうしやうもなく苦笑ひをするばかりです。
『だつて、校長先生、人の一生の名誉にかゝはるやうなことを、左様さう迂濶うくわつには喋舌しやべれないぢや有ませんか。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
すくなくとも喋舌しやべらないことをもつひど自分じぶんらがるもの馬鹿者ばかもの骨頂こつちやうつてろしいして此種このしゆ馬鹿者ばかものいまにチヨイ/\見受みうけるママなさけない次第しだいである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
其處で、彼女は二人の間に坐らされて、佛蘭西語とあやしげな英語とを代る/″\喋舌しやべるのであつた。
ゆき子は三日も放つておかれた淋しさで、富岡の顔を見るなり、あれもこれも喋舌しやべりたかつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
此某は英語を喋舌しやべる天才を以て自ら任ずる男で、かさず英語会へ出席して、日本人と英語の会話をつて、それから英語で卓上演説をするのを、何よりのたのしみにしてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
他人ひとのことよりや、勝は自分の身に間違ひのないやうに考へとれ。女子をなごが愚圖々々して歳を取つて、英語を喋舌しやべつて學校の先生になつたつて、何が面白いことがあらうぞい。」
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
人にめてもらつた人物になるんでもなく、人の書いた台詞せりふを云ふんでもない、今日のやうな場合でも、自分が何処へ行くのかわからず、一言ひとこと喋舌しやべつた後で、何をしでかすかわからないんですもの。
職業(教訓劇) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
喋舌しやべり出してみると、思ひの外私の舌はなめらかに動いた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
とうつかり喋舌しやべる。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
女史は急に日本語で喋舌しやべり出した。人間といふものは、すべて込み合つた事柄は自分の国のことばで話した方が都合がいものだ。
お萬殺しの證據が見付かつたとか、何んとか言やあいゝ、家中の者が來たら、その唐櫃からびつを落した仕掛けの綱を見せて、馬鹿なことでも喋舌しやべつてゐてくれ
と身振手真似を加へて喋舌しやべりたてたので、住職はもとより、其を聞く人々は笑はずに居られなかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
たび道連みちづれなさけといふが、なさけであらうとからうと別問題べつもんだいとしてたび道連みちづれ難有ありがたい、マサカひとりでは喋舌しやべれないが二人ふたりなら對手あひて泥棒どろぼうであつても喋舌しやべりながらあるくことが出來できる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
上がり口で二人連ふたりづれではないと断わる筈の所を、らつしやい、——どうぞ御上おあがり——御案内——梅の四番などとのべつに喋舌しやべられたので、やむを得ず無言の儘二人ふたり共梅の四番へ通されて仕舞つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そんなことを喋舌しやべつて、心をいら立たせるのは、折角保養に來た目的に背く譯ではあるし、そんな話のために昂奮して、今夜また熟睡されないやうではたまらないと、口に出かゝつた兄嫁の惡口を
新婚旅行 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
と、旦那は反齒そつぱの口から唾液つばを飛ばして喋舌しやべつた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
女弁護士はその弁護を引請ひきうけて、法廷に立つた。そして色々の方面から熱心に喋舌しやべつたかひがあつて、黒人くろんぼうまく無罪になつた。
使ひ走りや火の番をして居る與三松といふ中年男は、平次に縛られると、ペラペラと喋舌しやべつてしまひました。
一人ひとり喋舌しやべつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
多くの代議士にいぬのやうな日本語で喋舌しやべらしておいて、黙つてそれを聴く事の出来る日本人の無神経さが熟々つく/″\思はれる。
少し鼻を詰らせ乍らも、ガラツ八の身分柄も考へずに、思つた事を皆んな喋舌しやべらずには濟まない人柄です。
呉々くれ/″\も言つておくが、自分は知事や警部長や神様やを伯父さんには持つて居ない。自分の伯父さん達は何も知らない代りに、何も喋舌しやべらない人ばかりさ。
菊之助は、お粂と主人の事は何にも知らなかつた樣子ですが、その代り、他に主人を殺し兼ねまじき重大な動機を持つて居たことを自分で喋舌しやべつて了ひました。
衛生学者は自分の口から出る一語一語が、生みたての卵のやうに滋養に富んでるらしい口附くちつきをして喋舌しやべつた。
「あの男が五年前のことをぺら/\喋舌しやべつたばかりに、私は板倉屋の旦那に捨てられさうになりました。これほど口惜くやしかつたら、殺しても不思議はないでせう」
政事家が余り喋舌しやべり過ぎて大臣の椅子から滑り落ちるやうに、雷も時偶ときたま図に乗り過ぎて海へ落ちる事がある。
立てつ續けに喋舌しやべり捲くるので、訊く方では掛引も技巧も要りませんが、その代り恐ろしい出鱈目でたらめで、父親が死んで三日經たないうちに、お筆の後を追ひ廻して居る伜を
児玉氏はそれを聞くと、おしのやうに黙つて荷物を包みにかゝつた。「お為めのいい」石鹸しやぼんすがめのやうな眼附で、利いた風な事を喋舌しやべる大学生の顔を見てゐた。