二人ににん)” の例文
抜刀ぬきみの両人、文治のうしろより鋭く切掛けました。其の時早く文治は前に押えた腕を捩上ねじあげ、同役二人ににん振下ふりおろす刀の下へ突付けました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そしてこれと同時に、総裁二人ににん、校正十三人、監理四人、写生十六人が任命せられた。総裁は多紀楽真院法印、多紀安良あんりょう法眼ほうげんである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
徳もなく不徳もなき有様なれども、のちにここに配偶を生じ、男女二人ににんあいとものうて同居するに至り、始めて道徳の要用を見出したり。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
太郎も倉子が酔たる時は折々機嫌を取損ね打擲ちょうちゃくせらるゝ事もありと云えば二人ににんはそろ/\零落の谷底に堕落し行く途中なりとぞ。
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
欺かるるもの、欺くものと一様の譎詐きっさに富むとき、二人ににんの位地は、誠実をもって相対するとごうも異なるところなきに至る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
新比翼塚は明治十二、三年のころ品川楼で情死をした遊女盛糸せいしと内務省の小吏谷豊栄二人ににんの追善に建てられたのである。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と盆の上に茶呑茶碗……不心服な二人ににん分……焼海苔やきのりにはりはりは心意気ながら、極めて恭しからず押附おッつけものに粗雑ぞんざいに持って、お蔦が台所へあらわれて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頭から足の先まで、そっくり同じ、二人ににん総監の取組合とっくみあいだ。しかも、それが夢でもなければ、お芝居でもない。白昼、警視庁総監室での出来事だ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
土蔵へ仕舞しまってあった菅笠が二人の前へ置かれた。古びた、雨うたしになった、かすかに、宝沢同行二人ににんと読める、所々裂け目のついた菅笠であった。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
けれども、敵はまだ二人ににんあましている。加之しか一人いちにんの味方をきずつけられた彼等は、いかってたけってお葉に突進して来た。洋刃ないふ小刀こがたな彼女かれ眼前めさきに閃いた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのうえ、志ん馬の咽喉が治って今度は近くの八幡というところへ、二人ににん会で出かけていった。このときには毎晩二席ずつ演るので演題やりものに困って、浄瑠璃の「仮名手本忠臣蔵」。
初看板 (新字新仮名) / 正岡容(著)
この二人ににんことに典獄より預けられて、読み書き算盤そろばんの技は更なり、人の道ということをも、説き聞かせて、及ぶ限りの世話をなすほどに、やがて両女がここに来れる仔細しさいを知りぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
一行いっこうは戸主成善十二歳、母五百いお五十三歳、くが二十二歳、水木みき十六歳、専六せんろく十五歳、矢島優善やすよし三十四歳の六人と若党二人ににんとである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
およそ医師二人ににん以上立会うときは十の場合が七八なゝやつまで銘々見込を異にする者なればし此場合に於ても二人其見る所同じからず
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
その相伴うや、相共に親愛し、相共に尊敬し、互いに助け、助けられ、二人ににんあたかも一身同体にして、その間に少しもわたくしの意をさしはさむべからず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
次の日われサンジェルマンの四ツ角なる珈琲店カッフェーパンテオンにて手紙書きてゐたりしに、向側なる卓子テイブル二人ににんの同胞あり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そのあくる日、小林藤十郎殿は本所の名主のうち出役しゅつやくいたし、また其の頃八丁堀にて捕者とりての名人と聞えたる手先二人ににんは業平橋の料理屋にまいりました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
燐寸マッチる事一寸いっすんにして火はやみに入る。幾段の彩錦さいきんめくり終れば無地のさかいをなす。春興は二人ににんの青年に尽きた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この腰元ははるといひて、もとお村とは朋輩なりしに、お村はちようを得てお部屋と成済なりすまし、常にあごて召使はるゝを口惜くちをしくてありけるにぞ、今く偶然に枕を並べたる二人ににんすがたを見るより
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その結果、お葉も討たれ、重太郎も討たれた。𤢖二人ににんも枕をならべて死んだ。究竟つまり双方が相撃あいうちとなった処へ、忠一があとから又来合きあわせて、残る一人いちにんの𤢖も自殺を遂げるような事になったのであろう。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この二人ににん品川の怪事は、実は一猟奇者の身の上話という丈けではなく、一時は東京中を、いや日本中をさえ湧き立たせた所の、非常に大きな犯罪事件の謂わば序幕をなしたもので、それが今や
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
当時においては、醒覚せいかくせる二人ににんの間に、かくの如く婚約が整ったということは、たえてなくしてわずかにあるものといって好かろう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかしてこの系統以外に立てる画工のうちそのおもなるものをたずぬればづ指を菊川英山渓斎英泉の二人ににんに屈せざるべからず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
以前に捩上げたる下役の腕をかえして前へ突放したからたまりませぬ、同役同志鉢合はちあわせをして二人ににんともに打倒れました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けれども三年経過するうちに自然は自然に特有な結果を、彼等二人ににんの前に突き付けた。彼等は自己の満足と光輝を棄てゝ、其前にあたまげなければならなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これで、勘定が——道中記には肝心な処だ——二円八十銭……二人ににん分です。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新比翼塚は明治十二三年のころ品川楼で情死をした遊女盛糸せいしと内務省の小吏谷豊栄二人ににんの追善に建てられたのである。
里の今昔 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
けれども三年経過するうちに自然は自然に特有な結果を、彼等二人ににんの前に突き付けた。彼等は自己の満足と光輝を棄てて、その前に頭を下げなければならなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一俵買いの出来ない人々は便利な事でございますから一人いちにん買い二人ににん買い、十人百人といことはたちまちに広まり、彼処あすこ此処で計り炭屋々々というように相成りました。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
城代土井は下総しもふさ古河こがの城主である。其下に居る定番ぢやうばん二人ににんのうち、まだ着任しない京橋口定番米倉よねくらは武蔵金沢の城主で、現に京橋口をも兼ね預かつてゐる玉造口定番遠藤は近江あふみ三上みかみの城主である。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
第二図三囲みめぐりの堤を見れば時雨しぐれを催す空合そらあいに行く人の影まれに、待乳山まつちやま(下巻第三図)には寺男一人落葉おちばを掃く処、鳥居際とりいぎわなる一樹の紅葉こうように風雅の客二人ににん
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
自分が出来合できあひやつを胸にたくはへてゐるんぢやなくつて、石と鉄と触れて火花ひばなる様に、相手次第で摩擦の具合がうまく行けば、当事者二人ににんの間に起るべき現象である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
政府でもちっと注意して一夜ひとよのお客は二人ににん乃至ないし三人より取らさねえように仕そうなものだ、なんかんと御自分の買馴染が一座敷へ三十分と落著おちついていられないのを可愛そうに思召しもございましょう。
冬枯の河原はますます淋しく、白鷺一羽水上に舞ふところ流れを隔てて白髯の老松ろうしょうを眺むるは今戸いまどの岸にやあらん(下巻第四図)。ここに船頭二人ににんかわらを船に運べるあり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
最も細かい事は小声ですからくは分りませんが、清水助右衞門を殺した時に三千円を、という事をたしかに聞いて、さては三千円の金を持って出た清水の旦那を殺した悪人は、彼等かれら二人ににんに相違ない
当事者二人ににんの間に起るべき現象である。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それより小道具衣裳方あり廊下のはずれより離れて団洲だんしゅうの室に至る。小庭こにわをひかへて宛然さながら離家はなれやていをなせり。表梯子おもてはしごのぼれば猿蔵さるぞう染五郎二人ににんの室あり家橘栄三郎これに隣してまた鏡台を並ぶ。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)