ちゆう)” の例文
博士は数へた片手をちゆうけたまゝ、世間が厭になつたやうな顔をして棒立になつてゐたが、暫くするとぐつと唾を飲み込んだ。
口より身体までを両断せしに、狼児らうじ狼狽らうばいしてことごと遁失にげうせ、又或時は幼時かつて講読したりし、十八史略しりやくちゆうの事実、即ち
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
その男と内田庵氏の様な風采ふうさいちゆう老人とがしきりに稿料の話をして、ちゆう老人は誰が何を書いて幾百フラン儲けたと云ふ様な事を細細こま/″\と話して居たが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さいはひにもネープルスちゆうで「富貴ふうきなる日本人につぽんじん。」と盛名せいめい隆々りう/\たる濱島武文はまじまたけぶみ特別とくべつなる盡力じんりよくがあつたので、吾等われらつひこの最上さいじやう船室キヤビン占領せんりやうすることになつた。
暫くは日の天にちゆうするが如き位にありて、世の人の讚歎の聲に心惑ひ、おのがわざの時々刻々くだりゆくをさとらず、若し此時に當り早くはかりごとをなさゞるときは
「まあ、大きな犬ですこと。こなひだから、しよちゆうあそこから出入りいたしますのでございますよ。」
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
晒人さらしては男女ともうちまじり身をきよめる事織女おりめごとくす。さらすは正月より二月ちゆう為業しわざ也。
學生がくせいつきに七ゑんぐらゐくにからもらへばちゆうであつた。十ゑんるとすで贅澤ぜいたくおもはれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
〔譯〕公私こうしは事に在り、又情に在り。事公にして情私なるもの之有り。事私にして情公なるもの之有り。政を爲す者は、宜しく人情事理じり輕重けいぢゆうの處を權衡けんかうして、以て其のちゆうを民に用ふべし。
不昧公が着いたのは、欠伸がちゆうぱらと変つてゐた時なので、前々からこらした饗応もてなしの趣巧も、すつかり台なしになつてゐた。
相変らず話のちゆう折折をりをりどもるのも有り余る感想が一時に出口に集まつて戸惑ひする様でかへつて頓挫の快感を与へる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさいまこのたうちゆうひそめてかねくわだつるといふ、軍事上ぐんじじやう大發明だいはつめい着手ちやくしゆしてるのではあるまいか。讀者どくしや諸君しよくんおそらく此邊このへん想像さうぞうくだらう。
何でも構はないかただから、たゞ御飯を拵へて上げて、小さい人のお守をして上げればそれでいゝんだもの。——昼の内は坊ちやんをつれてしよちゆうこゝへ来てたつていゝしね。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
おとうとかれ性質せいしつとして、そんなちゆうぶらりんの姿すがたきらひである、學校がくかうても落付おちついて稽古けいこ出來できず、下調したしらべかないやう境遇きやうぐうは、到底たうてい自分じぶんにはへられないとうつたへせつしたが
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
〔譯〕誠否せいひは、須らく夢寐むびちゆうの事に於て之をけんすべし。
「それぢや、眼をあけてようく御覧よ。」女史は幾らかちゆうぱらの気味で鵞鳥のやうにぐつと首を前に突き出した。「そして入場料だけ倹約しまつしとくといいわ。」
わたくしが子ープルスかう出港しゆつかうのみぎり、はからずも注意ちうゐいた反古はご新聞しんぶん不思議ふしぎなる記事きじちゆう主人公しゆじんこうで、すで一年半いちねんはん以前いぜんある秘密ひみついだいて、部下ぶか卅七めい水兵等すいへいら一夜いちや奇怪きくわいなる帆走船ほまへせんじやうじて
あとで聞けばそのちゆう老人は文学雑誌フワランジユの主筆であつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「そんな事はしよちゆうだ。」
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
女流文学者は信州の山から下りて来ると、ちゆうぱらの気味で