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しもて
ふりがな文庫
“
下手
(
しもて
)” の例文
軽輩ではあったが、大坂にいて京洛の事情に通じているために、特に列席を許された藤沢恒太郎が、やや
下手
(
しもて
)
の座から、口を切った。
仇討禁止令
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「水道橋の
下手
(
しもて
)
——上水の
樋
(
とひ
)
の足に引つ掛つてゐたのを、船頭が見付けて引揚げましたが、もう蟲の息さへもねエ——可哀想に——」
銭形平次捕物控:122 お由良の罪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
野中教師ゆっくり教壇から降り、
下手
(
しもて
)
のガラス戸に寄り添って外を
眺
(
なが
)
める。菊代は学童の机の上に腰をかける。華美な和服の着流し。
春の枯葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ごんはびくの中の魚をつかみ出しては、はりきり網のかかっているところより
下手
(
しもて
)
の川の中を目がけて、ぽんぽんなげこみました。
ごん狐
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
「さうでもないけれど、
家
(
うち
)
の
漁場
(
あど
)
は沖やさかい今まであんまり獲れなんだ。長平などは
下手
(
しもて
)
やもんで、今までに大分
獲
(
と
)
つたれど。」
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
▼ もっと見る
これにて
体
(
からだ
)
を右に倒し、右の
偏袒
(
かたはだぬ
)
ぎたる手を
下手
(
しもて
)
に突つ張り、左の手を背後へ廻し、左の足を挙げて、小金吾の右の
肘
(
ひじ
)
を留め
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
磯崎たちとわかれてからも、伸子と素子とは暫く午後十時から十一時の人通りの賑やかなモンパルナスを
下手
(
しもて
)
通りへ歩いた。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
下手
(
しもて
)
の
空際
(
そらぎわ
)
には高圧線の鉄塔が見える。大同電力のダムで
堰
(
せ
)
かれた河流は百八十尺の高さにその水深を増したというのだ。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
それと向い合って、少し
下手
(
しもて
)
に、下手といっても床の間があるわけではないが、向って左の方に六尺もある大きな四角なガラス鏡が据えてある
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
新内流
(
しんないながし
)
にて幕あくと女巡査二人
下手
(
しもて
)
より出で上手に入る。遊び人斎藤(年廿五、六。顔に
疵
(
きず
)
あり。色白の美男。洋服。)
渡鳥いつかへる:軽演劇一幕四場
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
下手
(
しもて
)
へ十歩ばかり下がった時、こう考えて、やにわに瀬のなかから、
牛蒡
(
ごほう
)
抜きに掛かり鮎、囮鮎共に宙へ抜きあげた。
想い出
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
間もなくはいって来た藪原長者は、武士が冠り物を脱がないのを
苦々
(
にがにが
)
しそうに睨んだが、それでも
下手
(
しもて
)
の座に着いた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
四人は昼の暑さのために葉を巻いていた
川柳
(
かわやなぎ
)
がだらりと葉を延ばして、ひと
呼吸
(
いき
)
つこうとでもしているように思われる処を通って、
下手
(
しもて
)
の方へ往った。
赤い土の壺
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
下手
(
しもて
)
に涎くりとほかに三人の子供が机にむかっている。いずれも日本風の
鬘
(
かつら
)
をかぶって、日本の衣裳を着ています。
米国の松王劇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼はぎくりとして思わず後へ退った。が、
間
(
あい
)
が離れているので、向うでは気のつくはずもない。そのまま廊下づたいに、音もなく
下手
(
しもて
)
へはいって行く。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
その男はきゅうにはなれて、ぴょこんとお辞儀をして、ふらつきながらすぐ
下手
(
しもて
)
の汚い農家の庭へ入って行った。
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
プランスノアの
下手
(
しもて
)
以外の道によって進んだならば、プロシア軍は到底砲兵を通すことのできない谷間に出て、ブューローは到着し得なかったであろう。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
下手
(
しもて
)
の背景は松並木と稲村の
点綴
(
てんてい
)
でふち取られた山科街道。
上手
(
かみて
)
には新らしく掘られた空堀、築きがけの土塀、それを越して
檜皮葺
(
ひわだぶ
)
きの御影堂の棟が見える。
取返し物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
老人たちのなかにもダンスに加わる人がおり、主人自身もある相手と組んで、幾組か
下手
(
しもて
)
まで踊って行った。
クリスマス・イーヴ
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
と坂の
下手
(
しもて
)
へ廻った者も、機を狙って
切
(
き
)
ッ
尖
(
さき
)
をそろえ、
颯
(
さっ
)
、颯、颯然! 真っ黒になってなだれかかる——
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其
蔭
(
かげ
)
に小さな小屋がけして、
杣
(
そま
)
が三人停車場改築工事の木材を
挽
(
ひ
)
いて居る。橋の
下手
(
しもて
)
には、青石
峨々
(
がが
)
たる
岬角
(
こうかく
)
が、橋の袂から
斜
(
はす
)
に川の方へ十五六間
突出
(
つきで
)
て居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
何うも気に成るから振り
返
(
かえ
)
て見ると、其の若い者がバタ/\/\と
下手
(
しもて
)
の欄干の側へ参り、又片足を
踏掛
(
ふんが
)
けて飛び込もうとする様子ゆえ、驚いて
引返
(
ひっかえ
)
して抱き留め
文七元結
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
さうするうち、渡るべき前方の谿は一めんの氷でうづめられてそれが雨で洗はれてすべすべになつてゐる。
下手
(
しもて
)
の方は深い谿に続いてひどくあぶないところである。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
其
下手
(
しもて
)
には細かい砂が十坪余りの広さに、水面からは二尺程の高さに堆積し、其上を歩くと昼のぬくもりが未ださめずに残っている、そこに天幕を張ることにした。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
下手
(
しもて
)
の
海老色
(
えびいろ
)
の幕の蔭から、金縁の眼鏡をかけてフロックコオトを着た、年の若い、赤ッ
面
(
つら
)
の
気障
(
きざ
)
な
弁士
(
べんし
)
が舞台へ歩いて来て、見物一同へ馬鹿丁寧なお辞儀をした後
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
向うの
峰
(
みね
)
、左右前後にすくすくとあるのが、一ツ一ツ
嘴
(
くちばし
)
を向け、
頭
(
かしら
)
を
擡
(
もた
)
げて、この
一落
(
いちらく
)
の別天地、
親仁
(
おやじ
)
を
下手
(
しもて
)
に控え、馬に面して
彳
(
たたず
)
んだ月下の美女の姿を
差覗
(
さしのぞ
)
くがごとく
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
古
(
ふる
)
くは
貞觀年間
(
じようかんねんかん
)
、
近
(
ちか
)
くは
寶永四年
(
ほうえいよねん
)
にも
噴火
(
ふんか
)
して、
火口
(
かこう
)
の
下手
(
しもて
)
に
堆積
(
たいせき
)
した
噴出物
(
ふんしゆつぶつ
)
で
寶永山
(
ほうえいざん
)
を
形作
(
かたちづく
)
つた。
即
(
すなは
)
ち
成長期
(
せいちようき
)
にあつた
少女時代
(
しようじよじだい
)
の
富士
(
ふじ
)
も
一人
(
ひとり
)
の
子持
(
こも
)
ちになつたわけである。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
下手
(
しもて
)
には
鰯粕
(
いわしかす
)
の目方を
衡
(
はか
)
る大秤、壁に切り目を入れた即製の身長測定器、胸囲、身長、体重の平均を年齢別に表した大図表、何やら光るニッケル製の医療器械まで出しそろえ
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
一方の側は高い/\塀が中庭との
隔
(
へだて
)
をなし、も一方の側は桃の並木が
芝生
(
しばふ
)
との境をなしてゐた。
下手
(
しもて
)
の方には低い垣があつて、それがひつそりした耕地との唯一の境目であつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
奥の方一面谷の底より
這
(
は
)
い上りし森のくらやみ、測り知らず年を経たるが、
下手
(
しもて
)
ようように
梢
(
こずえ
)
低まり行きて、明月の深夜を
象
(
かたど
)
りたる空のあお色、すみかがやきて散らぼえるも見ゆ。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
芝居の
上手
(
かみて
)
下手
(
しもて
)
の入口は能楽の
切戸
(
きりど
)
(
臆病口
(
おくびょうぐち
)
ともいふ)に似て更に数を増して居る。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
川には材木を積んだ
筏
(
いかだ
)
が流れて来たり、よく沈まないことと思うほど盛上げた土船も通ります。
下手
(
しもて
)
には
吾妻橋
(
あずまばし
)
を通る人が見えます。橋の欄干に立止って見下している人もあります。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
忠臣蔵が出たとき
役々
(
やくやく
)
によって語り手が違い、平右衛門など
下手
(
しもて
)
から出て
山台
(
やまだい
)
の下で語ったおり、彼女もお仲間に引出されて迷惑そうな顔もせずにこにこして語っていたのを思いだした。
豊竹呂昇
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
上手
(
かみて
)
と
下手
(
しもて
)
の両方からダンシング・チームがさっと舞台へ駆け出て来た。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
彼はおどろきをこめて、前へのりだしながら
下手
(
しもて
)
を指さした。
三十年後の世界
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
カピューレット
長者
(
ちゃうじゃ
)
の
甥
(
をひ
)
チッバルト
下手
(
しもて
)
より
出
(
で
)
る。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
「水道橋の
下手
(
しもて
)
——上水の
樋
(
とい
)
の足に引っ掛っていたのを、船頭が見付けて引揚げましたが、もう虫の息さえもねエ——可哀想に——」
銭形平次捕物控:122 お由良の罪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
下手
(
しもて
)
のガラス戸から、斜陽がさし込んでいる。
上手
(
かみて
)
も、ガラス戸。それから、出入口。その外は廊下。廊下のガラス戸から海が見える。
春の枯葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
父と子とはその鉄橋の中ほどで立ちどまると、
下手
(
しもて
)
向きの白い
欄干
(
らんかん
)
に寄り添って行った。
隆太郎
(
りゅうたろう
)
は一所懸命に爪立ち爪立ちした。
頤
(
あご
)
が欄干の上に届かないのだ。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
一つは
上手
(
かみて
)
のアンタン大道の方へ、一つは
下手
(
しもて
)
のサン・タントアーヌ郭外の方へと、厳重に監視していた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
一町余
下手
(
しもて
)
に同じ網があつてそこにも見張して居た。そのまた下手にも斜にだん/\岸に近づいて幾艘かの舟が並んで居た。どの舟にも一二人
宛
(
づつ
)
立つて見張つて居た。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
と、
上手
(
かみて
)
より一人の老人、
惣菜
(
そうざい
)
の岡田からでも出て来たらしい様子、
下手
(
しもて
)
よりも一人の青年出で来たり、門のまえにて双方生き逢い、たがいに挨拶すること宜しくある。
半七捕物帳:10 広重と河獺
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
画面の重心を敏感にうけて、その鳥居が幾本かの松の幹より遙に軽くおかれているところも心にくいが、その鳥居の奥
下手
(
しもて
)
に、三人ずつ左右二側に居並んでいる従者がある。
あられ笹
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
二人の旅人が
下手
(
しもて
)
から来て、涼亭の口で村の男と
擦
(
す
)
れ違って入って来る。その一人の甲は、
菰
(
こも
)
で包んだ
量
(
かさ
)
ばった四角な
包
(
つつみ
)
を肩に乗せ、乙は小さな
竹篭
(
たけかご
)
を右の手に持っている。
涼亭:――序に代へて――
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
上目黒渋谷境、鈴懸の仮寓、小さいが
瀟洒
(
しょうしゃ
)
とした茶室造り、
下手
(
しもて
)
に
鬱蒼
(
うっそう
)
たる茂み、
上手
(
かみて
)
に冬の駒場野を望む。鈴懸、
炉
(
ろ
)
に
炬燵
(
こたつ
)
をかけて膝を入れながら、
甘藷
(
かんしょ
)
を剥いて食べている。
狐
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
町場の者は稍
上手
(
かみて
)
の大きい岩のある淵のあたりで、房一たちの組はその
下手
(
しもて
)
の淵からゆるやかに流れ出た水が、次第に急に流れはじめる一帯の、やはり岸には大きな岩があつて
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
朝、私が、まだ床から出ないうちに幼いアデェルが駈け込んで來て、果樹園の
下手
(
しもて
)
にある大きな七葉樹が昨夜の雷にうたれて、半ばは
裂
(
さ
)
けてとんでしまつたことを話してくれた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
Münster(伽藍)の前に行くと悲しい歌のこえが聞こえているが戸を閉してある。そして僕のような旅人は中に這入れない。為方がないから僕は其処を去って
下手
(
しもて
)
の方へ下りて行った。
ドナウ源流行
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
老「いやそれは
確
(
しか
)
と分りやせんが、多分
下手
(
しもて
)
の方へ往ったかと思いやした」
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
一番
上手
(
かみて
)
の分を右手に提げて重みを試み、次に一番
下手
(
しもて
)
の分を試み、終に下手より二番目の首の入りし分を提げて見て
首肯
(
うなず
)
き、そのまま提げて花道附際まで来て、左の脇に抱へ、右の手にて桶を押へ
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
“下手”の意味
《名詞》
下 手(げしゅ)
手を下すこと、手をつけること、手ずからなすこと。
(出典:Wiktionary)
下
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
“下手”で始まる語句
下手人
下手糞
下手物
下手碁
下手廻
下手弓
下手者
下手謡
下手將棋
下手象戯