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一入
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ひとしほ
ふりがな文庫
“
一入
(
ひとしほ
)” の例文
御前様
(
おんまへさま
)
には
追々
(
おひおひ
)
暑
(
あつさ
)
に向ひ候へば、いつも夏まけにて御悩み
被成候事
(
なされさふらふこと
)
とて、
此頃
(
このごろ
)
は
如何
(
いか
)
に
御暮
(
おんくら
)
し
被遊候
(
あそばされさふらふ
)
やと、
一入
(
ひとしほ
)
御案
(
おんあん
)
じ
申上参
(
まをしあげまゐ
)
らせ候。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
凄まじい形相ですが、美しさは
一入
(
ひとしほ
)
で、鉛色に變つた喉から胸へ、紫の
斑點
(
はんてん
)
のあるのは、平次が幾度も見てゐる、『
岩見
(
いはみ
)
銀山鼠取り』の中毒です。
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
その方どもは、わけて女子兄弟とては一人のことにて、殊に母早世ゆゑ、成身に隨ひ追々便りなからんと、われらとても
一入
(
ひとしほ
)
不便にぞんじ申し候。
桃の雫
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
何處
(
いづこ
)
にも
土地
(
とち
)
珍
(
めづら
)
しき話一つはある物ぞ、
何
(
いづ
)
れ名にし
負
(
お
)
はば、哀れも
一入
(
ひとしほ
)
深草の里と覺ゆるに、話して聞かせずや
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
此
(
こ
)
の
娘
(
むすめ
)
も、
白地
(
しろぢ
)
の
手拭
(
てぬぐひ
)
を、
一寸
(
ちよいと
)
疊
(
たゝ
)
んで、
髮
(
かみ
)
の
上
(
うへ
)
に
載
(
の
)
せて
居
(
ゐ
)
る、
鬢
(
びん
)
の
色
(
いろ
)
は
尚
(
な
)
ほ
勝
(
まさ
)
つて、ために
一入
(
ひとしほ
)
床
(
ゆか
)
しかつた。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
今宵は、そなたの心づくしの肴で、酒も
一入
(
ひとしほ
)
身にしみるわ。もう
早蕨
(
さわらび
)
が、萠え始めたと見えるな。
袈裟の良人
(旧字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
遠州風の濡れ石の上、枯れた芝生の凹みなどに、落葉は
一入
(
ひとしほ
)
哀れ深うて、
土
(
つち
)
の
湿
(
しめ
)
りもにじみ過ぎてる。紅葉して来た。庭の楓も紅葉して来た。紅葉ばかりになつて了うた。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
童の足二つにて、馬の足の用をなせるなり。かゝるものさへ車と車との間に入れば、混雜はまた
一入
(
ひとしほ
)
になりぬ。われは
楔
(
くさび
)
の如く車の間に
介
(
はさ
)
まりて、後へも先へも行くこと叶はず。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
や見し成んと
一入
(
ひとしほ
)
哀
(
あは
)
れのいやませしと言つる心の御製なり
又芭蕉翁
(
ばせをおう
)
の
句
(
く
)
にも「
猿
(
ましら
)
さへ
捨子
(
すてご
)
は
如何
(
いか
)
に
秋
(
あき
)
の
暮
(
くれ
)
」是や
人情
(
にんじやう
)
の赴く處なるらん
扨
(
さて
)
又藤川宿にては夜明て
後
(
のち
)
所の
人々
(
ひと/″\
)
此捨子を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
かやうな御意で、娘はその時、
紅
(
くれなゐ
)
の
袙
(
あこめ
)
を御褒美に頂きました。所がこの袙を又見やう見真似に、猿が恭しく押頂きましたので、大殿様の御機嫌は、
一入
(
ひとしほ
)
よろしかつたさうでございます。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それのみではなく、やゝ厚みのものになると、
肌
(
はだえ
)
の美しさが
一入
(
ひとしほ
)
際立つてくる。静かな起伏や、ゆるやかな渦紋さへその上に漂ふではないか。思はず又手を触れる快よさを抑へることが出来ない。
和紙の教へ
(新字旧仮名)
/
柳宗悦
(著)
一体に、懺悔の歌は、絵解きだけでは物足らなく感ぜられる様になつた為に、自分を見せしめとして、もつとよい生活をするやうに、といふ反省を促す歌が行はれたので、効果も
一入
(
ひとしほ
)
なのである。
お伽草子の一考察
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
裏の
欅山
(
けやきやま
)
もすつかり黄葉して秋もいよ/\更けましたが、ものの哀れは
一入
(
ひとしほ
)
吾が家にのみあつまつてゐるやうに感じられます。
早稻
(
わせ
)
はとつくに刈られて今頃は
晩稻
(
おくて
)
の收穫時で
田圃
(
たんぼ
)
は賑つてゐます。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
お
茂與
(
もよ
)
は斯う言つて眉を落すのです。顏がくもると
一入
(
ひとしほ
)
美しさが引立つて、不思議な魅力が四方に
薫
(
くん
)
じます。
銭形平次捕物控:114 遺書の罪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
時頼、さては
其方
(
そち
)
が眼にも世は盛りと見えつるよな。盛りに見ゆればこそ、衰へん末の事の
一入
(
ひとしほ
)
深く思ひ
遣
(
や
)
らるゝなれ。弓矢の上に天下を
與奪
(
よだつ
)
するは武門の
慣習
(
ならひ
)
。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
其夜
(
そのよ
)
の
雁
(
かり
)
も
立去
(
たちさ
)
らず、
餌
(
ゑ
)
にかはれた
飼鳥
(
かひどり
)
のやう、よくなつき、
分
(
わ
)
けて
民子
(
たみこ
)
に
慕
(
した
)
ひ
寄
(
よ
)
つて、
膳
(
ぜん
)
の
傍
(
かたはら
)
に
羽
(
はね
)
を
休
(
やす
)
めるやうになると、はじめに
生命
(
いのち
)
がけ
恐
(
おそろ
)
しく
思
(
おも
)
ひしだけ、
可愛
(
かはい
)
さは
一入
(
ひとしほ
)
なり。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
それのみ心に懸り
候余
(
さふらふあまり
)
、悲き夢などをも見続け候へば、
一入
(
ひとしほ
)
御案
(
おんあん
)
じ申上まゐらせ候。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
さうさう!
先刻
(
さつき
)
見たときバンドをしてゐたのをスツカリ忘れてゐた。向うでは
此方
(
こつち
)
の顔
丈
(
だけ
)
を覚えてゐて呉れたのだ。さう思ふと、美奈子は兄妹に対して
一入
(
ひとしほ
)
なつかしい心が湧いて来た。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
われはふと
首
(
かうべ
)
を
囘
(
めぐ
)
らしてあたりを見しに、我を距ること數歩の處に、故墳の址あり。むかしドメニカが許に養はれし時、往きて遊びし
冢
(
つか
)
に比ぶれば、大さは倍して荒れたることも
一入
(
ひとしほ
)
なり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
聞合すれども此方へは來らずとの事故
然
(
さ
)
すれば
取迯
(
とりにげ
)
に
相違
(
さうゐ
)
なし出入場へ申
譯
(
わけ
)
濟
(
すま
)
ずとて早速宿に掛合しに勘兵衞大きに驚き扨々
不屆
(
ふとゞき
)
なる
奴
(
やつ
)
四五日御待下さらば
尋
(
たづ
)
ね出し御返し申さんと申に我等が品にあらず
出入先
(
でいりさき
)
の
誂
(
あつら
)
へ物故
一入
(
ひとしほ
)
難儀
(
なんぎ
)
致すに付早速に御頼み申と
云置
(
いひおき
)
彦兵衞は新町へも右の段を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
打蕭
(
うちしを
)
れたる重景が樣を見れば、今更憎む心も出でず、世にときめきし昔に思ひ比べて、哀れは
一入
(
ひとしほ
)
深し。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
無念の
眦
(
まなじり
)
こそ裂けてをりますが、
彫
(
きざ
)
んだやうな眼鼻立ちが恐怖に
歪
(
ゆが
)
められて、物凄さもまた
一入
(
ひとしほ
)
です。
銭形平次捕物控:129 お吉お雪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
可哀
(
かあい
)
や我故
身形
(
みなり
)
も
構
(
かま
)
はず
此寒空
(
このさむそら
)
に
袷
(
あはせ
)
一ツ寒き樣子は見せねども此頃は苦勞の故か
面痩
(
おもやせ
)
も見えて
一入
(
ひとしほ
)
不便に思ふなり今宵は
何方
(
いづかた
)
へ行しにや最早
初更
(
しよや
)
近きに
戻
(
もど
)
り
來
(
こ
)
ねば晝は身
形
(
なり
)
の
窶然
(
みすぼらし
)
く金の
才覺
(
さいかく
)
にも出
歩行
(
あるか
)
れぬ故夜に入て才覺に出行しか女の夜道は
不用心
(
ぶようじん
)
若
(
もし
)
惡者
(
わるもの
)
に
出會
(
であ
)
はぬか
提灯
(
ちやうちん
)
は持ち行しか是と云も皆我が身の
在
(
ある
)
故なり
生甲斐
(
いきがひ
)
もなき身を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
妙に地味な
繻子
(
しゆす
)
の帶を狹く締めて、髮形もひどく世帶染みてますが、美しさは
反
(
かへ
)
つて
一入
(
ひとしほ
)
で、土産物の小風呂敷を、後ろの方へ愼ましく隱して、平次の前へ心持
俯向
(
うつむ
)
いた姿は、
傲慢
(
がうまん
)
で利かん氣で
銭形平次捕物控:014 たぬき囃子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
入
常用漢字
小1
部首:⼊
2画
“一”で始まる語句
一
一人
一寸
一言
一時
一昨日
一日
一度
一所
一瞥