トップ
>
髪結
>
かみゆい
ふりがな文庫
“
髪結
(
かみゆい
)” の例文
旧字:
髮結
その辻看板に、嵐粂吉という名を見たものですから、いつぞや
髪結
(
かみゆい
)
が
言伝
(
ことづけ
)
して来たことばを、胸に浮かべたものでしょう、次郎はふと
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その上清は湯の戻りに
髪結
(
かみゆい
)
の所へ回って頭を
拵
(
こしら
)
えるはずだそうであった。閑静な宗助の
活計
(
くらし
)
も、
大晦日
(
おおみそか
)
にはそれ
相応
(
そうおう
)
の事件が寄せて来た。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかも自分の家に長く泊めて置くのは亭主の手前もあるので、お葉は近所のおきつという女
髪結
(
かみゆい
)
の二階に次郎兵衛を預けた。
半七捕物帳:63 川越次郎兵衛
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
昨日の晩
花川戸
(
はなかわど
)
の
寄席
(
よせ
)
で
娘浄瑠璃
(
むすめじょうるり
)
が
縛
(
あげ
)
られる。それから今朝になって
広小路
(
ひろこうじ
)
の
芸者屋
(
げいしゃや
)
で女
髪結
(
かみゆい
)
が三人まで御用になりました。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
下廻
(
したまわり
)
で
田舎
(
いなか
)
を歩いていた時、
某町
(
あるまち
)
で楽屋遊びに来る十七八の
姝
(
きれい
)
な女を見つけた。それは
髪結
(
かみゆい
)
をしている唖女であった。
唖娘
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
髪結
(
かみゆい
)
弥吉は、朝のうちのお呼びで、明るい下り屋敷の詰所で、
稚児
(
ちご
)
小姓児太郎の朝髪のみだれを
撫
(
な
)
でつけていた。
お小姓児太郎
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
世を
轟
(
とどろ
)
かす事業を
遂
(
と
)
げて見せばやと、ある時は
髪結
(
かみゆい
)
となり、ある時は洗濯屋、またある時は仕立物屋ともなりぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
……その日は霜が消えなかった——
居周囲
(
いまわり
)
の細君女房連が、湯屋でも、
髪結
(
かみゆい
)
でもまだ風説を
絶
(
たや
)
さぬ、お稲ちゃんと云った評判娘にそっくりなのであった。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それに心を残して
髪結
(
かみゆい
)
に行っている間に、この騒ぎが持上って、人が迎えに来たものだから急いで駈けつけて見ると、果して、こんなことになってしまっている。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
今日はうちに用があるから、おひるからのお針はお休み……と。で、その通りにしていると、いつの間にか
髪結
(
かみゆい
)
さんが来て、私に髪を結ってやろうッて言うんです。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
ただし俊秀の子女は、いまだ五科を経ざるも中学に入れ、官費をもって教うるを法とす。目今この類の者、男子八人、女子二人あり。内一人は府下
髪結
(
かみゆい
)
の子なりという。
京都学校の記
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
故松助演じるところの『
梅雨小袖
(
つゆこそで
)
』の白木屋お駒の
髪結
(
かみゆい
)
新三
(
しんざ
)
をとっちめる大屋さん、
鰹
(
かつお
)
は片身もらってゆくよの
型
(
タイプ
)
で、もちっとゴツクした、ガッチリした
才槌頭
(
さいづちあたま
)
である。
旧聞日本橋:07 テンコツさん一家
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
文「もし旦那、御免なせえ、
私
(
わっち
)
は元
錨床
(
いかりどこ
)
と云って西洋床をして居りました時、
此方
(
こちら
)
の二階のお客に
旧弊頭
(
きゅうへいあたま
)
もありますので、時々お二階へ廻りに来た文吉という
髪結
(
かみゆい
)
でございます」
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
まるで
焼場
(
やきば
)
のような
匂
(
におい
)
だもの。きのうだって、
髪結
(
かみゆい
)
のおしげさんがいうじゃァないか。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
日本人の妻君は寄ると
障
(
さわ
)
るとヤレ
丸髷
(
まるまげ
)
の
形状
(
かっこう
)
が
好
(
い
)
いの、
何処
(
どこ
)
の
髪結
(
かみゆい
)
さんが結いました
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
それからこれも末期の現象の一つであったのであろうが、東京の下町などには、女
髪結
(
かみゆい
)
のような職業の人たちにいやがらせをやって生活していた自称愛国団体の
下
(
した
)
っ
端
(
ぱ
)
の連中があった。
寺田先生の追憶:――大学卒業前後の思い出――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
とにかくその頃の女の
髪結
(
かみゆい
)
銭が、島田でも
丸髷
(
まるまげ
)
でも百文(今の一銭に当る)で、柳橋のおもとといえば女髪結の中でも一といわれた上手だったが、それですら髪結銭は二百文しか取らなかった。
梵雲庵漫録
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
御作
(
おさく
)
さんは起きるが早いか、まだ
髪結
(
かみゆい
)
は来ないか、髪結は来ないかと騒いでいる。髪結は
昨夕
(
ゆうべ
)
たしかに頼んでおいた。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何せよ、今思い合してみると、あの
髪結
(
かみゆい
)
の鶴吉というのは、売笑婦の
置屋
(
おきや
)
であったり、また世間見ずの女を
騙
(
たぶら
)
かして来るぽん引きと呼ぶ渡世の人間です。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
岡場所は残らずお取払い、お茶屋の姐さんは吉原へ追放、女
髪結
(
かみゆい
)
に女芸人はお召捕り……こうなって来ちゃどうしてもこの次は役者に
戯作者
(
げさくしゃ
)
という
順取
(
じゅんどり
)
だ。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お互の
情
(
こころ
)
を通じあって、恋の
橋渡
(
はしわたし
)
をおしじゃあないか。何の事はない、こりゃ万事人の悪い
髪結
(
かみゆい
)
の役だあね。
清心庵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わたしの家の裏から出てゆく露地の入口に、むかしは山の井という
駕籠屋
(
かごや
)
で、今はおかみさんが女
髪結
(
かみゆい
)
をしている家の奥の間を借りている、
定
(
さだ
)
さんという
板木屋
(
はんぎや
)
の職人があった。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
清水助右衞門は
髪結
(
かみゆい
)
文吉の言葉を聞き、顔色変えて取ってかえし、三千両の預り証書を春見の前へ突き出し、返してくれろと急の催促に、丈助は其の
中
(
うち
)
已
(
すで
)
に百円使い込んで
居
(
い
)
るから
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
朝夕
(
ちょうせき
)
の
糊口
(
ここう
)
の
途
(
みち
)
に苦しみつつ、他の壮士らが
重井
(
おもい
)
、葉石らの助力を仰ぎしにも似ず、妾は
髪結
(
かみゆい
)
洗濯を業として、とにもかくにも露の
生命
(
いのち
)
を
繋
(
つな
)
ぐほどに、朝鮮の事件始まりて、長崎に至る
途
(
みち
)
すがら
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
髪結
(
かみゆい
)
のお
辰
(
たつ
)
と、
豆腐屋
(
とうふや
)
の
娘
(
むすめ
)
のお
亀
(
かめ
)
とが、いいのいけないのと
争
(
あらそ
)
っているうちに、
駕籠
(
かご
)
は
更
(
さら
)
に
多
(
おお
)
くの
人数
(
にんず
)
に
取巻
(
とりま
)
かれながら、
芳町通
(
よしちょうどお
)
りを
左
(
ひだり
)
へ、おやじ
橋
(
ばし
)
を
渡
(
わた
)
って、
牛
(
うし
)
の
歩
(
あゆ
)
みよりもゆるやかに
進
(
すす
)
んでいた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
その髪でも、お粂の気持と
髪結
(
かみゆい
)
の注文が合わないで一もめもめました。お粂としては
銀杏
(
いちょう
)
返しか松葉くずしにでも渋く結うつもりでいたのが、髪結は反対して
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
慰みに、お
酌
(
しゃく
)
さんの
桃割
(
ももわれ
)
なんか、お世辞にも
誉
(
ほ
)
められました。めの字のかみさんが幸い
髪結
(
かみゆい
)
をしていますから、八丁堀へ世話になって、
梳手
(
すきて
)
に使ってもらいますわ。
湯島の境内
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
油の
匂
(
におい
)
で結ったばかりと知られる大きな
潰島田
(
つぶし
)
には長目に切った
銀糸
(
ぎんし
)
をかけている。わたくしは今方通りがかりに
硝子
(
ガラス
)
戸を明け放した女
髪結
(
かみゆい
)
の店のあった事を思出した。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お富のためには真実の叔母ゆえ、
後
(
あと
)
懇
(
ねんごろ
)
に野辺の送りも済ませてから、丁度七日の
逮夜
(
たいや
)
の日に、
本郷
(
ほんごう
)
春木
(
はるき
)
町の廻りの
髪結
(
かみゆい
)
で
長次
(
ちょうじ
)
さんと云う、色の浅黒い、三十二三になる
小粋
(
こいき
)
な男が
遣
(
や
)
って参りました。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
七刻
(
ななつ
)
ごろ、
町風呂
(
まちぶろ
)
へ行って、
髪結
(
かみゆい
)
の家で茶をのんで、路地をもどってくると、
隣家
(
となり
)
の女按摩のお吉ッつぁんの前を通ると、家の中で、大きなくさめをした者がある。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ぐっと
取詰
(
とりつ
)
めて、気が違った日は、晩方、
髪結
(
かみゆい
)
さんが来て、鏡台に向っていた時ですって。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
したい事があって来ましたけれど、あいにくお留守で今夜はいそぎますから、お待ち申さずに帰ります。三十日の晩に
髪結
(
かみゆい
)
さんの帰りにまたお寄り申します。おからだ御大事に。君より。
あぢさゐ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それも
髪結
(
かみゆい
)
さんが結ったのではない、自分で
保
(
もち
)
のよいように結ったのへ
埃
(
ごみ
)
が付いた上をコテ/\と油を付け、
撫付
(
なでつ
)
けたのが又
毀
(
こわ
)
れましたから
鬢
(
びん
)
の毛が顔にかゝり、湯にも入らぬと見えて
襟垢
(
えりあか
)
だらけで
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
髪結
(
かみゆい
)
やら、
河岸
(
かし
)
の者に、噂を探らせてみると、
呆
(
あき
)
れた
淫婦
(
あま
)
だ、沢村田之助に入れあげて、
猿若町
(
さるわかちょう
)
がハネると、
代地
(
だいち
)
の
八重桐
(
やえぎり
)
へ引き入れて、いい気になっているという話だが
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
髪結
(
かみゆい
)
が一人、お針が二人、料理人が一人、医師が一人、女を十二人選んで、世話役が三人これを頭取が率いてパリイとかシカゴとかいう処の、博覧会へ日本の女を見せに
行
(
ゆ
)
く。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
で、露八は、
髪結
(
かみゆい
)
の亭主と同じように、
傍目
(
はため
)
からみればいい身分のような境涯だった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寝床を
辷
(
すべ
)
って、窓下の
紫檀
(
したん
)
の机に、うしろ向きで、紺地に茶の
縞
(
しま
)
お召の
袷羽織
(
あわせばおり
)
を、
撫肩
(
なでがた
)
にぞろりと掛けて、道中の髪を
解放
(
ときはな
)
し、あすあたりは
髪結
(
かみゆい
)
が来ようという
櫛巻
(
くしまき
)
が、
房
(
ふっさ
)
りしながら
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
拭布
(
ふきん
)
を掛けたなり台所へ突出すと、押入続きに腰窓が低い、上の棚に立掛けた小さな姿見で、顔を映して、襟を、もう一息掻合わせ、ちょっと縮れて癖はあるが、
髪結
(
かみゆい
)
も世辞ばかりでない
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
稼高
(
かせぎだか
)
の中から渡される
小遣
(
こづかい
)
は
髪結
(
かみゆい
)
の祝儀にも足りない、ところを、たといおも湯にしろ両親が口を開けてその日その日の
仕送
(
しおくり
)
を待つのであるから、一月と
纏
(
まと
)
めてわずかばかりの額ではないので
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「そこへ……
髪結
(
かみゆい
)
が一人出るわいの。」
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“髪結(髪結い)”の解説
髪結い(かみゆい)は、江戸時代から明治にかけての理髪業に従事する人を総称する言葉で、現代の理容師のこと。
男性の髪を手がける男の髪結いで「髪結い床」という自分の店を持つものは床屋とも呼ばれたが、女性の髪を手がける女髪結いは遊廓(遊女は上得意だった)や顧客の家を訪問していた。
以下「床屋」では男性の髪結い、「女髪結い」では女性の髪結いについて扱う。
(出典:Wikipedia)
髪
常用漢字
中学
部首:⾽
14画
結
常用漢字
小4
部首:⽷
12画
“髪結”で始まる語句
髪結床
髪結新三
髪結銭
髪結所
髪結職
髪結賃
髪結渡世