風雨ふうう)” の例文
〔譯〕雲煙うんえんむことを得ざるにあつまる。風雨ふううは已むことを得ざるにる。雷霆らいていは已むことを得ざるにふるふ。こゝに以て至誠しせい作用さようる可し。
もし、二十一日の間に、風雨ふううにあって、山毛欅ぶなの枝がおれたらどうだろう。かれのからだをささえているなわがすり切れたらどうなるだろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さればこの中途半端の市街に対しては、風雨ふうう雪月せつげつ夕陽せきよう等の助けをるにあらずんば到底芸術的感興を催す事ができない。
風雨ふうう寒暑かんしょ、五こく豊凶ほうきょう、ありとあらゆる天変地異てんぺんちい……それ根抵こんていにはことごと竜神界りゅうじんかい気息いきがかかってるのじゃ……。
ひめは、だんだん心細こころぼそくなりました。いまはとうりてかえることもできないほどに、風雨ふううがつのったのでありました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
門をはいると、庫裡くり藁葺わらぶき屋根と風雨ふううにさらされた黒い窓障子が見えた。本堂の如来にょらい様は黒く光って、木魚もくぎょが赤いメリンスの敷き物の上にのせてある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
連日れんじつ風雨ふううでとまった東北線が開通したと聞いて、明治四十三年九月七日の朝、上野うえのから海岸線の汽車に乗った。三時過ぎ関本せきもと駅で下り、車で平潟ひらがたへ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あさ須原峠のけんのぼる、偶々たま/\行者三人のきたるにふ、身には幾日か風雨ふううさらされてけがれたる白衣をちやくし、かたにはなが珠数じゆづ懸垂けんすゐし、三個の鈴声れいせいに従ふてひびきた
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
春枝夫人はるえふじん嬋娟せんけんたる姿すがたたとへば電雷でんらい風雨ふううそら櫻花わうくわ一瓣いちべんのひら/\とふがごとく、一兵いつぺいとききづゝたをれたるを介抱かいほうせんとて、やさしくいだげたる彼女かのぢよゆきかひなには
不思議の風雨ふううに、ひまなく線路をそこなはれて、官線ならぬ鉄道は其の停車場ステエションへた位、ことに桂木のいっ家族に取つては、祖先、此の国を領した時分から、屡々しばしばやすからぬ奇怪の歴史を有する
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
六万坪という広い区域に一定いっていのあいだをおいて建てられているところは殺風景さっぷうけいそのものであったし、それにこのごろになって壁は風雨ふううにうたれてくずれはじめ、ところどころに大きく穴があいたり
骸骨館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、寺は其反対に荒れ果てて、門は左程さほどでもなかったが、突当りの本堂も、其側そのそば庫裏くりも、多年の風雨ふううさらされて、処々壁が落ち、下地したじの骨があらわれ、屋根には名も知れぬ草が生えて、ひどさびれていた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
風雨ふうういよ/\荒れ行きて
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
そのうちに、風雨ふううわって、せっかくがったが、いくたびとなくされたのです。けれど、おつは、熱心ねっしんに、そのたびにあらたにつけたのでした。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かくごと風雲ふううんは、加能丸かのうまる既往きわう航海史上かうかいしじやうめづらしからぬ現象げんしやうなれども、(一人坊主ひとりばうず)の前兆ぜんてうりて臆測おくそくせる乘客じやうかくは、かゝ現象げんしやうもつすゐすべき、風雨ふうう程度ていどよりも、むし幾十倍いくじふばいおそれいだきて
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
爾来じらい幾星霜いくせいそう風雨ふううにうたれたヘクザ館は、古色蒼然こしょくそうぜんとして、荒れ果ててはいるが、さいわいにして火にも焼かれず、水にもおかされず、いまもって淡路島の中央山岳地帯に、屹然きつぜんとしてそびえている。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)