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ふりがな文庫
“
逸
(
はや
)” の例文
逸
(
はや
)
りに逸つた傳七郎の短刀は逃げる又六を追つて、グサツと其の首筋へ。まことに傳七郎は火のやうな激しい氣性の男だつたのです。
銭形平次捕物控:154 凧の詭計
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
で当然、こなたが先帝奪回に
逸
(
はや
)
ッて、そのお道すじの播州境へと、兵をくり出せば、彼らはすぐさま、二つの
留守城
(
るすじろ
)
を急襲して出る。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
或人は庄司署長を攻撃して、功名に
逸
(
はや
)
る余り、
無辜
(
むこ
)
を陥いれたので、支倉は哀れな犠牲者だと云うその是非についてこれより述べよう。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
私は嬉しかった。早速此
持重説
(
じちょうせつ
)
を我物にして了って、之を以て実行に
逸
(
はや
)
る友人等を非難し、
而
(
そう
)
して
窃
(
ひそか
)
に自ら弁護する料にしていた。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そこで、気の
逸
(
はや
)
い安床は、
夜分
(
やぶん
)
、仕事をしまってから、私の父を
訪
(
たず
)
ねて参り、時に兼さん、これこれと始終のことをまず話し、それから
幕末維新懐古談:03 安床の「安さん」の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
▼ もっと見る
「さあ、お前、あれにつれ、あんまり勇み足になってはいけませんよ、勇士はいかに心の
逸
(
はや
)
る時でも、足許を忘れるものではありません」
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私たちの馬はよく走ったにもかかわらず、わたしの
逸
(
はや
)
る心には遅くて遅くてたまらなかった。キッティは私の乱暴なのにびっくりしていた。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
別れる際に南日君から
呉呉
(
くれぐれ
)
も血気の勇に
逸
(
はや
)
って冒険してはいけないと
誡
(
いまし
)
められたので、すっかり子供に返って何だか悲しいような気がした。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
心に潔しとしない事に、名刺一枚御荷担は申兼ぬる、と若武者だけに
逸
(
はや
)
ってかかると、その分は百も
合点
(
がってん
)
で、戦場往来の
古兵
(
ふるつわもの
)
。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
麟太郎は軍事取り扱かいという重大の役目を持っていたが強硬なる非戦論の主謀者として
逸
(
はや
)
り立つ旗本八万騎を鎮撫しなければならなかった。
開運の鼓
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
張る氣を母氣とすれば、
逸
(
はや
)
る氣は子氣である。逸る氣は直上して功を急ぐ氣で、枯草
乾柴
(
けんさい
)
の火の續かず、飆風の朝を
卒
(
を
)
へざるが如き者である。
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
逸
(
はや
)
る陸軍を天皇だっておさえることはできない。こう見てくると、戦争の結果は、どえらい敗戦にきまってる。そのとき、日本には革命が来る
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
忠太郎 五つといえばちッたあ物も判ろうに、生みの母の
俤
(
おもかげ
)
を、思い出そうと気ばかり
逸
(
はや
)
るが、顔にとんと憶えがねえ。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
しては成らんぞ、
悪口
(
あっこう
)
しても棄置かんぞよ、いよ/\
肯入
(
きゝい
)
れなければ兎も角も、血気に
逸
(
はや
)
って心得違いをいたすまいぞよ
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
逸
(
はや
)
れば、即ち、二害あって、一利も無し——よって某、今宵より、修法を廃し、老師の霊気の散消するをまって、と——
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
鈍重な巨躯の
逸
(
はや
)
りに逸った
匍匐
(
ほふく
)
の醜態が今、一時にまた光り輝くばかりの黒褐の毛のなだれとなり、地響きとなり、奮いたつ香炎の放電体となる。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
盜
(
ぬす
)
み出し候
故
(
ゆゑ
)
扨
(
さて
)
は渠等兩人も主人の
惡意
(
あくい
)
を
察
(
さつ
)
しけれるにや兄弟を
盜
(
ぬす
)
み出しうへ
訴
(
うつた
)
へ出る
存念
(
ぞんねん
)
と心付南無三寶是は
逸
(
はや
)
りたることをなし
公邊
(
かみ
)
へ御苦勞を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
逸
(
はや
)
る心を抑えようとすればする程、口腔は熱し二重廻しの両袖が興奮から蝶の羽根の如く微かに震動して居りました。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
批判の大胆さと血気に
逸
(
はや
)
った率直さとで他人の気を害した彼でありながら、フランスで一言発しようとすると、保守的になってるのをみずから感じた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
逸
(
はや
)
つてゐた勝平も、相手が急に
静
(
しづか
)
になつたので、拍子抜がしながら、而もその儘立ち去ることも、業腹なので、二人の容子を、ぢつと睨み詰めてゐた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
一郎はそう叫ぶと、なおも
逸
(
はや
)
って怪漢に飛びつこうとする蝋山教授の腰を
圧
(
お
)
さえて、教壇の陰にひきずりこんだ。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
わたくしは気分がいよ/\
逸
(
はや
)
るまゝに葛岡を
牽
(
ひ
)
いて人形町の角を折れ、芳町の通りを日本橋川の方へ向います。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そう思い返しながら、われとわが
拳固
(
こぶし
)
をもって自分の頭を
殴
(
なぐ
)
って、
逸
(
はや
)
り狂う心の
駒
(
こま
)
を
繋
(
つな
)
ぎ止めたのであった。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
口際に引き
傍
(
そ
)
ひたる
壯丁
(
わかもの
)
はやうやくにして馬の
逸
(
はや
)
るを制したり。號砲は再び鳴りぬ。こは
埒
(
らち
)
にしたる索を落す合圖なり。馬は
旋風
(
つむじかぜ
)
の如く
奔
(
はし
)
りて、我前を過ぎぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
彦三郎 もし、心ばかりは
逸
(
はや
)
つても、わたくしは
若年者
(
じやくねんもの
)
、殊に御當地の勝手は知れず、なんとも致方がござりません。おまへ樣によい御分別はござりますまいか。
権三と助十
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
五十川女史が四角を思い出させるような
頑丈
(
がんじょう
)
な骨組みで、がっしりと正座に居直って、葉子を子供あしらいにしようとするのを見て取ると、葉子の心は
逸
(
はや
)
り熱した。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
二葉亭と
嵯峨
(
さが
)
の
屋
(
や
)
とは春廼舎傘下の寒山拾得であったが、その運動は離れ離れであった。美妙は硯友社の一人であったが、
抜駈
(
ぬけがけ
)
の功名に
逸
(
はや
)
って終に孤立してしまった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
斬つて斬つて斬りまくれ、哥薩克! あばれまはつて、敵をやつつけろ!
逸
(
はや
)
る心の思ひの儘に。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:03 怖ろしき復讐
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
どっちにしても相手は大きいぞ……と
逸
(
はや
)
る心を押し鎮めるべく敷島を一本
啣
(
くわ
)
えながら公園の中にある自働電話に駈け込んで、警視庁に電話をかけて赤原警部を呼び出した。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
熱する頭をしずめ、
逸
(
はや
)
る心を
抑
(
おさ
)
えて、平田門人としての立場に思いを潜めねばならなかった。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「そうか! そうであったか!
逸
(
はや
)
まったな! 斬るとは逸まったことをしたな……」
十万石の怪談
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
悍馬
(
かんば
)
のごとく
逸
(
はや
)
って、こりゃ鞘当てもしかねますまいて。ははははは、いや、どうせのことに、ちょっと拝見せずにはおられぬ。(懐紙を口に
銜
(
くわ
)
え、いずまいを正して播磨守に目礼)
稲生播磨守
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「シャーロックのやつ、ひどく
逸
(
はや
)
っているぜ。やっぱり犯罪の
匂
(
にお
)
いがわかるんだね」
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
茶屋の二階の檀一雄が慌てゝ身をのりだして
逸
(
はや
)
まるべからずと叫んだが、彼は私が酔つたまぎれにザンブと海へとびこみ佐渡へ向つてやがて日本海のモクズと消えると思つたのである。
わが戦争に対処せる工夫の数々
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
どこかで淙々とした水の音がするらしいのに、目にふれるかぎりの叢に泉は見当りません、狩人は若々しい額の汗を手の甲で拭い、何となし
逸
(
はや
)
っている生きもののような眼つきをします。
獄中への手紙:11 一九四四年(昭和十九年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
逸
(
はや
)
りにはやった目のキャッチした建物……電車通りをへだてた
向
(
むか
)
い
角
(
かど
)
の建物……嘗て、明治製菓の売店のあったあとにできたその白い建物は、果して……さァ、果して、何ものだったか?……
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
これも
傷
(
きずつ
)
けじと、貫一が胸は車輪の
廻
(
めぐ
)
るが
若
(
ごと
)
くなれど、
如何
(
いか
)
にせん、その身は内より不思議の力に
緊縛
(
きんばく
)
せられたるやうにて、
逸
(
はや
)
れど、
躁
(
あせ
)
れど、寸分の
微揺
(
ゆるぎ
)
を得ず、せめては声を立てんと為れば
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
この際、現場のわれらが仲間は、さすが見るに見かねて、進んで総身を灰にしよう、どうにかして彼らを助けてやりたい……と心ばかりは
逸
(
はや
)
りながら、根が能なしの、動きのとれぬ偃松の悲しさ。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
が、丁度彼が、飛行場の緑草を、機翼をビリビリ
逸
(
はや
)
りたつように顫わせている、フォッカアユニバアサル機の方に歩いて行く途中頃で、まもなく後から追いついて来たらしい三枝に、名を呼ばれた。
旅客機事件
(新字新仮名)
/
大庭武年
(著)
當時の仙石家は
但馬國出石郡
(
たじまのくにいづしごほり
)
出石の城主仙石道之助
久利
(
ひさとし
)
の世である。清右衞門は仙石家に仕へて、氏名を原
逸
(
はや
)
一と
更
(
あらた
)
めた。
頗
(
すこぶ
)
る氣節のある人で、和歌を善くし、又畫を作つた。畫の號は南田である。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
心矢竹
(
こころやたけ
)
に
逸
(
はや
)
るとは此の時の余の思いであろう。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
惜しげなき
逸
(
はや
)
りごころに。
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
春浅し
若殿原
(
わかとのばら
)
の馬
逸
(
はや
)
り
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
若さに
逸
(
はや
)
るたましひを
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「なあ、波越。なんだってこんな
真夜半
(
まよなか
)
、
蝋人形
(
ろうにんぎょう
)
の
張番
(
はりばん
)
をさせるのだろう。
羅門塔十郎
(
らもんとうじゅうろう
)
も時々、奇功に
逸
(
はや
)
って、分らない指図をするぜ」
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
着せられても急には
明
(
あか
)
りが立たぬ、そのうち血気に
逸
(
はや
)
る土地の人、どのような乱暴をすまいものでもない、今のうちに早く逃げなければならぬ
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
血気
(
けっき
)
に
逸
(
はや
)
る少年の、其の無邪気さを愛する如く、離れては居るが顔と顔、媼は
嘗
(
な
)
めるやうにして、しよぼ/\と目を
睜
(
みひら
)
き
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
世評一般に云われて居るところの、木村常陸介と耳にするや、
逸
(
はや
)
り切っていた北畠秋安も、足を止めざるを得なかった。
血ぬられた懐刀
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
父の嘉明の
小兵
(
こひょう
)
に似ず、六尺豊かな加藤式部少輔明成は、
足摺
(
あしず
)
りして
焦慮
(
あせ
)
った。主がこの気もちだから、血気な士は
逸
(
はや
)
りきって、何かというと殺気立った。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
相手に侍士は
死忿
(
しふん
)
を顯はし切り結ぶ心は
彌猛
(
やたけ
)
に
逸
(
はや
)
れども終に刀を打落され
逡巡處
(
たぢろくところ
)
を
惡漢
(
わるもの
)
ども寄てたかつて侍士を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
逸
常用漢字
中学
部首:⾡
11画
“逸”を含む語句
独逸
飄逸
都々逸
逸見
逸早
逸物
逸話
安逸
逸足
逸出
逸品
逸散
獨逸
放逸
逸人
逸脱
逸駿
見逸
逸雄
逸作
...