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踞
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うずくま
ふりがな文庫
“
踞
(
うずくま
)” の例文
……続くと、
一燭
(
いっしょく
)
の電燈、——これも行燈にしたかったと言う——
朦朧
(
もうろう
)
として、茄子の牛が
踞
(
うずくま
)
ったような
耳盥
(
みみだらい
)
が黒く一つ、真中に。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かの家の者一同ある日
畠
(
はたけ
)
に行きて夕方に帰らんとするに、女川の
汀
(
みぎわ
)
に
踞
(
うずくま
)
りてにこにこと笑いてあり。次の日は
昼
(
ひる
)
の休みにまたこの事あり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
枝という枝は南向に生延びて、冬季に吹く風の
勁
(
つよ
)
さも思いやられる。白樺は多く落葉して高く空に突立ち、細葉の
楊樹
(
やなぎ
)
は
踞
(
うずくま
)
るように低く隠れている。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
寒そうに
踞
(
うずくま
)
る境地、そうは決心しても決して長くは落着いていられない薄べり一枚の境地、そこへ彼も腰を据えた。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
七平は縁側の端っこへ出て、月の射し入る中に小さく
踞
(
うずくま
)
りました。妙な男ですが、それだけに物事に熱心そうで、平次の方がかえって引入れられます。
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
刑事は
踞
(
うずくま
)
ったまま、
遥
(
はる
)
か向うの辻を
透
(
す
)
かしてみた。そこは
水底
(
みずそこ
)
に沈んだ
廃都
(
はいと
)
のように、犬一匹走っていなかった。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼の心臓は早鐘のように動悸を打ち、息は
烈
(
はげ
)
しく喘いでいた。そして瞳を
凝
(
こら
)
して被害者の顔を覗き込むと、思わず驚愕の叫びをあげて、死体の上に蔽いかぶさる様に
踞
(
うずくま
)
った。
赤い手
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
浪人が抜いたと見ると、雪之丞は大地に片手の指先を突いたまま、片手で、うしろに
踞
(
うずくま
)
ってわなないている供の男を、
庇
(
かば
)
うようにしながら、額越しに上目を使って、気配を窺った。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
それから少し
経
(
たっ
)
て、チッチッという音がすると、パッと火が現われて、彼は一ツの建物の中の土間に
踞
(
うずくま
)
っていて、マッチを擦って提灯の
蝋燭
(
ろうそく
)
に火を点じようとしているのであった。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「いつ頃から君はここで、こんな風にしているの」私は
努
(
つと
)
めて、平然としようと骨折りながら
訊
(
き
)
いた。彼女は今私が足下の方に
踞
(
うずくま
)
ったので、私の方を見ることを止めて上の方に眼を向けていた。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
彼は
砂糖黍
(
さとうきび
)
が
藪
(
やぶ
)
のように積み上った街角から露路へ折れた。ロシア人の
裸身
(
はだか
)
踊りの見世物が暗い建物の隙間で揺れていた。彼は死人の血色の記憶から逃れるために、切符を買うと部屋の隅へ
踞
(
うずくま
)
った。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
眼を
逸
(
そら
)
し、
物懶
(
ものうげ
)
に居隅に
踞
(
うずくま
)
っていようとするのである。
アワァビット
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
向う山の腹へ引いてあったが、やはり
靄
(
もや
)
に見えていたので、そのものの手に、綱が引いてあったと見えます、
踞
(
うずくま
)
ったままで立ちもせんので。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
銀杏
(
いちょう
)
・
榧
(
かや
)
の実などの数をあてる女の子の遊びにこの語を用い、なかには「
中
(
なか
)
の
中
(
なか
)
の
小坊主
(
こぼうず
)
」と同じく、手を
繋
(
つな
)
いで輪になって中央に
踞
(
うずくま
)
った
児
(
こ
)
に
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
枝という枝は南向に
生延
(
はえの
)
びて、冬季に吹く風の
勁
(
つよ
)
さも思いやられる。
白樺
(
しらはり
)
は多く落葉して、高く空に突立ち、細葉の
楊樹
(
やなぎ
)
は
踞
(
うずくま
)
るように低く隠れている。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
玄沢に怒鳴られると、縁側一パイの奉公人達は、バラバラバラと庭に飛降りると、思わず庭の土間に
踞
(
うずくま
)
りました。
奇談クラブ〔戦後版〕:15 お竹大日如来
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そのね、
手水鉢
(
ちょうずばち
)
の前に、
大
(
おおき
)
な影法師見るように、
脚榻
(
きゃたつ
)
に腰を掛けて、綿の厚い
寝
(
ね
)
ン
寝子
(
ねこ
)
で
踞
(
うずくま
)
ってるのが、何だっけ、君が云った、その伝五郎。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
女はさすがに身を恥じて、二つの乳房を
掌
(
たなぞこ
)
に隠し、八方から投げかけられる視線を痛そうに受けて
踞
(
うずくま
)
りました。
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
が、心着いたら、心弱い
婦
(
ひと
)
は、
得
(
え
)
堪えず倒れたであろう、あたかもその
頸
(
うなじ
)
の上に、例の白黒
斑
(
まだら
)
な
狗
(
いぬ
)
が
踞
(
うずくま
)
っているのである。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
平次は縁側に
踞
(
うずくま
)
ったまま、岡っ引とも見えぬ、秀麗な顔を挙げました。笹野新三郎には、重々世話になっている平次、今さら頼むも頼まれるもない間柄だったのです。
銭形平次捕物控:048 お藤は解く
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と雪代が店へ出ると、紺地に薄お納戸の
柳立枠
(
やなだてわく
)
の羽織を、ト、白い手で、
踞
(
うずくま
)
った八郎の
痩
(
や
)
せた背中へ、ぞろりと掛けた。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
笹野新三郎、思わず膝を進めて、敷居の外に
踞
(
うずくま
)
る平次の手を頂きたいような様子です。
銭形平次捕物控:012 殺され半蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
狐の顔が
明先
(
あかりさき
)
にスッと来て
近
(
ちかづ
)
くと、その
背後
(
うしろ
)
へ、
真黒
(
まっくろ
)
な格子が出て、下の石段に
踞
(
うずくま
)
った
法然
(
ほうねん
)
あたまは与五郎である。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
半開の桜の下に、ハネ
釣瓶
(
つるべ
)
が見えて、
井桁
(
いげた
)
の下に、何やら白いものが
踞
(
うずくま
)
っております。
銭形平次捕物控:012 殺され半蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
やがてはたと地に落ちて、
土蜘蛛
(
つちぐも
)
の
縮
(
すく
)
むごとく、円くなりて
踞
(
うずくま
)
りしが、またたく
間
(
ひま
)
に立つよとせし、矢のごとく駈け
出
(
いだ
)
して、曲り角にて見えずなりぬ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
底冷えのする梅二月、宵といっても身を切られるような風が又左衛門の
裸身
(
はだか
)
を吹きますが、すっかり煙に
咽
(
む
)
せ入った又左衛門は、流しに
踞
(
うずくま
)
ったまま、大汗を掻いて
咳入
(
せきい
)
っております。
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
くるくると舞いて四隅の壁に突当る、出処なければ
引返
(
ひっかえ
)
さむとする時、
慌
(
あわただ
)
しく立ちたるわれに、また道を妨げられて、
座中
(
ざなか
)
に
踞
(
うずくま
)
りたるは汚き猫なりき。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
植幸は植木の蔭に
踞
(
うずくま
)
ると、平次の袂に
縋
(
すが
)
り付いて、ワナワナと顫えておりました。
銭形平次捕物控:026 綾吉殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
この
憐
(
あわれ
)
むべき
盲人
(
めしい
)
は肩身狭げに下等室に
這込
(
はいこ
)
みて、
厄介
(
やっかい
)
ならざらんように片隅に
踞
(
うずくま
)
りつ。人ありてその
齢
(
よわい
)
を問いしに、
渠
(
かれ
)
は
皺嗄
(
しわが
)
れたる声して、七十八歳と答えき。
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それは障子の外に、物の
隈
(
くま
)
のように
踞
(
うずくま
)
った総髪の中老人、
霰小紋
(
あられこもん
)
の
裃
(
かみしも
)
を着て、折目正しく両手をついておりますが、前夜怪奇な行法を
修
(
ず
)
した、この薬園の預り主、峠宗寿軒に違いありません。
銭形平次捕物控:001 金色の処女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
向うむきに円く
踞
(
うずくま
)
ったが、古寺の狸などを論ずべき場合でない——およそ、その背中ほどの木魚にしがみついて、もく、もく、もく、もく、と立てつけに鳴らしながら
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
多の市はたった四五日の間に、すっかり
窶
(
やつ
)
れ果てて、
冥土
(
あのよ
)
から来た幽鬼のように、物をも食わずにうめき続け、お浜はすっかり
怯
(
おび
)
え切って、部屋の隅に
踞
(
うずくま
)
ったまま、涙も
涸
(
か
)
れそうに泣いているのです。
銭形平次捕物控:064 九百九十両
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
砂山を細く開いた、両方の
裾
(
すそ
)
が向いあって、あたかも二頭の恐しき獣の
踞
(
うずくま
)
ったような、もうちっとで荒海へ出ようとする、
路
(
みち
)
の
傍
(
かたえ
)
に、
崖
(
がけ
)
に添うて、一軒漁師の
小家
(
こいえ
)
がある。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
家の中を突き抜けて裏口へ出ると、井戸端に何やら
踞
(
うずくま
)
るもの。
銭形平次捕物控:104 活き仏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
手を上げて招いたと言います——ゆったりと——
行
(
ゆ
)
くともなしに前へ出て、それでも
間
(
あいだ
)
二、三
間
(
げん
)
隔
(
へだた
)
って
立停
(
たちど
)
まって、見ると、その
踞
(
うずくま
)
ったものは、顔も上げないで
俯向
(
うつむ
)
いたまま
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
地に
踞
(
うずくま
)
りたる画工、この時、中腰に身を起して、半身を左右に振って踊る真似す。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
地に
踞
(
うずくま
)
りたる画工、此の時、中腰に身を起して、半身を左右に振つて踊る真似す。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
御寮人は、ぞろりと
褄
(
つま
)
を引合せる。多一は、その袖の蔭に、
踞
(
うずくま
)
っていたんだね。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「これだけな、
赤地
(
あかじ
)
の出た上へ、何かこうぼんやり
踞
(
うずくま
)
ったものがある。」
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
由紀を抱きかくしながら
踞
(
うずくま
)
って見た時、銀杏返の方が
莞爾
(
にっこり
)
すると、円髷のが、
頷
(
うなずき
)
を含んで眉を伏せた、ト顔も消えて、
衣
(
きもの
)
ばかり、昼間見た風の
羅
(
うすもの
)
になって、スーッと、肩をかさねて、
階子段
(
はしごだん
)
へ沈み
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
入口の片隅に、フト
燈
(
あかり
)
の暗い影に、
背屈
(
せくぐ
)
まった和尚がござる! 鼠色の
長頭巾
(
もっそう
)
、ト二尺ばかり
頭
(
ず
)
を長う、肩にすんなりと
垂
(
たれ
)
を
捌
(
さば
)
いて、墨染の
法衣
(
ころも
)
の袖を胸で
捲
(
ま
)
いて、
寂寞
(
じゃくまく
)
として
踞
(
うずくま
)
った姿を見ました……
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とお録の
心前
(
むなさき
)
に突附くれば、足下に
踞
(
うずくま
)
りて
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
踞
漢検1級
部首:⾜
15画
“踞”を含む語句
蹲踞
蟠踞
盤踞
踞込
踞坐
踞居
跪踞
虎踞
蹲踞込
前踞
蹯踞
踞跼
踞牀
踞座
跑踞
胡踞
箕踞
崛踞
屈踞