言伝ことづて)” の例文
旧字:言傳
大きい身体をゆすつて、いつも案内なしに入つて来る。張帥の言伝ことづてはみなこの老人が持つて来るのだ。新民屯に近い同郷人ださうだ。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
別れた頃の苦しさは次第次第に忘れたが、ゆかしさはやはり太郎坊や次郎坊の言伝ことづてをして戯れていたその時とちっとも変らず心に浮ぶ。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大尉は、帆村の言伝ことづてを聞いてからのち、いろいろ考えた末、大利根博士を訪問することをたいへん重大に思うようになったのです。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
では、お言伝ことづて申します、目明し万吉という者が、はるばる遠い上方かみがたから、あなた様に会いたいために、この江戸表へまいっております。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
荘田に言伝ことづてをしておいて呉れたまえ、いゝか。わしの云うことをよく覚えて、言伝をして、おいて呉れたまえ。の唐沢は貧乏はしている。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
十五日ごろ出かけたいと言伝ことづてさせようとしたら十五日は無理よ、無理よ、二十日にしておけと大いに力説したから我が意を得たわけです。
卓一への言伝ことづての一句すら他巳吉は託されてゐなかつた。もはやそんな友達すら知らないやうな澄江であつたと他巳吉は左門に語つてゐた。
目的の成否にかかわらず、三日以内には一応、船へ戻ると言伝ことづてをしていた田山白雲は、早くも二日目の晩に飄然ひょうぜんとして立戻って来ました。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
矢張やっぱり固くなりながら、訥弁とつべんでポツリポツリと両親の言伝ことづてを述べると、奥様は聴いているのか、いないのか、上調子うわちょうしではあはあと受けながら
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
坐蒲団ざぶとんを敷いて坐る前に、お房やお菊のくやみだの、郷里くにに居るしゅうとめからの言伝ことづてだの、夫が来てよく世話に成る礼だのを述べた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それから、きのふ大体約束して置いた Mairマイル のところの娘が今夜是非来るやうにといふ母の言伝ことづてもつて訪ねて居た。
南京虫日記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
真っ直ぐに両国へかかると、橋のたもとでどこかの小僧さんが待っていて、『増屋の主人が小梅の寮に居るから、そっちへ持って行くように』という言伝ことづてです
見継みついで上げますから、小兼に話して手紙の一本もよこしなさればすぐに出て来て話相手にも成りましょうから、お心置なく小兼にまで一寸ちょっと言伝ことづてをなさるよう
領事館は十時でないと人が来て居ないと云ふので、私は花岡、石田二氏への言伝ことづてを朴氏に頼んでまた汽車に乗つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
なにも心配しんぱいするな。まん一、おれが、武運ぶうんつたなくきてかえるとしたら、きっとおかあさんにたままを言伝ことづてする。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただ東京へ行くから、何か家へ言伝ことづてがないかとうるさくいうから、干物なんかことづけてやるだけなのよ。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
左様左様そうそう。ところで、お前はおれが会いたいという言伝ことづてを弁護士から聞いたときに、どう思ったの
暗中の接吻 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「これはかいの火という宝珠ほうじゅでございます。王さまのお言伝ことづてではあなたさまのお手入れしだいで、このたまはどんなにでも立派りっぱになるともうします。どうかおおさめをねがいます」
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ヘエ……今朝けさになりますと、まだすこしフラフラしますが、熱は取れたようですから、景気づけに一パイやっておりますところへ、昨日きのう、兼からの言伝ことづてをきいたと云って
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「わからない、あたしあなんにも知らない、ただ思いだしたから聞いてみたまでのことさ、でもなにか言伝ことづてがあるなら云ってあげるよ、たいてい来やしまいと思うけどね」
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼等は出会ふときには、会釈ゑしやくをするやうに、或は噂をし合ふやうに、或は言伝ことづてを託して居るやうに両方から立停つて頭をつき合せて居る。これはよくある蟻の転宅であつた。
余の病気のよしを聞いて、それは残念だ、自分が健康でさえあれば治療に尽力して上げるのにと云う言伝ことづてがあった。そのも副院長を通じて、よろしくと云う言伝ことづてが時々あった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちょうどなぎさの銀のあしを、一むら肩でさらりと分けて、雪にまがう鷺が一羽、人を払う言伝ことづてがありそうに、すらりと立って歩む出端でばなを、ああ、ああ、ああ、こんな日に限って、ふと仰がるる
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今店先でれやらがよろしく言ふたとほかの女が言伝ことづてたでは無いか、いづれ面白い事があらう何とだといふに、ああ貴君あなたもいたり穿索せんさくなさります、馴染はざら一面、手紙のやりとりは反古ほごの取かへツこ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
立子たつこが御地へ一遊しますので、御地の俳人に言伝ことづてをします。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
いくたびか遠慮がちな言伝ことづてをしてよこしたことはある。
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
昌允 須貝さんに言伝ことづてなすったんじゃないんですか。
華々しき一族 (新字新仮名) / 森本薫(著)
恋人に言伝ことづてなんかいらん。そんな事は聞きたくない。
その度、吉野に来て一杯ひとつ飲めと加藤の言伝ことづてを伝へた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
(然し、逢えぬ。言伝ことづてを——)
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「ああしまった。こんなことになるなら、荊州の民に頼まれた手紙や品物や、また言伝ことづてなども兵に聞かすのではなかったものを」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし伸子が在宅なら、面談したいから、柚木先生自身、伸子のところに来て下さろうと云う言伝ことづてであった。伸子は恐縮した気持になった。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
船番の人に言伝ことづてがあって、帰るつもりであったけれども、山田の町にもう少し足を止める必要が起ったから帰れぬとのこと。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「病院の方では、部屋を明けて御待ち申して居るさうです。院長さんも、飯島さんの奥さんは如何どうなすつたらうつて、私共へ言伝ことづてがありました。」
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
前川さんて、素晴らしい紳士じゃないの。あんないい方ないわ。私ね、貴女がいやがっていたから、内緒にしておくつもりだったけれども、前川さんに言伝ことづて
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ぼくんだら、帰還きかんしたとき、老母ろうぼ言伝ことづてをしてくれないか。」と、真剣しんけん調子ちょうしで、いいました。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ぼくをここから逃がして下さい。そうすればきっと春木君に、あなたの言伝ことづてをつたえます」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「先生。きょうは朔造(梅津)さんは病気で稽古を休みますと言伝ことづてがありました」
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
それでわたくし言伝ことづてを頼まれて参りました宜しく申し上げて呉れと申しました
「今となっては、お鳥殿の身の秘密を知る者は、広い世界にも拙者より外には無い。礼儀にも道理にも無いことではあるが、源吉に頼んで、あの言伝ことづてを申し上げたのは、うしたわけであった」
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
彼は一種の利害関係から、過去にさかのぼる嫌疑けんぎを恐れて、森本の居所もまたその言伝ことづても主人夫婦に告げられないという弱味をっているには違ないが、それは良心の上にどれほどのくもりもかけなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そう、わしは先刻伯爵はくしゃくからご言伝ことづてになった医者ですがね。」
ひのきとひなげし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「緑ちやん、君に言伝ことづてがあるんだよ。」
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そのうちのひとりは、たしかに、武田勝頼たけだかつよりにそういないから、すぐこのことを、呂宋兵衛るそんべえさまにお知らせもうせという蚕婆からの言伝ことづてなんで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「時間が来たら貴様は学校の方へ帰るが可い。どうせ田辺には逢う用があるし、大勝の大将から頼まれて来た言伝ことづてもあるし、俺は後から出掛ける」
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
幸内は前にお君のところへお銀様の言伝ことづてを言った足でこちらへ来たものと見えます。そうして昨晩はどこか甲府の城下へ宿を取っていたものでしょう。
「いや、大変お手間を取らして相済みません。が、もう一言、そうです、青木君の言伝ことづてがあるのです。時計の元の持主にこう伝えてれと頼まれたのです。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
と何気なく笑ったけれども、その言伝ことづては心にしみた。お針屋に十月とつきいて肋膜になったときもサイは帰らず、この二月には、夜業をつづけて二十円も国へ送った。
三月の第四日曜 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ねえ一彦君、私はどうもちかごろ博士のすることに、腑におちない点があるのだよ。それに帆村君からの言伝ことづてにも、博士に必ず会って見ろとあったではないか。帆村君も博士に気を
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そんならあなたとお約束した風は、まだもどっては来ないのでしょう。私がその風にうかうか分らないが、遇ったら言伝ことづてをいたしましょう。」と言って、その風も何処どこへとなく
月と海豹 (新字新仮名) / 小川未明(著)