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しいた
ふりがな文庫
“
虐
(
しいた
)” の例文
人間が、人間を
虐
(
しいた
)
げ、踏みつけ、搾取することを、えらくなると考えることは、半世紀ばかり前の考えだと、私たちは思っています。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
盛綱は、おかしがって語ったが、頼朝は、それは
不愍
(
ふびん
)
なことだ、
下賤
(
げせん
)
の者を
虐
(
しいた
)
げたと聞えては、頼朝が生涯の
汚名
(
おめい
)
というものである。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
生命力の弱いものに対しては肉親でも
奴隷
(
どれい
)
のやうに
虐
(
しいた
)
げて使つてしまふ親譲りのエゴイズムとが、異様で横暴な形を採つて兄に迫つた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
その事なれば及ばずながら、某一肢の力を添へん。われ彼の
金眸
(
きんぼう
)
に
意恨
(
うらみ
)
はなけれど、
彼奴
(
きゃつ
)
猛威を
逞
(
たくまし
)
うして、余の
獣類
(
けもの
)
を
濫
(
みだ
)
りに
虐
(
しいた
)
げ。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
この人は、
婦人
(
おんな
)
を
虐
(
しいた
)
げた罪を知って、朝に晩に
笞
(
しもと
)
の
折檻
(
せっかん
)
を受けたいのです。一つは世界の女にかわって、私がその
怨
(
うらみ
)
を晴らしましょう。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
そなたの母御が、松浦屋どの御零落に際して、あの土部三斎どののために、どのような
虐
(
しいた
)
げをうけられて、御自害をなされたか——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
世帯の苦労に、
虐
(
しいた
)
げ抜かれたお関が、倅の憂鬱症を救う唯一の道として、母子心中を
企
(
くわだ
)
てたことも、また考えられない節ではありません。
銭形平次捕物控:122 お由良の罪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
個人生活を
虐
(
しいた
)
げ、世界生活の平和を
攪乱
(
かくらん
)
して置いて、ひとり国民生活が幸福に成長し得るものでないことも明白になりました。
三面一体の生活へ
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
黄人
(
こうじん
)
の私をして白人の
黄禍論
(
こうかろん
)
を信ぜしめる間は、君らは
須
(
すべから
)
く妻を
叱咜
(
しった
)
し子を
虐
(
しいた
)
げ
太白
(
たいはく
)
を挙げてしかして帝国万歳を
三呼
(
さんこ
)
なさい。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それが京ばかりでなく、
近郷近国
(
きんごうきんごく
)
いずれもこの
大旱
(
おおひでり
)
に
虐
(
しいた
)
げられて、田畑にあるほどの青い物はみな立ち枯れになってしまった。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
母の
虐
(
しいた
)
げ、
五十川
(
いそがわ
)
女史の
術数
(
じゅっすう
)
、近親の圧迫、社会の環視、女に対する男の
覬覦
(
きゆ
)
、女の
苟合
(
こうごう
)
などという葉子の敵を木村の一身におっかぶせて
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
石津はオモチャにされ、踏みつけられ、
虐
(
しいた
)
げられても、いつもたわいもなく楽天的なような気がするのだが、むろん現実ではそんな筈はない。
風と光と二十の私と
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
父も母も失って、伯父の家に引き取られ、わがままないとこに
虐
(
しいた
)
げられながら、彼女は孤独な寂しい
日々
(
にちにち
)
を暮していたのだ。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それを知覚せずにやはりこうするのが仏教のためであると
謂
(
い
)
って、仏教の名をもってかえって国民を
虐
(
しいた
)
げる場合が沢山ある。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
竟
(
つい
)
に、長老が腹を立てて下僕を呼びつけた。夢の中で己を
虐
(
しいた
)
げる憎むべき男を思いきり罰してやろうと決心したのである。
南島譚:01 幸福
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
だが単純に包まれる美の本質は殺されてしまった。自然への信頼は人為的作法に
虐
(
しいた
)
げられて、美には
凋落
(
ちょうらく
)
の傾きが見える。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
この荒涼たる吹雪の景色は、今日も少しも変らない。そしてこの無慈悲な自然の力に
虐
(
しいた
)
げられている人間の姿もまた、往年の名残りを
止
(
とど
)
めている。
イグアノドンの唄:――大人のための童話――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
松三はこう言いながら、自分の美しかった若い妻が、菊枝の母親が、いかに
惨
(
みじ
)
めな半生を送ったかを、農村の女達がいかに
虐
(
しいた
)
げられるかを思った。
緑の芽
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
そうして彼が、絶えずその強い衝動と闘っているうちに、いつの間にか、自分を
虐
(
しいた
)
げることに異常な興味を覚えてきた。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
この男には、人のよわみにつけ込むという心はないのみならず、
苟
(
いやしく
)
も弱者の
虐
(
しいた
)
げらるるものに対しては、じっとしていられない男であるはずです。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
此処にもそうした女性があるのか、女というものはどうしてこうまで
虐
(
しいた
)
げられ、自己の権利を
蹂躙
(
じゅうりん
)
されるものかと怒りがこみあげてくるのであった。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
食いつめて、
虐
(
しいた
)
げられて、ねじけきって
辿
(
たど
)
りついたこの密林の中の荒れ果てた一軒家だった。主人のない家とみて今日まで寝泊りしているのだった。
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
真実
(
まこと
)
は思いにまかせぬ現実の生活のために、弱い殉情そのものが無残に
虐
(
しいた
)
げられているのだと思われてならなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
しょっちゅう酒ばかり飲んでいるようですが、我々
虐
(
しいた
)
げられたる者は、虐げられたる苦しみをごまかすために、酒でも飲まなきゃやりきれないのです。
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
「人道の敵」だったのか。わが身はギロチンの露と消えつつ、
虐
(
しいた
)
げられた民衆の心に革命精神を点火したかのテロリストは、「人民の敵」だったのか。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
それがしの天才が思想の
昏迷
(
こんめい
)
を
来
(
きた
)
して一時あらぬ狂名を歌われたのもまた二葉亭の鉄槌に
虐
(
しいた
)
げられた結果であった。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
社会主義は
虐
(
しいた
)
げられたる民衆のために社会の変革を求めるというが、彼らのなすところは真に民衆の福祉となり得るかどうかということが疑問である。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
それも知りたい。
叡山
(
えいざん
)
の徒に
虐
(
しいた
)
げられて
田舎
(
いなか
)
廻りをしている一向の
蓮如
(
れんにょ
)
、あの人の消息も知りたい。新しい世の救いは案外その辺から来るのかも知れん。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
己を嫌って、
或
(
ある
)
いは己を
虐
(
しいた
)
げて人を愛するのでは、自殺よりほかはないのが当然だということを、かすかに気がついてきましたが、
然
(
しか
)
しそれはただ理窟です。
わが半生を語る
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
クリストフにはオットーの意思を
虐
(
しいた
)
げるつもりは少しもなかった。彼は本能的な専制者であって、友に自分と異なった考えがあろうとは想像だもしなかった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その中十九節に「こは
彼
(
か
)
れ(悪しき人をいう、暗にヨブを指す)貧しき者を
虐
(
しいた
)
げてこれを棄てたればなり、たとい家を奪いとるともこれを改め作る事を得ざらん」
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
同時に意地の悪い体操の教師が、今、弱者としての自分を
虐
(
しいた
)
げようと眼を光らしているのを認識した。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
虐
(
しいた
)
げられた人間が、虐げられた人間同志、憐れみ合い助け合うように、みんなは仲よく塊まっていた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
世の中のものが何もかも私を
虐
(
しいた
)
げているような悲痛な
怨恨
(
うらみ
)
が胸の底に波立つようにこみあげて来た。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
それ故に資本家階級なればとて、勝手に私利を
壟断
(
ろうだん
)
して下層民を
虐
(
しいた
)
げる事は出来ぬ訳で、両々相調和し
親昵
(
しんじつ
)
し行くところに、初めて平和を楽しむ事が出来るんである。
永久平和の先決問題
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
すべての者、皆
逝
(
ゆ
)
く——残れる者も
亦
(
また
)
逝く——。これが人生であろうけれど、それにしても、今井一家のみを
虐
(
しいた
)
げるというのは、何という陰惨な事実であろう…………。
友人一家の死
(新字新仮名)
/
松崎天民
(著)
その代り、彼女達は又、家庭の女が持ち得ない自由な時間と金を毎日いくらか
宛
(
ずつ
)
持っている。その時間と金とを彼女たちは勝手気儘に使って、
虐
(
しいた
)
げられた自己を慰める。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
十九世紀に至つて、「
虐
(
しいた
)
げられたるものゝ反抗」が眼を覚ます。それと同時に、タルマ、ルメエトル、マルス、ジョルジュゴット、ラシエル……等の天才俳優が簇出する。
仏蘭西役者の裏表
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
財産の為に、余儀ない結婚をした彼女が、身体は夫の
虐
(
しいた
)
ぐるに任せておいて、今度は精神的には全く反対の立場に出でたかも知れぬということは果して考えられぬでしょうか。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
しかるところその先祖の恩を忘れてあてがわれたる知行を自身の物と心得、百姓を
虐
(
しいた
)
げいささか
撫恵
(
ぶけい
)
の心なくややもすれば課役を申しつけなど致し候輩これみな心正しからず。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
いろいろの事情に
虐
(
しいた
)
げられながら、しかも気位の高い、誇りの強い、気短かな——特にこの気短かな人にとって、こういう苦しみを背負っていくのがどんなかというくらいは
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
虐
(
しいた
)
げた過去の追憶に苦しんで、おりおり今でも仏にお
詫
(
わ
)
びを言わねばならないのが私です。しかしおわかりになりましたか、ほかの男は私のように純なものではないということを
源氏物語:23 初音
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ミケル尊者は
麪包
(
パン
)
屋、アフル女尊者は女郎屋、ジュスト尊者は料理屋、ジャングール尊者は悪縁の夫婦を
冥加
(
みょうが
)
し、ガウダンス尊者は蠍を除き、ラボニ尊者は妻を
虐
(
しいた
)
ぐる夫を殺し
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
現世は
穢土
(
えど
)
であり、人情のまことは煩悩と見たから、聴衆の方は、子供を蹴とばすといった少々感情を
虐
(
しいた
)
げたような、芝居がかりのことをする人間にえらさを感じたし、伝説の方も
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
虐
(
しいた
)
げられた定基の若妻に同情し、又無論のこと力寿の方の肩を持ちそうもない定基の母にも添うて、右衛門は或日定基にむかって、美しいのみの力寿に
溺
(
おぼ
)
るることの
宜
(
よ
)
からぬことを説き
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
象徴派の新運動は、その本質上の精神に於て、正しく浪漫派の復活であり、
虐
(
しいた
)
げられたる自由と感情とを、詩に於て取り返そうとした革命である。何よりも彼等は、高蹈派の形式主義に反対した。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
弱きもの、貧しきもの、愚かなものを
虐
(
しいた
)
ぐる、あるいはそしらぬ顔の
傲慢
(
ごうまん
)
ほど憎むべきものがありましょうか。私は人生の悲哀と愛の運命と、これらのものとはなれて生きて行く気はいたしません。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
私は
虐
(
しいた
)
げられし者を助け、悩める者を慰めた。私が祭壇の幕を引き裂いたのは事実である。しかしそれは祖国の
瘡痍
(
そうい
)
を
繃帯
(
ほうたい
)
せんがためであった。私は常に光明へ向かって人類が前進するのを助けた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
霊のために肉を
虐
(
しいた
)
げたり、道のために
体
(
たい
)
を
鞭
(
むち
)
うったりしたいわゆる
難行苦行
(
なんぎょうくぎょう
)
の人を指すのです。Kは私に、彼がどのくらいそのために苦しんでいるか
解
(
わか
)
らないのが、いかにも残念だと明言しました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
男の子の容貌が、そんなにも、幼い心を
虐
(
しいた
)
げるものだろうか——。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
虐
常用漢字
中学
部首:⾌
9画
“虐”を含む語句
虐殺
暴虐
虐遇
惨虐
虐待
残虐
嗜虐
殘虐
苛虐
凌虐
淫虐的
虐使
自虐
嗜虐的
暴虐者
弑虐
悪虐
小児虐待
嗜虐症
頑冥暴虐
...