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蒼味
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あおみ
ふりがな文庫
“
蒼味
(
あおみ
)” の例文
二
間
(
ま
)
のうち一間のほうには、お十夜孫兵衛、
宿酔
(
ふつかよい
)
でもしたのか、
蒼味
(
あおみ
)
のある顔を枕につけ、もう
午頃
(
ひるごろ
)
だというに
昏々
(
こんこん
)
と
熟睡
(
じゅくすい
)
している。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
振り向いて西の空を仰ぐと阿蘇の分派の一峰の右に新月がこの窪地一帯の村落を
我物顔
(
わがものがお
)
に澄んで
蒼味
(
あおみ
)
がかった水のような光を放っている。
忘れえぬ人々
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
よほど
深
(
ふか
)
いものと
見
(
み
)
えまして、
湛
(
たた
)
えた
水
(
みず
)
は
藍
(
あい
)
を
流
(
なが
)
したように
蒼味
(
あおみ
)
を
帯
(
お
)
び、
水面
(
すいめん
)
には
対岸
(
たいがん
)
の
鬱蒼
(
うっそう
)
たる
森林
(
しんりん
)
の
影
(
かげ
)
が、くろぐろと
映
(
うつ
)
って
居
(
い
)
ました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
岬の東端の海中には、御前岩、俗に沖の
御前
(
ごぜん
)
と云われている岩があって、
蒼味
(
あおみ
)
だった潮の上にその頭を
現
(
あらわ
)
していた。
真紅な帆の帆前船
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
林檎のように顔色の良かった看護婦も、
俄
(
にわ
)
かに
青森産
(
あおもりさん
)
のそれのように
蒼味
(
あおみ
)
を加えて、アタフタと室外へ出ていった。
柿色の紙風船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
あるいはこれもまた時鳥のように、
冥土
(
めいど
)
の鳥ということかも知れぬ。
豊後
(
ぶんご
)
の竹田附近にはヒトダマという鳥がある。嘴大にして赤く、羽の端には
蒼味
(
あおみ
)
がある。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一人は
年齢
(
ねんぱい
)
二十二三の男、顔色は
蒼味
(
あおみ
)
七分に土気三分、どうも
宜
(
よろ
)
しくないが、
秀
(
ひいで
)
た
眉
(
まゆ
)
に
儼然
(
きっ
)
とした眼付で、ズーと
押徹
(
おしとお
)
った鼻筋、
唯
(
ただ
)
惜
(
おしい
)
かな口元が
些
(
ち
)
と尋常でないばかり。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
水槽の
蒼味
(
あおみ
)
がかった水は、ガラス板の向こう側で、ひどく動揺していた。底には大小さまざまの海藻が無数の蛇のように鎌首をもたげて、あわただしくゆれ動いていた。
黒蜥蜴
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
皮膚の
汚点
(
しみ
)
や何かを隠すために、こってり塗りたてた顔が、
凄艶
(
せいえん
)
なような
蒼味
(
あおみ
)
を帯びてみえた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ことに霜に打たれて
蒼味
(
あおみ
)
を失った杉の
木立
(
こだち
)
の
茶褐色
(
ちゃかっしょく
)
が、薄黒い空の中に、
梢
(
こずえ
)
を並べて
聳
(
そび
)
えているのを振り返って見た時は、寒さが背中へ
噛
(
かじ
)
り付いたような心持がしました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私
(
わし
)
はそのまま目を
外
(
そ
)
らしたが、その一段の
婦人
(
おんな
)
の姿が月を浴びて、薄い煙に包まれながら向う岸の
潵
(
しぶき
)
に
濡
(
ぬ
)
れて黒い、
滑
(
なめら
)
かな大きな石へ
蒼味
(
あおみ
)
を帯びて
透通
(
すきとお
)
って映るように見えた。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蒼味
(
あおみ
)
を帯びた
薄明
(
うすあかり
)
が
幾個
(
いくつ
)
ともなく
汚点
(
しみ
)
のように
地
(
じ
)
を
這
(
は
)
って、大きな星は薄くなる、小さいのは全く消えて了う。ほ、月の
出汐
(
でしお
)
だ。これが
家
(
うち
)
であったら、さぞなア、好かろうになアと……
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
明月の光は少し
蒼味
(
あおみ
)
を帯びて、その辺を隈なく照らしているが、流は特に一いろに光って見えている。それは瀬の波から反射してくるのでなく、豊富な急流の面からくる反射であった。
ドナウ源流行
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
これを聞くと、
樽
(
たる
)
のような胆ッ玉の対馬守、さっと
蒼味
(
あおみ
)
走った額になって
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
旅行券の手入れ すると長官はびっくりして少し
蒼味
(
あおみ
)
がかかった顔をして
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
男の顔は
蒼味
(
あおみ
)
を帯びて、調子は妙に
縺
(
もつ
)
れかかっていた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
しかし、その
大
(
おおき
)
さは
矢張
(
やは
)
り五
寸
(
すん
)
許
(
ばかり
)
、
蒼味
(
あおみ
)
がかった
茶
(
ちゃ
)
っぽい
唐服
(
からふく
)
を
着
(
き
)
て、そしてきれいな
羽根
(
はね
)
を
生
(
は
)
やして
居
(
い
)
るのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
目堰笠
(
めせきがさ
)
の裡の玄蕃の顔、思わずサッと
蒼味
(
あおみ
)
ざして、耳から垂れた
鬢
(
びん
)
の毛がぶるると少しふるえた
容子
(
ようす
)
——
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鱗
(
うろこ
)
のざらめく
蒼味
(
あおみ
)
がかった手を、ト板の
縁
(
ふち
)
へ
突張
(
つッぱ
)
って、水から半分ぬい、と出た。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
扉
(
ドア
)
の敷居に姿を現した彼女は、風呂から上りたてと見えて、
蒼味
(
あおみ
)
の
注
(
さ
)
した常の頬に、心持の好いほど、薄赤い血を引き寄せて、
肌理
(
きめ
)
の細かい皮膚に
手触
(
てざわり
)
を
挑
(
いど
)
むような柔らかさを見せていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
左様
(
さよう
)
、
色
(
いろ
)
で一
番
(
ばん
)
よく
判
(
わか
)
る。
最初
(
さいしょ
)
生
(
うま
)
れたての
竜神
(
りゅうじん
)
は
皆
(
みな
)
茶
(
ちゃ
)
ッぽい
色
(
いろ
)
をして
居
(
い
)
る。その
次
(
つ
)
ぎは
黒
(
くろ
)
、その
黒味
(
くろみ
)
が
次第
(
しだい
)
に
薄
(
うす
)
れて
消炭色
(
けしずみいろ
)
になり、そして
蒼味
(
あおみ
)
が
加
(
くわ
)
わって
来
(
く
)
る。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
枕に響いた
点滴
(
したたり
)
の音も、今さらこの胸からか、と
悚然
(
ぞっ
)
とするまで、その血が、ほたほたと落ちて、
汐
(
しお
)
が引くばかりに、見る間に、びしゃびしゃと肉が
萎
(
しぼ
)
む、と手と足に
蒼味
(
あおみ
)
が
注
(
さ
)
して、腰、肩
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
兄の顔は
常磐木
(
ときわぎ
)
の影で見るせいかやや
蒼味
(
あおみ
)
を帯びていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
やがて
貴僧
(
あなた
)
、
風車
(
かざぐるま
)
のように舞う、その癖、場所は変らないので、あれあれと云う内に火が
真丸
(
まんまる
)
になる、と見ている内、白くなって、それに
蒼味
(
あおみ
)
がさして、
茫
(
ぼう
)
として、
熟
(
じっ
)
と
据
(
すわ
)
る、その
厭
(
いや
)
な光ったら。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
褐色
(
かばいろ
)
に薄く
蒼味
(
あおみ
)
を
潮
(
さ
)
して、はじめ志した方へ
幽
(
かすか
)
ながら見えて来た。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
縮緬
(
ちりめん
)
の
扱帯
(
しごき
)
に
蒼味
(
あおみ
)
のかかったは、月の影のさしたよう。
女客
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
銀色に
蒼味
(
あおみ
)
がかって光ったって騒ぎです。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蒼
漢検準1級
部首:⾋
13画
味
常用漢字
小3
部首:⼝
8画
“蒼”で始まる語句
蒼
蒼白
蒼空
蒼蠅
蒼黒
蒼褪
蒼然
蒼々
蒼穹
蒼茫